ジョジョの奇妙な教室   作:空条Q太郎

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前回までのジョジョの奇妙な教室

堀北…また空条くんなのね…


7月1日 その②

 

 ——数日前 side Dクラス

 

「小宮、近藤ツラかせ」

 

 放課後を告げるチャイムが鳴り響き、授業という名の抑圧から解放された生徒たちが思い思いに行動を起こし始める中、暴君龍園に名指しされた二人は借りてきた猫のように小さく返事して付き従う。

 

 この二人はバスケ部に所属しているため練習があるにもかかわらずだ。

 

 その様は、Dクラスにおいて龍園がどのような立ち位置にいるのかを物語っていた。

 

 龍園に追随するのは小宮近藤だけでなく、常に付き従っている山田アルベルトと石崎大地、さらに今回は追加で呼ばれた紅一点、伊吹澪の姿もあった。

 

 一向は目的地に到着すると龍園を中心に据えてソファーに腰を下ろす。

 

 部屋の外からはポップな曲調の流行りのサウンドがこれでもかと言わんばかりの音量で鳴り響き、壁に触れれば大型のコンポから放たれる隣の部屋の音の振動がドンドンと伝わってくる。

 

 そう、カラオケだ。

 

 大所帯で訪れた一行の部屋は賑わう数々の部屋に反し、物音1つしない。部屋に入るや否やアルベルトがBGM等を操作する摘みで音を絞ったのだ。

 

「一ヶ月、Cを中心に監視を続けてきたわけだが1つ行動を起こすことにした」

 

 石崎が鳴らした喉の音が響く。

 

「今回はCを叩く」

 

「叩くってどうすんのよ」

 

「クク、焦るなよ伊吹。ゆっくり説明してやるよ」

 

「あっそ」

 

 青がかった黒髪ショートの伊吹は、物おじすることなく発言していた。

 

「アルベルトは身を持って知っていることだが、Cの空条は確かにバケモンだ」

 

 アルベルトは静かに頷く。

 

「他にも粒はいるが、基本は最底辺に配属された雑魚の集まり。学力も身体能力も社会性も欠く奴らが多いことは調べがついてる」

 

 誰が何を言っているのだと言わんばかりに伊吹が鼻で笑うと、龍園が睨みつけ取り巻きは冷や汗を流す。

 

 どうやら伊吹は龍園に服従しているというわけではないようだ。

 

「クラスとして見たときに、Cはたいしたことねえ」

 

 実際、Cクラス以外の各クラスは形こそ違えど明確なリーダーを据え、その生徒を中心にクラスを運営していた。このDクラスでは暴力という形で龍園が制圧している。

 

「龍園さん結局誰を狙うんすか」

 

「チッ、黙ってろカス。お前はなんのために一ヶ月偵察してやがったんだ」

 

「す、すみません」

 

 叱責された石崎は一般的に見てガタイが良い部類だ。入学初期には敗れたものの龍園やアルベルトとも拳を交えている。そんな彼がいまは小さく見えるほど体をこわばらせていた。

 

「須藤をヤる。どんな手を使ってもいいとにかくあいつに殴られろ」

 

「は? この監視カメラだらけの学校でどうやってそんなことするのよ。煽って殴られても大した罪になんないどころか逆にこっちがペナルティーくらうんじゃないの?」

 

「伊吹、石崎に比べりゃ幾分かマシだがお前もいちいち割り込んでくるんじゃねえ、ぶっ飛ばすぞ」

 

 龍園の制止に悪びれる様子もなく舌打ちをすると、伊吹は組んでいた脚を組み替えてそっぽを向いた。

 

「小宮、近藤。てめえらで須藤を特別棟に呼び出せ」

 

「特別棟……ですか? どうしてあんな何もないところに」

 

「わかってんじゃねえか、あそこには何もない。階によるが監視カメラもな」

 

「それマジ?」

 

「てめえらがくっちゃねしてる間に行動してる奴がいるってだけだ。特別等の、そうだな4階に奴を呼び出せ。適当ないちゃもんでもつけてな」

 

 実行を命じられた二人の血色はすぐれないが首を縦に振った。

 

「石崎、てめえもだ。4階で待機しとけ」

 

「俺もっすか?」

 

「荒事はお前が担当だ。やり方は任せるがとにかく煽ってボコられろ。派手であれば派手であるほど良い」

 

「う、うっす」

 

「決行は明日の放課後だ。やられ具合が足りなくてもあざぐらい増やしてやるから安心してヤレよ?」

 

