ジョジョの奇妙な教室 作:空条Q太郎
「失敗しただと?」
バブル時代のクラブを彷彿とさせる派手な作りのカラオケボックスで計画決行の報告を受けた龍園は眉を顰めた。前回よりも集まっているメンバーは多い。生徒たちの視線が3人に刺さっていた。
「ち、違うんです——「俺は言い訳が聞きたいんじゃねえぞ石崎。お前ら、一発ぐらいは殴られたんだろうな?」」
東京のチンピラが要求してくるような直角に腰を曲げ頭を下げている3人は重くなる雰囲気に冷や汗、いや脂汗を流した。
「そ、それは」
「す、すみません。殴られてないです」
小宮が言い淀むと即座に石崎が謝罪する。
龍園は舌打ちすると顎をしゃくる。すると、いつものようにサングラスをかけた後ろで手を組んでいた近衛兵アルベルトが前に出る。
「Bad boys」
「おい、顔はやめとけよ? 目立つからな」
頭を下げたままの3人はこれから起こる事柄を察し目を閉じて歯を食いしばる。それでも悶絶するような衝撃を腹部に受け一瞬体を浮かせたかと思えば、地面に倒れ込んだ。
「あ、ありがとう……ございます」
「ねえ、監視カメラなかったなら殴られたことぐらい偽装できるんじゃないの?」
「クク、伊吹、お前を送るべきだったのかもな。だがそれはもうできねえ」
「どうしてよ……ってあんたが答えるわけないわね」
「いいや? 今日は特別に教えてやるよ。状況によっては特別棟内で身内で殴り合っていりゃ偽装もできた。が、この間抜けどもは無傷の顔を晒してノコノコここまで逃げてきたわけだ。証拠で監視カメラの映像でも出されてみろ、虚偽申告をしたって一発カウンターKOモンになりかねねぇ」
「なるほどね」
「てめえらの言い訳になんざ毛程も興味はねえが、今後のためだ。何があったかありのままを経験したまま話せ」
石崎たちは恐る恐ることの経緯を龍園に報告した。
説明を終えるとすっかりと場は静まり返っていた。そこに、龍園の陰湿な笑い声がこだまする。
「偶然見つけてつけてきたか? ククク、いいや、あのデカブツ、クラスメイトを監視してやがったのか? 宣戦布告からずっと? そんな非効率なことは流石にしちゃいねぇだろうが……ククク、ハハハハハハハッ、最高だぜ空条承太郎」
「そんなタイミングよく……ありえないでしょ。漫画じゃあるまいし。あんたたちつけられてたんじゃないの?」
「少なくとも俺が4階で待っていた時はいなかったし、須藤を呼び出してからも物音ひとつしなかった! 本当です龍園さん! あの野郎いつの間にか後ろにいて……す、須藤も固まってたからあいつが呼んだってこともないと思うんですけど」
伊吹に過失を追求され、焦って食い気味に弁明する。
「一番可能性が高いのはソレだ。が、大前提として部活もしてねえ空条が体育館周辺にいるなんてことがあるか? ケヤキモールに行くったって逆サイドだ」
「じゃああんたの言う通りクラスメイト使って監視させてたとか?」
「さあな、これは考えても仕方ねえ。結果、空条に止められた。重要なのはそれだけだ」
「まあ、そうね」
「にしても伊吹、普段愛想ねえお前が空条の話題になるとやたら口を挟んでくるな。惚れてんのか?」
「は? バカも休み休み言って。アルベルトが寸止めで怖気付いたってのに興味あるだけ」
「クク、そりゃ残念。ハニートラップでも試そうかと思ったんだがな」
伊吹がハニートラップを仕掛ける姿を想像してクスリと笑った石崎の腹に伊吹の手加減の全くない強烈な蹴りが刺さり、地面をのたうち回る。
内心笑いかけていた小宮たちは石崎という尊い犠牲のおかげで真一文字に口をつぐんだ。
「おい、いつまで腹押さえてやがる。空条にはどこまで知られてんだ」
「すみません。わかりません……急に止めに入ってきたんで終始監視されてたってことはないと思うんすけど」
「だからバカなんだよお前は」
石崎はアルベルトからもう一発ありがたい右ストレートを受ける。
「あの階段を駆け上がってきたら、ソレもあの巨体が走ってきたら普通は足音の反響音で気づくだろ。ソレがなかったんなら最初から見られている可能性を考慮しやがれ」
「す、すみません」
「おい、石崎と小宮をもう2、3発ヤっとけ。それから、今回の件学校側に何か聞かれたら下手に言い訳せず認めとけ」
アルベルトに言い残すと龍園は退室した。
「ちっ……バッシュがネックだな……いや、ソレ以前の問題か。ククク、今回はしてやられたってわけだ」
龍園は己の詰めの甘さを痛感しながら、実行に至るまでの反省を行う。
「だがな、勝者ってのは最後に立ってる奴のことを言うんだぜ」
己の信念を呟いた龍園の瞳は到底敗北者とは思えないほどギラついている。
そしてそのまま喧騒の中へと消えていった。
キングクリムゾンッ!
