ジョジョの奇妙な教室 作:空条Q太郎
前回までのジョジョの奇妙な教室
茶柱…よくやった不良品ども
クラスメイト一同…さす太郎
赤点組…退学ッ!?
承太郎…立ち上がっただけ
「平田、いいこと言うじゃあねえか」
承太郎が口を開くと、反射的にクラスメイトは口を噤む。
恐怖もある。今まではそれが九割を占めていただろう。
だが、みな期待しているのだ。このポイントシステムを初日から見抜き行動し、クラスに多大なる貢献を果たした男の次なる考えを。
とはいえ、それは承太郎の望む形では無い。いずれ打破すべきトップダウン方だが、今はある程度仕方ないと考えていた。
「今、俺たちがすべき事は何だ?」
承太郎が視線を回し投げかけるが、結局最後平田に辿り着くまで答える生徒は居ない。
「勉強……だよね?」
クラス中が頷く。
「ああ、その通りだ。3年間ついて回る試験に関するこの課題を根本的に解決するには学力をつける他ない。特に赤点組には、な」
池は大きく肩を上げ身震いした。
「最初に言っておくが、俺はAクラスを目指すぜ。退学者を出したクラスに対してペナルティが無いとは考えにくい。切り捨てるって発想は捨てている。ペナルティの有無を確認するのは容易いが、ポイントを浪費することもないだろう」
「そうだね、僕もみんなでこの問題を乗り越えていきたいよ」
「私もそう思うな! みんなで協力して頑張っていこっ!」
平田、櫛田につづきみな賛成の意を示していく。
「テストについてはこれ以上話す事はないぜ。死ぬ気で勉強しな」
ちなみ承太郎は小テストにおいて95点という高得点を叩き出しており、高円寺と同率1位である。
学力の高さと思考力は必ずしもイコールではないが、学生にとって発言の信憑性を高めるには十分すぎる要因だ。
「問題はまだある」
「まだ……一体何かな?」
「俺たちは晴れてCクラスとなったわけだが、これは少なくとも現Dクラス、そしてBクラスから狙われる可能性が高いとは思わねえか?」
「確かに、注目は浴びると思うけど、クラス間で競い合うと言っても定期テストじゃ何もないんじゃないかな?」
「俺は何もテストの話をしているんじゃないぜ。そうだな、俺なら、今の不安定な心理につけ込み、てめえが有利に運べる問題を起こし他クラスから搾れるだけポイントを搾ろうと考える。これを他クラスが考えていないとは限らねえぜ」
「い、いくら何でもそれは考えすぎなんじゃないかな?」
さしもの平田も苦笑いだ。
というか不穏すぎる承太郎の発言にみな引き攣った表情をしている。
「そうでもないはずだ。櫛田から現Dクラスは暴力上等のクラスだと聞いている。逆上し手を出しそうなやつをターゲットにして接触してくる可能性はなくはないだろう」
誰もが『お前だよ』と思ったが、決して口にはしない。
「この学校は生徒間の問題に生徒会が介入し、裁判の真似事のようなことをし、そこでの判決は絶対だそうだ。ポイントが関わることも少なくないと聞く。巻き込まれねえためには何があっても無視する事か記録することだぜ、一応心に留めとくんだな」
情報収集にポイントを使い始めている承太郎は得ている情報の正確性と密度が格段と上がっている。
「そんな仕組みがあるんだね。忠告ありがとう空条くん」
「他クラスに友達がいる人も多いと思うけど、ちょっと気をつけないとね」
と、最も他クラスに友達が多い櫛田が言う。
「この場を借りて、少しいいかな?」
平田は話が一区切りついたところで前置きし、承太郎の方へ向き直った。
「空条くん、改めてお礼を言いたい。君がポイントの仕組みについて気づいて共有してくれていなかったらと思うと正直ゾッとするよ。本当にありがとう」
「ほんとそれな! 山内がうるさ過ぎてポイント0になるところだったぜー」
「は⁉︎池! お前にだけは言われたくないぞ!」
「どっちもどっちだろオメーら」
「「須藤が言うなっ!」」
池と山内に須藤が突っ込むという光景をしらけた目で睨む女子たちだが、当の三馬鹿はその視線に気づいていないのか軽口を続ける。
しかし、この雰囲気につられて次第にクラスの張り詰めた雰囲気が弛緩していった。
「……やれやれだぜ」
ガヤガヤとし出し、承太郎も話す事は話したので腰を下ろした。
「空条くん、さっきのことだけど……これからは協力して頑張っていきたいと思っているんだ。よろしくね」
平田が歩み寄り差し出してきた手を、承太郎は力強く握り返し首肯する。
「……それから、問題を起こすって話なんだけど……」
「安心しな、無駄なリスクを犯しやしないぜ」
「そ、そっか。ごめんね、疑ったりして」
