ジョジョの奇妙な教室 作:空条Q太郎
悪しからず
無人島へ行こう その③
龍園が坂上先生からマニュアルを受け取るとほぼ同時刻、承太郎もまた茶柱先生から鈍器になりうる分厚さのマニュアルを受け取ると目を通し始めた。
他のBクラスの面々は茶柱先生先生からの追加ルール説明に傾聴している。
綾小路も承太郎の横に立ち、マニュアル内容を確認している。
その様子を窺っている松下だが、指示があるまでは待とうと決めて説明に集中することにした。
「先生、わりぃんだけどさトイレってどこにあるんすか?」
下船時に済ませておくようにアナウンスが流れていたが、須藤は聞いていなかったらしい。
茶柱先生がクラスに一つ配布される簡易トイレを取り出すと場が凍りついた。
「もしかして、私たちもそれを使うんですか⁉︎」
驚愕を通り過ぎて怒気を孕んだ声を上げたのは軽井沢グループの篠原だ。
篠原は物事をはっきりと言う性分で、彼女自身一定の支持を集めている。
篠原の叫びに茶柱先生は男女兼用で災害時に使用される優れものだとだけ返したのだが、それが呼び水になり篠原のボルテージが上がって行く。
しかし、多くの女子は篠原に同意見のため止めることもせず、櫛田、平田も無理に抑え込む事はできないと静観している。
「トイレくらいそれで我慢しようぜ。揉めるような事じゃないだろ篠原」
「ふざけないで! 男子には関係ないでしょ! 段ボールのトイレなんて絶対無理だから!」
茶柱先生に向いていた篠原の矛先が池の発言により男子に向いてしまう。
それにより不毛な言い争いが始まってしまう。
段々と試験内容から逸脱し、単なる誹謗中傷へと発展して行く最中、呆れ混じりに見守る茶柱先生の元に承太郎が向かい話をしていることに気が付いていたのは綾小路を含めて数人だった。
「おい、お前たち今はそんな事で言い争っている場合じゃないだろ? まずはルールをだな「あんたは黙ってて!」——っな……」
冷静に状況を判断し、白熱して行く池VS篠原を止めようと始めに動いた幸村は篠原に撃退されてしまう。
明らかに冷静さを失っている渦中の二人はしばらく落ち着きそうもない。
今まできっかけがなかっただけで相容れることがなかっただけで、互いに積もり積もった不満もある。それに引火してしまっていたのだ。
尚も続く言い合いの最中、承太郎は必要なくなったマニュアルを平田に手渡しとあるページを開かせた。
「これは……」
「俺はアイツらを止めるつもりはねえ。せっかくの機会、膿は出し切っておいて損はないからだ。だが、お前が止めると言うのなら俺はそれを止めやしねえ」
平田が視線を落とした先にはポイントを消費して購入することのできる物品が一覧になっており、仮設トイレのあるページだった。
平田は承太郎を見て静かに頷くと声を張る。
「ちょっといいかな? マニュアルの中にポイントを使って購入できる商品の中に仮設トイレがあるんだ」
「それ絶対いる! ……っていうか、ほんとはそれも嫌だけどダンボールよりは全然良い!」
写真付きのマニュアルのため、一部女子が平田の元に殺到する。
「平田、ポイントっていくら必要になるんだ?」
「えっと……20ポイントだね」
幸村の質問に少し弱々しく返した平田自身、20というポイントの額がまた物議を呼ぶだろう事を察していたのだろう。
「は⁉︎20⁉︎いやいやいや、もうちょっとで俺たちAクラスなんだぜ? 我慢しようぜそれくらい」
池の長所でもあり短所でもある声のデカさが悪い方に働く。
「あんたが決める事じゃないでしょ、大体あんたみたいなバカに何がわかるのよ」
「今そんな事カンケーないだろ! だいたいさっきからカンケーない事ばっか言いやがって。女子のそーゆーとこマジで意味わかんないぜ!」
派出所勤務の警官と婦警のように睨み合いいがみ合うふたり。
「いいから落ち着けよッ!」
口数の少ない幸村が普段からは想像できない叫びをあげる。
「やっかみあってる場合じゃないだろ。まず第一にポイントは個人の判断で使うのは良くない。決を取るべきだ」
「そうだね」
平田はせっかくできた流れを切らないよう合いの手を入れることに専念し始めた。
「茶柱先生、野外で用をたせばペナルティがありますよね?」
「当たり前だ」
「それに加えて、体調不良者が出れば30の損失。無理な節約は1週間、全員が健康維持して行くことに支障が出るんじゃないか?」
「1人でも体調不良者が出たらそれだけでかなりの痛手になるね」
「はっきり言うと、俺は池と同じ意見だ」
「だよな! ほらみろし——「だが、目的は1でも多くポイントを残す事だと思う。必要経費は払うべきなんじゃないだろうか。女子の肩を持つわけじゃないが、トイレやシャワーは衛生管理的に購入を検討してもいいんじゃないか?」」
もし、クラスのポイントが0であれば、承太郎と出会っていなければ幸村は池に加勢し真っ向から戦っていた事だろう。
しかし、現状のクラスポイントと承太郎に感化された彼は早くも殻を破りつつあった。
女子サイドには当然異論などない。
池と共に戦っていた男子は釈然としない様子だが頭では理解できたのか渋々引き下がった。
幸村は彼らをケアできるほど器用ではないし関わりもない。
そこを担うのは櫛田桔梗だ。
