ジョジョの奇妙な教室 作:空条Q太郎
そして、試験以降オリ展開多め予定。
『1年Cクラス担任、茶柱先生。空条承太郎くんがお呼びです。至急、生徒指導室までお越し下さい。繰り返します…………』
一本の放送で生徒も教師も含め学校中がざわついた。
無理もない。本来呼び出す側のはずの教師が、生徒によって呼び出されたのだ。
職員室でも席についていた茶柱に先生たちの視線が集まっていた。
「っぷ。サエちゃん呼び出されてっ、ごめん、無理。あはははは——ひゃん」
茶柱は隣で笑う星之宮の頭頂部をクリップボードで叩くと席を立った。
——この放送が流れる少し前
テスト週間も2週間を切り、承太郎が所属する1年Cクラスでもいくつかのグループに分かれて勉強会が始動し始めていた。
最も大きいグループは平田が発起人となったグループ。次いで堀北主催の三馬鹿と綾小路、沖谷櫛田が参加するグループ。最後に残った赤点組、外村の面倒をみる幸村グループの3グループだ。
女子の赤点組は平田グループ、男子は他2つといった構図だ。
もちろん全員がどこかの勉強会に顔を出しているのではなく、個人での勉強に集中している生徒も多い。
開始早々に離散した堀北グループだが、櫛田の働きでなんとか再結成を果たすことができたと外村から報告を受けていた。
ちなみに、櫛田は平田、堀北グループ双方に顔を出し多忙を極めている。
そんな中、承太郎は入手した情報の真偽を確かめるため放課後直ぐに1年の廊下を歩いていた——のだが、他クラスの生徒に声を掛けても逃げられ続け、立ち尽くしている。
「……やれやれだぜ」
承太郎は携帯を取り出すと、連絡先一覧から多忙を極めるあざとい系美少女を呼び出した。数コールの後ガチャと通話がつながった。
『もしもーし、空条くん? どうしたのかな?』
「少し頼みたいことがある」
『……えーっと、私に出来ることなら大丈夫だよ』
「助かる。A、B、Dそれぞれのクラス一人でいい、テスト範囲を確認してくれねえか。難航していてな」
『え? テスト範囲? どうしてか聞いてもいいかな?』
協力を仰ぐ以上、聞かれたことには答えるのが誠意だと承太郎はここ数日の出来事を話した。
例年入学最初の中間テストは問題が同じという伝統があること。
入手したテスト過去問及び小テストと今回伝えられたテスト範囲がズレていることを上級生に追求すると、テスト二週間前を切るタイミングでテスト範囲の変更を伝えられるということ。
上級生の話通りであれば今日、変更の伝達があるはずなのに無かったため、念のため他クラスにテスト範囲の確認をとっておきたかったこと。
以上三点と口外しないことを伝えると櫛田は依頼を快諾し、すぐ連絡するねと告げ通話を終えた。
そして10分も経たない内に携帯が震える。
『テスト範囲わかったよ。空条くんの言う通り他の3クラスは今日変更を聞いてたみたい。これって……』
「……そうか。助かったぜ」
それじゃあと通話を切ろうとする承太郎を櫛田が呼び止める。
『空条くん、これから茶柱先生に確認しに行くのかな?』
「そうなるな」
『確認して、どうするつもりなのか教えてもらってもいい?』
「簡単な話だ。第一声が深い謝罪であればよし……それ以外なら気合を入れる」
櫛田が聞きたかったことでないが、その焦ったさを声色に乗せたりはしない。
櫛田にとって大切なのはこのクラスに大きく関わる情報を『誰が』伝えるのかであり、茶柱の行く末ではない。
その点を追求しようとするも礼を告げた承太郎に通話を切られてしまう。
櫛田は舌打ちをひとつして、明るい表情で勉強会に戻っていった。
一方の承太郎が向かったのは職員室……ではなく放送室だ。
「放送権を買わせてもらおうか」
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——そして現在。
生徒指導室の学生からすれば重たい扉を開き茶柱が入室すると、上座に長い脚を組み、逞しい腕も組んだ承太郎が待っていた。
「空条、一体なんのつもりだ」
「ひとつ確認するが、何か言っておく事はあるか」
「無いな」
「そうか。そいつは良かったぜ。まぁ座りな、茶柱センセー」
茶柱はいつもの様子を崩すことなく、本来生徒が座る側の下座に腰掛けた。承太郎はそれを見届けて机に片肘をついた。
「5月1日、あんたは学力の乏しいCクラスが、確実に試験を乗り越える方法があると、そう言ったな」
「ああ」