平田が用件を話し終えたタイミングでちょうど始業の鐘が鳴り、生徒たちは再び席につき授業の準備をしたのであった。
やるべき事がある程度明確化され、ただ漠然と押し寄せる恐怖に屈することなく各々が思考を始める。
やはり、金があればある程度心に余裕ができるというものだ。
——昼休み
「く、空条くん。よかったら何だけどお昼一緒しない?」
承太郎が顔を上げると、水泳部所属の小野寺かや乃が気恥ずかしそうに立っていた。その後ろには小野寺が仲良くしている生徒が二人いる。
小野寺はショートカットの良く似合う可愛さと凛々しさを兼ね備えた、活発な印象の女子生徒だ。
以前の水泳50M自由形では見事に一位を勝ち獲っていた事は、承太郎の印象にも残っている。
水泳の模擬選手権以降、短い会話を交わす事は何度かあったが、食事に誘われたのはこれが初めてである。
「空条、俺もいいか?」
そういうとこだぞ幸村と女子からの視線が鋭いが、意に介することなく——正しくは気づくことなく幸村が参加を申し込む。
「構わねえが」
「あ、僕もいいかな?」
「平田君が行くなら私もー」
平田の参加から芋づる式に軽井沢グループ、櫛田たちも参加する運びになり気がつけば10人を超える大所帯だ。
「……やれやれだぜ」
承太郎としては断ってもいいのだが、どの道向かうのは食堂だ。近くの席に陣取られたら巻き込まれる事は目に見えている。
全てを自分1人で賄えるなどと驕ってはいない承太郎は、静かに過ごせないことにはなるが苦渋の決断の末に、今後の繋がりを取ったのであった。
道中「何でこんな大人数に……」と嘆く幸村が承太郎に声をかける。
「空条はDクラスに配属された事、どう思ってるんだ? 俺は正直納得いってない」
「あ、それ私もちょっとわかる。確かに勉強は得意じゃないけどショックだった」
言う幸村は拳に力が入っており、言葉の上では軽く話しているが、今尚プライドが傷つけられ腹のワタは煮え繰り返っていそうだ。
面と向かって『不良品』などと言われて気にしていないのは現Cクラスには三名だけだ。
「特にねぇな」
「……どうしてか聞いてもいいか?」
幸村目線、文武両道で頭もキレる空条の答えに驚きを隠せない。なにか、茶柱の言葉の裏を読んだのかも知れないと考えてしまう。
「心当たりが多すぎるだけだぜ。お世辞にも優等生ではなかったからな」
なんとなく察して二人も黙る。
「しかし、本当に空条の予想通りだったな……ここでの実力は学力だけじゃない……んだろうな」
何か思い当たる節でもあるのか、幸村は悔しそうに唇を噛む。
学食に到着すると先行し席を確保していた平田たちに呼ばれ、各々発券し席についた。
「あれ、空条くん山菜定食なんだ」
「いろいろと入り用でな」
承太郎が手にしているのはなんと0円で発券することが出来る奇跡の定食だ。
山菜のお浸しと味噌汁、白米と学生にはいささか渋過ぎる定食なのだが、素材の味を活かしたこの定食を案外承太郎は気に入っている。
節約も兼ねているが2回に1回ほどのペースで承太郎はこの山菜定食を注文している。
大人数で食事とはいっても、結局のところ社会人の飲み会と同じようなもので離れた席にいる人と話すことなんてまずない。
承太郎は端に座しているのでせいぜい、隣の幸村、向かい側の櫛田、小野寺ぐらいしか声をかけてくる事もなく大盛りのご飯を口に運んでいた。
承太郎に用がある3人だが、他に対してはそうではないため必然会話がぶつ切りになり、その都度訪れようとする気まずさを櫛田が必死に押さえつけている。
おそらく静寂を誰も気にしないのだが、必死に繋ぐ櫛田。なんとも損な役回りだ。
「みんな、勉強会を開くのはどうかな?」
平田が場にいる全員に向けて提案する。心なしか承太郎に視線を向けている時間が長いのは気のせいではないだろう。
取り巻きを中心に『サンセー』と明るい雰囲気が広まる中沈黙している承太郎が気になった平田が問いかけた。
「空条くんはどうかな?」
「好きにすればいい。改めて言っておくが、俺は何もクラスのリーダーだとか、先導者だとかになろうなんて事はこれっぽっちも考えちゃあいねえ。必要だと思った時に必要だと思ったことを話しているだけだ。意見が違えば口を出す事もあるかもしれないが、その時はその時だぜ」
「わかったよ。ありがとう。それで、まだ詰めれてないんだけれど、空条くんや幸村くん、櫛田さんには講師として参加してもらえたらと思ってるんだけど、どうかな?」
もちろん、選ばれた三人は小テストで比較的優秀な成績を収めている。
「私で力になれるかわからないけど、ぜひ参加させてほしいな」
