順調に進んでいた式典は数発の銃弾により止まることになる。
その方向に向くと二人の人物が銃を空へと向けて放っていた。
一人は髪に青いメッシュが入った茶髪の男性、
もう一人はフードで顔を隠している謎の人物だった。
「俺の名前は"大道克己"....この風都を地獄に変える死神だ。
この風都タワーは俺達、NEVERが占拠する。
大人しくしているのなら危害は加えないが邪魔をするならコイツらみたいな結末を辿ることになる。」
そう言って合図をすると上から何かが降ってきた。
見てみると警備員の格好をした男達であった。
「ここの警備をしていた奴等だが俺達の邪魔をしたから殺した....これで分かって貰えただろうか?」
一瞬の沈黙から状況を理解した野次馬はパニックを起こし始める。
「きゃあああ!」「ひっ...人殺しぃ!」「誰かぁ!助けてぇ!」
怯えてパニックを起す式典を見に来ていた観客の前にフードの人物が前に出るとメモリを起動した。
「FANG」
放り投げたメモリがフードの人物の喉へとささる。
すると、身体から無数の牙が出現しファングドーパントへと姿を変えた。
そして、腕を振るうと腕についていた牙が取れてブーメランの様に回ると客の回りの地面を削りながら進み元の場所へと戻った。
「騒がないで欲しい....我々の邪魔をしなければ危害を加えるつもりはない。」
そう言うと周りが一気に静かになった。
(何なのコイツら?それに大道克己って確か無名の部下だった筈よね?
だとしたらどうして?)
若菜は克己を見つめながら考えるが答えはでなかった。
ドライバーとメモリは楽屋に置いてある。
それがあれば何とか出来るかもしれないが今は動くのは得策じゃないことは若菜にも分かっていた。
若菜や他の面々は克己の言う事に大人しく従うのだった。
『「
Wサイクロントリガーのマキシマムがヒートドーパントの乗るバイクに直撃し爆発する。
その反動を利用してヒートドーパントはWに組みつくと地面に引きずり下ろした。
そこから格闘戦に移行する。
ヒートドーパントの戦闘力は高く遠距離のサイクロントリガーでは不利だった。
「この女、強ぇ!」
『近距離には近距離だ!』
「HEAT,METAL」
戦闘途中にWは素早くメモリを換装するとWヒートメタルへと変身した。
メタルシャフトを持ちヒートドーパントに応戦していると謎の人物が割って入ってきた。
金属の棒を使いWに攻撃を仕掛けてくる。
見た目が人間だから余計な攻撃は出来ないと回避と防御を選択していたが何度も攻撃を受けて翔太郎のストレスが溜まり爆発した。
「テメェ!いい加減にしろ!」
棒を受け止めて勢いのまま投げてしまう。
相手は思いっきり吹き飛び木箱の置かれている場所にぶつかってしまった。
「ふー...!?やべぇ!」
自分のやった事に気付き翔太郎は焦った。
生身の状態なら未だしもWになっている時は腕力も強化される。
本人的にはちょっと投げただけでもトラックに衝突されるような衝撃があってもおかしくなかった。
しかし、投げられた男は立ち上がる。
だが、首と肩の骨がずれてしまっていた。
普通の人間ならば致命傷になりかねないダメージだが、男は頭を殴り無理矢理首の骨を戻すと首を回した。肩は殴り付けても戻らなかったので蹴りで無理矢理戻し、肩を回した。
どちらも内部の骨から異常な音が鳴っていたが本人は平気そうだった。
その異常な光景に翔太郎は動揺する。
「何だコイツは?」
すると、その男は何かを感じ取ったように周りを見渡すと一本のメモリを手にした。
そして、笑いながらWへと向けた。
「やっと見つけたぜ...俺のメモリぃぃ!」
「METAL」
男が投げたメモリが背中にささると身体を金属が覆いメタルドーパントへと変身した。
「どうなってんだ一体?」
すると黄色いドーパントがまた新たに現れた。
「Wと同じメモリばかりが私達の元に集まるなんて」
「テメェらはもうお払い箱ってことじゃねーのか?」
メタルドーパントがそう挑発する。
「ふん、言ってろ!」
こうしてWヒートメタルと三人のドーパントによる戦いが始まった。
近距離はヒートドーパントの格闘とメタルドーパントの棒術、遠距離はルナドーパントの鞭による攻撃でWは劣性に追い込まれていた。
「クッ、コイツら強いな!」
『だが、連携に難がある....その隙を狙おう。』
すると、Wは襲いかかってきたメタルドーパントの棒をメタルシャフトで絡めるように受けるとそのまま次攻撃しようとしているルナドーパントに盾になるようにメタルドーパントを配置した。
しかし、ルナドーパントは気にする様子もなくメタルドーパントごとWを両手の鞭で打ちすえた。
「コイツらっ、味方ごと攻撃しやがったぞ!」
「私達は不死身なのよ。
そんな事したって無駄よ。」
「さようなら」
そう言うとヒートドーパントが指に炎を出すとWに向かって放った。
着弾すると大爆発を起こしWとメタルドーパントは吹き飛ばされる。
Wはダメージにより動けないでいるがメタルドーパントは暫くすると立ち上がった。
「痛ててて....レイカぁ!」
「何?ボサッとしてるアンタが悪いんでしょう?」
「それもそうね。」
味方を巻き込む攻撃をしても冷静である二人を見て翔太郎とフィリップは戦慄した。
『彼等は狂っている。
味方を何とも思っていない。』
「そうみたいだな....どうする?エクストリームで勝負するか?」
『それしか無いだろうな。』
そう言ってエクストリームメモリを呼び出そうとすると突如Wの周囲を緑色の風が吹き竜巻がWを連れて飛び去ってしまった。
「あーん、行っちゃったぁ。」
「どうする、追うの?」
「めんどくせぇなぁ。」
「まぁ、良いわ。
私達は克己ちゃんと合流しましょう。
それよりも....いい加減に隠れてないで出てきたら?」
ルナドーパントが建物を見て言うとそこから京水が出てきた。
「あらっ!"今度は"私のオリジナルなのね?」
そう言うとルナドーパントはメモリを抜いて元の人間に戻る。
「私と同じ姿ってことはアンタがクローンって訳ね?」
「まぁ、そうね。
でも出来の違いは私達の方が圧倒的に上よ?
