転生したけど、転生特典は一部遅れて与えられるらしい   作:五段活用

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ゆっくりしてる暇はない

 

 コンコンコン。ガチャ。

 

 

「失礼します。ギルドマスターを連れて参りました」

 

 

 さっきの衛兵さんの後ろに金髪のまあまあ豪華な服装の青年がいる。アタッシュケースを持った男がそばにいる。ひょっとして、お金もらえる……?

 

 

「……こんにちは。ボ、私がギルドマスターのアークです。待たせてしまって申し訳ない」

 

 

「いえ、忙しい仕事の間に時間をとって頂きありがとうございます」

 

 

「これはこれはご丁寧に……では早速本題に入りますね」

 

 

「はい」

 

 

「まず、今回貴方がたが捕縛されたサオは殺人、強盗などの犯罪行為を行ったためギルドは冒険者登録抹消、そして懸賞金金貨75枚をかけておりました」

 

 

「その懸賞金金貨75枚をお持ちしましたので、お受け取りください」

 

 

 人の目を気にせず、《亜空間物質収納術(アイテムボックス)》にしまう。

 

 

「おお、貴方収納魔法の使い手なのですか?」

 

 

「ええ。便利なものですよ」

 

 

「それはなんとも羨ましい。ボクもそんな力があればなぁ」

 

 

「僕にこの力を与えてくださった創造神クリスティーナ様には感謝してもしきれませんよ」

 

 

「ははは、貴方はクリスティーナ様に選ばれし者かもしれないね……あ、そういえば名前やら何やらを聞いてなかった。冒険者タグを借りてもいいかい?」

 

 

「どうぞ」

 

 

「ありがとう……。サトイ殿だね。歳は、15!?い、Eランク!?どうしてAランク級の実力者がこのランクにいるんだ……」

 

 

「あ、僕今まで数回しか依頼受けたことなかったので」

 

 

「なるほど……隣のお嬢さんの冒険者タグ持ってる?」

 

 

「「持ってないです(よ〜)」」

 

 

「では名前を聞いてもいいかい?」

 

 

「私はサラと申します」

 

 

「あたしはファネルといいます」

 

 

「ふむ……サラ嬢とファネル嬢だね。冒険者タグ、今日作って行くかい?もしそうするのなら用紙は用意するよ」

 

 

「……う〜ん、どうしよ?」

 

 

「作ってもらったらいいんじゃない?折角の機会だし」

 

 

「分かった。なら用意させるよ……それにしてもEランクかぁ。ボクが特別に融通してAランクまで上げようかな……」

 

 

 ほう。ギルドマスターがこう言ってくれるのだからこれを利用しない手はないな。高ランクの依頼を受けると報酬も増えるしね。

 

 目立つこと以外、俺には利点しかないだろう。

 

 

「いいんですか?そんなことしてもらっても」

 

 

「大丈夫だよ。むしろ実力がランクに合わない方が問題だからね。サトイく……サトイ殿はAランク以上かもしれないけど、ここで我慢してほしい」

 

 

「上げてもらえるだけでもありがたいので満足ですよ……あ、砕けた口調で話してくださって大丈夫ですよ」

 

 

「ありがとう。そうさせてもらうよ」

 

 

 と、その時。地面がゴゴゴゴ、と重低音を立てて揺れた。

 

 

「な、なんだ?」

 

 

「地震か。最近多いよね」

 

 

「あ、昨日ここに来たばかりなんで分からないです」

 

 

「そうだったんだ……最近、ここグリンファードは地震が多いんだ」

 

 

「どうしてなんですか?」

 

 

「定かではないんだけど、ボクは魔物の大量発生<スタンピード>の前触れだと考えてるよ」

 

 

「<スタンピード>はダンジョンにある魔物の湧きスポットに魔力が異常に多く供給される現象なんだ。それだけなら別に問題はないんだけど、湧きスポットはそれを消費しようと大量の魔物を生み出すんだ」

 

 

「今回の地震はそれの前触れ、と?」

 

 

「そうなんだよ。これは昔の<スタンピード>の記録を掘り起こしてきて分かったんだけどね」

 

 

「それは……大変苦労されているようで」

 

 

「ほんと、それのせいでちょっと寝不足気味なんだよ……」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ……!

