選択肢が私の平穏を壊しにくる   作:ワンコそば

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暴力さん

「司令なぜ彼女をリコリスに起用したのですか?」

 

彼女が部屋から去った今、司令の爆弾発言に私は疑問を投げかけた。

 

「なんだ、気になるのか?」

「はい、はっきり言って彼女をDAに迎える意味が私には理解できません」

 

フキさんも口には出さないものも彼女も同じく疑問に思っていたのか司令を直視して司令の次の言葉を待っている。

 

「・・・・・・そうだな」

 

司令が一瞬ニヤッとそして顔を上げこちらに一言言い放った。

 

「──アレが異常だからだ」

 

私は司令の言葉を理解できなかった。確かに彼女は高い戦闘力を持っている。きっと彼女はどこかの組織に所属していたのだろう。しかし、実力があるリコリスな、6人程度の相手なら武装していようが制圧できる者もいる。それのどこが異常なのだろうか。

 

「異常ですか?」

「あぁ、そうだ。たきな、お前にはアレがどんなふうに見えた?」

「どうなふうにですか?そうですね、戦闘経験はあるようですが私には少し頭が弱い普通の学生にしか見えませんでした」

「そうか、普通の学生に見えたか。フキもそう見えたか」

「・・・・・・えぇ、概ねこいつと一緒の意見です」

 

すると、私達二人の答えを聞いて途端にクツクツと笑い出した。どこかこの答えに可笑しいところはあっただろうか。

 

「たきな、フキ、奴の経歴知っているな?」

「はい、彼女の捕縛任務前に一応頭に入れておきました。両親の事故死以外は至って普通の経歴の持ち主でしたが、しかしそれは表向きの経歴ですよね?」

 

すると司令は何かを考え込んでから言葉を発した。

 

 

「・・・・・・お前達は一つ勘違いをしている。奴の経歴は偽装されてない。しっかり裏はとれてる。本物なんだよ」

 

「・・・・・・は?」

 

その言葉が私から出たのかフキさんから出たのか分からないが、司令の言葉は信じられないものだった。

 

だって、それは、ありえない!

 

彼女はコンテナ港で6人の武装した相手を無傷で制圧して見せたのだから。瞬間ゾッとした。これではまるで──。

 

 

「やっと気づいたか。あぁ、その通りだ。はっきり言ってあえりえない。彼女には格闘技経験だってない。にも関わらず6人ものテロリストを一人で制圧して見せた」

 

 

──あぁ、これは確かに異常だ。そもそも、異常な点は他にもあった。突然拉致されたにも関わらず日常をただただ謳歌するように普通こちらに話しかけふざけていた。そう、あまりにも普通に話しかけていたのだ。私達に微塵の恐怖を見せずに。だから私達は彼女の異常性に気づけなかった。

 

 

 

「──理外の怪物。そう表現するのが正しいのかも知れないな」

 

 

◆◇◆

 

 

あぁ、なぜこんなことになってしまったのだろうか。よもや、よもや高校を辞めさせられるとは。もはやブラックの中のブラックでしょ。なんだよ「どうせ、友人も学校にいないのだから働け」と言わんばかりのあの楠木さんのあの視線は・・・・・・。

 

 

「失礼します」

 

私は声が部屋に響いたため楠木さんの文句を考えていた思考を一旦切る。どうやら私の部屋に誰か用があるようだ。

 

「どうぞ」

「こんにちは、佐藤さらさん」

 

彼女は確か、気持ちよく寝ようとした私の頬をつねったドS黒髪美少女の──

 

「本日からあなたの教育担当を任された井ノ上たきなです。よろしくお願いします」

 

あらら、まさか暴力さんが私の教育担当になるとは、不安しかない。しかし、挨拶程度は返してやろう。

 

「よろしくお願いします。暴力さん」

 

私が律儀に挨拶を返すと、顔を顰めこちらを見返してきた。すると、右手を伸ばして私の右頬に──

 

「!?いたッー!ギブギブギブ!!」

 

なんでつねられたの?!痛い、痛い!あー頬がヒリヒリする!

