邪神ちゃんドロップキックin真・女神転生Ⅲ   作:五十貝ボタン

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第7話 悪魔にみついで平気なの

 ギンザで集めた情報で、ようやくニヒロ機構本部のありかへやってきた邪神ちゃんとゆりね。

 そこには、マントラ軍の先遣隊が石と化した光景が広がっていた!

 

「こ、この能力は……」

 十数匹はいる悪魔が石像と化して並べられている。その光景はさながら札幌芸術の森野外美術館。*1

 そんな前衛的な光景を前に、邪神ちゃんはおののいていた。覚えのある魔力を感じていたのだ。

 

「悪魔を石に変えてしまう能力なんて、まるで……」

 ゆりねが思案した時、ニヒロ機構本部の丸い建物から人影が現れた。

 

「邪神ちゃん!」

 萌え声*2が呼びかける。90年代風デザインの大きな目の美少女。なぜか古代エジプト風の装飾を身につけた彼女は――

「メデューサ!」

 邪神ちゃんの親友にしてA(甘やかし)T()M(マネーをくれる人)、メデューサである。

 

「メデューサ、どうしてお前がここに!」

「私、ニヒロの悪魔になったの。シジマの世界になれば、もう邪神ちゃんが借金に苦しんだり、ギャンブルにハマったり、ガチャに生活費をツッパしなくてよくなると思って……」

「返す言葉もないわね」

「私はそれが楽しいんだ!」

 ゆりねに冷ややかな目を向けられても、邪神ちゃんは折れない。

 

「マントラ軍がここを襲撃しようとしてることは分かってる」

 メデューサの目が怪しく輝く。その視線には魔力が宿っており、見られたものは石になってしまうのだ。

「くっ……!」

 邪神ちゃんは悪魔だから耐えられる……はずだが、ピリピリとした空気が肌にまとわりつく。本気になったメデューサが石化の魔力(ペトラアイ)を放ったとき、レベルで劣る邪神ちゃんが耐えられるかどうか……。*3

 

「まずいわよ、邪神ちゃん。ミノスみたいにまた敵対することになったら……」

 ちなみにゆりねは路上販売から買ったブレスレットの効果で石化に耐性がある。魔力無効である。

「待てメデューサ、私たちが戦う理由なんてどこにもないはずですの!」

 メガテンらしい説得の言葉を投げかけてみる。果たしてニヒロの手先と化したメデューサに、言葉は届くのか!

 

「私、計画の準備が終わるまで誰も通すなって言われてるんだ。だから、もし邪神ちゃんが相手でも……」

 ヤンデレじみたハイライトのない目で、メデューサがつぶやく。

(まずいわ。こうなったらミノスの時と同じように!)

 ゆりねは即断即決のもと日本刀を閃かせ、邪神ちゃんを『邪神』と『ちゃん』に分解した。

 

「ぎゃーーーーー!?」

『邪神』部分が絶叫をあげる。『ちゃん』は声をあげられないのでビチビチとくねっていた。

「何考えてんだゆりね! 後ろから斬りかかるなんて!」

「メデューサを正気に戻すためよ。邪神ちゃんの肉を食べさせないと」

「どうしてそんな思考に……?」

 親友が一刀両断される姿をみて、メデューサは青ざめて顔をそむけている。

 

「助けてくれメデューサ! また殺される!」

『邪神』が『ちゃん』を引き寄せてセロテープでくっつけながら助けを求める。もはや誰だ誰の敵やら分かったものではない。

 

「かわいそうな邪神ちゃん。でも、マントラ軍は私たちの敵だから……せめて石にして私の部屋に飾ってあげるね」

「マントラ軍じゃないわよ」

 何やら怖いことを言い出したメデューサに、ゆりねがぼそりと突っ込む。

 

「えっ? でもイケブクロの方から来たから、私はてっきり……」

「誰があんなむさ苦しい集団の仲間になるか! だいいち、暴力で物事を解決しようとするやつにろくなやつはいませんの!」

「邪神ちゃん、あんたまた当てこすってるわね?」

 ゆりねが愛用の日本刀を再び掴んだ。*4

 

「なーんだ、そっかぁ。じゃあ戦わなくていいね」

 メデューサから立ちのぼっていた怪しげなオーラ*5が霧散した。

「よかった。邪神ちゃんと戦わなくて済んで」

「メデューサ! 私もだ!」

 邪神ちゃんが蛇の下半身をくねらせて、無二の親友にひっしと抱きつきに行く。(切られたばかりだから継ぎ目が少しズレている)

 

「邪神ちゃん♡」

「メデューサ♡」

 親交を温めるふたり。*6

 

「でも、マントラ軍じゃないならどうしてここに?」

「私たち、ミロク経典が欲しいの」

 警戒が解けたことで、ゆりねも日本刀をしまっている。*7

「ミロク経典って、ガイア教の聖典? 東京受胎を起こすのに使われたっていう……」

 その名を口にすることも恐ろしい魔書である。メデューサは思わず口を塞いだ。

 

「そうだ。それを使って、私は魔界に帰るんだ。その時はメデューサ、お前も一緒につれていってやってもいいですの」

「……」

 楽観的なふたりの計画を聞いて、メデューサはしばし口をつぐむ。どこか同情するような視線を向けてから、こくんと頷いた。

 

「わかった。私は経典がどこにあるか知らないけど、知ってそうな人のところへ案内してあげる」

「いいのか!? やはり持つべきものは親友!」

 わかりやすくはしゃぐ邪神ちゃん。だが、ゆりねはメデューサの躊躇に気づいている。

 

「何か言いたいことを隠してない?」

 静かに聞くゆりねに、メデューサはゆっくり首を振った。

「邪神ちゃんとゆりねさんなら、本当にできるかも……ここでは何が起きても不思議じゃないですから」

 石化した悪魔に砂塵が吹きすさぶのを見ながら、メデューサはつぶやくように言った。

 

「ここはいいのか? マントラ軍を止めないといけないってさっき言ってただろ?」

「いいの。もう準備は終わったから」

「準備?」

「邪神ちゃんは気にしなくても大丈夫だよ」

 これからここで何が起きるのか、メデューサは分かっているらしい。マントラ軍の大軍勢が押しかけてくるというのに、焦った様子もない。

 

「私ももう行かなきゃ行けないところだから、ちょうどよかった」

「その知ってそうな人って、どこにいるの?」

 メデューサは瞳を斜め上へ向けた。カグツチの光を受けて、紫水晶(アメジスト)のような瞳が妖しく輝く。

 その視線のはるか先に、黒々とした巨塔のシルエットがそびえていた。

 

「オベリスク。創世のはじまる場所……」

 

(つづく)

*1
邪神ちゃんといえば北海道。でも札幌とはコラボしてない。

*2
この表現、今の人にも通じる?

*3
邪神ちゃんとメデューサはもともと同じぐらいのレベルだったのだが、邪神ちゃんのサボり癖、そしてゆりねに何度も殺されたことでレベル差がついている。

*4
女子大生が日本刀を愛用?

*5
扉の奥にいたら「妖気を感じる」と言われるやつ。

*6
ここしかカプ要素はないので、邪メデュ派は10数えてから次の行へ進んでください。

*7
どこに?

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