すぐに池たちに駆け寄るとポイントを残そうとクラスのことを思ってくれてたんだよねと共感を示しながら愛想を振りまいていく。
池と篠原の間にかなりの亀裂を残しながらも、トイレ事変は幕を下ろした。
次の演目と言わんばかりに茶柱先生が追加ルールについての解説を始めていく。
「なぁ堀北、お前はこの試験どう思う?」
話がひと段落した段階で綾小路が隣にいた堀北に声をかけた。
「方針の事なら幸村くんと同じよ。Aクラスでの卒業の可能性を高めるには1ポイントでも多く残す事が先決。誰だってそう考えるんじゃないの? あなたは?」
「概ね同意見だ」
「妙な言い方ね。何かあるならはっきり言いなさい。気持ち悪いわ」
「それは含みがあることに対しての気持ち悪いだよな?」
「そんなことより、私は今回の試験では役に立てそうもないわね」
「おい、話をそらすなよ。気になるだろ」
男として気になる点を追求しようとする綾小路だが堀北だけでなく周りにも見放されたのか葛城率いるA、一之瀬率いるCクラスが動き出したことにより喧騒に巻き込まれ真相を聞く機会も掻き消えた。
スタートダッシュで遅れまいと焦りが伝播するのを悟った平田が日陰へ移動することを提案してBクラスも森の中へと入っていった。
「こんな森、入って大丈夫かよ……」
ビックマウス山内が珍しく弱気だが無理もない。木々は生い茂り霧が立っているわけでもないのに少し奥は暗がりになり見通しが悪い。
緊急時には助けが来る腕時計をしているとはいえ、アウトドアに慣れていない生徒からすれば恐怖でしかないだろう。
「それにしても凄いね空条くん」
「平田くんも最初は戸惑ってたけど、結局テント2つとも持ってるんだもんね」
平田がかなりの重さのあるテントを重そうに持ち上げているのを見て、承太郎は既に片手にテントを一つ持っていたにも関わらず「貸しな」とまるでスクールバックを担ぐように軽々と持ち上げる歩いていったのだ。
須藤が俺も持つぜと声を掛けていたが、別のトイレや配布物を持つよう伝え共に先頭集団を歩いていた。
須藤は承太郎に認められたいのか、肉体派が活躍できそうな内容を聞いて張り切っていた。
その少し後ろを歩く集団のさらに後ろ、綾小路と堀北は最後尾にいた。
「凄いわね、彼」
「プロレスラー並み、いやそれ以上のパワーかもな」
「あなたはクラスのために荷物持ち程度の貢献をしようとは思わないの?」
「いや、あの重量を担いであんなペースで歩くのは無理だろ」
「そう、あなたも役立たずね」
「さっきから随分と憂鬱そうだな」
「ええ、こういうのは私向きじゃないもの。島での原始的な生活も、1人じゃないところもね」
「えらく弱気だな」
綾小路には心なしか堀北の顔色は優れていないように見えた。
気が滅入った故かはたまた。
「少なくとも私が初めは軽んじていた須藤くんの方が荷物を持っている分役に立っているわ」
「気にしすぎだろ」
自己肯定感が著しく低下している堀北を適当に慰めつつ歩くと先頭集団が開けた場所を見つけたらしく一旦休憩となった。
「これからどうするんだー?」
池が全体に呼びかけると承太郎が立ち上がった。
「ちょいと歩くが北に洞窟がある。まずはそこを目指す」
「ど、洞窟⁉︎」
どうしてそんな事がわかるんだという疑問の声に船から見えていただろうと当然のように答える承太郎に一同が引いている。
「洞窟なら雨風凌そうだし最高じゃん」
「スポットもあったりしてな!」
探検家気分の男子生徒たちのテンションが上がり、全体として明るい雰囲気に包まれつつある。
「そこんとこなんだかな、既に高円寺を先行させてスポットがあるならば占有させているぜ。勝手なことをしたようで悪いが、時間がなかったんでね」
「こ、高円寺が⁉︎」
「あいつがクラスのために動いたのかよ⁉︎」
「あの高円寺くんが⁉︎」
クラスメイトの反応からどれだけ自由人として認知されているのかがよく分かる。
「空条、どうやってあいつ動かしたんだよ」
素朴な疑問を口にしたのは須藤だ。
「頼んだ、それだけだ」
「マジかよ」
時は遡りトイレ事変が始まった頃
承太郎は高円寺に話しかけていた。
「高円寺、ひとつ俺に貸しを作るってのはどうだ?」
「フハハハハ、GOOD。しかし承太郎、そのカードは3年間で切れるのは一度だけだ。先の長いこの状況で切るのは得策ではないと、親友として忠告しておこう」
「今後直接的に
力強い承太郎の眼差しが高円寺を貫く。
「いいだろう、他でもない君からの頼みだ引き受けようじゃあないか。条件は
「それで良い。しっかりと働いて貰うぜ」
「働く? non non、私の興味が赴いた先に向かった結果、クラスにも恩恵があるだけなのだから。私は私の意志によって過ごさせて貰うよ」
「……やれやれだぜ。最低限、要所を抑えるのならそれで良い」
「交渉には高円寺六助の名を掛けて応えようとも」
承太郎は宣言を聞き、茶柱にリーダーを高円寺にすると伝え、直ぐにカードを受け取りマニュアルに付属していた地図とペンと共に高円寺に手渡した。
そして現在に至る。
5分後に出発することだけが決まり、各々足を休める事になり休憩に入る。
一部の生徒は承太郎の独断に困惑していたが以前の宣言と承太郎の実績を鑑みて後には納得していた。
