もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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その日、鳴海探偵事務所は昨日から降り続いた雨により起こった雨漏りの対処で忙しくなっていた。
事務所内にコップやタライが置かれそこに水が落ちる音が聞こえる。

「ったく何でこんなに雨水が入ってくるんだ。
どっかに穴でも空いてたりすんじゃねぇのか?」
翔太郎は帽子に落ちた雨水を拭きながら言った。
「この事務所も結構古いからねぇ...リフォームした方が良いのかなぁ。」

「あ?そんなのダメに決まってんだろ!
ここはおやっさんが残してくれた大事な事務所なんだぞ。」

そう言いながら翔太郎達は落ち続ける雨漏りの対処に追われるのだった。


第百十三話 AtoZ/溢れるドーパント

その日、フィリップは気分転換の為に公園にいたのだが雨が降ってきた為、ベンチで雨宿りしながら携帯の画面から風都タワーの式典を見ていた。

 

勿論、目当てはそこに登場する若菜姫なのだが....

彼女の活躍を見て微笑んでいると隣で雨宿りしていた少年が話しかけてくる。

「お兄ちゃん何見てるの?」

「風都タワーの式典映像だよ。

若菜さんが出演すると聞いたからね。」

そう言いながら画面を少年に見せる。

 

「お兄ちゃんってアイドルオタクって言われる人?」

「.....どうだろうか。

ファンではあるが追っかけをしているわけでもないし微妙なオタクかな?」

「そうなんだぁ....変なのぉ。」

そうしていると少年の母親が傘を指して迎えに来てくれた。

「あっ!ママが来た。」

少年は嬉しそうに母親に手を振る。

その光景にフィリップは疑問を抱いた。

「嬉しいのか?母親が迎えに来てくれると言うのは?」

 

その問いに少年は当たり前のように答えた。

「お母さんが迎えに来てくれるのは当たり前でしょう?」

そう言うと少年は母親に連れられてその場を後にした。

 

家族の記憶がないフィリップにとってはその当たり前は理解できない。

知らないと言うことは時に人にコンプレックスを抱かせる。

もやもやした気持ちになったフィリップはそれを振り払うように携帯の画面に目を向けた。

 

すると、遠くから悲鳴の声が聞こえて来た。

何かあったのかとフィリップはその場所へ向かう。

するとそこには過去に倒した筈のアイスエイジドーパントとバイオレンスドーパントが周りの人を襲っていた。

「あのドーパントは前に倒した筈...一体どうして?」

そんな事を考えていると先程、話していた少年と母親が襲われそうになっていた。

 

「危ない!」

そう言って二人の前に駆け寄り盾になる。

しかし、ドーパントは突然火花を上げると後ろに後退した。

その方向を見ると黒いコートを来てハットを被った女性が銃を打ちながらフィリップ達の前に出る。

その際、ハットを脱ぎ捨てるとフィリップに向いて指を指す。

「早くその人達を....」

そのポーズがシュラウドの動きと重なる。

彼女に従い二人を逃がすとタイミング良く翔太郎が現れた。

 

「フィリップ!無事か!」

「あぁ、問題ない翔太郎。」

そう言うと翔太郎がドライバーをつける。

するとフィリップの身体にもドライバーが出現する。

「んじゃ、行こうぜ。」

 

「CYCLONE,JOKER」

 

「「変身」」

フィリップがサイクロンメモリをベルトに装填するとメモリが翔太郎のベルトに転送される。

待機音が流れる中、翔太郎はジョーカーメモリを装填するとドライバーを展開した。

 

竜巻と共に翔太郎の身体が変わっていき仮面ライダーWサイクロンジョーカーへと変身が完了する。

そして暴れるドーパントへ向かっていくのだった。

(あれが仮面ライダーW....無名の言っていた風都を守るライダーの一人ね。)

大道マリアは研究者として仮面ライダーの強さを確認する。

目を覚ました無名は私に連絡をかけてきた。

 

「この事件は最悪、風都が壊滅する可能性があります。

ミュージアムの助力は得られそうですが、それで解決が出来ない場合は風都の仮面ライダーの力を借りる必要があります。

マリアさんには二人のライダーと協力出来る立場になってもらいます。」

「けど、具体的にどうするの?

