転生したけど、転生特典は一部遅れて与えられるらしい 作:五段活用
ルベルト辺境伯か馬車を呼んだが、すぐに来るわけではないのでアルーナの町役場で馬車の到着を待っている。
「サトイ君、君何歳なんだい?」
「10歳です」
「えっ!?てっきり15歳くらいだと思ってたよ」
よく言われるよ。俺身長180弱あるし、こんな容姿だし。ちなみにこの世界の人は日本人よりも肉体の成長速度が1.5倍ほど早い。だから10歳男子の平均身長は160弱である。まあ俺はその中でも飛び抜けてるけどな。
そう言うことがあるから、冒険者登録が10歳で出来て成人年齢が15歳となっているのだろう。
「ということは……私と同い年ですね」
「あ、同い年なんですか」
「ははは、これならサトイ君にならサラを任せていいかもな」
「ちょっとお父様!?」
「まあまあルベルト辺境伯、ちょっと気が早くないですかね」
「サトイ君は絶対にモテるからね。今のうちに申し込んでおかないと。サラは奥手たから取られないようにしないとな。あと私のことはルベルトさんでいいよ」
「な、何言ってるんですかお父様!サトイ様も初対面の女と婚約なんて言われたら嫌でしょう!」
「はははは……そんなことないよ。サラみたいなかわいい女の子なら、ね」
「ふえっ!?か、かわいいなんてそんな……」
サラは顔を赤くして身体をくねくねさせる。
「サトイ君、君は大物になるだろうね……」
ルベルト辺境伯……いや、ルベルトさんは遠い目をしてそう言う。よく分からんな。ただ女の子を褒めただけで大物になるって……。
「?ありがとうございます……?」
「辺境伯さま!馬車が到着致しました!」
おお、助かった。2人がトリップしてるカオスな状況だったからどうしようかと思ったよ。ナイスタイミングですよ、そこのあなた。
「お、それでは表に出ようか」
町役場の外には馬車と馬が止まっている。止まっているのだが……。
「馬車が2台しかない……」
「申し訳ありません!てっきり御館様とお嬢様だけだと思っていまして!お2人の専用の馬車しか用意しておらず……」
「どうするのですか?」
「むむむ、こうなったらサトイ君にサラが同じ馬車に乗ってもらうしかないな」
「サトイ様はお客様なのですよ?私なんかと同じ馬車に乗られるなんて」
「別に俺はいいよ」
「サトイ様!?よろしいのですか?」
嬉しそうな顔をするサラである。
「うん。でも君が俺と様付けしないで話してくれないとなあ……ルベルトさんと同じ馬車に乗るかなぁ」
ニヤリ、と口角を上げてそう言う。するとルベルトさんも俺と同じように口角を上げる。サラは愕然とした顔をする。え、そんなに?そんなに俺と一緒に馬車に乗りたいの?
「うう、でもサトイ様は私の恩人で……」
「でもさっき君は俺にさん付けなしで話してって要求に応えたよね。だから君も俺に様付けはやめて話してよ。ああ、別に俺と一緒に馬車に乗りたくないのならそのままでいいんだよ?」
「お、私は大歓迎だよ」
ニヤニヤしながらそう言うルベルトさん。この人ノリいいな。
「ダメ!サトイ様は私と……」
「そんなに一緒に乗りたいの?なら様付けはやめよ?」
「……わ、分かりました。さ、サトイ君?これでいいですか?」
か、かわいい!思わずニヤけてしまうところだった。
「うんうん。よし、じゃ、一緒に乗ろっか」
ニヤけそうなのを誤魔化すために軽く笑顔を作ると顔を赤らめるサラ。笑顔見ただけで顔赤らめるなんて純情だねぇ、俺にもこんな時期があったのかな……?
