ジョジョの奇妙な教室 作:空条Q太郎
ありがたいことに先の展開に関わる内容が増えてきましたので、ネタバレ予防のために一旦返信を停止します。
全て読ませていただき励みにさせていただいています。
今後もよろしくお願いします。
大事なことだから二度は言わないぜ。無人島はアニメ版の設定を取り込んでいくつもりです。
あと、船に坂柳が来ています。ここ重要改変ですがご容赦を。
無人島に行こう その①
無人島に行こう その①
「遅刻している者はいないようだな。早速だが学期末試験の結果を発表する」
もういくつ寝ると夏休み。ココロオドル学生のみに許されたビックイベントを目前に退学をかけた試練が立ち塞がる。今日はその結果発表日だ。
己の進退がかかっている試験だけあって、『勉強してない』なんて嘯く生徒はおらず、三馬鹿すらも堀北の指導のもと真剣に取り組んでいた。
松下や綾小路など周囲に本気で頑張ってみるなど宣言する面々がおり、それぞれの所属グループに良い刺激を与えていたこともある。
茶柱先生は例の筒から用紙を取り出すと黒板に貼り出す。
「よくやった。今回も退学者は0だ」
「うっし!」
茶柱先生の言葉に須藤は盛大にガッツポーズをとった。他の生徒たちも安堵し表情が和らぐ。
全教科の成績が張り出されているのを全員が一教科ずつ目を通して行く。全教科同率1位に承太郎と高円寺が名を連ね、平均90点越えに幸村や堀北など、綾小路は85〜87点に収まっていた。
松下はというと少しずつ本領を発揮して行く算段のようで今回は75〜80点程度に加減をしている。
「松下さんスゴいじゃん」
「今回がんばったからね〜。結果出て良かったよ」
同グループの軽井沢が振り返り話しかけている。同時に堀北も訝し気な視線を綾小路に向けていた。
「さて、試験前に伝えた通りお前たちは無事に夏休みのバカンスを獲得できたというわけだ。喜べ? 平均年収程度の財力ではよほどの覚悟がなければできない体験だ。それに無料で参加できるんだからな」
茶柱先生の言葉に教室が揺れる。男子の発狂に普段なら引く女子だが今回ばかりは女子も声を出して喜んでいるものが多い。
日程的には夏休みの3分の1以上の拘束日数があるが豪華客船での無人島リゾートツアーといわれれば文句を言う生徒は少ない。
これで文句を言うのは外出そのものを嫌う千葉愛に溢れたひきぼっちぐらいなものだ。
「まぁ落ち着け。客船は4人一部屋になっている、このホームルームの間に決まらなければ各グループごとに教室後方に掲示しておく用紙に記入する様に」
茶柱先生の説明を受けて挙手する生徒が1人。それも承太郎でもなければ平田でも無い。もちろん綾小路や高円寺でもない。
山内だ。
茶柱に当てられると山内は立ち上がる。
「男女混合はありですか⁉︎」
場が凍りついた事が気にならないのか気づいていないのか山内は茶柱先生をまっすぐ見て返事を待つ。
「……無しだ」
「……まじか」
男子たちからガヤが飛びなんとか場の雰囲気が回復したところで手を挙げる生徒がもう1人。
同じように指名されると彼は立ち上がる。誰であろう承太郎だ。
「バカンスとやらの中で
「愚問だ。ハメを外してやらかすなどいくらでも可能性はある」
「生徒が問題を起こす場合を除いて、っていうのはどうだ?」
「何が言いたい?」
茶柱先生は確信した答えを持ちながらあえて空条に口にさせるように促す。
実際多くの生徒は現段階では承太郎の質問の意図が見えていなかった。
「俺は
定期試験と生活態度以外に気を張っていなかった生徒たちが息を呑んだ。
「しかし、長期休暇にわざわざ学校側が設定したバカンス。何か仕掛けてくる、そう思うのは自然なことじゃあねえか?」
「面白い仮説だ。確かに修学旅行ですらいちおう学習目的が存在する。学校側が設定するものは全てにそれがある。これ以上は話す事はできない」
床が揺れるほどの熱気を帯びていたとは思えないほどの緊張感に包まれる教室には、物音を立てれば隅から隅まで響くのでは無いかというくらいの静寂が降りていた。
「だが、バカンスはある。その点は素直に喜んで楽しめよ? 本当に豪華だからな」
他に質問がないことを確認して茶柱先生は教室の隅にもたれ腕を組む。
それを合図に生徒たちはルームメイト獲得戦を開戦する。
軽井沢グループの様に一瞬で決まるグループがある中、席から動こうともしない生徒もちらほらと居る。
「なぁ空条、良かったらどうだ?」
綾小路は振り向いて後ろの席に居る承太郎を誘う。
「構わねえぜ」
「俺もいいか?」
ふたりの会話に近づき入ってきたのは幸村だ。ふたりは了承すると頷きを返す。
残り1人となり周りを見るとほとんどの生徒は既に4人で固まり用紙に記入しに行っている。
