もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百四話 暴かれたV/納得できない結末

事件が解決した翔太郎であったがその表情は暗かった。

事情を知った亜樹子は依頼料を返すと憤慨しながら帰って来た。

 

「全く、私達を利用して犯罪の片棒を被せようとするなんて...許せない!

ちょっと玄関に塩撒いてくるわ塩!」

そう言って亜樹子は塩を持って部屋を出ていった。

 

「大丈夫かい?翔太郎....随分と表情が暗いけど」

「問題ねぇよ....って言いたいが正直、まだ怒りが収まらねぇ。

あの男は自分の罪を他人におっかぶせた挙げ句、罪を償わずに生きてきたんだ。

反省するどころか楽しそうに笑いながらな.....」

 

「ガイアメモリは人を変えるとは言うがあの男の場合、元々狂ってたのがガイアメモリによって更に悪化したと言うのが正しいのだろうな。

だが、そんな奴でも警察に捕まれば何も出来ない。

大人しく刑に服するだろう。」

そう言ってフィリップが宥めている時に翔太郎の携帯に着信が入る。

 

「俺だ左。」

「何だ照井かどうかしたのか?」

「落ち着いて聞いてくれ。

角谷尊が"証拠不十分"で釈放されることになった。」

「どう言うことだ!奴は二人の人間を死に追いやった殺人犯なんだぞ!

それにメモリを使った証拠もあるだろうがっ!」

急に怒鳴り出した翔太郎に亜樹子とフィリップも驚く。

「ガイアメモリは新田に"無理矢理挿された"と供述している。

当の本人(新田)も病院で目を覚まさない以上、それを否定する証拠もない。」

 

「お前....そんな言い分で引き下がったのか照井!!」

「そんなわけないだろう!本庁に再調査を願い出たが潰された。

恐らく警察の中でもかなり上の立場の人間とコネクションがあるんだろう。

それを調べようにも時間が足りない!

.....角谷尊は釈放するしか無いんだ。」

照井が悔しそうにそう言った。

翔太郎は携帯を切ると立ち上がる。

「何処に行く気だい翔太郎!」

「決まってんだろ!直接、奴をとっちめて真実を吐かせてやる!」

「無駄だ!警察が釈放すると決めた以上角谷尊を立件することは出来ない!

君が行けば捕まるだけだぞ!」

 

「じゃあどうすりゃ良いんだよフィリップ!

警察が釈放するってことはまたアイツが野に放たれるって事なんだぞ!

そうしたらまた被害が出るに決まってんだろ!」

「......それは」

言葉をつまらせたフィリップを置いて翔太郎はバイクに乗ると警察署へと向かった。

 

 

 

 

風都のビルの一角にオフィスを構える雨ヶ崎 天十郎は電話を切ると角谷誠司に顔を向けた。

「警察の知人と話を付けました....息子さんは直ぐにでも釈放されるそうですよ。」

「ありがとうございます天十郎先生。

今回は本当に助かりました。」

そう言って誠司は天十郎に頭を下げる。

 

「それにしても、随分と無茶をしたものですね。

子供のためとは言え貴方にはリスクのある行為の筈だ。」

「これでも息子を愛していますので....息子のためならどんなことでもしますよ。」

「.....そうですか。」

「では、私は失礼致します。

献金の件はご安心ください....色を付けて贈らせていただきます。」

「ありがとうございます。」

 

そう言って誠司は天十郎の事務所を出ていった。

すると天十郎の元にまた電話がかかってくる。

「はい、雨ヶ崎天十郎です。」

「無名です。」

「あぁ、これは無名さんお久し振りです。

頼んでいた"メモリ"が出来上がったのですか?」

 

「いえ、今回連絡を入れたのは角谷尊とその父、角谷誠司に関してです。

二人と先生は何か関係がありますか?」

「息子さんの方とは関係ありませんがお父さんの方は私に献金をしてくださるパトロンの一人ですよ。

それがどうかしましたか?」

 

「実は私の部下がその息子である尊を殺す依頼を受けてしまったので、問題ないのか確認するためにご連絡致しました。」

「殺しの依頼....ですか。」

「えぇ、貴方も噂は聞いたことあるでしょう?

"雀写真館"(すずめしゃしんかん)の噂を...」

 

風都の潰れてしまった写真館である雀写真館に深夜、お金と写真を持っていくとその人物を殺してくれる。

そんな都市伝説が確かに存在していた。

「てっきりただの都市伝説かと....」

「私の部下がたまにやっている仕事なのですよ。

今回依頼を受けて角谷尊を殺すつもりだったのですが仮面ライダーが現れましてね。

その為少し、状況が落ち着くのを待っていたんですよ。

それで....構いませんか?」

その声色に否定を許容する感情を感じ取れなかった天十郎は溜め息をつきながら答えた。

 

「仕方ありませんね....しかし父親から献金の約束を受けているんですよ。

それなのに息子が死んでしまったら何を言われるか」

「それでしたら問題ないですよ.....