 実行部隊は引き攣った歪な笑みを浮かべた。

 

「で、それでなんのメリットがあるわけ? 暴力事件ってゆっても停学とか退学とかにしかならないんじゃないの?」

 

「おい伊吹、俺はセンコーじゃねえ。聞いたら全部解決するなんて義務教育の代表みてーなことしてんじゃねえぞ」

 

「リスク背負って実行するんだからそれぐらい聞いても良いでしょ」

 

「お前がやるわけじゃねえだろうが」

 

「チッ……話は済んだでしょ、あたしもう帰るから」

 

 支払いをしなかった伊吹は一抜けと帰宅する。その後解散となり、石崎が立て替えたことを伊吹は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ——決行当日

 

 

「あぢぃ……」

 

 特別棟の4階、部活でも使用されることのない使用頻度が限りなく低いこの校舎は監視カメラもなければ、本校舎にあるような空調設備も一つもない。

 

 6月も終わりに差し掛かり、夏が顔どころか肩下ほどまで出てきている今日この頃。特別棟は言うまでもなくうだるような暑さ、それも風通しの悪い居心地最悪な蒸し暑さのなか龍園に待機を命じられた石崎を襲っていた。

 

 シャツの端をつまみ、パタパタとはためかせ服の中の汗ばんだ空気を入れ替える。温度は変わらないが風が起こる分多少はマシに感じる。

 

 もうしばらくすれば、小宮と近藤が須藤を連れてやってくる手筈だ。

 

 二人は1年生にしてレギュラーを獲得しそうな須藤にその件でいちゃもんをつけて呼び出すと話していたが、大丈夫だろうかとため息を漏らす。

 

 普段から小競り合うことも多いらしいが、ここに連れてきてもらわねば龍園に殺されかけるのは自分も同じだ。

 

 暑さと不安だけでなく恐怖のトリプルパンチを受けながら、念の為周りに人がいないことを確認すると、階段に腰を落として待った。

 

「しっかし、ほんと龍園さんは色々やってるよな」

 

 もとは、単純な暴力に屈して服従した関係だが、仮に喧嘩に勝って自分が上に立っていたとしてクラスをまとめてこの学校の仕組みを探りながら他クラスと戦っていくことができただろうか。

 

 石崎は想像するまでもなく首を横に振った。

 

 龍園は腕が立つだけではない。

 

 やり方はともかくとして、思考を巡らせ行動を起こす力。そしてなによりも、執念深さ。Cクラスだったあの頃、クラスをまとめようと動いていた頃の龍園を見てついていくと心に決めた。

 

 今回も実験の一環で、クラスにどんな影響があるのかは自分にはわからない。けれども、任務は遂行しよう。その決心を持ってこの場に来たことを再確認するとバラバラと階段を登ってくる音が聞こえ始める。

 

「きたか」

 

 腰を上げ階段からほんの少しだけ歩いたところにある踊り場に出る。

 

「だれだてめぇ」

 

 赤髪のバスケットマン須藤は石崎を見るなり啖呵を切った。どうやら既にかなり苛立っているらしい。

 

「別に誰でも良いだろ」

 

「こいつらまで使って呼び出しといて挨拶もなしってか?」

 

「何勘違いしてんだよ、馬鹿かお前。話があるのは小宮たちだっての、はっ、すまねぇ元Dクラスは学校から不良品の烙印を押されたカスばっかって話だったな」

 

 一瞬で頭に血を昇らせた須藤の顔に怒筋が浮かび上がり、拳を力ませる。

 

 本題に入る前にキレさせられるかもしれない、あと一押しだ。石崎は畳み掛ける。

 

「空条ってやつも可哀想だよな、本人がどんだけ優秀でもお前みたいな馬鹿がいるだけで足引っ張れてCクラスどまりだもんなぁ!」

 

「……ッ」

 

 成功を確信した石崎。

 

 だが、予想に反して須藤は拳を震わせつつも唇の端を噛んで耐えていた。

 

「…………話ってなんだよ」

 

 なぜか少し冷静さを取り戻した須藤の態度に困惑する石崎だが、それを悟られるわけにはいかない。焦る気持ちを内面に押しとどめ、嫌味な笑みを浮かべる。

 

「この2人がよ、お前が普段からバスケがちょっと上手いってだけで威張ってくるのが迷惑だって相談してきたんだよ」

 

「ああ? なんだよそれ、そんなの勝手な被害妄想じゃねえか! 俺の知ったことじゃないぜ!」

 

