転生したけど、転生特典は一部遅れて与えられるらしい 作:五段活用
「残念ながらあなたは死んでしまいました」
目が覚めると白い部屋にいた。そして目の前には1人の少女。訳分からん。
「はい??」
なにそれ新手のドッキリ?こんな一般人攫ってまですることじゃねえだろうが。
「残念ながらドッキリではありませんよ。あなたは眠った後に家に押しかけてきた2人組の強盗に殺されてしまったのです」
え、なに?なんであんた俺の考えてること分かんの?テレパシー?
「ええ。わたしこれでも神様なんですよ?」
どゆこと?訳分かんないんだけど。
「まあいきなり神様を名乗る少女に死んだと言われても混乱しますよね。でも話を進めさせていただきます」
「は、はぁ……」
「まず、あなたは死んでしまいました。ここまでは先程話しましたが、生前あなたが行ってきた善行に考慮して異世界に転生してもらうことになりました」
「え?」
ちょっと何言ってるか分からないです。ハイ。
「だ、か、ら!あなたには異世界転生をしてもらうんです!これでちゃんと聞こえましたか?」
いや、別に聞こえてなかったわけじゃないんだよ。
「あら、そうですか」
そうだよ。聞こえてはいるけど理解がちゃんと出来なかっただけだから。
「なら大丈夫そうですね」
「ハイ」
「それであなたが異世界に行くにあたっていくつかの特典を授けることになりました。おめでとうございます」
「ということでこれをあの的に投げてください」
音も立てずに的が現れる。そしてデカいダーツの矢を渡された。
「いやなにこれ」
「??ダーツの矢ですが?」
いやそれは分かるよ。でもこれデカいし絶対投げにくいしあそこに当てる自信ないんですよ。分かります?この気持ち。
「大丈夫ですよ。外れても当たるまで何回投げても構いませんから」
「あ、そうですか……」
「ちなみにこれの他に2本同じものを投げてもらいますからね。今のうちに慣れておいてくださいね。ということで、1本目どうぞ投げてください」
よし、俺の運命を決める一投、おりゃァァァァ!……当たった。
「お、これはこれは……魔法能力超強化!いいもの引きましたねぇ……では2本目どうぞ」
よし、もう一丁!おりゃァァァァ!……当たった。
「お、これは良い家柄!これも使えますよ!では最後の矢をどうぞ」
最後の矢……おりゃァァァァ!……当たった。
「あ……これは武器2つ!これは私が作った武器をあなたにプレゼントするようですね。何か欲しい武器はありますか?」
欲しい武器って言われても……まあ刀と拳銃?それ以外使えそうにないし。特に槍とか薙刀とか。
「ふむふむ……刀剣と拳銃ですか。分かりました。また作ってあなたに送りますので……では特典も決まったことですし、早速転生させますね」
あ、もう転生の時間なのね……早いなぁ。
「新しい人生を楽しんできてくださいね!」
バチン!
あれ、目の前が暗くなって……
「はっ??」
10歳の誕生日、こんなやりとりと俺に前世があったことを思い出した。そして前世の記憶、26年分の記憶が10歳の俺の脳に流れ込んできた。もちろん俺の脳がそれを処理しきれるわけなく、3日間高熱が続いた。
朝起きると熱が引いていた。布団から降りてトイレに行こうとしたら、ベッドの上に紙があった。
「ん?なんだこれ」
さっきまで俺が寝ていた布団の上にあるのは不思議だが、とりあえず読んでみる。
拝啓 岩槻 慧様
あなたを転生させた神です。元気ですか。私はあなたがいた時と変わらない生活をしています。
さて、この手紙があなたのもとに届いたということはあなたが前世を思い出し、私が授けた能力が使えるようになったということです。
あなたを転生させる前に伝え忘れていたのですが、あなたの転生特典の『魔法能力超強化』は5回ほどに分けて贈られます。『良い家柄』は既に発動しております。『武器2つ』は次の機会に贈ります。それまでお待ちください。
この手紙はあなたが読み終われば溶けてなくなります。
それでは2度目の人生をお楽しみください。
神より
「神様からの手紙かよ……」
