超昂大戦 二次創作SS 眠れルビー、愛する人の腕の中で! ~心を喰らうニセ河童~   作:環 藍河

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※時間軸は原作第1部完結直後となります。
※登場人物・カノは当作(作者・環藍河)オリジナルキャラです。登場自体を原作改竄、不快と感じる方はお控えください。(環なりに原作へのリスペクトを込めておりますが…)


前編 河童少女のココロのスキマ

窓の外はゲリラ豪雨。

基地の屋根からはウォーターフォール、センターコートには小川のパレードコース、そんな即席のウォーターアトラクションがサプライズ登場する、そんな夏の昼下り。

 

ぷしゅうっ。

「トキサダさん!! センパイはどこ!?」

血相を変えて司令室に乱入、ずかずかとトキサダに詰め寄るのは、神騎キリエルこと、報生キリカ。

「…? 今は君たちの元の世界に、帰っているだろう?」

「嘘っ!? …じゃあ、さっきのあの人、誰だったの!?」

……

慌てふためくキリカを静止し、順を追って見たものを説明してもらう。

どうやら、彼女の想い人・央堂継彦に酷似した人物を、基地内でついぞ発見。息を呑んで二度見を試みるも、行方を見失ったらしい。

 

オルタナスタインとの戦いが明け、沙由香・ハルカ・エリスは一時の休暇として…できれば、できるだけ長く…トキサダの中に居るそれぞれの想い人ともども、元の世界に戻している。

一方、キリカはアカリの…エスカルビー・アステライズの飛行訓練コーチとして、少しこちらに残ってもらっていた。

「ねえっ、今日ここに来るお客さん、全部把握してるでしょ? センパイみたいな人…ううん、どっかの世界の同一存在が、トキサダさんの他に来ているのかもしれないっ! 教えて!」

 

ぷしゅうっ。

「長官さんっ! 何で…何でタカマルがいるのよ!?」

「ナリカ…? タカマルはハルカと戻っているだろ?」

「だって私、絶対にタカマルを見間違えたりなんかしないっ!」

 

ぷしゅうっ。

「トキサダさんっ! ズルいですよ、あんな大きくてモフモフのワンちゃん、ダイビートに連れてくるなんてええっ! 何で私にあらかじめ教えてくださらないんですかああっ!?」

「ちょ…長官っ! もしかしてサプライズなの?! さっき広場でヤルトラマンNOOBが、NOOB様がっ!!」

 

…どうやら、幻として視える対象は、人限定ではないらしい。

それにしても、メイファールはともかく、身長20mのNOOBが見えて、何一つ疑わないうららはアホの子なのか、一周廻って大物なのか。

 

……

「紹介しよう。魔力因子を保有する可能性があり、検査のためダイビートで一時保護することになった。」

「ふ…深浦、カノといいます…よろしぐっス…」

東北なまりの強い、アカリたちより少し年下くらいの、素朴な少女。

 

「雨の日や沢の近くで彼女と会うと、見る人には自分の大事な人の姿に見えるという。状況説明からは、河原や渓流で悪戯をするという河童に近いが…。東北の夏祭りを手伝うため現地を訪れていたツルコが、話を聞いて俺に報告してきた。」

「み…皆さんさ、ご迷惑、かけたっス…!」

「検査結果次第では、ダイビートでの長期保護になるかもしれない。みんな、仲良くしてやってくれ。」

 

超昂戦士には積極的に夏季休暇を取ってもらっているため、今日の待機は先のキリカ・ナリカ・メイファールにエスカチームを加えたくらいで、他はほとんど非番。

「わあっ! 新メンバーだあ! カノちゃん、よろしくねっ!」

「アカリ、話を聞いていたか? 検査結果次第では、早く帰ることだってある。ずっと居ると期待して、空振りになると辛いぞ。」

「それなら、なおさらだよ! 一期一会、短い期間でも、ダイビートのいいところ、いっぱ〜い見て触れてほしいな。何でも私たちに聞いてねっ!」

「あっ…、あ、ありがとなっス…」

 

(〘【〔はあ……っ…〕】〙)

キリカもナリカも、メイファールもうららも。

一度燃え上がった希望が萎れた4人は、魂ここに在らず。

(…精密検査が決定して長期滞在になった場合、課題は、チームリバースと接点を持たせないことだな…。)

いちばんの想い人と不幸に引き剥がされた、ユカと春霞の二人。雨の日や川べりでふと出くわしてしまい、偽物と知ろうものなら、カノの生命の保証が無い。

トキサダは当面、カノを自室待機とし、外出を晴天の日に限ると厳命した。

 

