ジョジョの奇妙な教室   作:空条Q太郎

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前回までのジョジョの奇妙な教室

承太郎…仕事するのかい、しないのかい、どっちなんだい

茶柱…やーる

承太郎…オラァ

櫛田…なにゆえに平田???

堀北…さす太郎



テストのその後

 Side 綾小路清隆

 

「えー、では僭越ながら(わたくし)池寛治が音頭を取らせていただきます!」

 

 ワザとらしくごほんと咳払いした池は誰に頼まれたわけでもないが、この第一回定期考査全員合格記念クラス打ち上げ会を開始すべく立ち上がった。

 

 打ち上げの字面的に毎回やるつもりらしい。とすると最大年5回になるわけだ。

 

 暇があって読んだ社会人男性を主人公にした小説では、忘年会など年に一回ですら辟易としていた付き合いの会合が年に5回。大人数での飲み食いが苦手な面々の心中を察するが、オレとしては友達を作るいい口実になるかもしれないと思い二つ返事で参加した。

 

「まさか、あなたが参加するなんてね」

 

 オレたち1年Cクラスは大人数の受け入れをしている居酒屋を会場としている。もちろん飲酒はご法度であるため注文も出来ないし、注文した場合には学校に通報すると入店時に注意喚起もされている。

 

 そんな会場の10人がけの座敷タイプの席が3つ。さらにそのうちの1つの角に追いやられたオレに同じく角に追いやられた堀北鈴音が話しかけてきた。

 

「こういうのは断ったら角が立つだろ。オレは事なかれ主義なんだよ」

 

「相変わらずね」

 

「それに、それはこっちのセリフだ。堀北が参加するとは思わなかったぞ」

 

 クラスの打ち上げと聞けば聞こえはいいが、オレたちCクラスは一枚岩でもなければ仲良しこよしのクラスというわけではない。

 

 この打ち上げに参加しているのもクラスの7割といった具合で、そのなかでも乗り気な生徒がどれほどいるのかと聞かれれば2、3割程度なのだろうと答えざるを得ない。

 

 ちなみに発起人は池と山内だ。

 

 最初は堀北グループでの開催予定であったが、櫛田が平田に話したことでクラス単位の打ち上げへと昇格したのだ。

 

「あなたの勝手な印象で語らないでもらえるかしら?」

 

「『私は好んで1人でいるの、あなたとは違うわ』なんていってなかったか?」

 

 ちょっと出来心でものまねしてみたのがよくなかったらしく、恐ろしくするどい眼光とコンパスの針を向けられた。

 

 なんでコンパス常備してるんだよ、などと思うと同時にちくりと腕に針先が当てられた。押し込まれてしまったら強制退場級の出血をしてしまいそうなので誠心誠意謝罪する。

 

 わかればいいのよ、と吐き捨てた堀北は武器をしまう。

 

 恐ろしい女だ。

 

 堀北の敵意から免れ一安心したところでちょうど池の長い口上がひと段落したようで、皆飲み物を手に取ったのでオレもそれにならい麦茶の入ったグラスを取る。

 

「えー、宴もたけなわですがそろそろ「それ終わりの挨拶だぞー」「やっぱバカじゃん」う、うるせーわかってるよそれぐらい!」

 

 知ってる文言を使いたかったんだろうな。池は顔を真っ赤にして反論している。宴もたけなわ、酒宴の席が盛り上がっていることを表す言葉だ。そもそも酒宴ですらないけどな。

 

「盃を干すと書いて! 『かんぱ────い』『乾杯と読む!』」

 

 外村だけ若干違う返しをしているが気にしないでおこう。

 

 乾杯を合図にみな、喉を潤しコース料理が運ばれてきて箸を伸ばす。今回のコースは最初は海鮮、途中から唐揚げなどの若者大好きな品が提供されるそうだ。

 

 隣の堀北は唇を湿らせるだけお茶を飲むと開口一番「綾小路くん、平田くんに席替えを提案してきなさい」なんて抜かした。

 

「まだ始まって1分も経ってないのに通るわけないだろそんな意見」

 

「そこを通すのがあなたの仕事よ」

 

「無理だ。諦めて時を待つか自分でやるんだな」

 

「つかえないわね」

 

「おい」

 

 三馬鹿を勉強会に呼んだ時もそうだったが、こいつはオレをなんだと思っているんだ? 