 

 

「わっ!」

 

 

「ま、また揺れてる!?」

 

 

「うーん、これはまずいかもしれないね。<スタンピード>がもうすぐ始まるかもしれない」

 

 

「都市防衛は大丈夫なんですか?」

 

 

「それがね……大丈夫じゃないんだよ」

 

 

 あれ……?この反応を見る限り結構ピンチじゃない?グリンファルド辺境伯家領壊滅のピンチ?

 

 

「今回<スタンピード>が起こるであろうダンジョンは街の外れにあるんだけど、昔に物理的に封鎖されたダンジョンなんだ。その理由は魔物のレベルが高くてその魔物を外に出さないため」

 

 

「<スタンピード>は物理的な封鎖でどうにかできない……のですよね」

 

 

「残念ながら。ギルドマスターの権限で緊急事態Cランク以上の冒険者を招集して<スタンピード>の鎮圧に行ってもらうようにできるんだけど、それと辺境伯に兵隊に協力を仰いでも戦力が足りなくてね……」

 

 

「他の都市から傭兵を雇うこともできるんだけど、それでは間に合わないかもしれない。そこで、なんだけどさ」

 

 

 これはもしや……戦闘へのお誘いか?

 

 

「<スタンピード>の鎮圧に協力、ですかね?」

 

 

「うん、その通り。ボクのポケットマネーからお金は出す。受けてもらえないだろうか」

 

 

 ポケットマネーって言われたら受け取るのは罪悪感が生まれちゃうんだよね。

 

 

「ええ?受けますけどお金は大丈夫なんで」

 

 

「ほんとかい?本当に受けてくれるのか!?」

 

 

 突然ギルドマスターに手を取られる。まあこの街にとって<スタンピード>の鎮圧は死活問題だもんね。戦力が多い方が助かるよね。

 

 俺に対して良くしてくれてるルベルトさんのところのピンチだからね。今回の件で少しでも恩返ししたい。

 

 

「はい。目の前に困っている人を放っておくことはできないので」

 

 

「ありがとう……!本当に助かるよ!」

 

 

「さ、サトイ君。<スタンピード>の鎮圧って大丈夫なの?」

 

 

「大丈夫でしょ。俺、まあまあ強いし」

 

 

 何と言っても神様が俺の魔法能力を超強化してくれてるんだからね。あと変身(強化)を3回残してるけど。

 

 

「あ、でもサラは街の安全なところでお留守番だよ?」

 

 

 たとえサラが上級魔法を使えたとしても<スタンピード>の防衛の前線は危険であることには変わりない。そんなリスクのあるところに大切な女の子を行かせるほど俺は馬鹿ではない。

 

 

「ま、マスターの実力なら心配はいらないだろうね〜」

 

 

「……マスター?君、そんな趣味が?」

 

 

 あ、やっべ。これ誤解されてるやつだ。こんなことなら外でのマスター呼び止めさせてたら良かった……。

 

 

「いやありませんから。罰ゲームでそう呼ばれているだけです」

 

 

「そ、そうなのか。でも衆人環視では悪い意味で目立つから止めておいた方がいいよ?」

 

 

「だってさ、ファネルさん?」

 

 

「う、何でそこであたしに振るのさ……」

 

 

 ジト目で見てくるファネル。ほんとごめん。

 

 

「君がそんな罰ゲームしたいって言ったからでしょ?」

 

 

「……じゃあマスター呼びは外では控えるよ」

 

 

 ふぅ、なんとか誤魔化せた。ファネルの機嫌を犠牲にしたけど。これは機嫌取りが必要だなぁ。

 

 外でのマスター呼びを間接的に辞めさせることができたのは良かった。あれ、意外と得たものは大きい……?

