転生したけど、転生特典は一部遅れて与えられるらしい   作:五段活用

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やはり転生特典は偉大であった

 

ガラガラガラガラ……ピシャン。

 

 

「あっ!サトイ様、おかえりなさい」

 

 

「ただいま」

 

 

 草履を脱いで居間に上がる。

 

 

「どちらに行かれてたのですか?」

 

 

「カーレ湖」

 

 

「か、カーレ湖ですか!?あそこは徒歩で1時間半以上かかるはず……移動系の魔法を使えば確かに往復できるかもしれませんが」

 

 

「俺、魔法使えるようになったんだ」

 

 

「……え?」

 

 

「なんか魔法使えるようになったんだ。ほら」

 

 

 手の上に《亜空間物質収納術(アイテムボックス)》を出す。

 

 

「えっ、あ、ほんとだ。でもどうして……」

 

 

「分かんないけど……神様が魔力なしの俺を哀れんでこの力を与えくれたんだ。きっと」

 

 

 実はぼくの転生特典なんです。でもこれ、あながち間違ってはないよな。魔力なしの俺を哀れんだわけではないけど。なんか良いように理由を取り繕えた気がする。

 

 

「神様が……そうかもしれませんね。しかしサトイ様、この力を使う時は気をつけてください。この力で人や動物を傷つけてはいけませんから。サトイ様が危ないと思われたらその時は自分で判断して使ってください」

 

 

「もちろんそのつもり」

 

 

「ふふ、さすがサトイ様。理解が早くて助かります」

 

 

「もともとそれは考えてたから。別に理解が早いわけじゃないよ」

 

 

「まあ!サトイ様そんなところまで頭が回るなんて!」

 

 

 うん、まあ前世で30年近く生きてたわけだし。見た目10歳だけどさあ。

 

 

「……ちょっと部屋で読書してくる。夕飯の時に声掛けて」

 

 

 読書というか……世界の魔法や技能、スキルが書いてある本で調べ物をする、調べ物だな。ハイ。

 

 

「分かりました」

 

 

 この家、というかこの村の家はすべて日本のような和風建築である。もちろん部屋も和室である。

 

 

「《ステータスオープン》」

 

 

ステータス

名前:サトイ  男  10歳

天職:魔法師

称号:なし

魔力:10000

技能:風属性適正・闇属性適正・魔力感知・第六感・空間識覚・体術・言語理解・鑑定・環境適応・火炎耐性

スキル:『会心の一撃(クリティカル・ショット)』『魔力特性付与:分解』

加護:『神の加護』

 

 

 これが俺の現在のステータスである。まず天職というものがあるのだが、これは生まれつき決まっているものらしい。

 

 

 次に称号。これは二つ名のことである。ほとんどは名前だけだが、中には称号保持者にバフを与えるものもあるらしい。

 

 

 魔力、これの平均値は50らしい。つまり俺の魔力はかなり高い数値であることが分かる。ちなみに村の教会での魔法・スキル測定のとき、数値は0だった。

 

 

 技能、これは習得している技能のうち常時発動している、または魔力を消費せずに使える技能のことである。

 

 

 スキル、これは魔力を消費して発動する技能のことである。その分強力なものが多いと言う。ちなみに俺は前までスキルを『会心の一撃』しか持っていなかったからこれも転生特典の超強化に含まれているようだ。

 

 

 加護、これは神様や精霊やドラゴンなどの上位魔族などから与えられるものである。加護は魔力の増化、身体能力の向上などの恩恵を受けられる。『神の加護』は多分転生特典のことだろう。

 

 

 こうしてステータスを見たのは理由がある。俺の持っている技能、スキルが帝国が監修している本、『魔法技能スキル大全』という本なんだけど、これに載っているのかを確認するためだ。

 

 

 そして1時間後……。

 

 

 五十音順に並んでる訳でもなく、しかも載っていない可能性もあるから探すのに時間がかかった。というか技能とスキルのところを全部読んだ。技能はすべて乗っていた。『会心の一撃』も載っていた。しかし『魔力特性付与:分解』は載っていなかった。スキルは種類が多いとは言うが、やっぱり神様からの贈り物かだからか。

 

 

『会心の一撃』

『物理攻撃の威力を上げる。消費した魔力量が多いほど威力が上がる』

 

 

『魔力特性付与:分解』

『魔力に分解属性を付与する』

 

 

 ハイ、やっぱり強いですねぇ。さすが神様、強いスキルありがとう。

 

 

「あ゙〜疲れた」

 

 

 ずっと座ってたからね。あとずっと本見てたから目がしょぼしょぼする。どうやら魔法技能は超強化されても目は強化されていないようだ……。ちなみに身体はずっと同じ体勢で、それから急に動いてもすんなり動く。

 

 

