邪神ちゃんドロップキックin真・女神転生Ⅲ   作:五十貝ボタン

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第11話 ヒゲロン毛ハット

 ここはトウキョウ、ギンザ……

 閉じられたボルテクス界から邪神ちゃんが帰るには、コトワリを見つけなければならないという宣託(?)を受けて、邪神ちゃんとゆりねはコトワリに関する情報を探していた。

 

「なるほどね」

 BARのママ・ニュクスは、2人の話を聞きながら鷹揚に頷いた。悪魔にも色々いるが、どうやら彼女は単に世話を焼くのが好きらしい。

「たしかに、新しい世界のコトワリができつつあるというウワサは聞いているわ」

「本当ですか?」

 手がかりを探していたゆりねが実を乗り出した。

 

 ちなみに、邪神ちゃんは話に飽きて周囲の思念体に絡んでいる。

「お前達、足がないからけんけんぱもできねぇんでやんのー」

「足はあんたもないだろ……」

 それは置いておいて。

 

「まず、ニヒロ機構の総司令、氷川が掲げるコトワリ、シジマ……これは静寂な世界で秩序を最優先し、個の感情や欲望をなくそうというもの」

「つまんなさそうな世界ですの」

「でも、争いや諍いに苦しむことはなくなる……というわけね」

「おいおいゆりね、なにインテリぶった顔してるんですの。どうせ分かったような顔で頷いてるだけ……ごぱっ*1

 

「失礼、続けて」

「……わかったわ」

 ギンザのBARのママとして、これぐらいでは動じないようだ。

「他にふたつの勢力の噂が聞こえてきてるわ」

「ふたつ……というと?」

 

「ひとつは、崩壊したマントラ軍の思想を引き継ぎ発展させた、ヨスガのコトワリ」

「マントラ軍って崩壊してたのか!?」

「私たちがあちこち行ってる間にいろいろあったみたいね」*2

「ヨスガは弱肉強食……どころか、弱者は積極的に淘汰して強いものだけで世界を作ろうという考えよ」

「それって選民思想じゃない」

「悪魔は強いものが好きだからな、どうせ悪魔みたいなヤツが考えたに違いないですの」

 

「最後に、弱い悪魔たちがすがっているムスビのコトワリ。自分以外と関わりをもたずに、それぞれが小さな世界の中で完結する世界……」

「他と関わらずにどうやって生きてくんだよ」

「それができるようになってしまうのが、創世ってことなんじゃない?」

「創世の時にはコトワリに従わないものがどうなるかは分かったものじゃないわ。マガツヒに分解されて消えるのか、世界と世界の間の闇の中へ追放されるのか……その時にならないと分からないわね」

 

 ふぅ……と、ニュクスがタバコの煙を吐くような仕草をした。タバコは持っていないけど。

「こんなところね」

「創世の巫女の話によれば、シジマが作るのは閉じた世界だから、脱出するならヨスガかムスビに頼ることになるわね」

「どっちにしろ、お題目を掲げて集まる連中なんてろくなもんじゃねえですの」

「時には力に頼ることも必要でしょ」

 

 この時、邪神ちゃんは「お前はいつも暴力に頼ってるだろ」という言葉を必死で飲み込んだ。

 そして、お腹にできている青あざがいたんで声が出ないフリをした。

 思ったことがすぐに口に出てしまう邪神ちゃんも、旅を通じて少し成長したのだ。*3

 

「ありがとう。他にも情報を探してみるわ」

「ええ、またね」

 ニュクスに別れを告げて、ギンザの街へ出る。*4

 

「ゆっくり探索する時間もなかったし、せっかくだから街を見て回りましょ」

 

 

 DROP KICK ON MY DEVIL!

 

 

 ふたりがある扉を開けた時、そこには円筒形の奇妙な装置と、男がひとりいた。

「誰だ?」

「こっちのセリフですの。この邪神邪神ちゃんに名前を聞くときは自分から名乗るのが礼儀ですの」

「名乗ってるじゃない」

「それは名前なのか?」

 当然と言えば当然の疑問を口にしてから、男は首を振った。

 

「俺はヒジリ。このターミナルのことを調べている」

「ターミナル?」

「ああ。氷川がトウキョウのあちこちに設置したネットワーク装置さ。アマラを通じて瞬間移動ができるんだ」

 ヒジリが傍らの円筒に触れる。装置の表面に刻まれた複雑な図形が光を放ち、グルグルと回りはじめた。装置を起動させたらしい。

 

