転生したけど、転生特典は一部遅れて与えられるらしい   作:五段活用

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戦闘続きの日

 

「わわ、オークだ!」

 

 

「それにしても数多くない?」

 

 

「オークやゴブリンは群れでいるって言うけど……」

 

 

「ん〜、あたしがやって来ようか?」

 

 

「いや、気分悪いなら休んでな。俺がやってくるから」

 

 

「じゃ、お言葉に甘えて……」

 

 

「ちょっとやってくるわ。サラはグロいの無理なら見ない方がいいよ」

 

 

 さて、オーカ達魔狼族との戦闘訓練を除くと人生で2、3回目の対魔族戦闘だ。

 

 相手はオークなので魔法を遠くからぶっぱなしていればいずれ倒せるだろう。死体の状態を考えなければの話だけど。

 

 

「《風圧撃(エア・プレッシャー)》」

 

 

 《風圧撃(エア・プレッシャー)》は物質にぶつかる風圧を凝縮して放つ技だ。その威力は強力で、まず1体の四股が圧力でぶっとんだ。そのうちそいつは息絶えるだろう。

 

 間違っても顔面には当たらないようにする。顔面に当たったら顔面が破裂してグロい状態になるからね。俺は自分から進んでグロい死体を見たいわけじゃないので。

 

 しかしこれはとても効率が悪い。1体に4発、つまり10体に40発の《風圧撃(エア・プレッシャー)》を使わなければならない。それに死体の状態もあまり良い状態とは言えない。

 

 『魔力特性付与:分解』。自分の魔力に分解属性を付与するスキルだ。この状態の魔力を手刀に纏えばとても切れ味のいい防御不可能の強い武器の完成だ。《風圧撃(エア・プレッシャー)》より断然こっちの方が労力と魔力の消費が少ない。

 

 

「おお〜凄い手さばきだね〜」

 

 

 襲いかかってくるオークを避けて頸を撥ねる。オークは素早くないうえに物理攻撃しかしないので攻撃してきた隙をついてカウンターで仕留める。

 

 

「ふぅ、これで終わりっと」

 

 

 これを《亜空間物質収納術(アイテムボックス)》にしまって……っ!?

 

 

「ちぇ、外したかー」

「ま、こんだけのオーク倒してる奴だし……避けてもおかしくはないな」

 

 

「今日はボスがいるんだぞ!」

「なら今日は勝ったな」

「そうだ!元Aランクの冒険者のボスに敵う奴いない!」

 

 

 なんだコイツら。魔法も意図して撃ってきたみたいだし、盗賊か?

 

 

「な、なんですか貴方たち!」

 

 

「お、かわいい子いんじゃん!」

 

 

「え〜そう?ありがとねぇ」

 

 

「なあ君、今のうちにその女2人とオークの死体全部譲ってくれないか。そうすればおれたちは君に何もしない」

 

 

「あ、結構です。2人とも、離れときなよ?」

 

 

 《亜空間物質収納術(アイテムボックス)》にオークの死体をすべてしまう。

 

「なっ……死体が消えた?」

「ほう……ならおれたちも容赦なく行かせてもらう。行くぞお前ら!」

「オウッ!」

 

 

「《強い風(ストロング・ブリーズ)》」

 

 

 盗賊の半分は後ろに吹っ飛んでいった。

 

 やはり対人戦は加減が難しい。モンスターの時みたいに殺傷性のある魔法を使うわけにはいかないし。

 

 

「クッ、威力が強え!」

「半分はイッちまったか」

「怖気付くな!魔法を放て!」

 

 

「無駄だよ無駄」

 

 

 《魔力障壁(マナ・ウォール)》て魔法を防ぐ。ちなみに今もスキルの効果は続いているので、障壁としての防御能力が高くなっている(当社比)。

 

 

「くそ、防がれるか」

「おれが突っ込む。援護してくれ」

 

 

 ボスと呼ばれた男が剣を振るいながら向かってくる。

 