迷う事なく引き受ける櫛田の笑顔につられて平田の表情も明るくなる。平田は礼を言って残る二人を待った。
もちろん平田が急かすことはないが、取り巻きの視線が承太郎たちに刺さる。
承太郎の視線の先には、葛藤している幸村がいた。Aクラスを目指すためにはある一定のクラスメイトとの関わりが必要になることは理解している。
単なる勉強会でいいのか。そもそも、学習という自分のフィールドでさえ、大勢が集まる場に飛び込むことを躊躇ってしまう。
しばらく熟考し、口を開く。
「……赤点組の数人なら」
「ほんとうかい? ありがとう」
目を逸らした幸村の知るところではないが、平田は満面の笑みだ。
「俺はやることがあるんでな、参加するかどうかはそれ次第だぜ。……そうだな。赤点組でどうしても参加しないって奴がいたら連絡してくれ」
不穏な香りしかしない承太郎の発言に苦笑いの平田だがこの場で追求はしなかった。
「勉強会の持ち方はまた、話し合いたいと思ってるんだ。みんな、協力してくれてありがとう」
→→→→→→
——放課後。
承太郎は六限終了後のSHRを終え、教室を去ろうとする茶柱に背後から声をかけた。
「茶柱s——「なんだ? 質問か空条」」
承太郎が肯定すると茶柱は一瞬口角を上げたが、すぐにいつもの真一文字に戻る。
「悪いが先約がある。そうだな……30分後に生徒指導室前に来い」
承太郎が口を開こうとするが異論は認めないと、踵を鳴らして廊下を歩いて行った。
「……やれやれだぜ」
ほんの2、3分で終わるはずの用件を先延ばしにされ若干の苛立ちを覚える承太郎だが、ぐっと堪え一方的な要求を呑むことにする。
——数分後
『一年Dクラス綾小路清隆くん。職員室で茶柱先生がお待ちです。繰り返します…………」
——25分後
基本的に人を待たせることを嫌う承太郎は、待ち合わせには5分以上前には着くことを心がけている。
が、今日ばかりはその心構えを捨てるべきだったと現在進行形で後悔している。
「へぇ、君が噂の空条承太郎くんか。さっきの綾小路といい、Dクラ……Cクラスはイケメン揃いだね。それもタイプが違うなんて女子が羨ましいな〜」
生徒指導前で待機している承太郎の前にいるのは一年Bクラス担任の星之宮知恵だ。ピンクゴールドの美しい髪色、ロングヘアの女子生徒と共に職員室から出て来て承太郎を見つけるや否や声をかけてきたのだ。
「ね、一之瀬さんもそう思うでしょ?」
キラーパスを受けた少女、一之瀬は苦笑しながら華麗に受け流している。
今のところ承太郎の眼下でBクラスと担任と生徒が話しているだけ。正直鬱陶しいので黙り込んでいる。
「すごいおっきいね、何センチあるの?」
「…………」
「あれ? 緊張しちゃってる? おーい」
「せ、先生迷惑なんじゃ……」
「ほれほれ〜」
なぜか星之宮はストップをかけずに指先で承太郎の腹筋をつついた。
「わお、かったい!」
「やかましいッ! 鬱陶しいぞこのアマッ‼︎」
ひゃんと情けない声をあげた星之宮は両手を上げて降参のポーズを取り、一之瀬は絶句。恐怖で青ざめていた。
「そんなに怒らないでよ〜。びっくりしたじゃない」
まるであざと可愛い10代美少女のように承太郎の腹筋をぽかぽかと叩く担任を見て一之瀬も何も言えず、承太郎はやれやれと呟く。
「……三十路にもなって何をしている知恵」
その異様な光景を目にしてしまった茶柱が思わず思っていることを口に出す。
「あ! それ言っちゃう? 言っちゃうの⁉︎」
「すまないな空条。中に入ってくれ」
「ちょっと、これから色々聞こうと思ってたのに〜。一之瀬さんも聞きたいよね?」
「えっと、ありますけどお話があるんじゃ……」
「空条、そいつは相手しなくて良い」
「ひど〜い」
茶柱よりも先に承太郎が歩き出し、二人してなにやら喚く星之宮を無視して生徒指導室に入った。
「なんだ……その、同僚が迷惑をかけたな」
一つ咳払いして、上座の椅子に茶柱は腰を落とすと承太郎に着席を促すが長居するつもりはないと断る。
「ここには監視カメラも盗聴器も設置されていない。そう警戒せずとも良いんだがな。まぁいい、用件を聞こうか」
「中間考査の解答は何ポイントだ」
「というと? 少々曖昧だな」
「何ポイントで購入できると聞いているんだぜ」
「1000万だ」
ポイントを聞いた承太郎がどのような反応を示すか茶柱は注意深く見ていたが、承太郎の表情はまるで予想通りとでも言いたげにピクリとも動かない。
そして、あろうことか「そうか」とだけ答えた承太郎は生徒指導室を去ろうと踵を返す。
「待て空条」