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——7月1日 生徒会室
「それではこれより、1年Cクラス須藤くんに対するいじめ——重大事案に関する事実確認を生徒会及び事件の関係者、担任の先生方を交え審議をとりおこないたいと思います。進行は、生徒会書記、橘が務めます。見届け人として生徒会長堀北が同席します。よろしくお願いします」
お団子頭が特徴的な小柄な女子生徒、橘が見通しを伝え審議内容を確認していく。
「訴えは1年Cクラス、須藤くんからです。同じバスケ部に所属されている1年Dクラス小宮くん、近藤くんに練習前に話があると呼び出され、特別棟の4階に向かいそこで同じくDクラス所属の石崎くんが待っていた。ここまでに双方異議はありますか?」
関係する生徒たちが首を横に振り、進行を促す。
「次に、須藤くんに対して石崎くんから『バカ』など罵りクラス配置のことや部活動のことに関し彼の名誉や人権を犯す発言を行い、須藤くんのバッシュを顔面に投げつけ怪我を負わせた。この点はいかがですか?」
「間違いねぇぜ。ご丁寧に靴紐まで切ってあったしよ」
席に腰を下ろしたまま、須藤は冷静に答える。
Dクラスの生徒も異議を申し立てることはなかった。
そんな中1人の男が挙手し、名を呼ばれてから発言した。
「いかがしましたか坂上先生」
「随分と曖昧な表現でしたが、彼らの発言について照らし合わせる必要はあるでしょう。生徒たちも反省はしている様子、本当に重大事案に該当するのかそれを確かめる必要もあるのではないですか?」
自分のクラスを擁護するような発言だが、証拠が無ければ相手方の要求を鵜呑みにすることも無い。
「おいおいおいおい、坂上センセー。あんた、何か? 聖職者たる教師でありながら重大事案——いじめの範囲って奴すら知らねえとでも言う気か?」
「な、なんだね君、それが教師に対する口の聞き方かね。大体、発言も許可——「そいつらの発言がどうであれ須藤の心は深く傷つき、怪我まで負わされている。これがいじめでなくなんになるんだって? ええ⁉︎」
「な……大体彼の素行は日頃から目に余るものがあるそうじゃないか」
「全く……やれやれだぜ。いじめは誰にでも起こりうる問題、確かそれが教師の基本認識のはずなんだがな。おかしな話だぜ」
「空条、そこまでだ。次に許可なく発言した場合は退席してもらう。坂上先生、本件は看過することのできない重大案件である事はCクラスから提出された音声データおよび現場写真からも明らかです。速やかに事実確認を終え、然るべき処理を行います」
理詰めしていく承太郎に堀北生徒会長が待ったをかけた。
証拠の提出があったとは露知らず地雷を踏み抜いた坂上先生は窮地を脱したと胸を撫で下ろした。
「そ、そうでしたか。これは失礼した」
これでCクラスサイドの訴えは認められることが確定し、状況の細かい把握へと段階が移る。
ちなみに音声データとは承太郎が携帯で録音していたものだ。
「石崎くんはバスケ部ではありませんね。直接須藤くんと関わることもなかったと聞き及んでいますが、なぜ現場に立ち会っていたのでしょうか」
「お——私は、バスケ部の2人が須藤くんから試合中にパスを回してもらえなかったり、高圧的な態度を取られていると相談され、自分達からは言い出しにくいからと代弁を頼まれていました。そして、日頃の仕返しをと考えていた2人の意を汲んであのような言動をとってしまいました。今は行き過ぎていたと反省しています」
「Dクラスのお2人もこの内容に間違いはありませんか」
「「ありません」」
「では、次に須藤くんにお聞きします。試合や態度について触れられていましたが、そのことについて何かありますか?」
「試合はあい——小宮たちがいる位置がわる——いる所じゃカットされると思って出してなかっただ——です。態度は、いつも小言言われてムカついてたのは事実——です」
身の丈に合わない、辿々しい敬語(笑)を使い言葉を紡ぐ須藤。
その様子を池や山内が見ればおそらく笑っていただろうが、何とか場に相応しくあろうとする彼を笑うものはこの場にはいない。
「分かりました。次はトレーニングシューズについてですが——」
その後も今回の一件に関することを事細かに確認していく橘。その多くは両者共に認めており、Dクラスの面々は隙あらば反省しているという旨を述べている。
話を聞き終えると橘書記と堀北生徒会長がしばらく決議について話し合う時間を設けた。
今回は示談にならなかったため、学校のルールに基づいた対応がなされるとの事だ。
「お待たせ致しました。それでは、審議の結果を言い渡したいと思います」
一同がごくりと喉を鳴らすなか、承太郎だけはいつもの彫刻顔だ。
「本件は重大事案に該当すると認めます。また、呼び出しを行う、無断で所有物を持ち出し破損させ使用するなど計画的な面が見られ悪質な行為であることを鑑み、加害側であるDクラスに対して50クラスポイントをCクラスへ譲渡、及び名誉毀損、傷害に該当する行為を行った石崎くんに1ヶ月。器物損壊に該当する行為を行った小宮くんに対し3週間、近藤くんに2週間の停学処分を行います。また、Dクラス3名のプライベートポイントの没収及び監督不行き届き等で学校から須藤くんに対し30万プライベートポイントの賠償を行います。また、個人情報保護の観点から本審議会の内容を口外することは固く禁じます。以上です」
