剣士列伝 仮面ライダー剣斬 〜亡き友、此に有り〜 作:キャメル16世
第4章「
「グォォォォォォォォ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「武者ヤミー」と蓮くんの叫びが街中に響く
「モットォ!モットォ!強サヲォォォォ!」
「武者ヤミー」はそう叫びながら何処かに飛んで行き、一瞬で見えなくなった
「あ!くそっ!」
すぐに追いかけようとした剛くんだが、見失ったようだ
「蓮くん!大丈夫!?」
「…うっ……俺……」
正気を取り戻した蓮くんだが、まだ少し混乱していた
無理もない
「……それにしても…」
ゴウマ…なんであいつがヤミーを…?
人間だった真木博士ですら、コアメダルを体内に入れていないと出来ない技なのに…
この事を思い出すと、紫のコアメダルの事を思い出す
一時期は俺もグリードのように世界が霞み、澱んで見えた
「……あいつも…同じなのかな…?」
「なんであいつが重加速使えるんだよ……訳わかんねぇ…!」
悩んでいたのは剛くんも同じのようだ
さっきのどんよりとした感触
あれは「重加速」と言って、時間の流れが遅くなったように感じられる怪奇現象であると、剛くんが教えてくれた
更に追加で、「重加速」はロイミュードにしか出来ない技らしい…
「……」
「…とりあえず落ち着いたか」
「…うん、ヤミーの事はひとまず置いといて、今は蓮くんの安否の方が優先だ」
戦いの後、俺たちは高架下に避難し、苦しんでいた蓮くんを寝かし付けていた
「……あれがヤミー…人間の欲望から生まれる怪物…」
「うん…ヤミーは人間の欲望を食って成長する……すぐに進化したのは、蓮くんの欲望が相当大きかったからだと思う」
「……そんなすげー欲望…なんなんだよ…」
「…人の欲望は人それぞれだ……それによって成長スピードも異なる」
「……こいつの欲望って…なんなんだろうな…」
「……」
「……」
1晩を過ごす為、俺は買い出しに出ていた
3人分の食事と寝袋、そして…明日のパンツ
「……綺麗な街だな…」
近くのフェンスに体重をかけ、川の水面に映し出される街の灯りを見る
水面が揺れてもっと綺麗に見えた
『……映司』
「…っ!…アンク…!」
振り向くと、アンクが立っていた
俺が驚いていると、アンクは黙って右手を出した
「…?」
『……今日の分のアイス、寄越せ』
「……」
『……』
無言でアイスキャンデーを食べるアンクと、それを傍で見ている俺
半分くらい無くなった頃だろうか、アンクがアイスを食べていた手を止めた
『…何も聞かないんだな』
「……言ったろ?もう驚かないって」
『……フッ…つくづく馬鹿だな』
「あ!またバカって言った!バカって言った方がバカなんだぞ!」
『……馬鹿は馬鹿だ…』
そう言ってまたひと口、アイスを頬張る
『……俺も馬鹿だ』ボソッ
「…え?」
アイスを食べ終えたアンクは、木から飛び降りる
『……おい映司…いいか、次にあった時はきっと殺し合いになる』
「……」
『……その時は、容赦しねぇぞ…』
「……分かってる……お前が、それでいいなら…」
『……映司…』
アンクは強引にアイスの棒を渡して来た
「……っ」
『……美味かった』
そう言ってアンクは何処かに去って行った
「……アンク…」
「……」
その近くの木の影で、詩島剛はそれを静かに見守っていた
「……ん」
「…目、覚めたか」
「……ここは?」
「道路の下だ、おかげで野宿だぜ」
「……俺は一体…?」
「……」
次の日の朝、目覚めた蓮には俺からヤミーの存在を教えた
「……俺の欲望が…具現化…?」
「お前のヤミーは、お前の欲望がデカければデカいほど成長する…らしい」
「……なんだよそれ…マジ無いわ…」
「今、朝から映司がそいつを探しに行ってる」
「……そうか…」
「……」
俺はここで、ずっと疑問だった事を聞いてみた
「……なぁ蓮…お前の欲望ってなんなんだ?」
「…なんだよ急に」
「ヤミーは欲望がデカければデカいほど強くなる…予めお前の欲望のデカさを知っていた方が、後々辛くならねぇかなってな…」
本当は違う
俺はこの旅に明確な目的がある
チェイスを蘇らせたいっていう目的が
つまりそれは、俺の欲望だ
ただ、未だこいつの旅の目的がいまいちピンと来ねぇ…
デザストの事は聞いていたが、それとこれとはまた別の話だ…俺とは別ベクトルの話だしな…