 

 堀北が席替えを切り出した理由は至ってシンプルで、確信を持って答えられる。

 

 要は空条とお近づきになりたいんだろう。空条が最初に3連の内この席から一番遠い位置にある机の角に陣取った時にさりげなく近くに座ろうとしていたからな。

 

 まあ、現在空条の脇を固めているのは平田・軽井沢や小野寺たちな訳で追いやられた堀北は幸か不幸か勉強会のグループに幸村や外村などの面々で席についている。

 

「素直に声をかければいいのにな」

 

「……何か言ったかしら?」

 

 おっと、心の声が漏れてしまっていたらしい。

 

 おい、ポケットに手を入れるな、物騒なんだよ。

 

「ほ、堀北。あ、あのよ——」

 

 渡りに船。須藤が果敢にも堀北に話しかけてくれたのでオレはお造りに舌鼓をうつことにする。

 

「うまいな」

 

 脂の乗った身に、旨味を引き立てる醤油と香るワサビ。進学してから初めて食べたが、回る寿司屋に今度行ってみよう。

 

 それにしても、意外といえば空条が打ち上げに参加しているのも意外な事だ。

 

 話しかけづらいものの話せない訳ではないというのがここ一ヶ月半での総評だが、基本単独行動をしている男だ。

 

 好んでこの場にいるとは考えにくい。

 

 案外軽井沢たちにゴリ押されて断れなかった……なんてオチなのかもしれないな。

 

 堀北から、いやあの高円寺を含めたCクラス全員から一目置かれる空条承太郎。オレもクラスの一員として彼の動向は当然気にはなるわけだ。

 

 動向を読みきれなかったせいで損失も出してしまった。

 

 実は先の中間試験、平田が配布した過去問題の提供元である空条承太郎のせい……といえば失礼だが、あまりに須藤の学力が追いついていなかったため念のため、過去問を15000ポイントで購入していたんだが全くの無駄金になってしまったというわけだ。

 

 事前に空条に接触はしたものの、単純な観察で察することは出来なかった。

 

 なんなんだろうな、あの生命力に満ち溢れた目は。

 

 オレの質問にも全身何の反応も示すことなく『わからねえな』と答えただけだった。

 

 正攻法以外の可能性を暗示した質問をしたんだから多少瞳孔が開いたり、視線が動いたりはあってもいいと思うんだが、まぁ仕方ない。赤点退学者が出なかったから良しとしよう。

 

「綾小路殿は随分と刺身がお好きなようでござるな。拙者あまりナマモノが得意でない故お譲り申すが?」

 

「……いいのか?」

 

 いつのまにか、かなりの量摘んでいたらしい。無意識って怖いな。……が、外村の好意に甘えるとしよう。

 

 うまい。

 

「私の分もあげるわ」

 

「……この流れは覚えがあるな」

 

 すっと皿をスライドさせてきた堀北には以前奢ってもらったことがあるのだが、食べた瞬間頼みごとをしてくるといういやらしい手を使われた。

 

「人の善意を素直に受け止められなくなったら終わりよ?」

 

「その原因を作ったのは他でもない堀北なんだけどな」

 

「何のことかしら? 私はただお願いをしただけで、強制はしていないわ」

 

「追分と都合のいい解釈をしていらっしゃるようで」

 

「で、食べるの? 食べないの? 私も一度あげるといってしまった手前、断られると思うところがあるのだけれど」

 

 これが櫛田とかだった素直に受け取っていたが、堀北は警戒しなければならない。

 

 しかし、刺身がうまいのは確かで一皿二皿程度では量的に足りないというのも事実。

 

 しばらく悩んでいると堀北の右手が刺突武器をしまっているポケットに向かう。

 

「食べます。食べさせていただきます」

 

「そう。よかったわ」

 

 堀北に見つめられながら、恐る恐る箸をつける。

 

「それで頼みたいことがあるのだけれど」

 

「おい、なにか? お前はオレを人間不信にでもしたいのか?」

 

「そもそも誰も信用していないあなたが何を言っているの?」

 

「勝手に人を決めつけるな。オレにだって信頼を置く友達の一人や二人……「いないわよね?」何で知ってるんだよ」

 

「教室でのあなたは座席の都合上常に視界に入っているのよ」

 

「……まて、オレはまだ食べてすらいない。聞く義理はない」

 

「冗談でしょ? あなたが舐め回した箸で一度掴んだお造りを私に返すつもりなの?」

 

「何でそんな汚い言い方なんだよ。普通に食べてただろ」

 

「友達のいないあなたにいいことを教えてあげるわ。女子の情報網って「なんでもさせていただきます」最初からそう言えばいいのよ」

 

 結局席替えを平田に打診することになったオレは、あまり行儀良くはないが携帯を取り出しチャットを送る。

 