私や息子の事がバレれば協力は難しいと思うけど」

 

風都の仮面ライダーの話は良く聞いている。

もしその話が本当なら敵対している私達と彼等は協力できないだろう。

勿論、それは無名にも分かっていた。

「少し面倒な賭けですが仕方ありません。

貴女にこれから会って欲しい人物がいます。

彼女なら道具や何もかも準備できるでしょう。

しかし、彼女と協力しているのが組織にバレたらまずいので他言無用でお願いします。」

 

「分かったわ。

それで....その相手って?」

「名前はシュラウド....園咲 琉兵衛に復讐するために生きている悪魔の一人と言っておきましょう。」

 

 

 

 

照井は同僚の刑事から報告を受けた場所へバイクで向かっていた。

到着するとそこにはナスカドーパントとウェザードーパントが人を襲っていた。

「井坂に組織の幹部か....また何かの実験でもする気か?」

照井はドライバーをつけるとメモリを起動する。

 

「ACCEL」

 

「変....身!」

メモリを装填しスロットルを回すと仮面ライダーアクセルへと変身が完了した。

エンジンブレードを構えると2人のドーパントを睨み付ける。

「さぁ!振り切るぜ!」

照井は掛け声と共にドーパントに向かっていった。

 

その光景を師上院が眺めている。

「ナスカにウェザー...新型のメモリには随分と強力な力が採用された様だ。」

新型のメモリの性能に驚きつつも違和感を覚える。

(ドーパントの動きが悪い....と言うより力を使いこなせてないな。)

 

まるで、力そのものに振り回されているのか上級メモリの力を持っているのにも関わらずアクセルは全く苦戦せず戦いを優位に運んでいった。

そして、この違和感は戦っているアクセル自身も味わっていた。

(おかしい...こんなに弱いわけがない。

それにあのウェザードーパントはガイアメモリの強化アダプターを使う気すら見せない。

やはり、コイツらは.....)

 

確信した照井はドライバーからメモリを抜くとエンジンメモリを装填した。

「ENGINE MAXIMUMDRIVE」

アクセルをバイクモードへ変形させると二体のドーパントを巻き込んで吹き飛ばした。

その攻撃によりメモリが排出されて人間の姿に戻る。

当然ながらウェザーのメモリの使い手は井坂ではなかった。

 

「やはり、違ったか。」

そう言いながら倒れている二人に手錠をかけて落下したメモリを手に取った。

そのメモリは純化された自分達のメモリと同じ透明な色で端子が水色に染まっていた。

そして何より

「何故、メモリブレイク出来てないんだ。」

アクセルのマキシマムを喰らってもメモリに全くダメージのないこの新しいメモリに照井は戦慄を覚えるのだった。

 

その光景を見ていた師上院も驚く。

「まさに、加頭様の言った通りの性能ですね。」

「"現段階で到達するガイアメモリの最高峰"....それを目指して作られたのがこのT2メモリです。

内部パーツから外装に至るまで全て財団が吟味しこだわった一品です。

このメモリには新しいシステムが使われています。

1つ目がメモリブレイクの危険を察知すると強制的に体外へ排出される機能。

そしてもう一つがメモリの適合者を自動的に識別する機能です。」

 

「では、風都でドーパントか大量発生しているのは財団の予定している使い方だったのですか?」

「いえ、違います。

正確には集められた被験体の中からメモリが使用者を選ぶ技術ですがアタッシュケースに仕込まれた爆弾によりその機能にバクが生じてしまったのでしょう。」

「財団はT2メモリをどうするおつもりです?」

「本部でも意見が割れています。

回収するか破壊するか」

 

「加頭様、貴方個人としてはどうですか?」

「残しておきたいとは思います。

これは財団の開発した最高峰のメモリですので。

しかし、このメモリとミュージアムを天秤にかけるならば、私はミュージアムを取ります。

このメモリはあくまで過去のミュージアムの持っていた技術を利用して作られた物です。

しかし、アクセサリーシステムや新型ガイアドライバーの登場で最高峰のメモリと言えるのか疑問が残る事は否めません。」

 

「それに財団を裏切ったキースがこのメモリを逆転の一手として選んだのなら、破壊するべきだと思います。

財団の名誉のためにもね。」

そんな会話を思い出しながら、師上院はこれ以上の展開は無いと思い琉兵衛への報告のためその場を後にした。

 

 

 

 

 

『「JOKER STRANGE(ジョーカーストレンジ)」』

ルナジョーカーのマキシマムがドーパント二体に当たると爆発しメモリが排出されて人間の姿へと戻った。

それを確認するとWも変身を解除する。

そして、元に戻った2人を見た翔太郎は驚愕する。

「えーっ!"ウォッチャマン"に"サンタちゃん"どうしてこんな所にいんだよ!」

二人とも翔太郎の探偵家業の協力者であり大切な友人でもあった。

その問いにウォッチャマンは動揺しながら答える。

「ここはどこ?ボキは誰?」

混乱しているのが見てとれた翔太郎は落ち着いて二人に尋ねる。

 