慌てて茶柱が呼び止めると、承太郎は足を止めたものの背中を向けたままだ。
「お前はAクラスを目指すのか?」
「さてな、あんたには関係のないことだぜ」
「関係ないということはないだろう。なんて事はない、お前たちの方針を知っていれば案外力になれることがあるかもしれんぞ?」
「枠から出れねえあんたに期待する事は何もないぜ。精々、審判としてゲームの進行を全うするんだな」
茶柱はCクラスの面々からは冷徹、思いやりがないと散々な評価をされている。
根拠のない有用感と社会そのものを舐めている学生たちは茶柱の表面上の態度や言葉を鵜呑みにし教師失格の烙印を押しているわけだ。
反面、日本史の授業を受けている他クラスからは要点を抑えた授業と歴史の裏側の話など退屈しない授業を作る熱心な先生と評価されている。
刺々しい言葉の裏側にある真意を少なからず悟っている承太郎だが、だからといってわざわざ歩み寄る事はない。
承太郎は振り返る事なく生徒指導室を後にした。
「……出てきて良いぞ」
「全然相手にされてませんでしたね」
「どうやら退学したいらしいな、綾小路」
隣の給湯室から姿を現したのは、呼び出しをくらっていた綾小路清隆。そしてもうひとり、堀北鈴音であった。
「随分とはっきり聞こえるのね、綾小路くん」
睨みつけられる綾小路だがこれには理由がある。
遡る事30分前、呼び出された綾小路は茶柱にこの給湯室に閉じ込められ、自らがDクラスに配属されたことに抗議しにきた堀北の会話を聞かされていたのだ。
茶柱が、タチの悪いことにこの二人を引き合わせた際に「壁が厚くてあまり聞こえなかった」と綾小路が言い訳したことに起因する。
「風の巡りが良かったみたいだな……ぅ」
脇腹に堀北の手刀が刺さり、綾小路が小さく呻く。
「お前たちは空条をどう思う」
「……とても優秀な生徒ではないでしょうか」
即答した堀北の表情は暗く、綾小路も同じだと答える。
「Aクラスを目指す堀北としては次の中間試験、どう挑む」
「学力下位の生徒に対し勉強会を開いて学力の向上を図ります」
「ほう、あの中学レベルの問題も解けないような奴らの学力を3週間でなんとかすると?」
「……それは」
「先生、さっき空条が値段を聞いていた件ですが本当にポイントを貯めれば購入できるんですか?」
言い淀む堀北を横目に綾小路が質問する。
「ああ、法とルールに触れない限り、この学校にポイントで購入出来ないものは無いからな」
「茶柱先生は空条くんが模索しているような手を使うべきと……そういうことでしょうか」
「だとすればどうする?」
「私は裏技……のような手で試験を乗り越えても根本的な解決にはならないと考えます。私は私のやり方で向き合います」
堀北は自分に言い聞かせるよう、力強く答えたのだった。
身に余る評価ありがとうございます。
ひとえに承太郎様のお力です。
ぼちぼち続けていきますのでお付き合い頂ければ幸いです。
あと、テストのポイントどっかで出てたきもするんですが…わかる方いたら教えてください。
もう原作知識と二次創作知識が混ざりつつある今日のこの頃です。
1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない
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堀北
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櫛田
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軽井沢
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佐倉
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一之瀬
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坂柳
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神室
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伊吹
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茶柱
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真鍋
-
西野