言い渡される判決に苦渋に満ちた表情をする石崎たち。それに対して坂上先生はというと、妥当な制裁と受け止めたのか静かに目を閉じていた。
学校のルールに則った対応という以上、今までにもこの手の判決を見聞きしてきているのだろう。
仮に異議があれば先ほどのように申し立てているはずだ。
それを行わないということが、生徒たちにもこれが妥当な判決なのだということを物語っていた。
審議会終了後の廊下。明らかにテンションの高い須藤と平常運転の承太郎、そしてやや微笑んでいるように見える茶柱先生がいた。
「よくやった空条、これでお前たちは今月からBクラスに昇格することになるだろう」
「よくやった? 俺はアンタに褒められるためにやっているわけじゃあないぜ。アンタはアンタの仕事をきっちりとやることに専念しな」
依然として茶柱先生を信用していない承太郎は一蹴して帰路に着く。
「にしてもよ、マジでこんな結果になるなんて思ってなかったぜ! な! おい!」
勝手に隣を歩く須藤は判決に面食らっていたものの現実に戻ってからかなり賑やかで到底心身に傷を負っている生徒には見えない。
「この際だからもう一度言わせてもらう。お前の弱点は短気さ。そして今わかった『すぐに調子に乗る所』だ。せいぜい努力して克服するんだな」
「お、おう……」
「やれやれだぜ」
どこまでも冷静な承太郎に圧倒された須藤は、足を止めるがすぐに我に帰ると追いかける。
「待て、空条」
生徒会室の方向から聞こえてきた、声の主は承太郎の渋さから学生とは思えない声に対し、重低音とも言えるだろう声質から学生とは思えない凄みを放つメガネの生徒。生徒会長堀北学だ。
当然聞き覚えのある声に二人は足を止める。
「須藤だったな、悪いが君は席を外してくれ」
承太郎に視線を送った須藤は、頷きを返されたため渋々先に部活へ向かうことにした。
「ほんと助かったぜ空条」
溌剌とした笑みを浮かべ去っていった。
「今回の審議会、一部の隙もなかったように思う。事前の見通し、証拠集めから切り返し、見事だ。Dクラスが素直に認めたことで手札を切るタイミングは失ったようだがな」
実際、最高のケースとして承太郎が考えていた作戦は石崎たちが暴言や傷害を否認したタイミングで証拠を突き出し絞れる額を限界まで引き上げるという作戦だったが、龍園がただのバトルジャンキーではないことが今回の一件で理解できたことを手土産にすることにしていた。
「用がねえなら帰らせてもらうぜ」
「生徒会に来い。空条承太郎」
生徒会長が力強く言い放ったタイミングで、書記の橘が生徒会室から出て来て目を見開いている。想定外だったようだ。
緊張感のある間が一瞬、場を制圧するが承太郎の一言であっという間に霧散する。
「断る」
「なぜだ?」
「俺は運営側に回るつもりはこれっぽっちもねえ。それだけだ」
「ええ⁉︎断るんですか⁉︎会長直々にスカウトなんて初めてのこと何ですよ⁉︎」
「——そうか。生徒会はいつでも門を開いている。覚えておいてくれ」
状況について行けていない橘書記を残し、二人は背を向け歩き出したのだった。
よう実の予告にあった発言は設定としてと入れていく部分もある予定です。高円寺や伊吹はどこかでだしてえなあ。
南雲パイセンが予告かませ犬すぎてなんかもう…なんかもう(がはま語彙)
1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない
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堀北
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櫛田
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軽井沢
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佐倉
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一之瀬
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坂柳
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神室
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伊吹
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茶柱
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真鍋
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西野