ジョジョの奇妙な教室 作:空条Q太郎
高円寺…さす太郎
須藤…飯代が…
綾小路…平均値には気をつけよう…
入学から3週間が経ち、当初不安定であったクラス内のグループ分けも明確にされた今日この頃。
女子たちの中ではカースト争いを気にしている者が多く、暫定では軽井沢のグループと櫛田が幅を利かせているようだ。
いや、幅を利かせているのは軽井沢のグループのみで、櫛田はその人柄ゆえに影響力が強いと言った方が適切であろう。
一方の男子は平田以外に女子に対する発言権はほぼ存在しない。一強だ。
承太郎はといえば、時折声を掛けられているものの基本は相変わらず腕を組み、独りで静かに席に着いている。
声をかけてくるメンバーは平田、櫛田、幸村、小野寺そして——
「空条氏、例の件。ミッションコンプリートしたでござるよ」
——外村だ。
「そうか。確認次第入金する」
「では、放課後にまた連絡するでござる」
博士こと外村がサラダバーと席に戻ると同時に3限目をつげる鐘が鳴り、茶柱が入室してきた。
「喜べ、今日は趣向を変えて5科目の小テストを行う」
「えー、聞いてないっすよ先生ー」
「ずる〜い」
3限目は日本史のはずだった予定だが、全教科の小テストに変更されたようだ。
突然の変更に文句を言う生徒もいるが茶柱は相手することなく続けた。
「今回のテストはあくまで今後の参考用だ。成績表には反映されることはない。ノーリスクだから安心しろ。ただしカンニングは当然厳禁だぞ」
茶柱の説明を聞き、何だそれならと胸を撫で下ろす者と警戒心をグッと高める者と反応は二様だ。
そして後者の一員たる平田が、さっと挙手をする。
「先生、成績にはという事は他の何か、例えば来月のポイント支給額などには影響があるという事でしょうか?」
「それは答えることが出来ないな、平田。だが、何事にも真面目に取り組む事は大切だぞ?」
「……わかりました。ありがとうございます」
「では、今か——「待ちな」」
茶柱が教卓に置いていたテストの束に手をかけたが、呼び止められ顔を上げる。
「どうした空条」
「この小テストとやらは、全クラスで同様に取り組まれているのか?」
「相変わらずの言葉遣いだが、まぁ良いだろう。その通りだ」
「なら、テストの説明や質疑応答にも一定のルールが存在している。違うか?」
「そうだ」
「説明の仕方について、あんたたち教師にある程度の裁量権はあるか」
「当然だ。一言一句合わせるのは手間だろう」
「最後にひとつ聞かせてもらうが、あんたの言う『ノーリスク』っていうのは、ナニに対するリスクだ? ポイント支給額か? 退学か?」
強い口調で承太郎は続ける。
一年のクラス人数が一律であるのに対し、上級生のクラスの人数が一律でないことを疑問に思ったがゆえの質問だ。
「ノーリスクってワードがあんたの裁量権の範疇で足されたものってんなら答えて貰うぜ」
「退学か、随分と物騒な言葉を出すな。が、その通りだ。このテストにおいて退学の措置をとることはないという意味での『ノーリスク』だ。これ以上の質問は受け付けない」
来月以降のことは徹底して秘匿する。
それが現状の学校のスタンスと理解している承太郎は暖簾を腕で押すようなことはしない。
大人しく、前の綾小路からテスト用紙を受け取り筆記具片手に問題に向き合った。
他の生徒たちもある程度の緊張感を持って取り組んでいる。
テストは一科目四問の計二十問。どれも中学復習レベルの問題で受験問題に比べれば何段階もレベルの低い問題であった。
素のポテンシャルが高い上、努力家である承太郎は記憶力、応用力にも優れておりスラスラとペンを走らせる。
が、数学の問題を一問解き終えたところでペンが止まった。
(……この三問だけレベルが異様に高いじゃあないか)
しばらく問題と睨めっこした後、一応既習の内容を応用すれば解けないことも無い問題と理解して再度ペンを持ったのだった。
*****
5月最初の学校開始を告げる始業のチャイムが鳴った。程なくして、手にポスターの筒を持った茶柱がやってくる。
普段から気難しそうな顔をしているが、今日も今日とて口は真一文字だ。
「これより朝のホームルームを始める。では、早速だが答え合わせと行こうか」
承太郎に一瞬、視線をやると手にしていた筒から大きな画用紙を取り出し、黒板に貼り出した。
そこにはAクラスからDクラスの名前とその横に最大4桁の数字が表示されていた。
Aクラス……940
Bクラス……650
Cクラス……620
Dクラス……490
「まずは良くやったと言っておこう。お前たちは今日から1年Cクラスとなった。不良品たるお前らがこの学校始まって以来の快挙を達成したわけだな」
支給額についての説明がなされると踏んでいた生徒たちの間に困惑した空気が流れる。
「先生、僕たちがCクラスというのは一体」
「そう慌てるな平田。順に説明する。この学校では、入学式の日に説明した通り、実力で生徒を測る。そして今回お前たちは620という評価を受けた。クラスポイントと今後言うが、このクラスポイントを100倍したポイントがお前たちには支給されることになっている。こちらは、プライベートポイントと以後呼ばせてもらう」