「サトイ様。夕飯できましたよ~」

 

 

「ん、すぐ行く」

 

 

 ユナの作るご飯は美味い。これこそ前世のファミレスと比べものにならないくらい。俺の母に仕えてた時は料理番をしていたらしい。まあそりゃあ美味いよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕飯も食べて休憩して体力も回復した。ということで読書再開。

 

 

 次は魔法について調べる。主に風属性魔法と闇属性魔法だ。理由はさっき俺にこのふたつの属性の適正があると分かったから。ちなみに技能に〇属性適正というものがあるが、適正がない属性の魔法は使えないか、使えても限りなく弱い。俺が湖で使った分離などの無属性魔法は頑張れば誰でも使える。そう、頑張れば。

 

 

 『魔法はイメージだ』

 

 

 本の目次に載っていた著者の言葉だ。著者は帝国軍の魔法師とプロフィール欄にあるので嘘ではないのだろう。しかし、この本は魔法について、1番簡単な初級魔法以外、魔法の名前しか載っていない。昔の俺は魔法が使えなかったから別に良かったけど、今は使えるようになったから魔法の説明も要るんだよなぁ。

 

 

 これは近くの町に出て新たな本を買うしかなさそうだ。村の本屋にはなかったはずだから。明日にでも行こうかな。

 

 

 さっきも言った通り、初級魔法の説明は載っているのでそれを見る。

 

 

「《強い風(ストロング・ブリーズ)》……」

 

 

 風属性の初級魔法だ。相手に風をぶつけて吹き飛ばす魔法である。とりあえずこれが使えないと多分これより強い魔法が使えない。道中で魔物が出たり変な輩に絡まれたら試せるな。もしそれがなかったら……カーレ湖で試すか。まわりの奴ら巻き込まないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。朝、ユナに町に行くと伝えると銀貨を3枚くれた。昼食と欲しいものを買う資金だ。銀貨は銅貨10枚分の価値がある。銀貨の上の貨幣に金貨があるが、銀貨10枚分の価値がある。

 

 

 そして俺はこの銀貨3枚を持って家を出た。町は森とは反対の方向なので、昨日とは逆の方向に歩いて向かう。飛んで行ってもいいが、歩いていないと魔物に遭遇するか誰かに絡まれることもないからな。そうなると《強い風》を試せない。カーレ湖で試す方法はあるけど、必ずしも魔法に誰も巻き込まないというわけじゃないからあんまりしたくない。

 

 

「あれぇ〜?これはこれは鬼の子のサトイ君ではありませんかぁ〜?こんなところで何してるの〜?」

 

 

 ガキ大将とその取り巻きの登場だ。今まで俺を事ある毎にからかってきた奴らだ。名前は覚えてない。ひょっとして、これ魔法試すチャンスでは?

 

 

「もしも〜し、聞こえてますか〜?あ、もしかしてオレたちに会って嬉しくて声も出ない感じ?どんだけオレたちのこと好きなんだよ〜」

 

 

 ガキ大将が俺の肩にポン、と手を置く。ギャハハ、と取り巻きが下品に笑う。あ゙〜ウザいわぁ。

 

 

「ブヘッ!」

 

 

 あ、裏拳綺麗に決まっちゃった。鼻血出てるねえ。俺そんなに強くやってないけど……。ガキ大将はふらついてるけど、すぐに体勢を立て直した。さすがガキ大将、タフだなぁ。

 

 

「あ、反射でやっちゃった。力入れてないけど……大丈夫?」

 

 

「っ、お前オレのことナメてんのか!?やっちまうぞ?」

 

 

「え、何するの。今から家に帰って鼻血の治療?」

 

 

「やっぱお前オレのことバカにしてるよなぁ!?いいぜ、そんなに死にてえんならやってやるよ!《熱拳(ヒーティング・フィスト)》!」

 

 

 お、これは……。魔法を試す機会が与えられたようだ。ガキ大将は感情的になってるから動きが単純だ。なのでたとえ魔法を使っていても避けやすい。避けて懐に手を置く。

 

 

「《ストロング・ブリーズ(強い風)》」

 

 

「は、ウワァ!?」

 

 

 ゴン!

 

 

 ガキ大将は吹き飛ばされて結構遠くにある木の幹に衝突して気絶した。アレ?初級魔法ってこんなに威力出るものなの?

 

 

「てめぇ……ケンちゃんに何しやがった!」

 

 

「魔法使った」

 

 

「は、てめぇが魔法なんか使えるわけ」

 

 

「《ストロング・ブリーズ(強い風)》」

 

 

「ウワァァ!」

 

 

 取り巻き全員まとめて吹き飛ばす。そうすると全員遠くの木に衝突して気絶した。

 

 

 ……やっぱり威力おかしくない?


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