もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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Wとオリジナルのエターナルが窓から吹き飛ばされた時、その光景を見ていた園咲 若菜は愕然としていた。
(お姉さまを苦戦させたWをあんな簡単に倒すなんて....このクローンは只者じゃない。)

若菜は園咲家の者として常にメモリとドライバーを所持している。
今回の舞台にもちゃんと隠して持ってきていた。
だからこそ、仮面ライダーが戦っている間に隠し持っていたクレイドールメモリを起動しようと思ったのだが全く反応しなかった。
(こんな事態始めて....早くお父様に伝えなくては)

そう考えながら若菜が周りを見ているとメモリを抜いた克己と名乗る人物が急に苦しみだした。
そして、皮膚にシワが増えて髪の色が抜けて白髪になる。
それを感じたフードの男が言う。

「もう来たのか...やはり段々と周期が短くなっているようだな。」
「ぐっ....あの薬を寄越せ!」
「だが...」
「つべこべ言わずに寄越せ!」

フードの男は克己に注射器を差し出すと克己はそれを引ったくるように受け取ると首に刺した。
注射器の中の薬が無くなると克己の肌と髪の色が戻った。
痛みが無くなった克己は注射器を地面に投げ捨てる。

克己が射った注射器の中身はプロスペクト特製の細胞活性薬であった。
キースが作り出したNEVERのクローンには重大な欠点があった。
それは急激な細胞の成長によるクローニングの結果、産み出された彼らの細胞核には重大な疾患が残っておりNEVERの酵素以外にもプロスペクトの作り出した細胞活性薬を使用しなければ身体の細胞が急激に劣化してしまうのだ。

それを止めるための活性薬にも問題があり今ある細胞を犠牲にして他の細胞を甦らせる。
結局は、寿命を削って生き永らえている様なものなのだ。


「はぁはぁはぁ.....」
「そろそろ限界が近いのではないか?」
プロスペクトの問いに克己は笑う。
「ふざけるな....こんなところで死んだらそれこそ笑い者だ。
最後の最後まで利用され尽くして死ぬんだからな。
そんな事は認めない....俺の命は俺の物だ。
計画を完遂して俺は生き残る。」

「そうか....まぁ、私はNEVERの奴等に復讐できればそれで良い。
その為にお前達を造り出したんだからな。」
「まぁ、良い....それよりもカメラの準備をさせろ。
そろそろ次のゲームを始める。」

そう言うとプロスペクトがカメラマンを脅してカメラを持たせた。
そして克己は風都タワーに集めていた。
他のNEVERを呼んだ。
「お前ら....次のゲームを始める。
先ずは"賞品の選別"からだ。」
そう言うとNEVERが人質となっている人物を見始める。

そして、見つけたのか京水が言った。
「克己ちゃん....この小娘なんてどう?」

そうして京水によって若菜が指名されるのだった。


第百十九話 AtoZ/感情的な決裂

「失礼ですがもう一度、言っていただいても?」

「僕は君達に協力しないと言ったんだ。」

無名にフィリップはそう告げた。

 

「おい、フィリップ。

いきなりどうし....」

「どうしたと言うのはこちらの台詞だ翔太郎!

彼等の協力で勝てる保証が何処にある?

彼等が今回の事件を起こした犯人とグルの可能性も捨てきれないのに共闘をする事を選ぶなんて、愚かにも程がある!」

 

その言葉に照井が反論する。

「言っていることは理解できるが現状これ以上の手段が....」

「君までそんな事を言うのか照井 竜.....ガッカリだよ。」

「何だと?....じゃあ貴様ならこの状況を打開できる案が浮かぶと言うのか!」

「.....それは。」

 

フィリップの言い分に怒った照井が胸ぐらを掴みながら問いただした。

それを翔太郎が止める。

「ちょっと落ち着けよ照井、フィリップ。

二人とも熱くなりすぎだ!

それにフィリップそんな感情的になるなんて....お前らしくないぞ?」

そう言うと翔太郎がフィリップの肩をこづいた。

「いくら相棒でも....立ち入って欲しくないことだってある!」

そう言ってフィリップが翔太郎の身体を突き飛ばした。

あまりの事に翔太郎も驚く。

 

 

その状況を見ていた克己が言う。

「お前らはふざけているのか?それともこの状況を理解していないのか?