「そこで俺はいくつか可能性をあたったわけだ。あんたに直接聞いたのもひとつだな」
ひとつ区切り、承太郎は立ち上がる。そして、ゆっくりと一歩ずつ歩き始める。
「そして、俺が入手した情報では今日、この日にテスト範囲の変更ってのが知らされるはずだったんだがな」
「フッ、誤情報を掴まされたんじゃないか?」
「誤情報? 違うなッ!」
茶柱真後ろまできた承太郎は、茶柱が座るパイプ椅子に手をかけ思いっきり後方に投げ飛ばす。
パイプ椅子は壁にぶつかり、ドン、ガシャンと音を立てて倒れた。
突然身体ごと浮かされた茶柱は、流石に慌てて手を広げるが時既に遅し、先ほどまで座っていた椅子を抜き取られ地面に落下する。
「Cクラスを除く他3クラスは今日テスト範囲の変更が伝えられてるんだぜ。確実にな」
承太郎は間抜けにも尻餅をつき両手を地面についている茶柱の襟を掴み持ち上げる。
「どういうことか説明してもらおうかッ! エエッ!」
「ゥッ……なんの真似だ」
「質問しているのはあんたじゃあ無いぜッ! さっさと答えなッ!」
茶柱の足はつま先がかろうじてついている程度でほとんど浮かされており、グイッと身体を揺らされることで首にかかる負荷が更に上がる。
「……裁量権の範囲内だ」
か細い声で反論するが承太郎は聞く耳を持たない。
「担当するクラスが不利になる状況を意図的に作るとは恐れ入るぜ。俺は一度言ったぜ審判としての仕事をしろとな。例えるにあんたたち教師はカードゲームでいうところのディーラーだ。ディーラーってのはプレイヤーに公平にカードを配るのが仕事ってのが俺の意見だが違うか?」
「それがどうした」
「どのタイミングで、どのカードを切るのか決めるのはあんたじゃあ無い。プレイヤーである俺たちだッ! 生徒に見切りをつけるのは勝手だが最低限の仕事はしてもらおうかッ!」
言い切って茶柱を壁際に突き飛ばす。茶柱は数分ぶりに地に足をつけながら飛ばされる力に負けて後方に飛び掃除用具入れに衝突し肺の空気をガハッと漏らし数度咳き込んだ。
「今後役割を果たすか! 果たさないか! ハッキリ言葉に出して言ってもらおうッ! 茶柱ッ!」
茶柱に向き直り怒鳴る承太郎の表情は鬼気迫るものがあり、さしもの茶柱も血の気が引き、呼吸が荒くなる。
「……わ、……た」
「聞こえねえなあッ!」
ガンッ! と承太郎は腕を突き出し、掃除用具入れに拳を叩きつけ茶柱は体を震わせる。
「…………公平に努めよう」
——数十分後1年Cクラスの生徒宛に茶柱から謝罪文と変更後のテスト範囲が通達されたのだった。
承太郎が生徒指導室を去った後、星乃宮によって腰を抜かし、動けなくなった茶柱が発見され一言「何も無かった」と話したのはまた別の話。
一方、放送を聞いて爆笑していたクラスメイトたちはテスト範囲変更のメールを受けて慌てふためく者、怒りを露わにする者、まだ二週間あると支えようとする者三者三様の反応だった。
そんな中、承太郎は1年Cクラスの教室に向かっていた。目標の人物は一役買った櫛田……ではなく平田だ。
その後にひとつ平田に頼み事をして、承太郎は他の生徒と同じように学業に励む事にした。
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きたる金曜日の中間テストを目前に控えた水曜日。放課後を迎えた生徒たちがいつものテスト勉強に移行しようと動き出す前に、穏健派のリーダー平田洋介が動いた。
「みんな、少しいいかな。実は中間テストに向けて重要な情報を共有したいんだ」
「え、なになに?」
軽井沢を筆頭に反応を示し、三馬鹿や堀北も耳を傾ける。
「今日までに、みんな中間テストに向けて必死に勉強してきたと思う。そのことで、力になれるかもしれないことがあるんだ」
平田は事前に承太郎から受け取り茶柱に職員室の印刷機を借り安く仕上げた人数分の過去問の束から一部取り上げて話しを続ける。
「この学校には毎年、1年の1学期中間テストは同じ問題が出される伝統があるらしいんだ。昨日、先輩から話を聞いて、過去問も譲って貰ったんだ」
「マジかよ!」
「なんだよ、そんなのあるなら勉強しなくて良かったじゃん」
三馬鹿トリオが火蓋を切ると軽井沢たちも似たような軽口を叩く。
その光景を見て心底安心している平田と櫛田。想定通りと何の反応も示さない承太郎だ。平田は基礎学力の大切さを改めて訴えた上で続ける。
「今年も例年の法則が適応されているとは限らない。ただ、範囲も同じだし練習には確実に使える者だと思うんだ。だから、よければ使って欲しいんだ」