 

私の頬をつねった下手人を見ると少しこちらを睨んでくるかわいい顔があった。うん。顔はかわいい。行動は可愛くないけど

 

「い・い・で・す・か?私の名前は井ノ上たきなです。決して暴力さんなんて名前ではありません。今後は気をつけてください!」

 

どうやら少し怒らせてしまったらしい。しかし、頬をつねられなくてもいいではないか!なんて思うが口には出さない。私は空気を読める子だから。

 

「申し訳なございません。ぼう「ん!」・・・・・・井ノ上さん」

 

──危うく口が滑ってまた、暴力さんと呼ぼうとしてしまった。言おうとした瞬間、頬をつねる構えをとる暴力さんにすこし恐怖を感じた。これはパワハラでは?

 

「ハァ……」

 

ため息をつかれた。失礼な先輩だ。まるで私が手がかかる後輩みたいではないか。

 

すると、暴力さんは気をとりなおすためか咳払い一つして改めて口を開く──

 

「では、これからあなたには私と模擬戦をしてもらいます」

 

は?ちょっと、ちょっと冗談きついって!戦いのたの字も知らない私にいきなり模擬戦とは──さてはまだ、怒っているな?先日の件で筋肉痛もひどいのに模擬戦なんてやってられるか!ここは、断らせてもらう──

 

【いいですよ。手は抜いてあげます、せいぜい抗ってください】

【たきなちゃん弱いからすぐ勝負つきそう(笑)】

 

・・・・・・へ?

 

いやいや、勘弁してくださいよ選択肢さん。変なところで仕事しなくていいから。こっちは筋肉痛だというのに。断らせろよ!それに、煽ってるじゃん!絶対怒らすき満々じゃん!

 

【警告!! 30秒以内に選択しなければ強制的に死亡します】

 

ふざけんなよ選択肢!くそ!もうやるしかない!

 

「いいですよ。手は抜いてあげます、せいぜい抗ってください」

 

あーあ。やってしまった。見てよ暴力さんがプルプル震えてこっちをものすごい形相で睨んでるよ。なんて事してくれたんだ選択肢!

 

「いいでしょう。その言葉を私に向かって言ったことを絶対に後悔させてあげます!」

 

あーあ、終わったなわたし

 

◆◇◆

 

 

 

まさか、あそこまで初対面同然といった相手に煽られるとは私自身思ってもいなかった。ただ、彼女の教育係として、ここでしっかり伸びている鼻を折っておかなければならない。

 

 

全ての準備を整え私は訓練所に足を運ぶ。訓練所にはすでに準備を整えている彼女が立っていた。私少し彼女を睨むが変わらない変化のない表情に少しイラっとしてしまう。だからだろうか、彼女の興味を引くために提案を一つする。

 

 

「ただ模擬戦しても貴女にはメリットがありません。そこで、私からは一つ提案があります」

 

「その提案とは?」

 

どうやら食いついてくれたようだ

 

「──貴女が私に勝利したらなんでも一つ言うことを聞くというのは」

「いいですね!なら私に貴女が勝てたら私もなんでも聞くことにしましょう」

 

 

その言葉に私は困惑した。そもそもこれはあくまで彼女のやる気を引き出すためにこんな提案をしたわけであり、彼女も同じ条件を私に差し向けてくるとは思わなかった。

 

 

──なめられてる

 

 

頭にその言葉がよぎる。それは私のリコリスとしてのプライドが許さない。彼女に勝ってお灸を据えなければならない。私はそう決心する。

 

模擬戦が始まるまで、後数十秒

 

今回の模擬戦においてまず間違いなく私の方が有利。何度も使い古した訓練所の地理は理解しおり、戦闘経験の差も圧倒的に私の方が上だ。だが、私に慢心はない、少なからず武装したテロリストを複数人無傷で鎮圧した相手だ。そんな相手に手を抜いたら足元を救われかねない。

 

集中し最初どう動くかあらかじめ決めておく。

 

もうすぐ始まる、5、4、3、2、1、0

 

 

 

──始まりのブザーがなった

 




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