「瞬間移動!? 人間の技術でそんなことが……」

「ニヒロが圧倒的な優位を得たのもコイツのおかげさ。……にしても、まだ人間がいるとは思わなかったぜ」

 ヒジリがゆりねをちらりと見る。成り行きとして当然かもしれないが、悪魔使いだと思われているのだろう。

 

「私は花園ゆりね。その装置を調べて、どうするの?」

「ターミナルを通じてトウキョウに張り巡らされたネットワークには大量のマガツヒが流れている。マガツヒは悪魔の大好物だし、コトワリを啓こうって連中もこれを狙ってる。コトワリを啓くために大量のマガツヒが必要なんだ」

「都合よく解説してくれてますの」

「RPGってそういうものでしょ」

 

「俺は今はちょっとした用事でアサクサへネットワークを繋ごうとしてるんだ。俺の知り合いにはフィジカルなルートでアサクサに向かってもらってるが、ここから直にアクセスできるんじゃないかと思ってな」

 ヒジリがどうやってターミナルを操作しているのか、傍目でみてもさっぱり分からない。だが、タッチパネルもキーボードもない装置に何らかの方法で働きかけているらしい。

 

「私たち、コトワリを啓こうとしている人に会いたいの。できれば、シジマ以外に」

「それならちょうどいい。ちょっと頼みを聞いてくれないか」

「なんで私たちが怪しいロン毛の頼みを聞かなきゃいけないんですの」

「まあ、話は最後まで聞くものさ。頼みっていうのは、ネットワークの中に入って、アサクサまでのルートを繋ぐことだ。アマラにも悪魔がうじゃうじゃいるから、俺じゃできない」

 ヒジリの声音は落ち着いている。というより、どうせ悪魔使いに力ではかなわないのだから、開き直っているというところだろうか。

 

「なおさら危険ですの」

「その悪魔ってのは、ムスビのコトワリに惹かれて集まってるんだ。いま、ネットワークの中にはムスビの親玉が潜んでいる。そいつがマガツヒと悪魔を集めているんだ」

「つまり、あなたの頼みを聞けば、コトワリの指導者に会える……ということね」

「ターミナルの扱いに一番詳しいのは俺だ。俺の協力なしじゃ、引きこもりのムスビには滅多に会えないぜ」

 

 しばし、狭い空間の中を沈黙が支配した。

 

「おいゆりね、初対面のヒゲロン毛ハットを信用するのか?」

「ヒゲもロン毛もハットも関係ないでしょ。それに、他に手がかりがないわ」

「一度断って準備してきてもいいんだぜ。もう一度この部屋に入ってきたら、同じことを聞くから」

「どうやら、必須イベントらしいですの」

 「はい」を選んだらストーリーが進んでしまう選択の場合はだいたいNPCがこういうことを言うものだ。RPGの常識である。

 

「いいわ。私たちをネットワークの中へ送ってちょうだい」

「そう来なくっちゃな。それじゃ、始めるぞ」

 ヒジリがターミナルを回転させる。表面の文字が妖しく輝き、光がどんどん強まっていく……

 

「あっ、その前にガチャガチャを回しておきたいですの」

「いいから行くわよ」

 邪神ちゃんの首根っこをつかみ、ゆりねがターミナルへと進む。直後、ふたりの姿は光に飲み込まれて消え去っていた。

 

「あのお嬢さんたちと人修羅、どっちかが成功してくれればいいんだ。頼んだぜ」

 ヒジリは低く呟き、光が収まったターミナルの表面を撫でた。

 

 

 DROP KICK ON MY DEVIL!

 

 

 気づけば、異様な場所にいた。まるで何かの管の中に入ったかのような場所だ。

 床と天井には、赤いものがひっきりなしに流れている。それこそがマガツヒ、悪魔が求めるエネルギーである。

 

「体ごと入るなんて不思議ね……」

 アマラ経絡(ネットワーク)の中を見回しながら、ゆりねがつぶやく。

「さっさと引きこもりのニギリを探しますの」

「ムスビね」

 そんなやりとりで笑い合っていたとき……

 

「花園さんっ!!!」

 飛び出して来た影が、ひしっとゆりねに抱きついた。

 白い服にピンクの縦ロール。喜びのあまり涙をにじませているその人物は……

「あなたは……」

 

「ぴの! どうしてここに!?」

 

(つづく)*5

*1
カウンターの裏でゆりねにボディブローを食らった音。

*2
詳しくはゲームをプレイしてくれ!

*3
成長には痛みを伴うものだ。そういう意味だっけ?

*4
BARの中では、また宝物庫に侵入されたロキが「ふざけたものを置いていったのは誰だ!」と怒っていた。

*5
連続活劇みたいだろぉ?




また説明ばっかりになっちゃった。
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