確かに今日、Dクラスの全員平等に62000ポイントが振り込まれていた。
これを確認した全員が承太郎に感謝したのは言うまでもない。
「茶柱先生、ポイント増減の詳細をお聞かせいただけますか」
「幸村、質問は挙手をしてからだ。まったく……答えるとそれは出来ない相談だ。人事考課、つまり詳細な査定の内容は、この学校の決まりで教えられないことになっている。社会も同じだ。お前が社会に出て、企業に入ったとして詳しい人事の査定内容を教えるか否かは、企業が決めることだ」
「……っ。なるほど、ありがとうございます」
「そうだな、昇格の祝いにひとついいことを教えてやろう。お前たちが早々に私語や遅刻に気をつけたのは大きかったぞ? まぁ、学生として出来て当然のこと、それらの問題がないからと言ってポイントは増えないがな」
承太郎は静かに状況を見守っている。横に座る堀北や幸村など一部生徒は必死にメモを取っていた。
「早々にこの仕組みに気づいた生徒がいたにも関わらず、ここまでポイントを吐き出したのはさすが不良品どもだ。嘆かわしいな」
茶柱は額に手を当てやれやれと目を閉じた。
「例えば、そうだな。須藤、お前は入学初日に上級生に絡まれたな」
「……だから何だってんだよ。てか、何で知ってんだ気持悪ぃ」
「監視カメラじゃね?」
「んなことわかってんだよ!」
池が何気なくツッコムと須藤が怒鳴り返した。
「結果お前はゴミ箱を蹴飛ばし、ゴミを散乱させた。これは明らかに査定に響いていると考えて貰っていい。その後綾小路がゴミ拾いをしていたぞ? 礼を言っておくんだな。とまあこのように、授業だけが評価の対象じゃないと覚えておくといい」
居眠り常習犯の須藤にクラス中から厳しい視線が向けられるがその後茶柱に軽井沢グループなど、要は公共の場で他者に迷惑をかける振る舞いをした生徒たちが名指しにされることで霧散した。
「えらく好き放題生活していたようだな。不良品ども」
「先生、先ほどからのその『不良品』と言うのは一体どう言うことですか?」
「ん? ああ、すまない。説明がまだだったな。この学校では優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。最も優秀な生徒はAクラスへ。ダメな生徒はDクラスへ、と。ま、大手集団塾でも良くある制度だな。これは入学段階のクラス分けにも適応されているぞ?」
生徒たちの顔が強張った。
質問した平田も少なからず動揺しているようだが切り返す。
「でも、僕らはそのDという評価が間違いだったと証明したのではないですか?」
「面白いことを言うな平田。確かにある一面ではそう言うことになる。クラスとしては、な」
茶柱の言う所を理解した平田は苦い顔をする。
「さて、そのクラスのことだが
CPの多い順にクラスが変わると言うことだ。
元CクラスのCP490を上回る結果を残した元Dクラスはこの5月1日をもってCに昇格したことになる。
「過去、Dクラスが上に上がった試しはない。これは本当に快挙だ。誇っていいぞ?」
あれだけ貶しておいて、今更持ち上げられても素直に受け止められない。
生徒たちがそれに浮き足立つことはなかった。
「それからもう一つ付け加えておこう。 国の管理下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇っている。それは周知の事実だ。恐らくこのクラスの殆どの者も、目標とする進学先、就職先を持っていることだろう」
それは当然のことだろう。この学校は全国でも屈指の進学、就職率。 ここさえ卒業出来れば、通常では難しいとされる希望先にもすんなりと入れると噂されていた。日本最高峰のレベルを誇る東京大学ですら推薦で入れるらしいというまことしやかな噂があるほどだ。
「が、世の中そんな上手い話はない。お前らのような低レベルな人間がどこにでも進学、就職できるほど世の中は甘くできているわけがないだろう」
茶柱の言葉が教室に響き渡る。
「この特権を得ることができるのはAクラスだけだ。Aクラスに上がる他にない。それ以外の生徒には、この学校は何一つお前たちに保証するものはない」
「ちょ、ちょっと待ってください先生。それはいくら何でも無茶苦茶だ!」
承太郎との会話である程度想定内と落ち着いていた幸村がここに来て興奮し始めた。
「無茶苦茶? 何がだ幸村、質問があるなら具体的にしてみろ」
「入学案内のパンフレットにだって希望した進路を学校がバックアップすると書いてあったはずです」
「そうだな、確かに書いてある。だが『全員を』なんてことは書いていなかっただろう?」
「そ、それはっ……」
詐欺もいい所だ。確かに書いてはいないが、ミスリードしている。
鵜呑みにして進学してきた学生がほとんどだろう。
「みっともないねぇ。男が慌てふためく姿ほど惨めなものはない」
「なにッ⁉︎」