「後1人どうする?」
「見る限り残ってしまったひとりに入ってもらう形になるんじゃないか?」
承太郎の協力者こと外村は三馬鹿と、平田は沖谷たちと組んだようだ。
「となると……まぁ、そうなるか」
「だな」
3人の視線は手鏡を見ながら櫛で髪を入念に整える高円寺にとまった。
他の面々が記入し終え最後に回ってきた用紙に3人がサインすると承太郎が高円寺の元まで渡しに行く。
「書きな」
「おやおや、静かに過ごせそうな顔ぶれだね。安心したよ、私の休暇を邪魔する事はギルティだからねえ」
高円寺は相変わらずの態度だが、用紙を受け取ると素直に名前を書いた。
「それにしても承太郎、随分と手駒を増やしている様じゃあないか」
どこから知ったのか、はたまた人間離れした観察眼で承太郎に対する態度などからそう予測したのか高円寺は自信満々に言い切った。
承太郎としても否定したり聞き返したりはしない。
時間の無駄と理解しているからだ。
「協力する、そういう関係だ。駒じゃあないぜ」
「これは失礼、言い方を違えたかな。私としてはAだのDだの誤差でしかないがポイントが増える分にはなんの問題もないからねえ」
個人戦では承太郎に張り合っている節があるが試験では両者満点が基本のため一切決着がつく気配はない。
「お前が貢献すればより増えると思うがな」
「フハハ、私は私の心向くままさ。私を動かすに足る条件を提示できる者などそうはいないからねえ」
「……やれやれだぜ」
高円寺との会話を切り上げるとそろそろ1限目が始まるため席につき始めた生徒たちの波に逆行して承太郎は教壇に立った。
承太郎の行動を見て教室中の視線は自然と集まり、声を張らなくても全員に聞こえるほどの静けさに包まれた。
「次のバカンスは十中八九ポイントの関わるものになるだろう。仮に特別試験とでも呼ぼうか、そして学力だけが求められた試験とは一線を画すものになるんじゃあないかと思っている」
「今までよりも直接的な対決になるかもしれないと言うことだよね?」
平田は即座に質問という形をとり、クラスメイト全員の理解を促す。承太郎はそれに答えて続けた。
「前にも話したが意見のある奴が表明し、その上で方針を決めるってのが理想だと俺は考えている。なぜならば『納得』は全てに優先されるものだと考えているからだ。納得がいかねえことに全力を尽くすってのはかなり精神を削るし、得てして全力を出せねえ」
しんとした空気の中クラスメイトは承太郎の話を聞き、須藤に至ってはメモを取っている。
「その上で、矛盾したことを言うが協議している時間のない抜き差しならねえ事態って奴があるのも事実だ。特別試験でも瞬間の判断を求められる場合があるだろう。その時が来れば俺は勝利に必要ならば独断で動くぜ」
若干の動揺から漏れる声で教室がざわめく。とはいえ、承太郎ならば大丈夫ではないかと思わせてくれる実績と纏うオーラ故に頭ごなしに否定してくる輩はいない。
「まぁ俺らがBクラスまで上がれたのは空条がいたからって感じもあるし別にいいんだけどさ、勝手にやって失敗したらどうすんだよ?」
こういう時の池は強い。クラスの総意を代弁する。
「『正しい』と信じて行動し、結果クラスをマズい状況に追い込む様な事があれば当然取れるだけの責任は取る。賠償か非干渉か退学か、俺が勝手にやった事だからな。そいつは当然の義務だ」
「た、退学ってそこまでしなくても」
承太郎の覚悟にたじろぐ池をよそに承太郎は続ける。
「Aで卒業する。そのために自分の信じた道を歩く、それだけだぜ」
揺らぐことのない自信。明らかにそれは過去の積み重ねから来るものであり、多くの生徒には眩しいとさえ思わせている。
承太郎の宣言を待ってましたと歓喜する者、流れに身を任す者は居ても現段階では疑う者など居なかった。
Dクラスという肥沃だが荒れ果てた畑に植えられた種たちは、承太郎という圧倒的なエネルギーを放つ太陽に照らされ、Aクラスという目標に向けて発芽し始めている。
Aクラスを射程距離圏内に感じられることで仮にDクラスのままであれば纏まる事は絶望的だとも言えたであろうクラスが承太郎を中心に纏まりつつある。
しかし、光が強ければ強いほど陰は濃く、深くなるのもまた世の常であった。
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「うおおおおおお! 最高だああああああああああああああ!!」
常夏の海。広がる青空の下で池寛治が豪華客船のデッキから高らかに両手を挙げ叫ぶ声が響き渡る。それはかなりの声量で多くの生徒がいるデッキの1つ上にある展望デッキに向かう承太郎の耳にも届くほどだった。