「……少し、付き合ってくれねぇか?」
「…え?なんだよ急に」
蓮は立ち上がり、朝日を浴びながら言った
「……あの人に逢いに行くんだ」
「……ここは…」
俺が蓮に連れてこさせられたのは墓地だった
墓の数はそれほど多くはない
ただっ広い土地にポツポツとあるような感じだ
「……ここだ」
「……これって…」
蓮はひとつの墓の前で立ち止まった
「……
「……蓮の師匠…」
「この人が俺に…全てを教えてくれた…」
8年前
「てやぁ!はぁ!」
「はは!筋が良いぞ蓮!その調子だ!」
「はぁ!」
2本の枝を振り回して師匠に攻撃を仕掛ける緋道蓮
当時は10歳だったが、その頃から彼は師匠に稽古を付けてもらっていた
「……よし!今日はここまで!お疲れさんっ」
「…ハァ…ハァ…ありがとうございました!」
深々とお辞儀をする彼の頭の上に置かれる大きな手
「あぁ!次は1本取れるといいな!」
「…絶対取ります!そして師匠に証明します!俺の強さを!」
「お!威勢がいいなぁ〜そういうの嫌いじゃないぞ〜!」
「本気だもん!」
「……でもな、蓮…強さは時に枷となる」
「…え?」
「守るべきものを見つけろ…そうすれば、お前はもっと強くなれる…!」
「……守るべきもの…?」
10歳の彼には少し難しい話だったかもしれない
しかし、青原海斬にはそれ程の信念があった
この7年前
先代の仮面ライダー剣斬である
彼に守れなかったもの…それは家族のように育てて来た弟子であった
「……天袮…!」
「……」
彼は時折亡き弟子の事を想いながら涙を流していた
その悲しい背中を見てきた蓮には、その意味が少しだけ分かったのかもしれない
「はっ!」
「…くっ…!」
「てやぁ!」
「…うおっ!」
彼の攻撃を受けよろける海斬
「……ははっ…強くなったな…蓮」
「もう15歳だからね、そろそろ本気で剣士を目指してるんだ!」
「……そうか…お前はそれでいい」
「…?」
「よし!今日はとことん付き合ってやる!ぶっ倒れるまでやるぞぉ!」
「…うんっ!」
その日、俺たちは本当にぶっ倒れるまで稽古を続けた
「…ハァ…ハァ」
「…ハァ…ハァ」
「……本当に…強くなったな……蓮」
「…まぁね…師匠のおかげだよ…」
「……今のお前なら、あいつに認められるかもな」
「…え?あいつって誰?」
「……着いてこい…」
ブックゲート!
茶色いワンダーライドブックを開く海斬
目の前に大きな本が現れそれのページがめくれた
その先は、白銀の大地にそびえ立つノーザンベースへと繋がっていた
「…うぅぅ…寒っ!……マジ無いわぁ…」
「……」
「……?」
無言でノーザンベースの廊下を歩く海斬に、蓮は少しだけ疑問を持っていた
「……いらっしゃい…先代、剣斬」
「お止め下さいソフィア様…私はもう剣士ではありませんので…」
「……」
大きな扉を開いた先には、大きな本や本棚が並んでおり、2階部分の奥から白い服を身にまとった女性が姿を表した
「…師匠…あの人誰?」
「あの方は本の守護者ソフィア様、このノーザンベースを守ってる凄いお方なんだぞ」
「……へ〜…」
質問した割には興味のないような返事をする蓮
そんな蓮を見て今度はソフィアが海斬に質問して来た
「その方は?」
「…こいつは、私の弟子です。今年で16になります…ほら、自己紹介しろ」
「…あ、緋道蓮…です……よろしく」
「よろしくお願いします、だ!」
「良いのよ、先代」
「ですが…」
階段を降りて蓮の側まで来たソフィア
「……緋道蓮…貴方は、ソードオブロゴスの一員として世界を守る事を誓えますか?」
「…え?」
「ソードオブロゴスってのはな、はるか昔から「大きなる本」を守り、世界の均衡を保ってきた組織の事だ。私たちは剣士として聖剣に選ばれ、仮面ライダーへと変身する」
「…か、仮面ライダー…?」
「聖剣に選ばれ、それを使って変身する者を、我々はそう呼んでいるんです」
「……聖剣…」
なかなか話に着いて行けない蓮は、ソフィアの質問に対して答えを出した
「……強くなれるなら、俺はなんだってやる。そういう覚悟だ」
「……」
「…そうですか…では」
そう言うとソフィアは1度奥に行き、戻って来た
その腕は、何かを抱いていた
「……それは…?」
「…風双剣翠風、風の力を宿した聖剣です」
「……風双剣…翠風…」
「……」
蓮は翠風に手を伸ばした