「なぁ、どうしてこのメモリを持ってたんだ?」

するとメモリを見たサンタが答える。

「あぁーっ!それ二人でこの辺ぶらついてたら見つけてそうしたらフワッ!と浮き上がって俺達の身体に入っていったんだよ。」

「そんな事があったのか?一体何なんだよこのメモリは」

「恐らく僕たちの使う純化した次世代メモリと同種の能力があるだろうね。

でも、メモリが勝手に入るなんてのは初めて聞いた。

それにメモリブレイク出来てないのも驚きだ。」

 

フィリップがメモリを翔太郎から奪い眺めていると先程、助けてくれた女性が現れる。

「それはT2メモリ。

とある組織が開発した新型のガイアメモリよ。

それにしても勇敢だったわね坊や。」

フィリップは彼女から誉められて恥ずかしかったのか顔を背ける。

「坊やは止めてください。

僕は子供ではない。」

「あら、それはごめんなさいね。」

「失礼だが....あんたは?」

翔太郎の言葉を受けて懐から手帳を取り出すと中身を開いた。

そこには"FBI"の文字が書かれていた。

 

「"マリア・S・クランベリー"国際特務調査機関捜査員。

任務は国際的犯罪者やテロリストの追跡と確保よ。」

これが翔太郎とフィリップとマリアの初めての出会いだった。




Another side

無名から連絡を受けたシュラウドはケースを持ってマリアと呼ばれる協力者を待っていた。
暫くすると黒いコートを着た女性が現れる。

「貴女が大道克己の母である大道マリアね?」
「えぇ、貴女がシュラウドね話は無名から聞いているわ。」

「そう。」
シュラウドはそう言うとアタッシュケースを彼女に差し出した。
「頼まれていた身分証と銃....それにドライバーとメモリが入っているわ。」
マリアが中を開けるとそこにはロストドライバーと壊れた筈のエターナルメモリが入っていた。

「確かに受け取ったわ。」
「それをどう使うかは貴女達の勝手だけど....貴方の被験体に使いこなせるのこのメモリは?」
「その心配なら無用よ。
克己は私の息子ですもの.....」

「自分の実験の材料にしておいて息子呼びするのね?」
「貴女は私の事が嫌いなのかしら?」
マリアの問いにシュラウドが答える。
「そうね....息子を自分の研究の犠牲にしているのは気に食わないわ。」
「それにしては不思議ね。
貴方の息子も同じ目にあっていると無名から聞いたけど」

「あれは事故よ!それに私は一度たりとも来人を道具になんて...」
そう言いかけてシュラウドは口をつぐんだ。
道具に等していない...そう言いたかった筈なのにその言葉が出ない。
園咲 琉兵衛を倒す為に来人を利用している自覚があったからだ。

「良かった....そこで止まれるならまだ貴女はメモリに飲まれていない証拠ね。」
マリアは安堵したように告げた。
そして、タブレットを取り出すと画面を切り替えてシュラウドに見せる。
「これは?」
「貴女を救うかも知れない方法よ。
無名がずっと考えてたものよ。」

シュラウドの特殊な移動能力とある種の不死性を疑問に思った無名は独自で調査を行った。
そして、隠されていた真実に辿り着いたのだ。
「私を救うですって?そんな必要は無い!私は復讐を遂げられればそれで!」
「それを息子(来人)は喜んでくれるの?」
「........」

「私も貴女と同じだった自分の研究を使うことで息子を救えると本気で思っていた。
だから、克己に酵素を打ち化け物に変えてしまった。
記憶が無くなる事も問題ない克己が生きてさえいればそれで良い....本当にそう思ってたのよ。」

「けれどそれは間違いだった。
無名が酵素を改良して記憶を取り戻してから克己は本当の意味で変わった。
自分が化け物だと受け入れて自分達が生きれる世界を作るために本気で頑張っている。
只の化け物だった克己に無名が生きる意味を与えたのよ。」
「貴女にとって息子がどんな存在なのかは分からない。
けど、息子の事を本気で思っているのなら....」

「今では無く未来を思える生き方をさせてあげて...」
「自分の子供でもないのに随分と肩を持つのね。」
「貴女の話を聞くと過去の私を思い出すのよ。
それが間違いだと気づく前の私にね。」

「取り敢えず言いたいことはそれだけ....それじゃ」
そうして帰ろうとするマリアをシュラウドは引き留める。
「待ちなさい....これを持っていって」
そう言って彼女に渡したのはシュラウドマグナムとボムメモリだった。

「無名は信用できない....何故か分からないけどそう感じてしまう。
けど、貴女は違う...同じ母親として信じてみたい。」
「このデータは検討させてもらうわ。
それと、無名に頼まれたドライバーは完成まで少し時間がかかる....出来たら届けるわ。」

「ねぇ、良かったらまた会わない?」
マリアの問いにシュラウドは悩む。
「そうね.....いつかね。」
そう言うとシュラウドは姿を消した。

外伝 続編の投稿に関して

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