もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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克己の放送を見た風都市民の反応は様々だった。
言ったことを信用してメモリを探す者。

金欲しさに探す者、警察の対応を信じる者、仮面ライダーに守って貰う考えの者。

だが、見回りにきたNEVERのドーパントが市民を一人殺して事で混乱は加速していく。
皆が皆、生き残るためにメモリを探す。
そう言う人が個から集となり群となるのに時間はかからなかった。

照井が回収したT2メモリも移送しなければいけなくなりその対応に追われていた。


第百二十話 AtoZ/混乱する風都

「見事な采配ですね。」

その光景をビルの上から井坂が冴子と共に覗いていた。

 

「そうですね。

テロリストのわりには頭が切れると思いますわ。」

「えぇ、警察も何の罪も犯していない人は捕まえられない。

ましてや、自分の命がかかっているのなら尚更でしょう。」

 

井坂が彼等に称賛の言葉を送るが暫くすると顔が残酷な表情へと変わる。

「しかし、メモリを使えなくしたのは頂けませんねぇ....誰も私の楽しみを奪う権利など無いと言うのに」

井坂のその手には強化アダプターが着いたウェザーメモリが握られていた。

 

「やはり、井坂先生もダメだったんですね。」

「えぇ、メモリが全く反応しなくなりました。

この犯人は私をイラつかせたいらしいですねぇ。」

 

「冴子くん....お父様にご連絡を

私もこの事態を引き起こした人物の"狩り"に参加したいと伝えてください。」

そう言うと井坂は着替えると部屋を出ていった。

その表情と声は穏やかであったが内心、感情が爆発しそうに成る程、激昂しかかってるのは冴子でも予想できた。

 

すると、冴子も服を着替えて準備をする。

(若菜が敵の元に捕まったのならお父様なら必ず救出作戦を立てる筈.....私も準備しておかないと)

 

そうして着替えている最中に、父親から連絡が来る。

「冴子か?今何処にいる?」

「井坂先生が隠れ家に使っている天十郎の別荘にいますわ。」

「なら、井坂君を連れて至急屋敷に戻りたまえ。」

「分かりました。

では、やはり......」

 

「あの連中は私の家族に手を出した....それがどんな結末を呼ぶのか直接教えてやらねばなるまい。」

琉兵衛の声に明確な怒りを感じ取り冴子は身震いする。

恐怖の象徴として君臨している男から明確な敵意を向けられている相手に冴子は僅かながら同情するがだからと言って結論は変わらない。

「"ミュージアム総出"で相手をしてやろう。」

 

琉兵衛の決定に異を唱える者など誰もいなかった。

 

 

一方、克己は外でエターナルメモリを見つめていた。

自分の運命と呼ぶに相応しいメモリが今の自分を拒絶している。

その事実に彼も打ちのめされていた。

(俺の選択は....間違っていたのか?)

思い起こされるのは傷付いたレイカとそれを心配する仲間の顔....俺達はNEVER...死人で作られた傭兵。

そんな自分達に記憶が戻り感情が芽生えた。

 

結果としてこの事態を引き起こした。

それは間違いなのか?....克己には答えが出せなかった。

(全く....これではフィリップの事を言えないな。

俺も俺で半端者だ。)

そう思い外を見ると翔太郎が誰かを探していた。

気になった克己は翔太郎に声をかける。

 

「おい!こんな所で何をしている?」

「あ、アンタは....実はフィリップがあの放送を見てから行方が分かんなくなっちまったんだよ!」

 

クローンの克己とNEVERが行った放送を見たフィリップは明らかに平静さを失っていた。

 

今の彼の頭には若菜を救うことだけしか無かった。

それを隣にいたマリアが宥めている。

「落ち着きなさい坊や!今は冷静に...」

「冷静?これをどうやって落ち着けと言うんですか!

若菜さんが人質にされて僕達はWに変身できないんです!

.....生身の僕では....彼女を救えない。」

「...........」

フィリップは頭を掻きむしる。

「奴等はT2メモリを欲していた....警察署にあるメモリを使えば救出できる可能性が上がるかもしれない。

だけど!そんな事、照井竜が認めるわけがない!

でも、このままじゃ若菜さんの命が......」

 

その痛ましい姿にマリアは悲しい顔になる。

(貴女(シュラウド)がここにいたらどうしたのかしら?)

そう考えたマリアはフィリップを優しく抱き締めた。

「.....マリアさん?」

「坊や....いえフィリップ。

若菜さんを助けられる可能性がひとつあるわ。」

そう言うとマリアはその可能性を話し始めた。

 

「そんなっ!危険すぎます!」

「今、使えるメモリはこれだけ....なら私が使うしかないわ。

大丈夫よ....決して戦うつもりはないから」

そう言ってマリアはフィリップに優しく微笑むのだった。

 

 

翔太郎と克己は手分けをしてフィリップを探していた。

その時、克己の携帯に着信が入る。

「お袋か?どうした?」

「克己.....私はこれからフィリップ君と警察署にあるT2メモリを持って風都タワーに向かうわ。

人質をこれで解放して貰う。」

 

「何だと?止めろ!お袋も分かってるだろ?アイツらに交渉なんて通じない殺されるのがオチだ!」

「それは....やってみなければ分からないわ。」

「その作戦を提案したのはフィリップだな?