 しばらくして平田から45分経過したタイミングで行う旨の返信が来た。この打ち上げが90分のコースなため実質一度の席替えということになる。

 

 そして迎えた第一回にして最後の席替え。

 最近はあみだくじのアプリなんてものがあるらしく平田の端末上で行われた厳正なる抽選結果がクラストークに共有された。

 

 オレの脇を固めるのは平田と櫛田。そして正面には左から幸村、空条、軽井沢だ。

 

 堀北とはというと、またしても須藤と隣で須藤は運命を感じていると叫んでいた。

 

 今日に限って何故か普段ピクリとも動かない携帯が絶え間なくぶんぶんと騒ぎ立てているのだが食事の席で携帯をいじるわけにもいかないので電源を落とした。

 

 それにしても、こんなにもクラスの中心人物が集まると場違いな気がして居心地が悪い。しかしながら、神様が決めた席なので甘んじてこの席で食事を取るとしよう。

 

「空条、この間の過去問だけど、空条が用意したんじゃないのか?」

 

 席に着くや否やお堅い話を始めたのは幸村だ。

 

「はぁ? なにそれ、平田くんのこと疑ってるわけ? むかつくんですケド?」

 

 空条が答えるよりも先に軽井沢が食ってかかった。彼氏を軽視されているようで気分が悪かったのだろう。

 

「い、いや、そういうつもりじゃないんだが。どうなんだよ空条」

 

「終わったことだ。知ってどうする」

 

「俺たちは一緒にAクラスを目指す関係だ。それぐらい聞いてもいいだろ?」

 

「……やれやれだぜ。過去問を用意したのは俺じゃあないぜ」

 

「だ、だったら誰が」

 

「そこにいる櫛田だ」

 

 一同がえっと驚きの声を上げた。櫛田も同じように声を上げている。

 

「く、櫛田が?」

 

「え、えっと……確かに先輩からもらったのは私だけど……」

 

 おどおどと空条を見ながら言葉を紡いでいる。表情から何かを読み取ろうとしているのだろうが、空条はいつもの彫刻顔で何を考えているのかさっぱりわからない。

 

 それはコミュニケーション能力に長けた櫛田も同じなのだろう。

 

「そういうわけだ。ついでに俺からも一つ聞かせてもらうぜ」

 

 話をぶった斬ると空条は湯呑みを手に取り、唇を湿らせてから話し始めた。

 

「最近Dクラスの生徒に付き纏われている。少なくともここのとこ一週間。何をしてくるわけでもねえが、監視されているらしい。同じようなことに身に覚えはねえか?」

 

「実は僕もそれで少し悩んでいたんだ。まさか空条くんもだったなんて」

 

「あれほんと迷惑なんだよね。視線感じてキモいってゆーかさ」

 

 平田軽井沢カップルは身に覚えがあるらしい。

 

 オレは人の視線には敏感な方だと思うが今のところないな。つけられていても気付けていないだけかもしれないか? もしこの場で監視されていないのがオレだけだったらそれはそれでショックだな……と思っていたが、幸村と櫛田も身に覚えがないらしい。

 

「Cクラスの目立つ人物の監視か……なにか仕掛けてくるつもりなのかもしれないな」

 

 顎に指を当てて考えている幸村が須藤に視線を送った後、軽井沢を見た。

 

「でも、仕掛けるっていっても何を狙っているんだろう。クラスの運営方針を探る……みたいなことかな?」

 

「たしかに、クラスポイントのことがあってからは他クラスのことはあんまりクラスの内情って話せなくなったもんね」

 

「それもなくはないんだろうけど、体制を知っても何ができるわけでもないんじゃないか?」

 

「最も警戒すべきなのは、短気な生徒への接触。それに伴う学校が介入するような問題の発生だ」

 

 空条の言葉に幸村は頷き、他の面々は生唾を飲んだ。そして、須藤に目をやる。

 

「学校裁判沙汰になった場合、過去の判決例を聞いた限りプライベートポイントだけでなく、クラスポイントにも影響することもあると聞くぜ」

 

「それってかなりまずいんじゃないか? 挑発に乗って手を出したりしたら……」

 

「まずいね。みんなにもそういった行為があっても無視したり、先生に報告したりして反応しないように伝えたほうが良さそうだね」

 

 逆に言えば、敵が攻めてくるポイントがわかっていれば対策もとれるというもの。根本的な解決は果たせないがさながら大阪の陣でいうところの真田丸のような働きを期待できるというわけだ。

 

