転生したけど、転生特典は一部遅れて与えられるらしい 作:五段活用
村の悪ガキ共に絡まれてから2時間ほど経った。あれからずっと歩いているが、見える景色はずっと草原、ときどき民家である。しかし今、やっと光を発する高い建物を筆頭に建物が見えたのだ。ということは……。
「あれが町……?」
歩いてもっとそれらに近づくと、検問所とそこに並んでいる人が見えた。つまりそこが町の入口なんだろう。そしてなぜか並んでいる人たちにめっちゃ見られた。それを気にせずにその最後尾に並ぶ。
「ねぇねぇ君、どこから来たの?」
前に並んでいた金髪のお姉さん系の女性か話しかけてきた。
「……カーレ村です」
「へー、あんな田舎にこんなカッコイイ子がねぇ……」
「そ、そうですか?」
「そーだよ。都会にいてもお目にかかれないくらいの美男子だよ、君は」
「そ、そんなにですか?」
ぶっちゃけ異世界だからイケメン貴公子なんていっぱいいるだろうと思ってたわ。そんなことないんだね〜。
「ウン。あたしヒューベルンターゼに住んでるんだけど、君みたいな美男子なんて見たことないよ。だからこの町でも注目の的になるよ〜」
「あの、ヒューベルンターゼ?ってどこですか?」
「ん?聞いた事ない?武装都市『ヒューベルンターゼ』って。西のほうにある帝国騎士団の基地があるところなんだけど」
「知らなかったです」
「覚えといたら将来役に立つよ……あ、あたしの番だ。あたしニーナって言うの。将来ビッグになったらお姉さんのところに来てね〜」
女の人、基ニーナさんは門兵のいるところに向かって行った。あ、本屋の場所聞いとけばよかった。まあ自分で探すかぁ。
「次の人、どうぞ」
門兵に呼ばれたので門の方向に向かう。門の前まで来たが、門兵が俺を見て固まった。
「?何かしないんですか?」
「あ、ああ。君、冒険者タグ持ってるかい?」
「持ってないです」
「冒険者タグは町の冒険者ギルドで冒険者登録をすれば貰えるよ。これがあれば入門税が免除されるよ。次はここに手をかざして」
「はい」
アーティファクトに手をかざす。
「名前はサトイ、10歳……え!?じゅ、10歳!?」
「?そうですよ」
「おいお前!何騒いでんだ!……10歳なら入門税は要らないよ。あの門に入れば『アルーナ』の町だ。あとこれ入門許可証な。ここから出る時に門兵に見せてくれ」
「分かりました」
門兵の居場所を通って門をくぐる。門をくぐると綺麗な道と建物が見える。さて、この中から本屋を見つけないとな……。あと冒険者ギルドも。冒険者登録しておきたいから。
「というかめっちゃ見られてる……」
さっきのニーナさんの話にあった通り、珍しいのか可笑しいのか分からないけどめっちゃ見られる。本当に過ごしずらい。
「あ、冒険者ギルドあった」
『アルーナ冒険者ギルド』。まさかこっちの方が早く見つかるとは思わなかったわ。にしてもこれがラノベで見た冒険者ギルドか。胸が熱く……はならないけどなんか凄いな(語彙力不足)。
中に入るとまたしても注目の的になる。視線が俺に釘付けである。俺は早く用事を済ませて帰らなければならないと分かった。じゃないと俺の精神が持ちません、ハイ。
「今日はどのようなご用件で?」
「冒険者登録をしたいんですけど……」
「はい、冒険者登録ですね。少々お待ち下さい」
「……この申込書の技能、スキル以外の場所に記入を。代筆は必要ですか?」
「大丈夫です」
受付嬢からペンと紙をもらう。名前はサトイ、年齢は10歳、出身地は……ミヤコでいいよね?天職は魔法師、技能スキルは空けて……と。
「書けました」
「ありがとうございます……ってあなた10歳!?」
「?そうですよ」
「……ごめんなさい。ちょっと見えなくて驚いてしまったわ。10歳なら冒険者登録は出来るわね……次はこのアーティファクトに手をかざして下さい」
「はい」
「……えーと、技能は魔力感知、第六感、空間識覚、体術、言語理解、鑑定、環境適応、火炎耐性。スキルは『
渡された番号は5番。
「分かりました」
待ち時間ができたので近くの椅子に座る。が、それもまわりの人に見られている。ほんと、他にやることないんですかねぇ……?