 剣が当たる寸前のところで軌道上に亜空間を展開。相手の剣を持つ方の肩の後ろに出口を設定する。

 

 イメージとしてはジャ〇ンバの空間を操る能力(語彙力不足)だ。

 

 

「ぐっ!何だのは!……ゴッ」

 

 

 スキルを解いた拳を亜空間を通じてみぞおちに当てる。

 

 

「厄介な……逃さんゴハッ!」

 

 

 顎あたりの位置に拳を置いておく。運悪くクリティカルヒットし脳震盪を起こしたのか、相手はその場で崩れ落ちた。ま、結構スピード出てたから当たったら痛いだろうね。

 

 

「ぼ、ボスー!」

「よし、やっと障壁を破れた!」

 

 

 とりあえず気絶した男を《亜空間物質収納術(アイテムボックス)》にしまう。意識のある人や動物はしまえないが、意識のないそれらはしまえる。

 

 

「ボスが消えた!?」

「てめぇ、ボスを返せ!さもないと……」

 

 

「いやさせねえからな?」

 

 

 2人くらいが群れを抜け出してサラとファネルのところに行こうとしてたのでとめる。

 

 

「ゴハッ……」

「グフォ……」

 

 相手も少なくなってきた。今2人落ちて、あと3人にまで減った。

 

 

「こ、こいつ強すぎる!」

「こんなの勝てるわけない!」

「お、俺たちだけでも逃げるぞ!」

 

 

「いや逃さねえからな?」

 

 

 この3人もさっきの2人と同じく、1発入れると気絶した。

 

 幸い、最初に飛ばした人間も同じようにまだ気絶しているので全員回収できた。

 

 

「はぁ……何かどっと疲れが来たわ」

 

 

「サトイ君怪我してない?」

 

 

「あ、怪我はないよ。もう気分は良くなったの?」

 

 

「私は大丈夫だけど……ファネルちゃんは?」

 

 

「あたしも大丈夫だよ〜」

 

 

「そっか。なら移動しよう。このあたりにはゴブリンはいなさそうだし」

 

 

 あくまで受けた依頼の内容はゴブリン討伐である。

 

 だからゴブリンを見つけて倒さないとここに来た意味がないのと同然だ。

 

 

「ゴブリンならさっき見たよ」

 

 

「え」

 

 

「さっきあっちの方向にいたよ」

 

 

「おお、それはありがたい。ちょっと行ってくるわ」

 

 

 この後、少し行ったところでゴブリンの群れを見つけた。ゴブリンはオークよりも弱い魔物なのであっさりと討伐できた。

 

 サラがゴブリンを見かけてなかったらいったい何時間かかっただろうか……。

 

 

「じゃ、今からまた亜空間移動になるよ」

 

 

「ええ〜、またアレ?」

 

 

「なら君はグリンファードまで1時間歩きますか?亜空間なら5分ほどで着くけど」

 

 

「亜空間でお願いします」

 

 

「なら行こっか。気分も大丈夫って聞いたし」

 

 

 手のひらから黒い空間を作り、身体2人分くらいの大きさまで広げる。そしてそれの中に入る。

 

 

「ひゃ、涼し〜」

 

 

「ここ、意外と過ごしやすいかも」

 

 

 亜空間内の温度や湿度は俺が自由自在で決められる。他にもこの亜空間では俺以外の者が魔法が使えなかったり、俺はこの亜空間を自由に切断したりできる。

 

 

「まあ目に見られてる感じは変わらないけどね〜慣れないや」

 

 

「私はもう慣れたよ」

 

 

「へえ、早いね。俺慣れるのに3日はかかったけど」

 

 

「サトイ君でもそんなに……」

 

 

「人には得意不得意があるからね〜。仕方ないよ」

 

 

「まあそれはそうだけど……。お前に得意不得意なんかあるの?一応今は人だけどさ」

 

 