あの女も私に負けてボロ雑巾みたくなってたしね。」
「あの女....一体何よ?」
「あら、知らないの?
レイカよ、オリジナルのね。
今頃、酵素切れで死体に戻っているんじゃないかしら?」
その言葉にオリジナルの京水は激しく動揺した。
勿論、ブラフの可能性もあるが京水には思い当たる節があった。
(途中でレイカは高速道路に降りた....その時に私のクローンに会っていたのだとしたら)
レイカは"味方に甘いところがある"もしクローンの私がそれをついたのだとしたら....
「.....レイカ。」
絶対にマズイ、京水がレイカを助けようとその場を後にしようとするのをクローンの京水が手に持っている鞭を使って止めた。
「離しなさいよ....」
「あら?連れないわねぇ....折角会えたんだからお喋りしましょうよ。」
「そんな時間は無いのよ!レイカを助けるためにもね!」
「そんな事させるわけないでしょう?
あの女は惨めに死んでいくのよ何の役にも立たずにブサイクのまま死体に戻る...貴方達にピッタリの最後よ。」
ここでオリジナルの京水の我慢していた怒りが限界を向かえた。
「さっきからうっさいのよ!あんたぁ!"親友を救う"邪魔すんじゃねぇよ!」
何時なら使わない男の声を出してしまう。
そんな京水を見てクローンは笑う。
「あらあら女が汚い言葉を出してはしたないじゃない。
なら、ここで始末してあげるわよ.....」
そう言った矢先、周囲が爆発し白い煙が辺りに充満した。
「何よ!...こ....れ....」
すると、クローンの京水は倒れてしまう。
「これって、毒?」
ヒートとメタルドーパントは煙の正体を予測すると離れた。
そして、煙の止む頃にはオリジナルの京水の姿は無かった。
「レイカぁ!.....生きてるんなら返事しなさい!レイカぁ!」
京水が辺りを探していると赤矢が彼女を見つけた。
「京水、彼処だ。」
「えっ?....レイカ?....レイカぁぁぁ!」
見つかったレイカの姿は酷いものだった。
身体の骨がぐちゃぐちゃになっており皮膚を突き破っているところもあった。
血もかなり失われている。
それにレイカの身体には酵素切れ特有の模様が出ていた。
(本当にマズイ!)
京水は急いで持っていたアンプルを注射器に装填するとレイカの腕に射った。
「お願い....効いて....お願い!」
祈るようにレイカの手を握る京水にレイカは意識を取り戻した。
「あ......京....水..じゃん。
アンタは本物みたい....だ...ね。」
「このおバカっ!クローンの私に負けるなんて何してんのよ!
それに酵素切れになって....本当にギリギリだったのよ!」
「...ご...めん...細胞分解酵素を射したまでは良かったんだけど.....ちょっと油断しちゃった....アンプルも割られちゃったし...」
そう言いながらレイカは割られたアンプルを見た。
(この位置....きっと目の前でアンプルを割ったのね私のクローンは....あの野郎!私の親友に何て事を!)
自分のクローンが親友を痛め付けて殺そうとしたことに京水は本気で怒っていた。
それに気付いたのかレイカが言う。
「気に...しないでよ...京水....これは...わ...たしの...ミス...なん....だ.......から.....」
そう言いながらレイカは意識を失った。
「レイカ?....レイカぁ!」
「安心しろ意識を失っているだけだ。
死んではいない。」
赤矢はそう言って京水を宥めた。
何時もの京水なら気付けたのにそれが出来ないほど余裕を無くしていた。
「....ありがとうね赤矢さん。
レイカを連れていきたいから車の運転お願いできる?」
「あぁ、構わない。」
そう言うと京水はレイカを優しく抱き抱える。
(良くもやってくれたわね....私の親友をここまでにして只では絶対に済まさないんだから....)
京水は自分のクローンへの復讐を誓うのだった。
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