 髪も真っ赤だし、ちょうど良さそうだ。

 

 なんて考えてみたが、本人に注意喚起する以外に現実的に打てる手はない。二十四時間監視するわけにもいかないだろ? 何より二十四時間須藤を見続けるってなんの罰ゲームなんだ。

 

 その後テスト以外の学年行事が体育祭以外提示されていないことが不審だとか、ポイント変動する行事があるんじゃないのかなど話し合って解散となった。

 

 打ち上げ解散後、まばらに寮へ戻っていく生徒たち。

 

 一直線に帰っていく生徒が多い中、オレは無料支給のミネラルウォーターが販売されている自販機に向かう。

 

 余計な糖分なども入っておらず、必要な水分補給に非常に優秀な飲み物が無料なのは体調管理の面だけでなくポイント節約の面からもとてもありがたい。

 

 せっかく近くまで来たので一本購入して、夜風に当たりながら喉を潤す。

 

 そういえば、最後まで堀北は機嫌が悪かったな。途中で帰らなかっただけ成長か? 

 

 解散後、何か言いたいことでもあったのかオレを探していたようだが、触らぬ神に何とやらだ。脱兎の如く逃げ出してオレは今ここにいる。

 

 心穏やかに、星空に目をやっても東京の明るい空ではほとんど星は見えなかった。

 

「ん?」

 

 ふと、背後から聞こえてきた足音にドキりとして振り返る。

 

「ホワイトルームってのに、聞き覚えがあるんじゃあ無いか?」

 

 人影を捉える前に耳に届いた単語に思わず目を見開きそうになる。

 

 そのまま振り返ると、そこにいたのは空条承太郎。

 

 日本人離れした巨体が通路を防ぐ様に立っている。いつものように両手をポケットに突っ込んで、凛々しくもあり、涼しくもある彫刻顔だ。

 

 ホワイトルーム。

 

 オレの親父が設立した教育機関の一つだが、その存在を知る人間はごく僅か。

 

 なぜ、空条が知っているのか。確かめたい事項は幾つもある。

 

 そして、おそらく空条はある種の核心を持っての質問なのだろうが、まずはとぼけよう。

 

「な——「創立者は綾小路■■、お前の父親だ。違うか?」…………」

 

 同姓同名。偶然。言い訳ならいくらでも出来る。空条とて確信めいていようが、それを決定づける情報は持っていないはずで、この学校ではオレを通してしか情報を追加する事はできないだろう。

 

 が、空条がわざわざオレに接触してきた意味を考える必要がある。

 

 オレがこの学校に求めるのは自由と平穏な日々だ。言いふらされ、奇異な目で見られ目立つ可能性や関係者が接触してくる芽は可能な限り摘んでおきたい。

 

「……何がしたいんだ?」

 

「ふと思い出したことがあってな。気になったから確かめた。それだけだ」

 

「思い出したこと、というのを教えてもらえるか?」

 

「こっちの答え合わせに付き合わせているからな。構わねえぜ」

 

 空条の返事を聞きながら、開きっぱなしだったペットボトルのキャップを締める。

 

「俺には随分と過保護なお袋とアメリカに住むジジイが居てな。そのジジイがお袋と俺をアメリカに移住させようと日本の粗探しをしては吹き込んできていたんだ」

 

 確か、空条の祖父はジョースター不動産の理事か。入学初日に高円寺とそんなことを話していたな。

 

 ジョースター不動産といえば、世界有数の財力を保持しており、加えて世界最高峰の財閥であり医療、考古学を軸にした総合研究機関であるSPW(スピードワゴン)財団との関わりが深いことはあまりに有名だ。

 

 そして何よりも財団ひとつで世界規模の影響を与えるだけの存在と言われている。

 

 SPW(スピードワゴン)財団

 

 創設者はロバート・E・O・スピードワゴン。彼の自伝では、ロンドンの貧民街で生を受けながらも、イギリスの貴族であったジョナサン・ジョースターと出会い、それを起点に人生が大きく変わることになる。

 

 ジョナサンの死後、アメリカ大陸に渡ったスピードワゴン氏は生命の危機に瀕しながらも石油を掘り当て、世界有数の大富豪になった。

 

 それで得た莫大な個人資産全額を、全世界の医療や自然動植物保護のために使うことを決意し設立した組織だ。

 

 そんな機関に関わりを持つ人間が近くにいたことが入学初日の一番驚いたことだった。

 

 うちの親父とは権力の規模が違うからな。

 