「うん、あるよ〜。辛いものは苦手」

 

 

「はぇ〜。なら今度激辛グルメ食べに行こっか」

 

 

「無理!」

 

 

「俺も激辛は無理だよ」

 

 

「なら何で言ったの……」

 

 

 前世で激辛好きの友達と激辛担々麺を食べに行ったことあるけど、その時はひと口食べただけでギブアップした。残りは友達が美味しく食べてたよ。

 

 

「あ、出口あったよ」

 

 

「こんなところ早く出ちゃおう!」

 

 

「はいはい……」

 

 

 亜空間から出たところは道からそれた草木のある茂みだった。

 

 

「わっ、なにこれ!」

 

 

「茂みの中だね〜よくこんなところに出られたね」

 

 

 茂みにいることがやはり嫌なのかすぐに動き出そうとする2人。

 

 

「ちょっと待って……よし」

 

 

 《亜空間物質収納術(アイテムボックス)》から盗賊のボスと取り巻き1人を取り出す。そして彼らの首根っこをつかむ。

 

 

「ごめん待たせたね。行こうか」

 

 

 と言ってももうすでにグリンファードの検問所と衛兵が近くに見えている。

 

 多分、いや絶対引き止められるでしょうね。

 

 

「そこの3人、止まってくれないか」

 

 

 遠目からでも男を2人持っているのは分かるみたいだ。検問所から離れているにも関わらず、衛兵に止められた。

 

 

「これは……どういう状態なんだい」

 

 

「近くの森でオークを倒していたら襲われまして。返り討ちにしたまでです」

 

 

「ふむ。ではそちらの2人。彼の発言に間違いはないかい?」

 

 

「ありません」

 

 

「ないよ〜」

 

 

「分かった。では申し訳ないが事情聴取のためについてきてほしい」

 

 

 そうして俺たちは衛兵についていく。

 

 

「その男2人は私が受け持とう。突然のことで疲れているだろうからね」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「礼には及ばんよ……ってこの男元Aランク冒険者のサオじゃないか!」

 

 

「え、Aランク冒険者?」

 

 

「そうだよ。この男はかつてこのグリンファード敏腕Aランク冒険者として名を馳せていたんだ」

 

 

 へー、そんな凄い人間だったんだね。

 

 

「へえ、そんな凄い人だったんだね〜」

 

 

「これは10年も前のことだから貴方たちはまだ若いから知らないだろう」

 

 

「しかしある時とある商人を殺して冒険者登録を抹消されて指名手配犯になったんだ」

 

 

「それからずっと捕まえられずに困っていたんだ。しかし今回、貴方たちが捕まえてくれた」

 

 

「え、僕たちは襲われたから返り討ちにしただけですよ?」

 

 

「それでも貴方たちが捕まえてくれたのには変わらない。本当にありがとう」

 

 

 彼からのお礼はきちんと受け取っておこう。でもやっぱり、人から感謝されるのっていい気持ちになれるな。

 

 

「っと、着いたな。こちらから入ってもらおう」

 

 

 裏口から案内されたのはふかふかのソファがある部屋だった。

 

 

「わぁ!ふかふかだぁ!こんなの初めてだよ!」

 

 

「ファネルちゃん!ソファで遊ばないで!」

 

 

「は〜い」

 

 

 ここだけ見ると何かサラがお母さんっぽいな。いや、ファネルが幼いからそう見えるだけか。

 

 

「ギルドマスターを連れてくるから少しの間寛いでいてほしい」

 

 

 え、ギルドマスター?あれ、もしかして今回俺とんでもない人物捕まえたんじゃ?

 

 もしそうなら報酬として結構な金もらえるかもしれないな。

 

 

「何か凄いことになっちゃったね」

 

 

「でも悪いことではないから……」

 

 

「旅資金をもらえるかもしれないね〜」

 

 

「そうだといいけど……」

 

 

 何がもらえるんだろうか。ちょっと楽しみになってきたわ。


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