読み終われば、手紙は書いていた通りに溶けてなくなる。
「とりあえず、居間に行こ」
「あっ!サトイ様!」
今世でも俺の名は変わらない。ただ容姿は大きく変わった。銀髪に碧眼。まるでラノベの登場人物のようなものだ。
「……ユナ」
ユナは俺の世話役を務める女性である。俺の父は上流貴族だが、ユナはその館で俺の母に仕えていたらしい。そして母が他界して父に俺の世話役を務めるように言われ、帝都から離れたここ、カーレ村で俺と生活をしている。
「熱は……もう大丈夫なのですか?」
「……もう大丈夫。心配かけた」
「それなら良かったです……あ、サトイ様何か食べられます?」
「いや、やめとく。今からちょっと出かけたいから……」
「なるほど……途中で体調や気分が悪くなれば、私に《テレパシー》を送ってくださいね」
直方体のキューブ……スマホ擬きを渡される。これは人と離れていても意思疎通を可能にするものである。
「ウン」
土間で草履を履く。
「では。行ってらっしゃいませ」
「……行ってきます」
ということで家の外に出たのだが、家の裏には森林がある。その森林の中には木も生えていない開けたところがある。俺はそこで魔法を試したい。理由は誰にも見られたくないから。
「んー……移動に使える魔法……あ、これ使えそう。《
《
とりあえず飛んでいる間に俺の技能について確認する。《
そんなことをしているうちに目的地についた。着陸する。
「っと、到着」
鳥やら虫やら色々いる。
「ふぅ、とりあえず休憩」
切り株に腰を下ろす。そして飛んでいる間に出来なかった今世について整理する。
まず、俺は転生特典のおかげか、上流貴族の子として産まれた。しかし母が俺を産んだことで病気にかかり、それが治ることなく死んでしまう。父は母に仕えていたユナに俺を何らかの理由で暮らしていた帝都から離れた片田舎、カーレ村で育てるように命じた。ここまでは2年くらい前、俺が記憶を思い出す前にユナが俺に話してくれた内容だ。
ここからは俺の体験だが、俺はこの銀髪碧眼の容姿から鬼の子と言われカーレ村の人々から避けられ、後ろ指をさされる存在である。そして村の教会での子供たちの魔力測定が行われた時、俺は魔法を使えない上に魔力が全くないと分かった。村の子供たちはそれを見て俺を虐めるようになった。
要するに俺はいじめられっ子なのだ。まあ色々思い出した俺からしたらそんなのガキの遊びだし。別に気にしない。それに今は魔法も使えるし、やられそうになったら先にやればいいだけだから。
ということで整理タイム終了。そろそろ魔法を試そうかな。
と、その前に一言。
「喉渇いた……」
そう、喉が渇いた。夏の炎天下で飛んでた上に日陰じゃない切り株に腰を下ろしていたから、結構な量の汗をかいた。そりゃあ喉渇くよね。水分飲まないと熱中症で倒れるかもしれないが、家から飲み物持ってきてない。
どーしようかな……あ、確か前に森林の奥に歩いて行った時に湖あったからそこの水を飲むかぁ……。
「《
もう1度飛ぶことにした。魔力を放出して飛び上がる。湖は確か家と真反対の方向にあったような……。
そして30分(笑)後……。
湖が見えた。湖畔に着陸する。あれ、でもこれ……。
「水だ水……」
でも湖の水は茶色く濁っている。飲料水には程遠い水である。このまま湖の水を飲んだら多分死ぬ、俺のサイドエフェクトがそう言っている。ということで水を《鑑定》します。
「《鑑定》」
ピピピピピピ……デン!
鑑定結果が出ました!
【カーレ湖の水】
【詳細:トクシックトカゲの毒等3種の毒に汚染されたカーレ湖の水。飲むと死に至る可能性高】
やっぱり鑑定して正解だ。猛毒水を飲まなくてよかった。これ飲んでたら死んでた(可能性が高い)からな。
だがこの水を飲めないとなれば近くの商店に寄って……いやこんな森にそんなのないな。家に帰って……は遠いから帰ってる途中に倒れるな。もう1回飛んで川か湖を見つける……のも他にあるか分からんし。
ということは……。
「どうにかしてここの水を飲むしかないのか……」
いやキッツ!