一方。

(…河童…かな…? …な〜んか、良くない予感がするのよねぇ…)

エリーの違和感は、確証を持てないまま彼女の中でくすぶっていた。そこへ。

 

「やあ、これはこれは、恋人殿。」

「ル…ルカ?! あなた、こっちに居たの?」

NAUの錬金術師にして、ミミックの魔力因子を持つ魔女、ルカ・ペルサキス。ダイビート基地でも安定の、セパレートの下着の上から薄衣のネグリジェ姿で、談話室に参上。

「同輩から、魔女因子の同定検査を受注した次第さ。費用はクラリス経由の請求ゆえ、公明正大・清廉潔白。安心し給え。」

「ウチもおりまっせー。今回は水辺で能力発現する子の検査やさかい、このマーフォークのプカルルさんの真骨頂! ひと肌もふたエラも、脱ぎまっせー!」

 

……

医務室で早速、カノの検査が始まる。…と言っても、頬の内側の細胞採取による遺伝子検査と眼底検査、それに身体検査に問診と、至って普通のオーダー。

…ただ、検査官が普通じゃないだけだ。

 

「ふむ、東洋人ながら、大陸系の特徴も散見。肌の白さが際立つとは、実に興味深い。」

…とネグリジェ姿で全身くまなくカノの外見的特徴をなぞる錬金術師。

 

「ひゃー、カノちゃん、ゆーたっけ? あんなー、雨の日とか、脇下やあばら骨とか、ムズムズしたり、開いたりとか、あらへん? …あ、河童や言うてたね。ほな、頭頂部のつむじ辺りとか、手指足指の水かきとか、どない?」

…と、関西弁でまくしたてる白衣の錬金術師。

 

最新の医療機関でMRIや科学的検査を施されると思っていたカノにとって、想像の斜め上を行く検査。

(と…都会のお医者様って、こんっなにスケッスケな格好なのが、当たり前なんだべか…? わ、わだしの言葉…通じなかっだら、どうしよう…?)

 

そして。

「最後の診察だが、接現力の簡易検査となる。」

「ホンマは実際に、トキサダくんにDチャージしてもろて、魔力変化を測定するんがええけど、初診でそれやとペイシェント・ハラスメントやからなあ。」

「カノ君、一般の婦人科でも卵子や精子の活動観察程度の、センシティブな医療行為が必要とされる。これもその一環さ。方法は一任する。」

「カノちゃん、自己チャージでも、ご希望ならウチが補助することも可能やけど…もしかして、意味わかってはらへん? …あんな〜。」

(ごにょごにょごにょ…)

「…あっ、あああっ、あいい〜〜〜っ!?」

プカルルちゃんの、甘々とろとろハチミツ教室。

……

「カ…カノちゃん、検査、大丈夫だった?」

「…と、都会って、しったげ、凄えかったっス…!」

…何があったかは、患者のプライバシーのため、特に秘す。

 

……

カノは食堂で、先の7人にご馳走したいと、ジンギスカン鍋を取り出す。ルカとプカルルは検体検査中、トキサダとユーノは司令室待機で帯同断念であった。

「ご…ご挨拶代わりっス。お口に合うモンだか、自信ねえっスけど…」

「わああ〜っ、私もここで、初めて皆さんと食べたのが、お魚の鍋だったんですよ! カノさん、もうお友達、確定ですね!」

鍋と聞いてメイファールの素敵な思い出が蘇り、先刻までわんこモフモフの夢破れたしょんぼり顔だったのが嘘のように、ぱあああっと顔に赤らみが戻る。

 

「あーっ、あたし知ってるーっ! 河童伝説の遠野の人って、ウールを獲る羊をいっぱい飼ってたから、ブリキのバケツでコンロ作って、その上で野外ジンギスカン鍋、みんなでやるんでしょー? あたし、ラムもマトンもイケるクチよっ!」

 

うららの指摘は大ハズレで。

カノがクーラーボックスから取り出したのは、ビニール袋入りの豚モツぶつ切りと、これまたぶつ切りのキャベツに、豆腐。

 

「う…うららさん、そもそも、わ…わだし、岩手の遠野の出身でねえっスよ? 出身は秋田の鹿角(かづの)っつって…」

 

河童で有名な遠野は岩手県南部の山間部の市。

対する鹿角は秋田の北東部、十和田湖に近い山間部の市である。

当然、鹿角に河童伝説もジンギスカン文化も無い。

 

「は…はあーーっ!? じゃ、じゃあ、そのジンギスカン鍋は、何なのよーーっ!?」

「あ…これでわだしん家、ホルモン鍋、食うんですけど…。」

 

プラネタリウムの天球のような、もしくは彩色すればそのまま北欧海賊が兜として頭にかぶりそうな、黒光りする鉄製ジンギスカン鍋。

…これで、ホルモン煮込み鍋?