「そういう態度だろ? 必死に努力してる小宮たちを見下して悦にいってんだろ⁉︎」

 

「はぁ? 意味わかんねえよ。さして努力もしてねえそいつらが勝手に僻んでそう思ってるだけだろうが。んなことで練習時間割いてまで呼び出したのかよ」

 

「お、俺たちだって必死に練習している!」

 

「知らねーよんなこと。俺の邪魔すんじゃねぇ」

 

 須藤の主観では完全なとばっちりであった。かなりの苛立ちを覚えてはいるものの己のプライドを貶されるような話ではないと言い聞かせて冷静に努めようと試みている。

 

「付き合ってられっかよ、もう帰るぜ」

 

 須藤の様子に焦るDクラスの面々。

 

 失敗すれば自分達がどんな目に遭うか想像もしたくない。単純な煽りが効かなかった場合のためある程度煽る手段を話し合っていたこと実行に移す。

 

「だいたい、言うほどお前バスケ上手いのかよ」

 

「ああ? んだと?」

 

「1年生でレギュラー? 2年3年がよっぽど下手なだけでお前も大したことないじゃねえのかよ?」

 

「てめぇ」

 

「それとも、顧問に金払ってレギュラーの枠を買ったとかか? はは、笑えるぜ」

 

 怒筋が再び須藤の額に浮かび始めた。

 石崎が小宮に視線を送ると、カバンから一束のバッシュを取り出し石崎に手渡した。

 

「んでてめーが俺のバッシュ持ってんだ小宮ッ!」

 

「そんなに欲しけりゃくれてやる」

 

 石崎は須藤の顔面目掛けてバッシュを投げつける。

 

 須藤は避けようともせず、靴とはいえそこのかなり硬いバッシュを顔面に受けた。

 

 鈍い音と共に床に落ちるバッシュ。当たりどころが悪かったのか須藤の口の端が切れ血が流れている。

 

 須藤が床に落ちたバッシュに目をやると、見るも無惨に靴紐が切られている。

 

 自分の素行のことなら辛うじて堪えることはできた。しかし、真摯に向き合っているバスケに対しての数々の侮辱に対し須藤の中で何かが切れる音がした。

 

「おい、なんだよ拳握りしめて。まさか、殴るつもりか? はっ、良いぜやってみろよ」

 

 かかった。勝った。そう確信して石崎がダメ押しの一言を言い放つ。

 

 須藤は無言で拳を振り上げた。

 

 その目にはニヤリと笑う3人の表情は映っていない。

 

「待ちなッ!」

 

 須藤が拳を振り下ろすよりも早く、喧騒渦巻く教室ですら一瞬にして沈黙をもたらした凄まじい声量の一言が特別棟の廊下の端から端まで反響し伝わってゆく。

 

 そんな声を自分達が上がってきた階段から聞こえてきた4人は驚愕の表情を浮かべながら、視線を向ける。

 

 そこに立っていたのはもちろん、承太郎だ。

 

 須藤はこの場に承太郎がいるという純粋な驚きから、Dクラスの3人は計画の失敗をほぼ最悪の形で悟ってしまったことで唖然とした様子で承太郎を見て固まっている。

 

「随分と須藤を可愛がってくれたようだな」

 

「く、空条! どうしてお前がここに⁉︎」

 

「どうして? それはこっちのセリフだぜ。Dクラスの3人が寄ってたかって須藤に一体何をしているんだ?」

 

「そ、そんなことお前には関係ない……だろ」

 

 食ってかかった石崎だったが、計画の失敗と承太郎の迫力に気圧されて尻すぼみだ。

 

「失せなッ!」

 

 承太郎が一括すると怯えた3人は尻尾を巻いて逃げていった。

 

「空条……なんでここに」

 

 3人がさったあと、須藤はバツが悪そうに尋ねた。

 

「絡まれているてめーを見つけて跡をつけた」

 

「……そうか」

 

 須藤は自分の様子を見て先ほどのような事態になることを想定されていたのだなと、怒りを通り越して自己嫌悪する。

 

 何かしでかす。その点を信用されていたのだと。

 

「先に1つ言っておく。よくあそこまで耐えたじゃあねえか。最初に煽られた段階で手を出すんじゃあねえかとヒヤヒヤしたぜ」

 

 俯きがちだった須藤が耳を疑うように顔を上げた。

 

「須藤、今回の原因はなんだ?」

 

「あいつらが大した努力もしないで俺を妬んでふっかけてきやがったんだよ」

 

