Road(≠less)・Camelot   作:クソ蟲妖精

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配下、召喚

 目的地に辿り着いたモルガンは獅子王に存在を悟られないよう、出来る限り慎重に陣地を形成しながら、思索する。主題は無論、なんで自分が今ここにいるか、である。

 

 記憶の限りでは確か友人(ハベトロット)配偶者(マスター)と開くはずだったお茶会に向かう途中だったはず。しかし、モルガンは素敵な花園ではなく、獅子王によって支配されるエルサレムに立っていた。

 

 当然、レイシフトをした覚えなどない。そもそも、神霊と化した騎士王が顕現したという特異点はとうの昔にカルデアによって修復されたはずだ。それは記録を見たモルガンも知っていた。では、一体今のこれはなんなのか。

 

「お茶会前の余興としては充分ですが、すこし説明不足が過ぎますね」

 

 手早く、確実に陣地を作り終えたモルガンはつぶやく。獅子王に気取られない程度の規模であるため、頼りないものであるが、無いよりはマシだ。

 

「妖精國程ではないとは言え、中々にいい土壌なのに満足に利用出来ないのは口惜しい。 生前の私であればコソコソする必要などないのですが……」

 

 生前の権能があれば、それこそ今すぐキャメロットに強襲を仕掛けても良かった。いや、神霊相手にそれは流石に無策がすぎるが、少なくとも今のようにどこぞのゴミ虫の如く隠れて動く必要は無かった、とモルガンは内心で苦々しく舌打ちをする。

 気分を落ち着けたモルガンは仕方なく、次の作業へと映った。

 

「召喚式はこれでいいでしょう。カルデア式を参考にしたのが少し癪ですが」

 

 ほとんど一瞬で召喚式を書き上げたモルガンは詠唱を始めた。英霊召喚、それは獅子王に存在を悟られるリスクがある行為であったが、今後のことを考えるとモルガンにとっては必須事項だ。

 

 モルガンが詠唱を唱えるうちに、眩い光がその周辺を覆った。光が収まりそこに傅くは

 

「────妖精騎士ガウェイン、ここに参上いたしました」

 

 恐ろしく大柄な体躯を備えた、どこか獣を想起させるような女騎士だった。

 

「妖精騎士ガウェイン、よくぞ私の召喚に応じてくれた。 顔を上げなさい」モルガンは女王然とした態度で述べる。妖精騎士ガウェイン──バーゲストはそれに応じ顔を上げ、直ぐに目の前にを広がる光景を見て、困惑したような表情を浮かべた。

 

「へ、陛下…?これは…」

 

「その前に、お前の最後の記憶はなんだ?」

 

 戸惑うバーゲストを手で制してモルガンが問う。バーゲストは動揺を隠せて居ないものの、どうにか質問に答えようとした。

 

「き、記憶ですか…? 確か、ついさっきまでキャスターに食事を強請られていたような…」

 

「カルデアに居たと、それで間違いないのですね?」

 

「はい…」

 

 つまり、バーゲストも時系列的には未来にあるはずのカルデアから召喚されたということだ。英霊の座は未来も過去も関係ない概念であることは把握しているが、本来であれば異聞帯の存在である自分たちが対象であるとは考えにくい。

 なにより、魔術王の人理焼却によりこの時点での人類史の未来に、異聞帯が存在しうる余暇は無い。モルガンたちの存在はそれこそ魔術王の人理焼却の失敗の証明の具現化のようなもの。異質なカルデア式の英霊召喚であっても、有り得ない事態だ。

 

「そも、私はなぜこの地に顕現した…?」

 

 抑止力による召喚? それはもっと有り得ない。人理を守るために作用する抑止力が、人理に仇なす側の──と言ってもモルガンにとっては終わった話ではあるが──モルガンを利用するとは思えない。

 

 そこまで思索したところで、モルガンはようやく目の前の配下に目をやった。どうにか困惑を表に出さないよう無表情を取り繕っている様子だが、モルガンからすればそれはすぐに読み取れる程度の仮面だった。

 

「ああ、呼び出したと言うのになんの説明もしていませんでした。 妖精騎士ガウェイン、お前が質問をすることを許しましょう」

 

「はっ! では……最初に私がどのような地に召喚されたかをお教えして下さらないでしょうか!」

 

 バーゲストは恐縮した様子で質問を述べる。

 

「ここはイエサレム。 汎人類史では聖地として扱われる土地であり、今は特異点でもあります」

 

 モルガンは簡潔に答える。あくまで必要最低限の情報を提示した。

 

「特異点…? では、陛下はご自身でレイシフトをなさった上で、私を召喚したと」

 

「そうではありません。 気がつけば私はこの地に立っていました。 そもそもこの特異点は人理漂白以前にカルデアによって修復されたはずのものです」

 

「……ではこれは一体」

 

「それを詳しく調べるためにお前を召喚したのです。 妖精騎士ガウェイン」

 

「───! ………はっ!」

 

 バーゲストは緊張を身体に走らせる。 目の前の主は極めて冷静な態度を崩さないが、事態としてはかなり緊迫していることを察してしまったからだ。 妖精國にて2000年もの間、その玉座に君臨し続けた女王ですら全容を把握しかねる。そんな旨のセリフを投げ掛けられて一切の緊張をしないものなど、恐らくいない。

 

 キャスターとかは例外でしょうけど。 バーゲストは内心で厚顔無恥に飯をたかってくる楽園の妖精の顔を思い浮かべた。

 

「とりあえずは当面のリソースが欲しい。 丁度、近くに手頃な騎士共がいます。 この地を統べる神霊に気取られないよう、極めて迅速に狩って来て欲しいのですが、出来ますね?」

 

「────御意のままに」

 

 妖艶に笑う女王に、猟犬たる黒犬公は深く跪き、立ち上がった。主人の命令通り、矮小なる騎士たちを狩るために。

 

(────?)

 

 目の前に立ったバーゲストを見て、モルガンは内心で違和感を覚えた。

 

(私との身長差、ここまであったでしょうか)

 

 目の前の忠実な配下がなんだかいつもよりも大きく感じる。当然、心理的作用によるものではなく物理的に、だ。しかし、深く考える前に当のバーゲストは獲物に向かって走り去ってしまった。

 

 内心で首を傾げるモルガンが答えを得るのはほんの少し先の話。

 

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