「ん、よいしょ……っと」
馬車、意外と座り心地いいんだね。専用の馬車って言ってたしそこらへんはちゃんとしてんのかな。
「おとなり、失礼します」
「うん」
「それでは、出発致します」
馬がヒヒーンと鳴くと同時に馬車は動き出した。なんか前世で人力車に乗った時と似てるな。
「あの、何かお話しませんか?」
「うん、いいよ。何の話がしたいの?」
「えーと……魔法の話がしたいです」
「魔法ね。サラは何属性魔法を使えるの」
「火属性と光属性です。最近は上級魔法の練習をしてるんです!」
この歳で上級魔法をか。上級魔法は宮廷魔術師でも使いこなすのはやっとって言うくらいだから、凄いな。転生者ならやりかねないけど。
「へえ、てことは魔力保有量って結構多い?」
「はい。確か前測った時は1000だったはずです。宮廷魔術師10人分?って言われました。サトイ君はどうなのですか?」
「あー、俺?俺は10000あったね」
「い、いちまん!?それ本当ですか!?」
「ほんとだよ。ほら」
《ステータスオープン》。そして具現化。サラにも見えるようにする。
「え……本当だ。って神の加護!?これ何ですか!」
「あーこれ?これはつい最近俺に付いた加護だよ。多分これのおかげでこんなに魔力があるんだ。昔魔力測った時魔力0だったから」
「ええっ!?サトイ君昔魔力なかったのですか!?」
「うん。まあそれでも普通に生活できるし気にしなかったけど」
「……サトイ君の話に驚いてばっかりです」
「次はサラの話を聞かせてくれないか?」
「いいですよ!最近帝都で私のお披露目会が行われたんですよ」
「ふむふむ」
「そのお披露目会で公爵様のご子息が私のことを好きだ!かわいい!とおっしゃられて……」
「よかったじゃん。公爵様の息子に褒められて」
「褒められたのは素直に嬉しかったんですが、その後公爵様からご子息様と私と婚約の打診があったらしくて」
「ふむふむ」
「私、お父様の面目を潰さないためにも婚約を受けると言ったほうがよいのでしょうか?」
ちょっと大人すぎない?10歳でそんなこと考えられんのかよ。この世界って精神の発達も早いのか?
「……サラはその話受けたいの?」
「う、受けたくないです」
「ならいいでしょ。君はまだ子どもなんだからわがまま言ってもいいんだよ」
「そ、そうですか?」
「うん。親はだいたい子どもの意志を尊重したいはずだからね」
「……お父様に今度言ってみます」
「うんうん、それがいいよ」
「……サトイ君は頼りになるお方ですね」
「そう?これでも君と同い年なんだよ」
「高身長で容姿も良くて、非の打ち所のないお方です」
「そんな、非の打ち所がないわけじゃないよ?」
「だから決めました!私サトイ君と結婚します!」
チョットナニイッテルカワカラナイデス。結婚?え、結婚?もしかして初対面の子にプロポーズ(?)されてる?
「……え、いやいやいや!俺たち初対面だよ?もっと内面見てから決めた方がいいよ?それにもっと魅力的な人もいるだろうし」
「それはありえません!」
「そ、そうかい……とりあえず友達から始めない?俺たちお互いに自分のこと知らないし」
「そうですね!私のことサトイ君にもっと知ってもらって必ず惚れさせてみせます!」
「あ、うん……」
何と言えばいいか分からない状況である。前世は女の子に求婚されることなんてなかったから。ハハハ……。そんなことを考えていると、馬車が止まった。
「屋敷に到着致しました」
横を見ると洋風の大きな屋敷。全く気付かなかった。後に乗ったサラが降りたので俺も降りる。案内してもらって屋敷内に入る。
「ここがサラの家……大きいねぇ」
「使用人の方々も住んでおられますし、それに来賓の方用の部屋もありますので」
「ふむふむ。貴族の屋敷ってこんな感じなのね」
「おや、随分仲が良さそうだね。何かあったのかい?」
さっき1人で馬車に乗ったルベルトさんである。
「ええ。彼女と友達になりました」
「それは本当かい!?サラにとって初めての男友達なんだ。優しくしてやってほしい」
「え、俺が初めての男友達……?お披露目会で友達作らなかったの?」
「女友達は作ったみたいなんだけど、男の子は怖いらしくてね。サトイ君は大丈夫だったんだね。まさかサラ、サトイ君のことす」
「お父様!サトイ君の前で言わないでください!」
いや君、俺にプロポーズ(?)したよね?何を俺の前で今更恥ずかしがってんのよ……。あ、ルベルトさんにそれを言われるのが嫌ってこと?
