Road(≠less)・Camelot   作:クソ蟲妖精

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冬の女王、エルサレムに立つ

 太陽を反射する砂漠の海の中にポツンとひとつの小さな黒点が現れた。黒点、冬の女王──モルガン・ル・フェは地上を睥睨しながら空を舞う鳥をただ無表情に眺め、次の瞬間、なんの感慨も含まれない動作と共に鳥を打ち落とした。

 

 杭のようなものに貫かれた鳥はモルガンの足元に墜落した。まるで貢げ物かのように捧げられたそれに短く詠唱を告げる。仮に熟練の魔術師がこの場に居合わせたとしても、この詠唱を詳しく聞き取ることは難しいだろう。

 

 息絶えた鳥は、刹那の間に再び空に舞った。まるで生きているように見えるが、実際には生命活動は停止しており、今行っているのは使い魔としての使命を帯びた飛翔だ。

 

「なるほど。()()()()()()()()()

 

 使い魔の視界に捉えたモノをじっと観察しながら、モルガンは特に取り乱した様子もなく、呟く。しかし、その内心では異常な速度での現状への分析と推測が行われていた。常人がその思考を読み取ろうものなら、尋常ではない情報量に発狂することになるだろう。

 

「この召喚────いや、顕現がどのようにして実現したのかはともかくとして、この私の目の前にあの城を並べるとは」

 

 使い魔が捉えたモノ────その白亜の城(キャメロット)を、モルガン・ル・フェは知っていた。自分ではない自分が、狂うほどに追い求め、結局手に入れられなかった箱庭。その執念は別世界の自分の宝具にすら影響を与えるほどに、強く、悍ましい。

 

「嗚呼、これが貴女(わたし)が恋焦がれた理想郷。 なるほど、確かに美しい」

 

 言って、くつくつと魔女は笑った。全くの別物とは言え妖精國にて自身なりのキャメロットを築いた冬の女王(モルガン)でさえ目の前に存在する城に嫉妬の念を抱いてしまうというのに、汎人類史の妖妃(モルガン)の情念はどれほどに苛烈だったろうか。

 

「────撃ち落とされましたか」

 

 使い魔と共有していた視界が突如としてブラックアウトする。抱いていた情念の渦は消え、現状の把握に思考のリソースを回す。想定はしていたが、察知がかなり早い。魔女はまた短い詠唱を呟く。恐らく撃ち落としたであろう弓騎士が現在地まで即座に飛んでくるであろう。認識阻害により気配を遮断したモルガンは事前に決めていた方向へと歩き出した。

 

「記録によれば確かこの方向に村があったはず。 まだ消し飛ばされていなければ、の話ですが」

 

 カルデアで流し見した程度の記録でも、モルガンは正確に記憶に刻んでいた。獅子王にも、太陽王にも悟られないであろう場所を割り出すことなど造作でもない。

 

 これからのことを思索しながら、モルガンは口元を少しだけ緩めた。

 

「私としたことが、あのようなものを見せられるとやはり」

 

────そそりますね。

 

 魔女は背後に迫る弓騎士など気にした素振りもなく、その場から立ち去った。

 

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