「堀北、顔色が優れねえようだな。無理にペースを合わせる必要はない、ゆっくり洞窟を目指すと良い」
突然承太郎に話しかけられた堀北は困惑した。
横にいた綾小路も承太郎が訪れた事には少し驚いていた。
「そ、そんな事ないわ。それに迷惑はかけられない」
堀北は動揺しながらも返すが、承太郎はそれを無視して右手を堀北の額に当てた。
伸びてきた手に思わず目を閉じた堀北は、その感覚にびっくりして目を開けた。
「な、なにを」
「37度2分といったところか。さっき迷惑がどうとか言っていたな? 迷惑というのなら、リタイアすることのないように体力を温存するんだな。綾小路、洞窟までの道のりはわかるな? 堀北はお前が連れて来な」
「了解した」
「ちょっと、綾小路くんまで」
「ただ休むだけで引けば良いが、引かなければ薬も必要になるだろうな。まぁ、回復に努めてくれ」
「……あなたに心配される日が来るなんて」
「本当にお前は俺をなんだと思っているんだ……」
承太郎が去ると堀北が一段と強く綾小路を睨みつけるが、体調不良ゆえに迫力に欠ける。
「あなたいつから空条くんと話すようになったの? それに洞窟への道のりにしても……」
「浜辺にいた時に教えてもらったんだよ」
「だとしても道のりなんてすぐにわかるものじゃないでしょう」
「ボーイスカウトをやってたから森とか方角には強いんだ」
「また適当な事ばかり言うのね」
「ボーイスカウトと空手とピアノだけだぞ?」
「またひとつ増えてるわ」
「まあなんにせよ。お前は体調管理に努めるんだな。そろそろ出発するみたいだな、オレたちもゆっくり行こうか」
Bクラス御一行様が洞窟に着くと椰子の身を割って喉を潤している高円寺が出迎えた。
「どうだね諸君、私が確保したSPOTSは」
「スッゲェ……」
岸壁にぼっこり空いた穴は見た目以上に深く、中の空洞はクラス全員が過ごすのに十分な空間が広がっている。
男子たちは感嘆した後にやばくね? と騒ぎ始め女子は暗さに不安感を示したり、それを神秘的と捉えたりと様々だ。
承太郎が成果を尋ねると高円寺は海外映画の小切手を渡すシーンのように承太郎から受け取っていた地図を返す。
「自然としての魅力はかけらもなかったが、なかなかに面白い造りをしている島だったよ」
地図には高円寺が抑えたスポットの位置と農作物が育っていることを示す視点がいくつも記されていた。
そう、いくつもだ。
スポットの数16、作物確認地点5。
承太郎としても想像以上の成果にほうと感心の声が漏れた。
移動時間や睡眠時間を度外視した理論値では8時間ごとの更新で1スポットにつき1日3ポイントを1週間で21ポイント。計336ポイントになる。
洞窟はほぼ島の北端に位置するが、その後ろにスポットが多数設置されていたらしく、この位置を抑えられるかどうかという学校側の意図を感じる作りになっていた。
それを抑えた結果とも言える。
「そこにある程度収穫したものは置いてある。自由に使いたまえ、フハハハハ」
見ればトウモロコシなどの穀物やスイカなどが置いてある。
「ところで承太郎、私として充分な成果と考えるが何か異論はあるかな?」
「異論が無いと聞かれれば有ると答えるぜ。当たり前の話だ、ここでお前がリタイアすれば30の損失が出る」
「しかし、だ。私が築いたものを活用し切れば300以上の利益が生まれる。私はそろそろいとまを頂くとしようじゃあないか」
「……やれやれだぜ」
やっぱり麒麟児に1週間強制は無理だと思うんです、個人的に
というわけでこんな展開にしました。
スポットの件ですが、アニメ見直してびっくりしながら採用しました。
原作に書いてたかな?見落としてたか…
1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない
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堀北
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櫛田
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軽井沢
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佐倉
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一之瀬
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坂柳
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神室
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伊吹
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茶柱
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真鍋
-
西野