「そういえば馬車でサラに上級魔法まで使えると聞いたんですけど、ルベルトさんも魔法使えるんですか?」
「私は昔、宮廷魔術師をできるくらいだったんだ。でも最近魔法は使っていないからね。結構衰えてるよ……っと、この部屋だな」
ルベルトさんが2階のとある部屋の扉を開けると、部屋の長テーブルには取手付き宝箱があった。
「さ、2人とも適当なところに座ってくれ」
ルベルトさんが座った向かい側に座る俺とサラ。
「サトイ君、君にはお礼がしたい。これを受け取ってくれ」
「中身を確認してもいいですかね?」
「もちろん」
中身は大量の金貨だった。それを見て箱をゆっくりと閉じた。
「どうしてこれを?」
「君はサラを助けてくれた。だからお礼の気持ちを示さなければならない。受け取ってくれ」
「分かりました、受け取ります。でもこの箱はお返しします」
箱を開けて《
「《アイテムボックス》まで使えるのですね」
「しかしこんな《アイテムボックス》見たことないな……」
「《アイテムボックス》にも違いがあるんですか?」
「ああ。私の見たことのある《アイテムボックス》の使用者は物に手をかざしたりするとそれが消えたようになくなるんだ」
まさかの特別仕様?これも魔法超強化のおかげだな。別にうれしくはないけど。
「ああ、話が逸れてしまったね。何か欲しいものはないかい?私たちで用意できるものなら用意するよ」
え、そんな話だったっけ?まあいいや。使えるものは使おう。
「風属性魔法の書が欲しいです」
「風属性の魔法の書ね……分かった。君が帰るまでに用意させるよ」
「?帰るまで?」
「ああ。もう昼食にはいい時間だからね。君にはウチで昼食を食べてもらいたいんだ」
「え、いいんですか?」
異世界の貴族が食べる料理、是非食べてみたい。
「もちろん。あ、嫌いな食べ物はないかい?」
「ないですね」
「そうか。なら楽しみにしておいてくれ。ここの料理人の腕は帝国でもトップクラスだからね」
ほう、それは期待できそうな。不味いことはないだろうし、貴族の食べる料理だからね。
もぐもぐもぐ。ごくん。
「おお!これは美味い!」
うん、正直びっくりだよ。まさかこの世界にも地球とほぼ同じなチャーハンがあるとは。しかも前世で食べていた時よりも材料が良いし料理人も良いからすごく美味い。さすが貴族の料理人が作る料理だ。
「はは、そうだろう?足りなかったら言ってくれ。追加で作らせるからね」
「あ、大丈夫です。今あるだけで足りますから」
前世の俺は体育会系でもないインドア派人間だったためか食べる量はそんなに多くなかった。それが今世にも引き継がれているのか、俺はそんなに食べない。だからおかわりをできるほどではないのだ。
それはそうとお2人さん、食べてる俺をじっと見るのやめてくれませんかね?恥ずかしいし食べずらいんで。
「いやぁ〜食べてるところも様になるねぇ」
「さすがサトイ君です!」
「あの、食べずらいんで見るのやめてくれません?」
「ああすまない。つい様になっていたから見入ってしまったよ」
「やっぱりサトイ君はかっこいいです……」
この身体に転生させてくれた神様には感謝するよ(白目)。珍獣を観察してるみたいに見られるのがこの身体の弱点(?)だね。
「サラ……サラ!」
「はっ!私は何を……」
2人が親子漫才をやっている間に食べ終わった。え、食べ終わるの早いって?そんなことないよ。見られてるの我慢して食べてた時間が長かったから話が短くても食べ終えられるんだよ。
「ごちそうさまでした」
「お、食べ終わったね」
「し、しし失礼いたしましゅ!」
噛み噛みのメイドさんは食器類を配膳車に乗せて部屋の奥に消えた。
「?」
「やはり君の容姿は凄いねぇ……」
「自覚はしています」
「これは早々に身分を用意して囲わないと手遅れになりそうだ……」
「ははは、そうですかね……?」
「ああ。この話は置いておいて……そろそろ来るはずだ」
コンコンコン。ガチャ。
「失礼致します。書の用意ができましたのでお持ち致しました」
「ありがとう。テーブルの上に台ごと置いてくれ」
「承知しました」
「サトイ君、君が欲しかったものがこれで間違いないか中身を見て確認してほしい」
表紙からペラペラとページをめくる。
「はい。間違いないです」
「それは良かった。これは君が自由に使ってくれ」
それは受け取ってくれってことだよね?《
「私たちが渡すものは渡した。サトイ君、ここでゆっくりしていくかい?」
「お気遣いありがとうございます。でも俺も家に帰らないといけないので」
「うむ、そうか。暇な時はいつでも来てくれて大丈夫だからね。サラの初めての男友達なんだ、これからもよろしく頼むよ」
「まあ、はい」
「馬車を用意しようか。君の家はカーレ村だったね、送らせるよ」
「あ、大丈夫です。飛んで帰るので」
「飛んで帰るって……飛行魔法が使えるのかい?」
「はい。じゃ、また来ますので」
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