幸村が高円寺を睨みつけた。
「そもそも、学校に自らの将来を世話してもらおうなどと考えていること自体、私からすれば信じられないことなのだよ。AでもDでも私には関係のないことさ」
正論じみた高円寺の答えに幸村は反撃の言葉が出ず、そのまま腰を下ろした。
このAクラスを目指そうと言う流れになりつつある中で、堂々と離脱宣言する高円寺に承太郎は内心やれやれと呟いている。
「さて、もうひとつ。これは先日行った小テストの結果だ」
茶柱は筒からもう一枚の画用紙を取り出し、同じく黒板に張り出した。
「ある程度真面目に授業を受けているとは思っていたが、本当に揃いも揃って粒揃いで、先生は嬉しいぞ。中学で一体何を勉強してきたんだ? お前らは」
授業態度と学力は皮肉にもイコールではない。一部の生徒を除き、ほとんどの生徒が60点前後の点数しか取れていなかった。
中学復習レベルで60点を切っている生徒たちはありていに言って学力が低い。40点を切っているものたちは馬鹿と呼ばれてもおかしくは無いレベルだ。
にも関わらずその該当者が七名もいる。
最下位須藤の14点は驚異の点数だ。三馬鹿トリオはもれなく40点を下回っており、名実ともに三馬鹿と呼ばれることが決定した。
「良かったな、これが本番だったら7人は入学早々退学になっていたところだ」
「た、退学? どういうことですか?」
「この学校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。今回のテストで言えば、32点未満の生徒は全員対象と言うことになる。本当に愚かだな、お前たちは」
「は、はあああああああ!!」
真っ先に驚愕の声をあげたのは、その7人に該当する池たち。
貼り出された紙には、7人で一番点数の高い菊池の31点、その上に赤いラインが引かれていた。つまり菊地含め、それ以下の生徒は赤点ということだ。
「ふっざけんなよ佐枝ちゃん先生! 退学とか冗談じゃねえよ!」
「私に言われても困る。 学校のルールだ、腹をくくれ」
怒り心頭の池や山内と恐怖し身震いする女子と反応はさまざまだ。
平田が三度挙手した。
「赤点の基準を教えて下さい」
「教科ごとにクラスの平均点÷2をした点数を下回る場合を赤点とする。小数点以下は四捨五入するので気をつけるように」
「ありがとうございます」
「中間テストまで残り三週間。まあじっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法は必ずあると信じている。出来ることなら今回の昇格が偶然では無いと証明してくれ」
茶柱が去るとがっくしと赤点組が肩を落としている。
茶柱の言葉が脳裏を何度も反響しているのだろう。早くも諦めたのか泣いている女子生徒までいる始末だ。
無情にも重たい雰囲気の中、ホームルーム終了のチャイムが鳴り響き、僅かな時間だが休み時間が訪れた。考える時間が訪れてしまったのだ。
所持ポイントがある程度あることで、多くの生徒はある程度の余裕を保っているが、幸村よろしくこの学校の進路・就職のバックアップを受けられないことやDクラスに配属されたことにショックを受けた生徒は多かった。
茶柱の冷たい対応もそれに拍車をかけている。
みな口々に不安を吐露し始めた。
「みんな、混乱する気持ちはわかるけど一旦落ち着こう」
負の循環を辿る前に平田が立ち上がった。その平田を始め幾人かが承太郎をチラチラと見ているのは気のせいでは無いだろう。
そして——承太郎が立ち上がった。
1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない
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堀北
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櫛田
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軽井沢
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佐倉
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一之瀬
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坂柳
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神室
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伊吹
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茶柱
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真鍋
-
西野