もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百話 笑うW/出会う昨日

キメラドーパントとの一件から始まった風都刑務所での脱走事件が漸く終息した。

翔太郎やフィリップ、亜樹子は九条 綾の葬式に参列していた。

 

今回、彼女の協力により事件解決が早まった事を照井が上層部に報告したお陰もあり警察主導により彼女の葬式が執り行われることになった。

 

そこには手伝いとして同僚だった刃野さんや真倉も参列していた。

「こんなのおかしいっすよ!」

真倉がそう叫ぶ。

「彼女は警察官なのにドーパントになったんですよ!

おまけに僕たちも襲って刃野刑事にも怪我を負わせて....それなのに!」

「おい、真倉いい加減に」

 

そう言って刃野が止めようとするがその後に真倉の発した言葉に黙る。

「何で死んじゃうんですか!生きて罪を償えば良いじゃないですか!

死んだら怒ることも笑うことも出来ないんっすよ!」

 

九条さんがドーパントだと分かる前は本当に尊敬できる人物だった。

だから、彼女が照井警視に協力すると言った時は嬉しかった。

だからこそ、何で死んだのか?

ドーパントの姿になって.....彼女はやっぱり刑事じゃなかったのか?

そんな思考で頭がグチャグチャになっていた。

 

そこに翔太郎がかけ寄る。

「おい、翔太郎分かってるだろうが今の真倉は...」

刃野刑事の言葉を遮り真倉に話しかける。

「少なくとも俺は綾さんは死ぬ瞬間まで刑事だったと思うぜ。」

「?」

「風都を守る仮面ライダーなんて噺たてられているが綾さんはそんなライダーを守って死んだ。

この意味が分かるか?」

「綾さんにとっては仮面ライダーも守る市民の一人だったんだよ。

だからこそ、自らを犠牲にして助けた。

例えそれが自分の命がなくなることと分かってたとしてもな。」

 

「..........」

真倉は翔太郎の言葉を聞くと落ち着いてその場を後にした。

「すまねぇな翔太郎.....真倉は九条を本当は尊敬していたからな。

良く酔っぱらった時に言ってたよ。"綾さんがドーパントに何かならずに超常犯罪捜査科にいてくれたら"ってな。」

 

そこに松葉杖をつきながら照井がみんなの前に現れた。

「照井.....お前外でても平気なのか?」

「俺に質問をするな....

問題ない、医者からの了承も出来ている。」

照井はそう言ってはいるが実際は絶対安静なのだが、無断で病院を抜け出してきた。

 

「俺は彼女に命を助けられたそのお礼をちゃんと言いたくてな。」

そうして照井は九条の前に行くと焼香をする。

彼女の身体はエンバーミングにより綺麗に治されておりまるで眠っているようだった。

焼香が終わると照井は翔太郎達に言った。

「彼女の遺体は火葬後、溝口と同じ墓に埋められるそうだ。

二人の両親からも許可はとってある。」

「へぇ、照井にしては粋な事をするじゃねーか。

きっとそれが良いと思うぜ。」

 

おやっさんが言っていた。

"人は死んだら罪も何も無いただの死体になる.....

だからこそ、生きてる内に罪を償い死んだら人として尊厳をもって葬ってやる。

それが正しい人のあり方だ"って....

翔太郎はそれを思い出すと帽子を深く被り優しい顔を隠すのだった。

 

 

 

 

 

無名は風都を離れる前にとある場所に寄っていた。

表の看板には風都保育園と書かれている。

園長先生は僕の顔を見ると笑顔で言った。

「あらあら無名さん。

今日も子供達に会いに来てくれたんですか?」

「いいえ、今回は別件です....彼女は?」

 

「えぇ、中にいますよ。

呼んできましょうか?」

「お願いします。」

そう言うと園長先生が僕の目的の人物を呼びにきてくれた。

呼ばれた彼女は僕の前に現れる。

そして、僕はこう言うのだった。

「初めまして"須藤雪絵(すどうゆきえ)"さん......僕の名前は無名と申します。」

 

 

 

 

 

Another side

 

黒いシャツと黒いズボンの服を着た無名と名乗る男は私に話しかけてきた。

私がこの風都に来たのは兄からの不思議な電話を受け取ったからだ。

 

 

「雪絵....元気にしているか?」

「何よお兄ちゃん、私は元気よ。

それよりもお兄ちゃんはちゃんとやれてるの?ご飯食べれてる?」

「はっはっは....まるで母親みたいな言い方だな...|?」

電話の向こうで兄が何かを我慢するような声が聞こえた。

「どうしたの?お兄ちゃん。」

「.....何でもない。

そうだ、もし困ったことがあれば鳴海探偵事務所を頼れ。

それと暫く連絡がつかなくなるが心配するなよ。」

 