 

「に…ニセモノよーっ!! NOOBもニセモノ、出身地はいっこも河童と関係ないニセモノ、鹿角ってどこよーーっ!? あんた、フェイク属性盛りすぎでしょーーーっっ!?」

「そ…そんったこど、言われても…」

 

カノがホルモンを鍋のてっぺんから流し込み、ジンギスカン鍋のへりに豆腐を整列。キャベツを鍋蓋代わりに上から被せて、蒸し焼きを始める。

居酒屋メニューのような煮込みホルモンではなく、ニンニク唐辛子味噌仕立てのホルモンは、天球部で焼くか、へりに落ちた肉汁混じりの甘辛いタレで煮込むか、どちらも味わい深い。

 

「なっ…何コレっ?! 白ごはんに合うっ!」

「お豆腐も、汁気を吸い込んで、濃厚!」

「わあ…これはさすがの私も、再現困難…でも、タカマルやハルカさんにも食べさせたいっ!」

「れ…冷凍なら通販、あるっス…。」

「か…河童はニセモノだけど、この味はホンモノ…ねっ。わ…悪かったわ。」

「あ…き、気にしねえでくださいっ。がっつり、食ってければ、嬉しいっス…。」

 

キリカやメイファール、ナリカもエスカチームも、初体験の鍋に胃袋を掴まれ、為す術もなく完食。

「〘【〔ご馳走さまでしたー!〕】〙」

「お粗末さんでした。へば、食器と鍋、洗うスから、そのまま置いておいて下さい。」

「ダメっ! 働かざる者、食うべからず、だよ。みんなで片付けよー!」

「【『おーっ!!』】」

 

下膳と皿洗いが人海戦術で手早く済むも、焦げたタレがびっしり付いたジンギスカン鍋は、アカリのガッツ全開でも手強い。

「アカリさん、それ、コツがあるっス。わだしさ、貸してけれ。」

「じゃあ、任せるね。」

「はあ…こんなに大勢で食べたの、何年ぶりだべ…。皆さん食って下さって、ありがとさんでしたぁ。」

カノのつぶやきに、誰ともなく反応する7人。

「えっ? 給食とか、友達と遊びに行ったりとか、無かったの?」

 

「わだし…子どもの頃からこの力…水際でわだしのことが、別の人さ見える力…。気持ち悪がられて、学校さ行ってもみんな近寄らなくて、わだし、そのまま学校、行かなぐなったっス…。母ちゃんはいつも『大丈夫だよ、あんだが行きたくなければ、ずっとウチにいていいんだよ』って言ってくれたっスけど…。」

 

カノがうつむき気味に続ける。

「だども、母ちゃんだって内心、わだしのこと、きっと気持ち悪いはずなのに…。親戚も気持ち悪がって、家さ寄らなぐなってしまっで、母ちゃん、わだしのせいで、自分も一人きりになって…。」

カノの眼が潤む。

「もしも私が、母ちゃんには死んだ父ちゃんに見えてたりしたら…わだし、唯一そばさ居てくれる母ちゃんにも、残酷なことして、いっぱい我慢させでしまってる…ううっ…!」

 

「あのさ…カノちゃん。お母さん、何一つ、我慢なんかしてないと思うよ。」

「ふえっ? …アカリさん?」

「だって、カノちゃんがもしも私の妹なら、私はぜっったいにカノちゃんを護るもん。私、弟がいるけど、もし学校で一人きりになっちゃったら、必ずそばにいて、私が味方だよ、一人じゃないよ、って言うと思う。自然と、そうしたいと思って動くよ? カノちゃんのお母さんも、おんなじ気持ちだと思うなあ。」

「…うう…。」

 

「それにカノちゃんの力って、川や沢のそばでカノちゃんが、その人の大好きな人に見えるっていうんでしょ? だったら、お母さんにはカノちゃんがそのまま、カノちゃんに見えているんじゃない?」

 

「…えっ…? …あ、あいいーーーっ!?」

耳まで真っ赤に染めて、赤面するカノ。

 

「カノ…お前、今までご母堂様に直接聞いたことは無かったのか? 自分が誰に見えるか、と」

「き…聞けなかったっス…。聞いたら、親子の関係も壊してしまいそうだったスから…!」

「あっ…! す、すまない、無神経な問いだった!」

「いえ、なんともねえス。…はぁ…!」

ヒビキの問いに答えながら、再び鍋の汚れを落とす手に力を込めるカノ。

その力みすぎの理由は、7人全員が解っていた。

 

