「さて、では話を聞こうじゃないか加頭君。」
琉兵衛はいつもと違う厳しい表情で加頭に尋ねた。
事の始まりはメイカーから送られてきた緊急連絡であった。
「正体不明の存在から攻撃を受けて無名様が重傷を負いました。
犯人は財団Xのキース・アンダーソンの可能性が高いです。」
その報告を受けてから琉兵衛は直ぐに加頭を呼び出して説明を求めたのだ。
「昨日起きたジェット機の墜落時件をご存知ですか?」
昨日の夜、風都の港にジェット機がバラバラの状態で発見されたと言うものだった。
「あぁ、ニュースになっていたからね。」
「実はそのジェット機は財団がある荷物を運ぶために用意した物だったんです。」
「ある荷物?」
「財団Xの技術力を使い完成させた新型のガイアメモリ。
通称T2ガイアメモリです。
それを積んでいたジェット機が何者かの襲撃により大破したのです。」
「成る程、でそれが今回の件とどう関わりがある?」
「この一件を指揮したのは財団Xを裏切った元エージェント、キース・アンダーソンである確証を得ました。」
「財団を裏切ったと?」
「えぇ、財団の管理する保管庫からガイアメモリとドライバーを奪われ、人事を管理していた者がキースの手により殺されました。
財団のエージェントを管理している立場の存在が殺された事で組織は回復のために動いていましたが、その隙を狙って孤島を襲撃させたのだと思います。」
「君の言い分は分かったが私の部下でありミュージアムの幹部に危害を加えた。
例え元エージェントだとしても、その知識を使い行ったのだ。
君達にも責任の一端はあるんじゃないかね?」
「仰る通りです。
財団側も琉兵衛様やミュージアムに対して十分な補償をすると言っています。」
「そうか....ならば事態の解決を急ぐとしよう。」
こうして話を始めようとすると師上院が部屋に入ってくる。
「お話し中、失礼致します。
NEVERの大道マリアと大道克己が琉兵衛様にお会いしたいとこちらに来ておりますが如何致しましょう?」
「丁度良いタイミングだな。
こちらにお連れしなさい。」
そう言われると師上院は二人へと部屋へ通す。
克己は加頭を見て驚く。
「お前は......」
「お久し振りです。」
そんな話をして二人で睨み合っているとマリアが話を切り出す。
「琉兵衛様、キース・アンダーソンの狙いは風都で事件を起こすことだと思います。」
そう言うと孤島で集めた証拠の映像や資料を二人に見せた。
「全く、私達の街をここまで汚そうとするとは....困ったものだな。」
「財団も今回の件を重く受け止めており事態の終息に対して全面的にバックアップ致します。」
「そうか、ならば頼らせてもらうとしよう。
何と言っても幹部が二人動けないからね。」
サラはWとの戦いの傷を癒すため、今は遠くで療養している。そして無名は意識を取り戻さない。
獅子神に動いて貰いたいが彼には二つの街のメモリ販売を任せている。これ以上は流石にオーバーワークだろう。
久々にミュージアムの処刑人を動かす必要があるかもしれない。
そんな事を考えていた琉兵衛はマリアに尋ねる。
「そう言えば無名の警護は誰がしているんだ?」
「リーゼと黒岩が彼を守っています。」
「そうか...余りこちらも人数は割けない。
彼らで頑張ってもらおう。」
そんな話をしていると克己が琉兵衛に話しかける。
「相手がどんな行動をとるのか現段階で予想がつきません。
もしかしたら、家族を人質にとるかも......」
「確かにな....冴子は井坂の所にいるのだろう。
困ったものだが今回ばかりは都合が良いな。
若菜は.......」
「若菜様は現在、テレビ番組の収録中かと」
師上院がそう言うとテレビをつけた。
原作では井坂が死に冴子がミュージアムを裏切ったことで若菜が後任として据えられるが、ここでは井坂は生きており冴子も裏切りを見せていない為、若菜もアイドル活動を続けていた。
そうして、テレビをつけると風都タワーが映り若菜がアイドルとして画面の人に手を降っていた。
「"風都タワー完成30周年式典"....そうか、もうそんなに経っていたのだな。」
若菜はゲストとして呼ばれたのだろう。
他には風都の歌姫である"金本歌恋"や風都市長の"雨ヶ崎天十郎"も出席していた。
「若菜様にご連絡しますか?」
師上院の提案に琉兵衛は悩むと答えを出した。
「いや、折角の式典だ。
若菜にこの事は伝える必要はない。」
「情報を持ってきてくれて感謝するよ。
それで君達はどうするつもりかね?」
琉兵衛の問いに克己が答える。
「キースって野郎は俺達にも喧嘩を売った。
なら、買うのが筋ってもんだ。
俺達、NEVERもこの一件に参加させてもらう。」
「良いだろう。
成果を期待しているよ。」
そう言うと克己とマリアは部屋を出ていくのであった。
目を覚ました無名が見た景色は辺り一面、真っ白の空間。
その中に僕と同じ顔をした男....ゴエティアが本を読んでいた。
【目が覚めたか?
