ジョジョの奇妙な教室 作:空条Q太郎
ありがとうございます。
無人島へ行こう その⑥
「佐倉」
「は、ははは、はいっ」
「どんどん糸出てるぞ。魚掛かってるんじゃないか?」
「え、ええと、えいっ」
無人島生活5日目。
3日目から釣り担当というポストに収まった綾小路は山内の猛アピールから逃れるように立候補してきた佐倉とペアを組んでルアーフィッシングに臨んでいる。
初日こそ投げては絡め、巻いても絡めと散々な佐倉だったが流石に慣れてきたのかそこそこの釣果を挙げていた。
綾小路の横顔に見惚れていた佐倉はラインが出ていくほどの大物がヒットしたことにも気づいていなかったが、綾小路の指摘を受けて遅れながらも一応合わせてみる。
そもそもロックしていないことにもびっくりだが、ほぼ呑み込みに近いかかり方をしていたのかバレることなくリールを巻くがハンドルが重く苦戦する。
断崖絶壁で釣りをしているわけでは無いが、防波堤に比べれば幾らか高さのある岩場から投げているため引っ張られるようでは危険だ。
いち早く察知した綾小路は自分の竿を巻き上げて放置すると佐倉の手を取った。
密着する身体、重なる手。
佐倉の頭上には絵に描いたように蒸気が抜けていくようなぷしゅーとした湯気がたつ。
そのまま綾小路は竿を受け取るとファイトに入る。
流石はホワイトルームの傑物。ここ数日、持ち合わせの深すぎる知識をひとつひとつ試した結果、もはや達人と呼ばわれる域に到達している。
用語や技術について解説しても佐倉が理解しきれないことを察して途中から教えてはいない。
あたりを取って巻き切れば釣れるからだ。
ただ、大物とのファイトはその限りではない。
綾小路は魚の呼吸を読みきって釣り上げた。
「すごい、おっきいね。なんて言う魚だろう?」
「シーバス、鱸だな。こんなのを掛けるなんてすごいじゃないか」
「わ、私は投げただけで何も……」
ビギナーズラック、ただ投げて巻いてを繰り返していたら偶然かかった大物だ。
バケツに魚を移すと綾小路は竿を振る。
様になったその姿は凛々しく感じる。
「カメラあったらな……」
「どうかしたのか?」
「な、なんでもないよ。そ、それにしても空条くんって凄いよね。勉強も運動も出来て、頭も切れるなんて、本当漫画の主人公みたいだよね」
バレていないつもりの恋心を隠そうと矢継ぎ早に佐倉は言葉を紡ぐが、観察力が石仮面を被った帝王の域に達している目の前の男には隠し通せるはずもない。
「そうだな、あいつは別格だな」
「どうしてDクラスにいるんだろうね。私たちとしては居てくれなかったら……とは思うけど」
「中学時代結構やんちゃだったらしいぞ……知らないが」
「はは、知らないんだ」
「同じ学校に通っていたわけではないからな」
「このまま終わればかなりポイント残せるんだよね?」
「何もなければな」
クラスとしてのまとまりを見せているBクラスは、プロデュースby龍園の豪遊を見せつけるという嫌がらせを不愉快に思いつつも、受け流し順調な無人島生活を送っている。
一方その頃、Aクラスホームキャンプの一角。
金髪くんとサイドテールガールはフライパンを振りながらいがみあっていた。
「いくらなんでもあんたスポットの誤使用はやりすぎでしょ」
「いやいや、うちの姫さまから葛城の完全失脚計画が施行されたんだからそうでもするでしょうよ」
「それは、まぁ……て言うか、なんであいつの言いなりなのよあんた」
「俺は勝ち馬に乗りたいだけ。葛城じゃちときついでしょ、今後」
「そ?」
「龍園の契約内容ちゃんと見たか? あれに心から賛同した奴らにも正直マジかよって感じだけどさ、あんな穴だらけの裏切られても支払いだけするプランに気付けない奴だぞ?」
「……そ……れくらいわかってたけど。冷静で手堅い葛城がそんな判断するほど追い込んだのも坂柳でしょ?」
「まぁね、手を取り合ってたら結果は違ったかもな。でも、それはないでしょ。あの2人だぜ?」
「確かにね」
「そういや聞いたことなかったけど、神室こそなんで姫さまの従者やってんのよ?」
「訳ありってだけ」
「ありゃ、心開いてくれてないのね」
「あんたみたいな蝙蝠を信用しろって方が無理でしょ」
「ははは、そりゃそうだ……と、葛城動いたね。んじゃま、行ってきますと」
あとよろしく〜と橋本は魚と野菜を炒めていたフライパンから離れ葛城の後をつけた。