「どう言うこと?ねぇお兄ちゃ..」

ここで連絡が途切れたことを不審に思った私は大学に休学届けを出すと風都に向かった。

 

風都に到着すると街の風がお兄ちゃんに送ったスカーフを私に届けてくれた。

そして、新聞記事を読んでお兄ちゃんが死んだことを知ったのだ。

 

絶対に何かあると思った私はこの街について調べた。

そして"ガイアメモリ"の存在を知った。

街の黒い噂をネットで調べてみると兄の勤めていた会社がガイアメモリに関連しているかもしれないという情報を得られた。

 

そこで私は真相を確かめるためにガイアメモリを買った....そんな矢先にお世話になった幼稚園の園長先生から連絡があったのだ。

最近、不当な地上げで悩んでいたらしいのだがとある人物が助けてくれたらしく、何と兄と交流を持っていたと言うのだ。

その人物は私のことも知っているらしく会いたいと言ってきた。

 

そして、今、無名と私は対峙している。

無名は私に言った。

「お兄さんの事でお話ししたいことがあるのですが....何処か静かな場所で話せませんか?」

「そうね。

園長先生、ちょっと出掛けてきます。」

そう言うと二人で保育園から離れた公園へと向かった。

「ここなら、良いでしょう?

無名さんって言いましたっけ...兄について話して貰えますか?」

「えぇ、その前に......」

 

 

「懐に入れているメモリを出していただけますか?」

私がメモリを隠し持っていることを看破されるが平静を装って尋ねる。

「.....何の事でしょうか?メモリって一体」

「惚けなくて結構です。

貴方がお兄さんのいた組織を調べていたことは知っています。

そして、復讐のためにガイアメモリを手に入れたこともね。」

「そこまで知っているのなら貴方は兄がいた組織に関係があると考えて良いわけね?」

 

「えぇ、そしてこれから話すことはきっと貴女の興味をそそると思いますよ。」

「須藤雪絵さん.....貴方の兄、須藤霧彦は生きています。」

 

「.......え?」

想像もしない言葉に私は呆けてしまう。

すると、無名はタブレットを取り出して私に見せた。

そこにはベッドで横になっている兄の姿があった。

「...お兄ちゃん。」

「貴女の兄は今、僕の管理している孤島にいます。

僕の提案は貴女をそこに連れていくこと.....

それと貴女の今起そうとしている復讐を止めることです。」

 

「.....何もかもお見通しって訳ね。

なら、私がこうしたら貴方はどうするの!」

私はメモリを起動してコネクターに挿した。

 

Yesterday(イエスタデイ)

 

そして、ドーパントへと姿を変えると無名にイエスタデイの刻印を放った。

これが当たると対象を昨日と言う時間に閉じ込めることが出来る。

「兄の居場所を教えてくれてありがとう。

兄は貴方の手を借りずに私が助け出すわ!」

そう無名に良い放つと私は腕についた装置を起動した。

 

しかし、無名の動きに変化は無かった。

「何故、イエスタデイの力が効いてないの?」

私の問いに無名は笑顔で答える。

「刻印とは"これの事"ですか?」

無名が指し示した場所には黒い炎が浮かびイエスタデイの刻印を燃やしていた。

「僕には貴女のメモリの力は効きません。

メモリを使い続けたお陰で生身でもこれぐらいの力は使えるんですよ。」

 

そう言うと無名はドライバーを腰につけてメモリを起動した。

 

「Demon」

 

メモリを挿し込むと無名の姿が変わり悪魔のような姿になった。

そして、黒炎が鎖に変化すると私の首に巻き付き地面へと倒された。

「うっ!」

「これが本気の戦いなら貴女は死んでますよ?」

私の首に刀をつけながら無名は言った。

「.....殺せば良いでしょ!とっくに覚悟なんて出来てるのよ!」

 

私の言葉に無名は呆れたように言った。

「......ハァ、そんな事するわけ無いでしょう?

折角、助けたのに殺すなんて事しませんよ。

今のは貴女の今の力では復讐なんて叶わないと言う事を教えたかっただけです。」

そう言うと無名は刀を私の首から外した。

 

「さっきも言った通り、僕の目的は貴女を兄と会わせることです。

信用したくない気持ちも分かりますがこれは本当の事です。

だから、僕と一緒に来てくれませんか?」

私はそうして差し伸べられた手を掴んだ。

「良いわ。今は貴方の言う通りにしてあげる。

けど、勘違いしないで、貴方の事を信用した訳じゃないから......」

私の返事を聞いて無名もメモリを抜いて元の姿に戻った。

 

そして、私は園長先生に挨拶すると兄と再会するために無名と一緒に孤島へと向かうのだった。

 

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