もう、俺達しかこの街を救える存在がいないのにそんな事を続けるつもりか?」

「何だって?」

「お前が俺のお袋にどんな感情を抱いたのかは知らん。

だが、物事の優先順位を考えろ。

分かっているのか?俺達の現状を?」

 

「分かっているさ!だがそれが君達と共闘する材料にならないと.....」

「つまらない嘘を吐くな。

お前の目はそんな理知的なものじゃない、感情的な目だ。

気に入らないことがあって駄々をこねている子供と変わらん。」

 

「何だとっ!お前っ!」

フィリップが怒りに任せて克己に殴りかかるが、それを簡単に避けるとそのまま組み伏せてしまう。

「ぐっ!離せ!」

「お前は仮面ライダーになれれば無敵なんだろうが、生身では俺に簡単に組み伏せられる。」

「何が言いたい!」

「分からないか?

クローンである俺でも同じことが簡単に出来るぞ。

感情的になって勝てる程、甘い相手じゃない。

一度頭を冷やせ....」

 

克己はフィリップの拘束を解くと逆方向に歩き始めた。

「どこへ行く気ですか?」

無名の問いに答える。

「俺がいるとかえって話が混乱するだろう?

話が纏まったら連絡してくれ....それまで俺は仲間のところにいる。」

そう言うと黙って歩いていった。

 

フィリップもゆっくりと立ち上がる。

「おい、フィリ.....」

「翔太郎....僕も少し頭を冷やしてくる。

けど、考えは変わらない。僕は彼等との共闘は反対だ。

風都の仮面ライダーの一人として言っておくよ。」

そう言うとフィリップもどっかへ行ってしまった。

残ったのは照井と翔太郎、そして無名とマリアだった。

「ねぇ、無名。

坊やは私に何を.....」

「恐らく....母親と貴女を重ねたんでしょう。

彼の母親と貴女は似た雰囲気を持っていますから。

彼には家族の記憶がありません。

だからこそ、求めてしまったと言った所でしょうか?」

 

マリアの疑問を無名は他に聞こえないように小声で回答した。

「......そう。」

マリアはフィリップが行った方向に向かって行く。

「良いのですか?克己さんを追わなくて」

「克己はもう大人よ.....大丈夫。

それよりも今はあの坊やの方が心配だから」

そう言うとマリアもその場を後にした。

(シュラウドとの出会いが彼女に何か変化を与えたんでしょうかね?)

 

大道マリアは良くも悪くも息子を愛していた。

狂愛と呼べる程の感情は克己を化け物へと変えてしまった。

だからこそ目が離せないのだろう。

同じ道を辿る危険性のある彼とそこに進ませようとするシュラウドの関係性に.....

 

「さて、三人になってしまいましたがどうしますか?」

無名の問いに翔太郎は答えた。

「悪いが今は保留にさせてくれ。

フィリップは俺の相棒で半身の様な存在だ。

俺の半分が反対してんのに勝手に共闘するわけにはいかねぇだろ?」

 

「そうですか...では気が変わりましたらこちらに連絡を」

そう言ってプリペイド携帯を翔太郎に投げると、無名もその場を後にしようとした。

「待てよ無名。」

 

それを翔太郎が止める。

「あんたは一体どっちの味方なんだ?」

「それはどういう意味ですか?」

「お前には他の奴と違って別の目的がある気がするんだよ。

その為にガイアメモリを使っている。」

「......その根拠は?」

「ねぇ、ただの勘だ。」

翔太郎のその言葉に無名は静かに笑う。

 

「なら、推理してみてください。

貴方は探偵でしょう?」

そうして無名もその場を後にするのだった。

翔太郎と照井の視界から消えると無名は壁にもたれかかりゆっくりと息を吸った。

「はぁ...はぁ..流石に無茶が過ぎますね。

意識が朦朧とするなんて久し振りですよ。」

そう言いながら身体を抑えた。

 

無名の身体のダメージは完治していない。

むしろ、リーゼに無理矢理頼み込み何とか風都に連れてきて貰ったのだ。

すると、ビルの隙間からリーゼがやってきた。

「リーゼ....連れてきてくれてありがとう。

でも、まだやることがあるんです...手伝って...く..れ」

無名はふらつき倒れそうになるがリーゼがそれを支えようとする。

リーゼは喋れないがその行動に不安の意思が見えた。

 

「確かに大丈夫とは言いがたいですが....まだやることがあるんです。

お願いですリーゼ。」

 

 

 

「僕を連れて水音町に行って下さい。」

 

 

 

 