「その中に、俺の進学に合わせて日本の教育の批判があったわけだ。その中に綾小路■■の創設したホワイトルームのことがあった。つい最近まで、忘れていたわけだが」

 

「ホワイトルームのことは何て言っていたんだ?」

 

「綾小路が父親に対して尊敬とか敬愛とかしてるっていうんなら申し訳ないが、『時代遅れの新幹線教育』『人権侵害を認可する国』てな具合で散々言っていたぜ」

 

「心配ない。間違ってないからな」

 

「ジジイが俺と同じ歳の息子を被験体にしていると話していたこと。初日のコンビニ騒動の対応、水泳の授業、毎回きっかり同じタイムでゴールすること、中間考査の過去問を入手したこと。それでちと気になったところに綾小路という苗字で繋がったというわけだ」

 

 ひらめくには些か証拠不十分気味だが至られてしまってはどうしようもない。

 

 というか、さりげなく櫛田はオレを売ってたんだな……

 

「追加で調べさせてもらったが入試の筆記では全教科50点。随分と遊んでいるじゃあねえか」

 

「偶然って怖いな」

 

 個人情報も買えるんだな。

 

「ジジイから聞いている情報が確かなら、綾小路、お前はとうに一般人の一生分以上の学習過程を終えているはずだが?」

 

「……流石にそれは言い過ぎだぞ?」

 

 割と全部知ってるな、これ。

 どうしたものか。

 空条のやつ鼻で笑ってるし全く信用されていなさそうだ。

 

「なんにせよ助かったぜ、綾小路。これでぐっすり眠れそうだ」

 

「……それは、よかった……?」

 

 空条はそのまま踵を返して歩き出した。

 

 本当に確認だけして終わるつもりなのか? 

 

「ああ、そうだ。今後、可能な限りの協力は頼むぜ」

 

「そう言われてもな。すでに毎日を全力で生きてるぞ」

 

 振り返らずに言い放った空条だが、オレの返事を聞いて引き返してきた。

 

「賑やかな学生生活を送りたいってんなら、それでも構わねえぜ」

 

「それは……遠慮したいんだが」

 

 なんだよ、賑やかな学生生活って。不穏でしかない。

 

「一応聞いておくが、協力って具体的には何をすればいいんだ?」

 

「そうだな。ひとまず、定期考査では85点以上をキープしてもらおうか」

 

「……善処する」

 

 100と言ってこないあたりに性格の悪さを感じるな。と、失礼なことを考えていたのがバレたのか空条が間合いを詰めてくる。

 

「どうしたん——」

 

 手を伸ばせば届く距離まで詰めてきた空条は、いきなり右腕を引き絞った。

 

 須藤を殴り飛ばした時と比べるとかなり増して引き絞っていて、当たればかなり痛そうだ。

 

 オレは弓を引くような予備動作を取る空条の拳に吸い込まれそうになる視線を空条全体に向ける。

 

 視線を一点に固定するのは戦闘中は時に命取りになるからだ。

 

 空条はそのまま、腕を振り抜く——と見せかけて前に出ていた脚で足払いを仕掛けてきたのでバックステップで躱す。

 

 完全に死角を狙っていた。

 かなり戦闘慣れしているようだ。

 

「っぶないな」

 

「ほう、今のを躱すか」

 

 空条がニヤリと口角を歪める。

 

「なんだよ急に」

 

「ホワイトルームの教育ってやつがどれほどのものか気になってな」

 

「お前の好奇心でオレは死ぬところだったんだが?」

 

「てめえは猫って柄じゃあないだろ。やれやれ、どうやらジジイの言ってたことも全てが盛られた話ってわけでもないようだな。戦力が増えるに越したことはねえが」

 

「びびって後ろに飛んだだけだ」

 

 オレの言葉が聞こえているのかいないのか、最後に言いふらす趣味はない。そう告げた空条は今度こそ真っ直ぐ帰って行った。

 

 やれやれだぜ……

 

 思わず空条の口癖がうつるぐらいには、消耗した日になってしまったな。

 

 

 

 

 

 

←To Be Continued




原作に沿って書いていたんですが、なんだかなーと消してたら遅くなりました。申し訳ないです。

改変バリバリの強え展開なのですが、ご了承くださいませ。

亀更新ですがまだしばらくは続きありますので、お付き合いいただければ幸いです。

1番脚がグンバツの女子生徒は?※承太郎と何かあるわけではない

  • 堀北
  • 櫛田
  • 軽井沢
  • 佐倉
  • 一之瀬
  • 坂柳
  • 神室
  • 伊吹
  • 茶柱
  • 真鍋
  • 西野
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