しかし、聖剣から風が吹くように蓮の手を拒んだ
「な、なんだ!?」
「…どうやら彼はまだ、貴方を認めていないようですね」
「…はぁ…やはりそうか」ボソッ
「どういう意味?師匠」
「……ソフィア様…また出直します。蓮、帰るぞ」
「え?ちょっ!ちょっと師匠!」
無理やり連れ返された蓮は海斬に投げ飛ばされた
「痛ってぇ!なにすんだよ!」
「……お前には話しておくべきだな、この話を」
「……え?」
海斬は蓮の横に座り、過去の話をした
「あの聖剣を使って変身した仮面ライダーを、仮面ライダー剣斬と呼ぶ。今までに何人もの人間が変身し、それを後世に伝えて来た……『邪気を払い、清浄なる息吹を運ぶ』剣として謳われ、その身軽さと瞬発力でこれまでに幾度となく世界を救ってきた」
「……すげぇな、それ」
「…今から12年前…事件が起きた……かつての先代仮面ライダー剣斬、鏡天袮がメギドに殺された…」
「……天袮…」
蓮は今でも覚えていた
海斬がその名を時折口ずさんでいた事を
「彼女を救えなかったのは、私が弱いからでは無い」
「……え?」
「…彼女が…強くなかったからだ…!」
「……っ」
「私がもっと、彼女を強く鍛えていれば…!あんな死に方をする事もなかったんだ!……私は師匠として、弟子を強くする義務を果たせていなかった!」
俯く海斬
彼は天袮が死んだ理由が自分の稽古不足…すなわち責務を全う出来ていなかったと思っていたのだ
それをこの12年間思い続け、後悔してきた
「……いいか蓮!正義は強さ、強さこそが正義だ!」
蓮の両肩を力強く握る海斬
その手は微かに震えていた
「……師匠…」
「お前はもっと強くなれ!同じ過ちを!もう犯したくはない!私はお前を強くする!どこまでも気高い剣士でいられる為に!」
「……」
蓮は海斬の震える手を優しく握った
「……俺、強くなるよ…強くなって、見せつけてやる!俺の強さを…証明してやる…!」
「……蓮…!」
蓮はその後、約1年間猛特訓を積み
再びノーザンベースへと訪れた
「……また来ましたね、緋道蓮」
「……風双剣翠風を」
「はい、どうぞ」
「……」
ソフィアが風双剣翠風を蓮に差し出した
蓮はゆっくりと翠風に手を伸ばした
「……俺は…強くなる…!」
そして力強く剣を握った
「…うっ!」
蓮の頭の中に流れてくる
これまで仮面ライダー剣斬へと変身を遂げた剣士たちの思いや記憶が…
「……くっ……もう…見飽きたァ!」
「……」
それを振り払う蓮
彼の手には風双剣翠風がしっかりと握られていた
「…おめでとうございます、緋道蓮……いや、剣斬。ようこそソードオブロゴスへ」
「……」
聖剣に認められた蓮は、それを海斬に1番に報告する為急いで帰ってきていた
集合場所はあの木の下
そこで師匠は待っている筈だと、蓮は心が踊っていた
「…っ!」
しかし、突如として蓮が不思議な雰囲気に包まれた
この感じ……!
ワンダーワールドと…!?
本の世界に飛び込められた蓮
周りの景色が本のページが破かれるように崩壊していく
「…蓮っ!」
「…っ!師匠!」
向こうの方から海斬が走っていていた
少しだけ口が緩む蓮だが、次の瞬間その顔は絶望の表情へと変わった
「…っ」
「…がはっ!」
「……まずは1人だ…!」
突如現れたメギドが海斬を襲ったのだ
「……師匠ォォ!」
「…あ?そこにも居たのか…待ってなぁ?すぐに楽にしてやる!」
「ゴーレムメギド」は頭部の手を飛ばして来た
「…よくも師匠を……許さねぇ!」
猿飛忍者伝!
「…変身ッ!」
双刀分断!
─────……
「……ハァ…ハァ」
「…グフッ……いいか…蓮…」
「……ハァ…ハァ」
「…正義は強さ……強さこそが正義だ…」
「……ハァ……ハァ」
「……だからお前は…」
「………ハァ………ハァ」
「……強い…!」
「……」
「……2年前、師匠は俺が初めて仮面ライダーになった日に…メギドに襲われて死んだ……ここで」
「…え」
「……」
蓮はしゃがんで墓に手を合わせた
「……アイツとの決着付けてくるよ、師匠」
「……蓮…」
「……」
蓮の目の色が変わった
何かを決心した目だ
「…俺は、強くなる…どこまでも」
「…それがお前の欲望か…?」
「……俺のヤミー…あんたらに任せていいか?」
「……え?」
「……俺は、証明する」
「……」
「…俺の強さを…!」
次回
第5章「その匂い、最低で最高。」