それにしても随分と無茶をしたものだ。
入れ物である君が壊れるのは私としても困るんだよ。】
「それで?僕を助けてくれた訳ですか?」
【いいや、私は何もしていない。
君が爆発に巻き込まれる前に黒炎のゲートを通って致命傷を避けた結果、重傷で意識を失いその意識をここに呼んだそれだけだよ。】
「ここは.....地球の本棚ですか?」
【正解だ。
正確には本棚の中でも更に奥にあるプライベートの空間、ここにはフィリップや園咲若菜も入れない。】
「入れない?....地球の本棚は地球の記憶を全て内包した空間の筈だ。
それなのに何故、貴方はそんな操作が出来るんだ?」
【おっと!....ここから先は問題に答えてくれないと言えないな。
さぁ、無名君、答えを出してみたまえ!】
まるで教授にでもなったかのように僕に告げた。
「確か、"地球とは何か"と言う問題でしたね。」
ゴエティアが現れてから無名はずっと考えていたコイツが何者で何故、僕の中にいて地球の本棚にいるのか?
そして、僕は何者なのか?
(ゴエティアは僕の事を"入れ物"と言っていた。
もし、言葉通りに解釈するのならこの地球は入れ物が存在する世界と言うことになる。
.....ダメだ情報が少なすぎる確証を持った答えが出ない。)
【どうした?悩むだけでは答えは出ないぞ?】
ゴエティアが笑いながら無名を急かす。
「分からない。」
【分からない、それが答えか?】
「僕の知り得る情報だけでは地球が何かの答えが出せない。
貴方の知っている真実を聞かなければ答えなんて出せるわけがない。
それが答えです。」
【.....ほぉ、面白い回答だ。
やはり、今までとは違うみたいだ。】
「それはどう言うことですか?」
【私には地球の記憶に介入できる力が"あった"んだよ。
それを使っていろんな可能性を試した。
分かりやすく言えばリセットを繰り返してゲームのルート開拓をしたと言えば分かりやすいかな?】
「そんな神のような事が.....」
【ふふっ、神か....随分と矮小な存在に例えられたな。
やはり、全く新鮮な解答や流れは見ていて面白い。】
「貴方は何故、そんな事をするんですか?
リセットと言っていましたがそれは地球そのものを戻すのと同じ行為だ。
人間が出来る所業じゃない。」
【その答えが知りたいならもっと調べてみることだこの地球の本棚をな......】
【だが楽しませてくれた礼代わりに一つだけ教えてやろう。
何故、地球の本棚が存在すると思う?】
ゴエティアの問いに無名は答える。
「それは地球の持つ知識を保存する場所が必要で...」
【違う、もっと根本的な話だ。
質問を変えよう本棚とは何だ?】
「.....本を保存しておく場所です。」
【その通り、大事な本を保存するために使う道具だ。
これがあるから複数の本を纏めて置いておける。
だが、疑問に思わないか?
何故、本棚が必要なんだ?】
「それは使うために....!?」
【気づいたかね?】
そう、根本的な疑問に無名は気づく。
何故、地球の本棚は存在しているのか?
何故、記憶を"本と言う形"で保存しているのか?
そもそも........
「"一体、誰の為"に地球の本棚があるのか?」
本とは人が読むために生まれた道具で本棚はそれを保存する道具。
ならば、地球の本棚は一体誰のために作られたんだ?
それこそ神か?
だが、神の記憶もこの本棚には置いてあった。
デーモンメモリがあったのだ悪魔の記憶も本として置かれている。
じゃあ、一体誰だ?
神すら越える存在が....この本棚を使っていたのか?
飛躍する考えに無名自身が付いていけなくなる。
するとゴエティアが言った。
【どうやら、時間が来たようだ。
君は"箱庭"に戻ると良い.....次に来るのを楽しみにしているよ。】
「待ってくれ!箱庭って?....それよりも!!」
【お休み無名。】
無名はそのまま、視界が暗くなり目を開けると孤島の屋敷にある自分の部屋のベットで横になっていた。
無名が目覚めた事で横で見ていたリーゼが騒ぎ人を呼ぶ。
メイドが身体の調子を見てくれていると部屋に黒岩が入ってくる。
「しぶとく生きていた様で安心したよ無名。」
「ここは....そうですか。
あの戦闘機の攻撃で気を失ってたんですね。
あれからどれくらい経ちました?」
「1日だ。
ミュージアムにはメイカーが既に連絡している。
マリアとNEVERは風都に向かったよ。」
その言葉を聞いて無名は起き上がる。
「おい、無茶はするな。
瀕死は避けたがそれでも重症なんだぞ?」
「恐らくですが、このまま行くと風都が危険な状態になってしまいます。
その前に打てる策を打っておかないと....」
そうして動こうとするが黒岩に止められる。
「悪いが絶対安静させるように琉兵衛様から言われている。
今回はかなり無茶をしたんだ。動くにしても今日1日は安静にしてもらうぞ。」
そう言われて無名はベットに戻される。
ベットをリーゼと黒岩に監視されているから抜け出すことも出来ないだろう。
(風都に行って直接確かめたかったですが仕方ありませんね。
しかし、一体何が起きているのか。)
「そう言えば通信は復旧したんですか?」
無名の問いに黒岩が答える。
「あぁ、メイカーの話じゃ応急処置らしいが動くは動くらしいぞ。」
「では、すいませんがテレビをつけてくれませんか?
風都の映像が見たいんです。」
それぐらいなら問題ないと考えた黒岩はテレビをつける。
すると、風都タワー30周年の記念式典が映っていた。
その映像を見た無名は確信する。
(間違いない劇場版が始まったんだ。
AtoZ.....と言うことはT2メモリが撒かれているのか?)
無名は、そう思案しながらテレビを見ているのだった。
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