「整理券番号5番でお待ちの方、どうぞ」
いやはっや!俺座ってから1分も経ってないと思うんだけど。冒険者タグってそんなに簡単に作れるものなのか……。
「これが冒険者タグです。あそこの掲示板に貼っている依頼書を持って受付でこれを見せると依頼を受理してもらうことができます。ただし、冒険者ランクに見合ったランクの依頼しか受理できませんのでご了承ください。最初は特段の理由がない限りFランクからのスタートです。そして15歳未満の方は依頼の受理に保護者のサインが必要です」
「なるほど……あ、ちょっと聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「はい。私で分かることなら答えますよ」
「魔法の書を売ってる本屋ってありますか?」
「魔法の書を売っている本屋ですか。それはここを出て左に行った先にありますよ」
「ありがとうございます。ほんと助かります」
「いえ、お気になさらず」
緑のタグ付きのカードを受け取る。ただのタグ付きのカードにしか見えないけどこれが身分証の役割をするんだよなぁ。
さて、ここを出て左に行ったら本屋があるらしいが。
「おいおい、あいつらDランクパーティの<
なんかチンピラ3人に女の子が絡まれている。多分あれはどっかに連れて行かれるパターンだろうなぁ……。
「可哀想に……あんなヤツらに絡まれて」
「あ、亜麻色の髪の女の子がリーダーみたいなやつにビンタした!」
「馬鹿だねぇ……どうせ助けてもらえないのに自分から首突っ込むなんて」
どうやら男3人に割って入った勇者がいるらしい。
「その子から手を離して下さい!」
「あ゙?なんだてめぇ」
「だから、その子から手を離して下さい!怖がってます!」
「ふーん、そう。じゃあ君がコイツの代わりになってくれよ」
「アニキ、コイツ上玉ですぜ」
「なら、コイツの方がいーや。お前邪魔だ!あっち行け!」
「きゃ!」
「早く逃げて!」
元々絡まれてた女の子はリーダー格に押されて尻餅をついた。そして逃げ出して行った。
「近くで見たらかわいーな。反抗心あるから調教のしがいありそーじゃね?」
「じゃ、行こーぜ。俺たちがイイコトしてやんよ」
「い、いやです……」
「いや拒否権なんてねーから」
あ〜勇者の女の子可哀想だな〜。正義感強そうな子だけど後先考えずに首突っ込むのはダメだね〜。というかあの男3人
「気持ちわる……」
「おい!誰だ俺たちのこと気持ち悪いって言ったヤツ!」
いや地獄耳かよ!俺結構後ろらへんにいるし誰にも聞こえないくらいで呟いた独り言だぞ。なんで聞こえんだよ。
「確かここらへんから聞こえたんだよなァ」
俺のいるあたりを指さしてそう言う。
「もし言ったヤツ正直に言わなかったらそこらへんのやつ全員ボコす」
「嘘だろ!?」
「なんで知らねえやつの責任をおれたちが取らなきゃいけねえんだ!」
「もう誰でもいいから言ったって自白してくれ!」
ごめんね、俺のせいでこんなことになるなんて思わなかったんだ。
でもこれ、正直に俺が言ったって言えばあいつらにスキル《
「ん、俺だけど」
「ちょっとアンタ!大丈夫なのかい?」
「アンタ救世主か!」
「あいつらをやっちまってくれ!」
どうやらまわりの人たちは俺が言ったと分かっていないみたいだ。ウン、よかったぁ。
「イケメン君、君自分が言ったことは責任取ってもらうよ~!」
「現実逃避したいだけだろ。俺の言ったことが図星だったから」
「てめぇ!俺たちのことバカにしてんのか!?」
「そうだよ」
「生意気なガキめ……潰してやゴハッ!」
なんとスキルなしのただの蹴りでリーダー格を沈めてしまった。こいつ貧弱だね……。え、ほんとにこれでDランクですか……?こいつにスキル使って殴ったら内臓破裂とかしそうな気がする。
「アニキ!てめぇ……よくもアニキを!」
ただ正面から殴りかかって来るだけなのでそれを避けてスキル《
「く、くそぉ!もうヤケクソだぁ!」
最後の1人はその言葉通りに突進してきたので回し蹴りでぶっとばした。
「ハイ、終わり」
あたりがシーンと静まった。まわりの人も女の子も固まっている。少し時間が経つとまわりが賑やかになった。
「おおおおお!すげぇ!」
「3人を一発で沈めたぞ!」
「あんなん惚れてまうやろ……」
まわりが騒がしいけど、とりあえず本屋に……
「あの!助けていただいてありがとうございます!」
「ん、別に俺は自分の尻拭いをしただけだし」
「それでも私とあの子は助かったんです!」
「そ、そうか」
「本当にありがとうございます!」
「そんなに言わなくていいよ……というかなんで君はあの揉め事に首突っ込んだの?」
「あの子、私の友達なんです。それであの子を絶対助けなきゃって思ったら身体が勝手に動いて……」
「でもあの子君見捨てて逃げてったけど」
「あれは私が逃げてって伝えたんです」
「ふーん……あ、やべ」
衛兵が来た、という言葉は抑えられた。聞かれたら何か拙いことがあると誤解されるからな。
「これはどういう状況だ、ってサラ!?」
「お父様!?どうしてここに!」
「今日はアルーナの町の視察ということで衛兵の任務に同行していたんだ……サラはこの男たちについて何か知っているか?」
「この人たちに私の友達が連れていかれそうになって……私が助けようとしたんですが今度は私が連れていかれそうになって。この方に助けてもらったんです」
「ふむ、君がサラを助けてくれたのか。私はこの町の領主をしているルベルト・フォン・グリンファルド辺境伯だ。この度は私の娘、サラを助けていただきありがとうございます」
そう言ってルベルト辺境伯は俺に頭を下げた。へえ、この女の子サラって名前なのか。
「そんな、頭を上げてください」
「……本当にありがとう。君の名前は……」
「サトイです」
「サトイ君か。君にお礼がしたい。ウチの屋敷に来てくれないか」
「行ってもいいんですか、俺みたいな平民が」
「平民かどうかだなんか関係ない。君はサラを助けてくれたんだ。それに君は……」
「俺は……?」
俺はワケありなのか……。まさか俺が貴族の息子と知っているのか?
「いや、なんでもない。衛兵長、この男たちを連れて行ってくれないか。この2人の調書は後で私から送るよ」
「はっ!了解致しました!」
「今から馬車を呼ぶから来るまで役場で待っていよう。2人とも、着いてきてくれ」
そうして俺は貴族の屋敷に行くことになった。まさか自分の親の屋敷よりも早くに上流貴族の屋敷に行くとはな……。びっくりだよ。