……

(はあ…、たった半日で、いろんなことがあったなあ…)

ゲストルームでシャワーを浴び、床につくカノ。

ぽかぽかするのは、鍋やシャワーだけが理由では無かった。

 

(母ちゃんなら、わだしのこと自然と護るよ、わだしがいちばん好きだから、そのまま見えてるはずだよ、か…。考えもしながっだなぁ…)

一人で何年も煩悶した問いへの答えを、あっさり出されてしまった。

 

(アカリさん…地球を救ったスーパーヒーロー…なのに、田舎から出てきたばっかしのわだしのこど、こんっなに親身になって考えてけるなんて…。)

母子二人のすれ違いが産んだ心の空白を、アカリ始めダイビートの人々は、あっさり埋めてしまった。

(…ううっ、母ちゃん…!)

検査結果が出たら、真っ先に伝えよう。

帰ったら、親孝行、絶対しよう。

小さな決意を胸にまどろむ、カノ。

 

だが、その決意は、汚れた爪に引き裂かれる。

(ケヒヒヒヒッ、探したぞお、見つけたぞおっ! その力、我が野望の糧なりいっ!!)

(はっ! …ひいっ!!)

ゲストルームへ闖入する、禍々しい鼠。

そのままカノに瘴気を吐き出し。

「あ…あああっ、〜〜〜っ!」

骸羅骸羅のときはヒョウほどもあった、漆黒の獣。しかし、カノの眼前の鼠…インキュラブラーを後天的に、人為的に小型化した獣は、やがて少女の善意を制圧し。

彼女の真の因子が、その邪な性質を発露する。

 

……

ほぼ、時を同じくして。

「ご同輩、カノ殿の因子の正体、有意水準0.01で検証、確定したよ。」

「…こんな深夜に告げねばならないほど、危険な因子、ということか。」

「ご明察。」

「トキサダくん、アレはめっちゃ危険やあ!」

 

「彼女の因子は、河童でも、そもそも日本妖怪の類いですら無い。

あれは…ギリシャ神話の水棲妖魔。

リュムナデスの因子だよ。」

「なっ…!!」

 

ビーッ、ビーッ、ビーッ!

 

「緊急警報。パトロール中のエスカ・ルビーが正体不明の敵と交戦中。場所はDW5W、閂川上流部。待機中の戦闘スタッフは、至急援護に急行して下さい!」

 

続けざまに、戦闘中のルビーの音声が入電。

 

『そ…そんな、なんであなたが…きゃああああっ!!』

ルビーの悲痛な叫びは、爆発音にかき消された。

 

 

【後編へ続く】




おはようございます! 作者の環 藍河です。
なんと今回は朝活時間の投稿となりました。生活乱れてるわけじゃないんですが…。普段は深夜0時前後の投稿が多いので、読者層が変わる…なら、それもまたいいのかな?

この週末、お盆休みでコミケ突撃の方も、超昂大戦のキャラ強化に勤しむ方も、新規アイテム(CDとか同人誌とか)到着を一日千秋で待つ方も、それぞれの超昂大戦のお楽しみが待っていることと思います。
そんな中で小っ恥ずかしいのですが、オリジナル展開の拙作を投稿する暴挙に出ました。プレイヤースタミナ切れの回復待ちの間にでも、ちょこちょこお読みいただければ幸甚です。

さて。
環のSS、読者様の期待度と満足度はそれぞれいかがなものか、今後もし、こんな駄文書きでも期待される超昂SSの方向性があるならいかほどか…。6月末からSS投稿を始め、1ヶ月半でちょうど節目となる第10作の今回、皆様の審判を仰ぎたいと存じます。
今回初めて、このSSは、読者感想を「ハーメルンのログインユーザー限定」から「一般(非ログインユーザー)からも受け付ける」にしてあります。単文でも評価数字だけでも大いに歓迎。
【禁則事項】
(1)18禁内容のご希望は沿いかねます(環の「宗教上の理由」です)。
 …あ、環は18禁、読むのは好きです(でなきゃ超昂大戦を遊ぶわけがない)。
(2)ご批判は建設的に頂戴できますれば幸いです。ただの罵倒はご容赦を。
(3)ご要望のすべてに応えることはお約束できません。「無視しやがって」とお怒りになりませんよう、ご寛容に…。

後編は一両日中に投稿いたします。それでは一旦おいとまします~。
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