 

 

「話はまとまったかい?」

 

 

「見苦しいところをお見せしました……」

 

 

「ははは、君も苦労してるんだね」

 

 

「苦労というか、まあ……」

 

 

 何とも言えないものだ。サラは良い子だし、ファネルもまあ……良い子だ。だから苦労はしてないんだよね。

 

 

『…ス…………か!』

 

 

「ん?」

 

 

 幻聴か?昨日は早くに寝たわけでもないけど遅くに寝たわけではないし……。

 

 

『ボス……え…か!』

 

 

 うん?何か聞き覚えがある声だな……。

 

 

「どうかしたの?」

 

 

「声、聞こえない?」

 

 

「声?聞こえないよ〜」

 

 

「私も」

 

 

「ボクも、聞こえないよ?」

 

 

 どうやらこれが聞こえてるのは俺だけのようだ。

 

 

『ボス聞こえるか!』

 

 

「あっ!」

 

 

 これは狼一派のリーダー、オーカのテレパシーだ。テレパシーを送ってくるということは緊急事態ということか?それにテレパシーが掠れてしか聞こえないほど魔力を消費してるって……。何があったんだろうか。

 

 

「テレパシーだったわ……ちょっと今からそっちに集中するので」

『ごめん、今はっきり聞こえたよ』

 

 

『おおボスっ!今大変なことになってんだ!』

 

 

 やっぱり緊急事態か……。<スタンピード>が始まったのかな?

 

 

『ひょっとして……<スタンピード>が始まった?』

 

 

『<スタンピード>……そうだ、それだ!魔物がダンジョンから溢れ出して大変なんだ!』

 

 

 <スタンピード>が始まった、と。まだ人は知らないのかな。というか珍しいな、こいつらがカーレの森にいないって。

 

 

『みんなのまわりに人いる?』

 

 

『人はいねえな。ついでに魔物の軍勢にはオークの上位種が多いぜ。どうってことねえけどな!』

 

 

『どれくらい持ちこたえられそう?』

 

 

『まだまだいけるけど……魔力が足りなくなってきた』

 

 

 こりゃ最初から飛ばしてるな。最初に魔法使って殲滅しようって考えか。

 

 

『おおっ!魔力が復活した!』

 

 

『俺の魔力だ。足りなくなったらまた言ってくれ』

 

 

 契約を結んでいる使役獣に自身の魔力を渡すことができる機能がある。もちろん、逆にもらうことも可能だ。

 

 

『おう。みんなも喜んでるぜ』

 

 

『俺も今から向かう。場所を教えてくれ』

 

 

『カーレの湖から少し離れた開けたところだ。ダンジョンに近いところ』

 

 

 ん?さっきギルドマスターは街の外れって言ってたけど……。まさか違うところで複数の<スタンピード>が始まってる?

 

 

『……嘘じゃないよな』

 

 

『何でボスに嘘言わなきゃなんねえんだ。じゃ、俺戦線に戻るわ』

 

 

 その言葉以降、テレパシーは来なかった。とりあえずギルドマスターに知らせよう。

 

 

「終わりました」

 

 

「有益な情報はあったかい?」

 

 

「カーレの森のダンジョンで<スタンピード>が始まったみたいです」

 

 

「な、なんだって!?なぜそんなところで……」

 

 

 あれ、ギルドマスターは把握してない?

 

 コンコンコン……ガチャ!

 

 

「失礼します!ギルドマスター、街の外れの封鎖されているダンジョンで<スタンピード>が始まったようです!数は不明ですが、魔物の大群はグリンファードに向かっている模様です!」

 

 

「そっか……ではこれより早速冒険者緊急招集を行う。そう放送してくれ」

 

 

「わっ、分かりましたっ!」

 

 

 ガチャ……バタン。

 

 慌てて部屋に入ってきたギルド職員は慌ただしく部屋を出て行った。これを見てると緊急事態感がひしひしと伝わってくる。

 

 

「そこの君、辺境伯の屋敷で始まった、と伝えて来てほしい」

 

 

「は、はいっ!行って来ます!」

 

 

 ギルドマスターの近くにいた職員も慌ただしく部屋を出て行った。

 

 それにしても2箇所のダンジョンで<スタンピード>が始まってるのは確定か……。

 

 これは俺の力がどれほどのものなのかでこの街、いや人々の生死が決まるのかもしれないなぁ。もしかして俺、責任重大?


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