克己は風都に作ったNEVERの拠点に赴いた。

そこで傷だらけのレイカが眠り、その手を京水が心配そうに握っていた。

芦原と堂本も悲痛な顔をしている。

 

「容態はどうだ?」

克己の問いに芦原が答える。

「ダメージの回復自体は酵素の力があるから問題ない....と言いたいところだがドーパントから受けた傷が酷い。

いろんな治療法を試したがまるで効果が無かった。」

「ドーパントから受けた傷は自然治癒以外に治す術がない.....か。

どうやら、俺達NEVERも例外にはならないらしい。」

 

「それに、無名の話が正しければ俺達の記憶は....」

 

それは克己がクローンにやられたことを告げた時に無名が言っていたことだった。

「もし、エターナルメモリのマキシマムが起動してしまったら、貴方達に投与している改良型酵素にも影響が出てくるかもしれません。」

「それはどう言うことだ?」

「改良型酵素はメモリーメモリと呼ばれる記憶の力を宿したメモリを使っています。

もし、そのメモリにも能力が適応された場合、貴方達の記憶の保持が難しくなるかもしれません。」

 

「なら、俺達の記憶は後、どれだけ持つんだ?」

「エターナルメモリを破壊できなかった場合、記憶を保持できる猶予は今ある身体の酵素が切れる時ですから"5時間"が限界でしょう。

それ以上延びた場合、記憶が失われるリスクが高くなっていきます。」

 

腕時計を見た芦原は苦い顔をする。

「無名が保証した俺達の記憶が残っている時間はもう残り"3時間"だ。

早く決着をつける必要がある。」

 

「それに....レイカの仇も討たないとね。」

京水はそう静かに言った。

レイカはクローンの京水から受けたダメージによりその治癒に大量の酵素を使った。

レイカだけは無名が提示した記憶の保持できるタイムリミットが適応されない。

もう記憶の消失が始まっている可能性すらあった。

 

レイカが何故こうなったのか京水だけが知っていた。

何故なら、クローンの言葉を直に聞いていたのは京水だったからだ。

(本当にレイカはバカなんだから.......

大方、私の顔で何か言われて戸惑っちゃったんでしょ?

アンタ.....優しい所あるから)

京水にとってレイカは親友とも呼べる存在だった。

それはレイカも変わらないだろう。

 

だからこそ自分のクローンがレイカを痛め付けたのを知ってショックを受けて同時に怒りが湧いた。

(アタシのクローンなら分かるわよね?

私の親友に手を出してただでは済まさないわよ....)

 

 

そう考えていると拠点に置いてあるテレビの映像が変わる。

そこには仮面ライダーエターナルとヒート、ルナ、メタル、トリガー、ファングのドーパントが並んでいた。

そして、エターナルがメモリを抜き素顔を現す。

 

「風都市民に告ぐ....俺の名は大道克己またの名を仮面ライダーエターナル。

ガイアメモリに命運を握られた哀れなる箱庭の住人達を解放するものだ。

この最新型ガイアメモリと巨大光線兵器"エクスビッカー"を我々は有している。

 

最早、いかなる武力も干渉できない風都を守る仮面ライダーも我々に敗北した。

この風都タワーを拠点に我々は風都を"自由の楽園"に変える。

ところで諸君、君達にもこれから始まる面白いゲームに参加して貰う。

これと同型のガイアメモリが風都にバラ撒かれている...我々の持つメモリを除いた20本のメモリがだ。

見つけたらそれを風都タワーまで持参していただきたい。

該当者には"10億"出そう。

我々の同志として迎え入れる準備も整っている。

確か....警察にかなりのメモリがあると言う噂だ。

是非、探してみてくれたまえ。

 

だが、我々のゲームに参加したくないと言う非協力的な存在もいるだろう。

そいつらには逆に罰を与える。

我々の仲間がこれから風都の街へとくりだす。

我々に非協力的な存在は無条件で殺害する。

死にたくないのなら死に物狂いでメモリを探せ。

 

それと私から逃げた仮面ライダー達にもメッセージだ。

もし、最新型メモリを我々に渡してくれるのなら人質を解放しても良い。

囚われの姫を助けるのは君達だ.....」

 

そう言ってカメラマンが映した映像には鎖で縛られた若菜の姿があった。

「話は以上だ....さぁ、ゲーム開始だ!」

 

そう言うとテレビの画面は元に戻った。

 

 

クローンにより始まった新たなゲーム.....

それを見つめる仮面ライダーと無名の顔は暗く陰っていた。

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