馬鹿でかい声を上げた池を誰かが責めると言うこともなく、一面に広がる海の大きさからくる開放感にあてられ大らかだ。
普段ならすぐに食ってかかっていたであろう軽井沢たちも真横で絶景に感動している。
無理もない。オフシーズンでも数十万の費用がかかる豪華客船に無料でそれも二週間。レストランやシアター、プールやスパに至るまで全て無料での利用が可能と来た。これに感動しないのは一般人には無理というものだ。
一週間は無人島でのペンション生活。残りはクルージング。
前者はBクラスは試験が用意されている可能性が高いと覚悟してきているが、それでも残り一週間は正真正銘のバカンスがついていると期待している。
朝5時に集合したとは思えないハイテンションでじき到着というところまで進んできている。目的地は学校所有の南の島、無人島だ。
承太郎は程なくして展望デッキに到着した。
少し開けた空間にリゾートプールなどに設置されている横になれるタイプのベンチが6つ設置されていた。人影は一つ。
ベンチに横になり、透き通る緑色の美しいドリンクを片手に日光浴をしている高円寺だ。相変わらずブーメランタイプの水着を着用している。
「太平洋の真ん中でライトアップされる私。実に美しい」
「北西の間違いだぜ」
「フハハ承太郎、君もナンセンスなことを言うのだね。地理なんてものは問題ではないのだよ。私がここにいる、それが全てさ。それにしてもこんな時にも学生服を着るとは君も相変わらずのようだ」
皆が衣替えし夏服に袖を通す中、承太郎はいまだにジャケットをきっちりと着ている。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。間も無く島が見えて参ります。しばらくの間、非常に意義ある景色をご覧いただけるでしょう』
奇妙な放送に従い多くの生徒がデッキに集まるが、放送に従っているので承太郎たちがいる展望デッキには誰も来なかった。
「始まったようだな」
「君が熱を上げている抗争には興味はないが、どれほどの自然が待っているのか多少は期待ができる。フハハ、自然と私の対話。この学校ではできないと思っていたがなかなか学校もわかっているじゃあないか」
どこまでも自分を中心に据えて話をする高円寺を無視し、承太郎は水平線から姿を現した島を見遣る。
島がはっきりと肉眼で確認できると瞬く間に距離が詰まって行き、生徒たちの熱気と興奮も高まって行く。
桟橋をスルーすると島の周りをぐるりと高速で回り始める。面積約0.5平方km、最高標高230m。承太郎たちは無言で島の全貌を観察した。
「期待はずれもいいところだね。アマゾンの密林でサバイバルをした私たちからすれば開墾された島なんてテーマパークも同然とは思わないかい?」
「嫌なこと思い出させるんじゃあないぜ。俺はあれを機にジジイとは二度と飛行機に乗らんと決めたんだ」
「今となっては良い経験だよ。確かに、初めて生命の危機を感じたものだがね」
よう実次回予告毎回楽しみにしていたQ太郎でした
1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない
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堀北
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櫛田
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軽井沢
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佐倉
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一之瀬
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坂柳
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神室
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伊吹
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茶柱
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真鍋
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西野