貴方に献金させてから自殺して貰えば構わないでしょう?」

「そんな事、可能なのですか?」

「提案出来る策があるとだけ....答えておきましょう。」

 

「分かりました。

こっちに損が無いのなら構いませんどうぞお好きになさってください。」

「ありがとうございます。」

「一つ....お聞きしても良いですか無名さん。

何故、そんな無駄なことを許しているんですか?」

「無駄....ですか。」

「貴方の部下がやっていることは謂わば復讐代行だ。

暗殺者と違ってまともな報酬すら貰えないこともあるんじゃないですか?」

「確かに否定はしません。

しかし、部下がその仕事を求めているのならやらせる。それが僕の流儀なんです。」

「流儀ですか....」

「えぇ、それに素敵な響きだと思いませんか"復讐"という言葉は。

どんな地位や立場の相手にも実行することを許された行為。

人間の持つ原始的な感情を最も強く受けた行動です。

故にどんな人間にもそれを行う可能性がある....たとえ聖人と呼ばれる人でもね。」

 

「どうやら、その考えは私にはあまり響かないようだ。

メモリの件....よろしくお願いしますよ。」

そう言うと天十郎は電話を切った。

そして、部屋で市長選の原稿に目を通すのだった。

 

 

 

Another side

 

角谷尊は風都署を三人の刑事に連れられて外に出た。

「全く、無実の私を捕まえるなんて....警察の人達には困ったものですよ。」

三人の刑事に聞こえるように言った。

若い刑事がムッとして前に出ようとするのを隣の刑事が止めた。

「いやはや申し訳ありませんね。

しかし、ドーパント事件を扱うのが我々の部署の仕事なんですよ...ましてやドーパントになっていたのなら疑ってしまうのも仕方ありませんよ。」

「まるで俺が悪いみたいな言い方だな!

私の父を知っているだろう?

問題にしてやっても良いんだぞ?」

 

そう、脅す尊に赤いライダースを着た刑事が胸ぐらを掴みかかり言った。

「好きにしろ、俺が何度でも再調査を申請する....認められるまでな。

ガイアメモリを使って犯罪をする者を俺は許さない。」

そう言うと手を離した。

 

あまりの気迫に尊は怯えながら父親の用意してくれた車に乗り込んだ。

運転手に車を出すように命令する。

(何だよあの刑事は!俺を誰だと思ってるんだ!

クソっ!こうイライラする時はメモリを使って暴れる事でスッキリするんだが、今はメモリがねぇんだよな。

あー、イライラする。早くメモリを手に入れねぇと)

 

そう考えていると胸に僅かな痛みを感じた。

針でチクッと刺されるような軽い痛みだ。

「あ?....何だこ.....れ...は!」

突如、尊の身体に異変が生じる。

身体が全く動かなくなり声すら出せない。

そして、表情を変えられないので傍目には眠っているように見えた。

(何だ...俺はどうなって..あがががぁぁあ痛い...頭が痛いぃぃぃ!)

 

まるで頭の神経に直接チューブを差し込まれている様な激痛が尊を襲うが表情や肉体に変化はない。

その痛みはどんどんと強くなっていき気が狂いそうになる。

だが、死ぬことは出来ずその痛みを誰かに伝えることも出来ない。

風都署から尊の自宅までは1時間かかる。

そして、到着した頃には尊の毛髪は白くそして頬もこけたゾンビの様な表情をして息絶えていた。

 

この現象を引き起こした黒岩は尊に弾が当たったことを確認するとメモリを抜いて無名に電話をかけた。

「俺だ....ターゲットの始末が終わった。

依頼人に完了の報告を入れといてくれ。」

「分かりました...それでどのようにしたんですか?」

「俺の調合した神経毒を心臓の動脈に撃ち込んだ。

結果、全身に即座に回り身体の自由が効かなくなると脳細胞をグチャグチャに破壊する毒が効果を発揮して角谷尊はこの世の地獄を味わいながらくたばったよ。」

 

「それは良かったですね。

クライアントも喜んでくれるでしょう。」

「あぁ、そうだな。」

そう言うと黒岩は電話を切った。

 

 

そして、暫くするとニュースが流れた。

「角谷製菓の社長と息子が亡くなった」というニュースが.....

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