もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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「どう翔太郎君?」
亜樹子が翔太郎に尋ねる。

「ダメだ....やっぱり照井と繋がらねぇ。
敵に捕まっちまったのか?」
その言葉をフィリップが否定する。
「いや、その可能性は低いと思う。
照井の事を検索してみたが死んではいなかった。」

地球の本棚には地球に存在する全ての情報が揃っている。
そこには人の生死も含まれており先程、照井竜の本を調べたら"ALIVE"(生存)と書かれていた。
「竜くんの居場所は検索できないの?」
「キーワードが少なすぎる.....
場所を特定する具体的なヒントが無い限り調べても分からないと思う。」

「照井も心配だが真島も問題だ。
警察の話じゃ、居所が掴めないらしい。」
連続殺人鬼でありキメラメモリと言う危険な能力を備えた物を使う文字通りの怪物が今もこの街に潜んでいる。
風都を守る仮面ライダーとしてそれは見過ごせない事態であった。

「クソッ!あの時に幹部を倒せていれば間に合ったかもしれないのに....」
「翔太郎....いくらエクストリームの力でも難しいことはある。
ゴーゴンドーパントの能力は厄介なものが多すぎる。
石化に加えて怪力に鉱物の操作....足止め出来ただけでも上出来だったと思うべきだ。」

エクストリームは一見、無敵のようなメモリに見えるがそれは"検索して即座に対応できる敵"に限る。
ゴーゴンドーパントを攻略するには初見では圧倒的に準備不足だった。
「分かってるさ.....分かってるけどよ....」
そう....翔太郎は甘い。
もし、照井と九条と自分達が揃っていれば照井が見つからない事もなく九条さんも死ななかったかもしれない。
そんな事を考えてしまいそれが、顔に出るぐらいには彼は甘さが残っている人間だった。
(だが、そのハーフボイルドが僕には必要なんだけどな....)
フィリップは翔太郎の肩に手を置く。

「仮面ライダーは超人ではあるが神ではない....
全てが救える訳じゃないんだ。
今は九条綾が守ろうとしたこの街を彼女に代わり守ることが僕たちに必要なことだろう?」
「......そうだなフィリップ。
もう一度、調査に行ってくるわ!
フィリップと亜樹子は照井の居場所を調べてくれ。
ガジェット借りてくぞフィリップ!」
そう言うと翔太郎はフィリップの持ってきたメモリガジェットを持つと外にくり出していった。

そして、残されたフィリップと亜樹子は残った情報から照井の居場所を探しだそうと調査を開始した。


第九十七話 消えたT/再燃する感情

目を覚ました照井の前には一台のバイクとオフロード用の走行ステージが広がっていた。

「.....ここは?」

 

「やっと、お目覚めかしら照井 竜。」

そう言ってシュラウドが姿を現す。

「シュラウド、俺は....」

「キメラメモリを使ったドーパントに敗れた貴方をここに連れてきたのは私.....確認したいことがあってね。」

「確認したいこと?」

「ええ、貴方の"憎しみ"についてよ。

まだ残っているのか不思議になってね。」

 

「どういう意味だ?」

「左 翔太郎と馴れ合った結果、復讐心も憎しみも失ってしまったんじゃない?」

「そんな事はない!井坂は俺が倒すべき相手だ!」

「"倒す"....ね。

前の頃なら"殺す"と言っていた貴方が変わったものね。」

そう言うとシュラウドが懐からメモリを取り出す。

「それは?」

「アクセルの強化を考えて作ったメモリだったけど....憎しみの炎を失くした貴方に渡す気は無いわ。」

 

そう言って立ち去ろうとするシュラウドにアクセルに変身した照井が立ち塞がり、エンジンブレードを向ける。

「俺にある憎しみの炎は....まだ消えちゃいない。」

仮面の奥におる瞳を見つめたシュラウドはメモリを照井に投げ渡した。

「良いわ....ならテストしましょう。

そのメモリを使いこなしてご覧なさい。」

照井はドライバーからアクセルメモリを抜くと新しいメモリを展開し起動する。

 

TRIAL(トライアル)

 

ドライバーにセットしてスロットルを回すとメモリに付いていた信号機が点滅する。

まるでレースのスタート音のような音が鳴り信号機が青色になるとアクセルの装甲が弾けて軽装な青い装甲の姿である"仮面ライダーアクセルトライアル"へと変身が完了した。

 

「その姿はアクセルトライアル......防御力と攻撃力を削り代わりに速度を限界まで強化した形態よ.....これを使いこなせれば貴方は"全てを振り切る速さ"を手に入れられる。

試しにそこの山を登ってみなさい。」

シュラウドが指を指す山を目指して照井は走るとあまりの速度に驚く。

「何て速度だ!」

「まだよ....このメモリの真価は」

シュラウドが懐からボタンを取り出し押すと山の頂が爆破し大きな岩が落石となって照井に降り注いだ。

 

無数に近い落石を回避しながら避けられない岩を拳で砕いていく。

だが、拳の力も弱くなっているらしく一発で完全に破壊することは出来ない。

「パワーが足りない。」

「違う.....戦法を変えるのよ。

一発で破壊できないなら何発でも打ち込みなさい。

十発でダメなら百発...百発でダメなら千発、相手を完全に破壊するまで攻撃を叩き込み続けるのよ。」

照井はその言葉に従い落石に拳と蹴りを連続で浴びせて破壊した。

 

「成る程.....このメモリの事は理解した。」

「そう....ならマキシマムを使って貰いましょうか。

メモリを抜いて元の形に戻しスイッチを押すとマキシマムが発動するわ。」

照井はドライバーからトライアルメモリを引き抜くと元の形に戻し親指でスイッチを押す。

すると、タイムの計測が始まる。

照井は山に向かって走り出す。

先程よりも洗練され素早くなったアクセルだったが途中で身体の動きが止まる。

「ウグッ!何だ?.....この力は!