「見直したぞ平田〜」
「うっし、コレで赤点回避間違いなしだぜッ!」
「須藤くん、浮かれるのはまだ早いわ。今日からコレを使ってみっちり勉強よ」
「お……おう」
「暗記すればいいと前日に投げて寝落ち……なんて冗談にもならないわ」
「……うす」
高円寺を除くクラスメイトが過去問を受け取り口々に感想やら意気込みを語る中、須藤に注意喚起した堀北が平田のもとへと向かう。
「平田くん。コレは本当にあなたの案なのかしら」
「そう……だね」
平田は苦笑いしながら答え、堀北も察する。
「十中八九、テスト範囲の変更にも空条くんが噛んでいるんでしょうね」
「あのタイミングということは、そうなんだろうね」
「あなた、何も聞かされていなかったの?」
「みんなと同じだよ。メールを見て初めて知ったからね」
「……そう」
「堀北さんたちはテスト、どうなりそうかな?」
「……正直これがなければ厳しかったかもしれないわ」
実際、日本史や生物など暗記科目は褒美に釣られた故の努力もあり三馬鹿とはいえ、赤点を回避することができるだろうラインまで来ている。
問題は文法を理解していないためセンスを問われる国語、中学からの知識の積み重ねと応用が必要な数学、外国語だ。
特に外国語、高度育成高等学校では英語を学習しているがこれが致命的。三馬鹿は軒並み単語力が皆無で須藤に至ってはAからZまでの順番すら怪しかったほどだ。
「裏技には頼らないんじゃなかったのか?」
堀北が席に戻る間に同じ勉強グループに居た綾小路が茶化すと堀北はいつも通り睨みつける。
「嫌味のつもり?」
「……なんでもありません」
「そういえば……いいえ、忘れてちょうだい」
「なんだよ、気になるだろ」
「そう? じゃあ、聞かせてもらうけど。少し前の昼休み、櫛田さんとコソコソ食堂で上級生に話しかけていたのは何? 報告を受けて無いのだけれど」
「なんのことだ?」
「もう少しマシなとぼけ方はできなかったのかしら。話していた事実を視認した私に対してそれは通用しないわ」
「そういうところは鋭いな……だが、本当になんてことないぞ?」
「なら、答えてもらえるかしら」
「須藤たちの学力がアレだっただろ? だから、オレなりに抜け道を模索してみたんだが……徒労だった」
「それは空条くんの指示?」
「話したこともないが?」
「そう……だったわね。ごめんなさい、あなたがぼっちなのを忘れていたわ」
「おい、勝手に憐れむな。しかも、堀北だって同じだろ」
「私は好きで独りでいるもの、あなたと違うわ」
他愛もない会話をしながら荷物をまとめ、堀北たちは勉強会に使っている図書室へと向かった。
そして2日後、1年Cクラスの生徒たちは1人の落第者を出すことなく中間試験を乗り越えることができたのであった。
1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない
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堀北
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櫛田
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軽井沢
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佐倉
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一之瀬
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坂柳
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神室
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伊吹
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茶柱
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真鍋
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西野