邪神ちゃんドロップキックin真・女神転生Ⅲ 作:五十貝ボタン
「言っとくけど、悪魔が3人集まったところでぽぽろんちゃんには勝てないよ」
ステージの上。金の髪をたなびかせてぽぽろんは余裕綽々の笑みを浮かべている。
「あの、ぺこらもいるのですが……」
「ぺこら様が戦力になるわけないじゃん」
「ええ……」
がっくり凹むぺこらをよそに、ぽぽろんは金属バットを掲げてみせた。
「さっきの天使たちを倒したからって調子に乗らないでよね」
「天使の輪がなけりゃ人間と同じくらいの力しかないこと、忘れましたの?」
ブンカカイカンの広い観客席を降りながら、邪神ちゃんが「やれやれ」と肩をすくめる。
「あたしたちはボルテクス界でむしろパワーアップしてるくらいだぜ」
鼻息荒くミノスが拳を掌に打ち付けている。
「私は、戦うのは好きじゃないんだけど……」
メデューサはきょろきょろしつつも、ステージににじりよっている。観客席からステージを包囲する構えだ。
「まだ分かってないの? ぽぽろんちゃんは単なる天使じゃないの!」
ぽぽろんがバットで上を示した。そこには、マネカタたちから搾り出したマガツヒがぐるぐると飛び回っている。
「ぽっぽーろん☆」
くるりとバットで円を描くと、マガツヒが徐々に縮んでいく。いや、凝縮されているのだ。
「ま、まさか……!」
「よく言うよね。夢は待ってても叶わない、つかみ取るものだって」
アイドルスマイルを浮かべるぽぽろんの手の中で、凝縮されたマガツヒが輝くリングとなってきらめく。
「あれは……天使の輪!」
ぽぽろんが頭上に輝く輪をいただく。その背から、白く輝く翼が現れた。二対の白い翼は、それぞれがぽぽろんの細い体よりも大きいほどだ。体がふわりと浮き上がり、ステージの中空で敵対する悪魔たちを
「大天使ぽぽろん、降臨!」
「光輪だけに」
邪神ちゃんのジョークに笑う余裕があるものはいなかった(ゆりねがいれば笑っていただろうに)。
聖なるオーラが会館を包み、弱い悪魔ならすぐさま昇天してしまいそうだ。
「やめてくださいぽぽろん、天使の力は正しいことに使わなければ!」
「悪魔を倒して世界を粛正してあげようっていうの。これが正しいことじゃなければなんんなの!」
カッと光輪を輝かせ、ぽぽろんは掌を掲げた。
「話が通じる状態じゃねえ、ねじふせて言うことを聞かせるしかないぞ!」
大天使の威圧に臆せず、最初に動いたのはミノスだった。
「メデューサ、サポート!」
「う、うん!」
メデューサの瞳から発せられる魔力がぽぽろんの体にまとわりついていく。並の悪魔なら力が抜けてへたり込むような力だ。
「
涼しい顔のぽぽろんに、ミノスがツノを突き出して突っ込んでいく。
「地獄突き!」*1
ガッ!
だが、溢れる威光を身にまとったぽぽろんは、ミノスの全力の突進を涼しい顔で受け止めていた。
「なにっ……!?」
「マハンマオンであっという間に殺してあげちゃってもいいんだけど、せっかくだから力の差を分からせてあげる☆」
「くっ……! ボス級だとしたら2回行動が来ますの!」
「なに言っちゃってんの。大天使が2回で済むわけないでしょ!」
ぽぽろんの瞳が妖しく輝いた。
「獣の眼光!」*2
そして、ミノスのツノを両手で掴んで体ごと持ち上げた。一見細い腕が、体格のいいミノスを軽々と持ち上げるのは異様な光景だ。
「げっ、馬鹿力のミノスをパワーで持ち上げてますの!」
「馬鹿力って言ったの聞こえてるからな、邪神ちゃん!」
「今の力なら、悪魔の一匹ぐらい最後列まで投げ飛ばせる!」
ぶおんっ!
風をうならせて、ミノスの体を思い切り投げる。ミノスは観客席を巻き込みながら、ホール奥の壁にぶつかった。
「ぐあっ……!」
「ミノス!」
メデューサが口元を押さえ、心配げに叫ぶ。
「人の心配してる場合?」
そのすぐ横から声。瞬間移動したのかと見まごうスピードで、ぽぽろんが接近していた。
「復活した光の剣なら、二階席まで!」
カキーン!
光の剣*3によるフルスイングがメデューサを打ち据えた。
「きゃっ……!」
メデューサの体は魔力のバリアで守られているからケガはないが、軽い体は紙切れのように宙を舞い、ブンカカイカンの2階席まで吹っ飛ばされていった。
「ミノス! メデューサ! 死ぬな、プレスターンが減るだろ!」*4
「まだやられちゃいないけど、なんてパワーだ……!」
粉々になった観客席の破片を振り払いながら、ミノスが首を振る。
「どどどどうしよう邪神ちゃん、勝てっこないよ……!」
二階席の手すりから顔を覗かせ、メデューサがぷるぷると震えている。
「泣くなメデューサ、私はあいつに二回も勝ってるんだ!」*5
「そういえばあんたには簀巻きにされて海に投げ込まれた恨みがあったね」
ぽん、と煙を立てて、ぽぽろんの手の中にバズーカ砲が現れた。
「これならどこまで届くかな?」
「やめっ……」
バゴーン!
ロケット弾が邪神ちゃんの腹に直撃し、その体を一気にふきとばす。
悲鳴をあげる間もなく、爆発は五階席を砕き、邪神ちゃんの血が会場じゅうに飛び散った。血煙と呼ぶにふさわしい。肉片も残さぬ爆発だ。
「やったー、五階席! いちばん上まで、ちゃんと見えてるからね♡」
血に染まった五階席に向けてピースサインを送りながら、ぽぽろんははしゃいだ声をあげた。
「邪神ちゃん!」
「そ、そんな……」
水風船のように弾けた邪神ちゃんは返事することもできない。五階席がどうなっているか、下からはよく見えないのは幸いと言えるだろう。
「ぽぽろん、こんなことをするなんて……」
「悪魔退治はもともとぺこら様の仕事でしょ? 代わりにやってあげたんだから、感謝してほしいぐらいなんですけど」
「思いやりをなくしてしまったんですか!」
腰に下げたムチを手にして、ぺこらが語気を強める。
「天使の輪がないぺこら様が、そんなムチひとつで勝てるつもり?」
冷たい目で見下ろして、ぽぽろんが笑う。
「やれるもんならやってみなよ、大天使ぽぽろんちゃんに敵うと思うならね!」
邪神ちゃんとともに吹っ飛んだ天井から、カグツチのギラギラした光が差し込んでいた。
(つづく)