まるで制御できない。」

そして、マキシマムを発動して9.9秒を過ぎた結果、

アクセルは強制的に変身を解除された。

 

そして、照井に降り注がれる落石をシュラウドは仕込んでいた爆弾を起動して破壊した。

「今のが実戦なら....貴方は確実に死んでいた。」

シュラウドは走行ステージとバイクを指差す。

「あのコースを"10秒以内"に走りきれば....トライアルマキシマムドライブを使いこなせる。

やるの?......やらないの?」

「俺に.....質問をするな。」

そう言うと照井は立ち上がりバイクへと向かうのだった。

 

 

 

 

Another side

 

園咲邸でこの実験を見ていた琉兵衛は報告に来ていた獅子神と対峙していた。

「中々に面白い結果だったよ。

ドーパントを喰らい能力を奪うメモリとは.....

シルバークラスなら申し分無い性能だな。」

「そう言って戴けるとは恐縮です。

メイカーは有用だと言う証明も出来ましたし無名も満足でしょう。」

 

「そう言えば無名はどうした?」

「サラの調子を見に行っております。

サラにはWの足止めを頼んだのですがそこで傷を負ったらしくその状態を確認しに向かっているようです。」

そう話していると部屋に無名が入ってきた。

 

「遅くなりました琉兵衛様。」

「構わんよ....それでサラの具合はどうだった?」

「新しい形態のWとの戦闘でダメージを負ってしまったようですがメモリブレイクもされておらずメモリにもダメージが無いことが確認できました。

しかし、暫く身体の治療のために安静にしておいた方が良さそうです。」

 

「そうか.....それは残念だな。

では、暫くの間水音町のメモリ販売は無名に変わって貰おうか。」

そこで獅子神が反論する。

「お言葉ですが琉兵衛様、無名は研究が専門でありガイアメモリの販売や供給には不慣れかと思います。

宜しければ私に兼任させて貰えないでしょうか?」

「それは構わないが....君には天ノ川地区の管理があるだろう?」

「はい、しかし天ノ川地区は今優秀な部下が回しているので問題ありません。

琉兵衛様....なにとぞ。」

 

琉兵衛は少し考えると獅子神に言った。

「良いだろう君に任せよう獅子神。

サラが復帰するまで水音町の管理を君に任せる。」

「ありがとうございます。」

「では、無名....君には通常通りメモリの開発を行って貰おうか。

何か新しい研究結果は無いかね?」

「研究結果ではありませんが.....最近財団Xで妙な動きがあると小耳にはさみました。」

「妙な動き?」

「えぇ、財団が独自でメモリの生産を行っていると言う情報があるのです。

しかも、我々の使うメモリではなく仮面ライダーが使うようなメモリの生産を....」

 

「それが本当なら....あまり喜ばしい事態ではないな。」

「えぇ、ですのでその調査をさせていただけないでしょうか?

幸いこちらには軽く動かせる駒もいます....

彼等に調べて貰いましょう。」

「NEVERか?」

「はい、仮にミスをしても彼等の独断で行ったと言えば角も立ちませんし有効な手かと思います。」

 

「......そうだなキース君の例もある。

用心しておくに越したことはない。

良かろう調べておいてくれ。」

「承知いたしました。

その関連で今後は琉兵衛様への報告で"園咲邸に向かえないことが多くなる"と思いますがどうぞお許しください。

それでは僕も失礼致します。」

そう言うと無名は部屋を後にした。

 

(.....良し時間は確保した。

NEVERにも一応、調査は頼んでおこう。

今、やるべき事はアクセルの強化案と....ゴエティアの問いに答えることをしないと....)

(恐らく、このデーモンメモリは普通のメモリと違う何かがある。

それを調べるためにも今はミュージアムに余計な監視をされたくない。)

 

そう考えた無名だったがアクセルの強化が気になりそれを見てから向かおうと思い行動を開始するのだった。




off shot

ベッドで休んでいるサラに美頭が差し入れとしてりんごを買ってきた。
「あらっ、ありがとう美頭。
心配してくれたのね?」
「勿論ですサラ様。
貴女は私の命の恩人なのですから......」

Wとの戦いで腕にプリズムソードによるダメージを受けてしまっていたサラは両手が使えない状況だった。
それを見たからか美頭が言う。
「もうじき、千鶴さんが貴女の御見舞いにきます。
私はりんごを剥いてきますね。」
そう言って部屋を出ようとするとサラが止める。

「美頭......頼みがあるんだけど聞いてくれるかしら?」
「はい?何でしょう。」
「......にして」
「あの....上手く聞こえなかったのですが...」

「りんごは"ウサちゃんに切るように"して.....」
サラは今こそミュージアムの幹部であるがその前までは人並みの幸せすら無かった人間であった。

故に彼女は表には出さないが普通の人が楽しんでいた事に羨ましさを持っていたのだ。
"病気の時にウサギカットのりんごを食べられる"と言う小さな幸福のようなものに.....

恥ずかしがりながら言うサラに美頭は笑顔で答える。
「えぇ、サラ様のご要望通りに致します。」
「ありがとう....それとこの事は他の部下には秘密でお願いね。」
「承知いたしました。」
そうして美頭はリンゴを持って部屋を出ていった。

しかし、サラは両手が使えないことを忘れていたようでアタフタしているところに千鶴が現れてアーンされてしまう悲劇を味わうのだが....この時の幸せなサラには関係の無い話だった。

外伝 続編の投稿に関して

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