「やれやれだぜ」

 

 承太郎は須藤の返答に深くため息をつく。

 

「なぜお前が狙われた。偶然? いいや違うね『Cクラスで最も崩しやすいい生徒』あいつらがそう判断したから近づいてきた。そしてまんまと罠にかかったと言うわけだ」

 

 思い当たる節がある須藤は、何も言えなかった。

 

「だが、てめえが真摯に向き合っているバスケを貶されたんだ、手を出す気持ちは痛いほどわかる。俺とて場合によってはぶちのめしていただろうよ」

 

 承太郎は須藤をまっすぐ見据えた。

 

「とはいえ、てめえがバスケに本当に真摯に向き合っているというのなら手を出した後を考えるべきだ。あそこで手を出しては奴らの思うツボだぜ。奴らの狙いはなんだ?」

 

「狙いっつわれても……」

 

「可能性はいくつかあるが、停学及び退学。ポイントの支払い……どれも結果的にてめえから部活を奪うものになっただろう」

 

「……たしかに……そう、だよな。キレてそんなこと考えられてなかったぜ」

 

「バスケに明るいわけじゃあねえが、スポーツ全般安い挑発に乗る選手に未来はねえ」

 

「それは……」

 

 どれだけの技術が高かろうがファールやら反則を取られてしまっては勝負のフィールドに立つことすら許されない。

 

「何度も言うようでクドいが本当に護りたいモノが何か、考えるんだな」

 

 その後もお説教をされた須藤は精神を大きく削られたものの、承太郎の話に納得してしまったが故に複雑な心境であった。

 何よりも空条の話を大人しく聞いている自分に驚いたことは生涯誰にも語らないだろう。

 

「さて、須藤。いろいろ話したが俺は売られた喧嘩はきっちりと買う。やられたままなんてことはこの俺のプライドが許さねえぜ、しっかりとお礼しねえとなあ」

 

「……お前、さっきまでの話と……」

 

「場所を変える。行くぞ」

 

 承太郎は携帯を取り出し須藤の顔とバッシュを撮影して、歩き出した。

 

「お、おい、なんだよいきなり!」

 

「ちょ、待てよ」

 

 いきなり近距離で顔写真を撮られた須藤が若干照れながら抗議するのを無視して承太郎は歩いていく。そしてどこかに電話をかけた。

 

『これはこれは空条氏。間に合ったでござったか?』

 

 応答したのはCクラスの博士こと外村だ。

 

「ああ、助かったぜ」

 

『ほほう、それは何よりでござる。報酬を期待しても?』

 

「搾れるだけ搾ってみるぜ」

 

『オーキードーキー。ではでは、サラダバー』

 

 承太郎は須藤に一つ嘘をついていた。

 

 それは、偶然見つけて跡をつけていたということだ。

 

 承太郎は外村から携帯端末のフレンドGPS機能を聞いた段階から発想し、プログラミングができることを聞いて依頼をしていた。特定の人間が承太郎が敷地内を歩き回って作成した監視カメラのない危険エリアに入った際に自動でメールを送信し危険を通知するというものだ。

 

 特定の人間に該当しているのは三馬鹿と軽井沢などだ。

 

 そしてこの特別棟は危険エリアに該当しており須藤が入った段階で外村の自作PCから携帯にメールが送られてきていた。まだ校舎に残っていた承太郎は現場に急行したのだった。

 

 

 

 

 

 ——そして承太郎の自室。

 

 

 

「須藤、お前には少し酷だがいじめに遭ってもらう」

 

「は? どういうことだよ……ま、まさかボコ……」

 

 須藤は承太郎に殴られる未来を想像してゾッとし言葉を失った。

 

「今回のことをいじめとして学校側に訴える」

 

「あんなんでいじめになんねーだろ?」

 

 須藤の認識では殴り合いにこそ発展しなかったがただの喧嘩だ。

 

「それはお前次第だ須藤。お前が心身に苦痛を感じているかいないか、それが全てだ。そして、今後心身に苦痛を感じていることを表明する。それがお前の役割だ。協力してもらうぜ?」

 

「……俺もあいつらにはムカついてるし協力するってのは良いんだけどよ……ほんとにそんなことだけでやり返せんのかよ」

 

「リターンは未知数だが、必ずダメージは与えられる。ここは『学校』だからな」

 

 

 その後打ち合わせをし、二人は決戦を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

←To Be Continued




実は本作で一番強化されているのは博士だった件。

目をつぶってくれたまえ、ワトソンくん。

1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない

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