葛城はどこへ向かっているのかある程度地ならしされた道では無く、ほとんど獣道の様な鬱蒼と木々が生い茂る森の奥へ奥へと歩いていく。
なんとなく葛城の目的に見当が付いている橋本は、鬱陶しい虫を払い充分な距離を空けてつける。
しばらくして葛城の足が止まった。
「画像を確認させてもらおうか」
「おいおい、挨拶もなしかよ」
「お前と馴れ合うつもりは無い」
「ククク、そうかよ。Aクラス様ってのは傲慢だなぁおい」
葛城の密会相手は橋本の思った通り全員リタイアしたはずのDクラスの王、龍園翔だった。
まばらな髭を携え、髪はボサボサだ。
龍園はデジタルカメラを投げ渡す。葛城は受け取ると操作して撮影された画像データを確認する。
「Bクラスの方はどうなんだ」
「さあな、知りたきゃてめぇで探れや」
「Cクラスにはスパイを送り込めたらしいが、Bクラスではうまくいかなかったというわけか」
「だったらどうだってんだ」
「いいや、どうということはない。しかしこれでAクラスの勝利に大きく近づいた」
「ククク、たかだか100や200ポイントのために必死だなあ、おい」
「そのたかが100ポイントに何を見ることもあるかもしれんぞ」
「誰が誰に忠告してやがんだ?」
突っ掛かる龍園を意に介することも無く、葛城は折り返してくる。
橋本は息を殺してそれをやり過ごした。——が
「奇遇だな。坂柳の尖兵が何のようだ?」
「げ、龍園」
「人の顔見てそんなこと言うなよ、殺したくなっちまうじゃねえか」
「勘弁してくれよ。こっちとしては葛城監視してただけで何の用もないんだ」
両手を上げながら橋本は茂みから立ち上がる。
「だろうな。ここであったのも何かの縁だ、手土産にうちのクラスのリーダーを教えてやろうか」
「いや、そんなおっかない情報いらないね。んじゃ俺はそろそろお暇させてもらうわ」
龍園は足早に場を後にする橋本を見ることもなく、自らもベースキャンプもとい秘密基地に帰った。
「お疲れさまです、龍園さん」
石崎は川の水を煮沸処理した物を初日に使ったグラスを再利用した物に注ぎ渡す。
龍園は一息に飲み干すと空いたグラスを石崎に投げ渡した。
「何であんた律儀に教えてるわけ? どう考えても損でしょ」
惰性なのかキャンプがしたいだけなのか未だ無人島に残る伊吹はむさ苦しい男たち同様に乙女的にはノーとどこぞの生徒会副会長が叫びそうないでたちをしている。
「伊吹、いい加減ないなりにその空っぽのオツム使って考えろ」
「あ?」
「お、おい伊吹」
「龍園氏は契約内容を履行した、それだけでしょう。もっとも、その後の支払いを見越してではありましょうが」
1人だけ場違いな清潔さを保ったおかっぱ眼鏡が端的に説明するが伊吹はいまいちピンときていない様子だ。
「では、私は薪拾いの途中ですのでこの辺りで」
おかっぱはCクラスから分前でもらった食料を横流しして寄生先に戻る。
「にしてもBクラスの方はガード堅いっすね」
「ガードも何もすげ替える気なら偵察は無意味だ。仮にBのリーダーが割れたとしても指名なんざしねえよ」
リスク管理はする龍園である。
「ククク、収穫はあった。今回の試験結果の順位なんざくれてやるさ」
龍園は悪役じみた笑みを浮かべる。
「仕掛けるのは今回じゃねえ」
「負け惜しみ? だっさ」
「そいつは違うぜ伊吹。今回、AとCクラスのリーダー指名に加えスポット占有ポイント。それに加えて来月から120万のポイントが流れてくる。これだけでも俺の勝ちといえる」
「そうですよね!」
「が、収穫はもうひとつある」
「何よその収穫って」
「Bのリーダーは空条承太郎だ」
「は?」「え?」
2人は龍園の突飛な発言に呆気に取られる。
「どうやって知ったのよ」
「ここで聞いたことは忘れてもらうが、これ以上はいえねえな」
だが、と龍園は続けた。
「こんな情報クソの役にも立たねえ訳だが……何とまぁBクラスも一枚岩じゃないって事だ。ククク……女って奴はどいつもこいつもイカれてやがる。おっとつい口が滑り過ぎたようだ。お前たちは何も聞いてない、だろ?」
次回、無人島編閉幕
1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない
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