奴に変われ!俺が話す。」

 

「いいえ、克己。提案したのは私よ。」

「え?」

「私は....貴方やNEVERの皆に背負わせてはならない十字架を背負わせてしまった。

それをキースは利用して私達に復讐する選択をした。

元を辿れば全て私のせいよ。

これ以上、他の人達を巻き込むわけにはいかない。」

「何言ってるんだお袋?

それが罪なら俺達、NEVERも同罪だ!

お袋が背負う罪じゃ.....」

 

「克己。」

マリアは焦る克己を落ち着かせるように言った。

「貴方は大きくなった....身体だけでなく心もね。

記憶を保てるようになって他者を思いやる野望も生まれた。

貴方の事を誇りに思ってるわ...けどこれは私の罪よ。

貴方達をこれ以上巻き込むわけにはいかない。

ごめんなさいね....克己。」

 

「お袋....待ってくれ!電話を切るな.....お袋ぉ!......母さん。」

「おい!どうしたんだ?」

心配になった翔太郎か尋ねる。

「お袋とお前の相棒が風都タワーに向かったらしい....T2メモリを持ってな。」

「何だと?やべぇじゃねぇか!

おい!早く行くぞ!」

「行ってどうなる!打開策も無いのに行くだけ無駄だ!」

 

「無駄かどうかなんてやってみなきゃわかんねぇだろうが!」

「何だと?」

 

「"男の仕事の8割は決断だ。そこから先はおまけみたいなもんだ".....俺の師匠であるおやっさんが言っていた言葉だ。

俺はその意思を信じる!」

翔太郎の真っ直ぐな目を受けて克己は考えた。

(そうだ....俺も決断したんだエターナルになることも記憶を持ったまま生きることも....なら俺の出すべき決断は)

 

「良いだろう...."お前(翔太郎)の決断"に俺も賭けてやる。

だが、行くにしても具体性が欲しい。

先ずはどうする?」

「急いで探偵事務所に向かうぞ....あそこになら何か使える物があるだろう。

それ持ってフィリップを助けに行く!」

 

「.....何と言うか本当に行き当たりばったりだな。

だが、嫌いじゃない。」

そう言うと翔太郎と克己は事務所へと戻るのだった。

 

 

 

風都署では暴動を起こしかけている市民を落ち着かせるので体一杯だった。

入口には鍵がかけられバリケードも設置されている。

その理由は克己が放送の時に言っていた警察署にメモリがあると言うリークのためだった。

 

「メモリをだせぇぇ!」「助けてぇ死にたくない!」「メモリを渡して10億貰うんだぁ!」「さっさとテロリストを倒してくれよ!アンタら警察なんだろ?」

四方から聞こえる罵声や絶叫に流石の照井も辟易していた。

「クソッ!こんなことをしてる場合では無いのに....」

NEVERは相変わらず風都タワーを占拠している。

本来ならその鎮圧に向かうべきなのだが、暴徒と化した市民を止めるだけで警察は体一杯だった。

 

「照井警視、ダメですバリケードが突破されます。」

民衆の力は凄まじくバリケードが突破されそうになっていた。

「クッソ!言い加減にしろぉ!」

警官の一人が市民に銃を向ける。

「止めろ!一般市民だぞ!我々が危害を加えて良い存在ではない!」

「しかし、このままでは!」

そんな話をしていると裏手から何かが崩れる音が聞こえた。

「今度はなんだぁ!」

照井の怒号に警官の一人が答える。

「報告します。

証拠保管室がドーパントに破壊されてメモリが奪われました!」

 

「そんな....バカな!」

そう言いながら照井が証拠保管室に向かうがそこは天井まで繋がる穴しか残されていなかった。

「一体何者が.....」

すると、照井の携帯に着信が入る。

「誰だ?」

「俺だ照井。」

その声は翔太郎だった。

「どうした左?」

「T2メモリはまだそっちにあるか?」

「いや....何者かに奪われた。

その言い方だと何か知っている風だな一体誰だ?」

 

「....フィリップだ。

風都タワーにいる人質を救うために、

マリアさんと協力してメモリを盗み出したらしい。」

「何て無謀なことを!....テロリストと交渉できると本気で思っているのか?」

 

「照井....すまねぇが」

「分かった...俺も風都タワーへ向かう。」

「頼む....俺は事務所で装備を整えてから向かう。」

「そうか....こっちも事態の収拾を急がせてから向かう。」

そう言うと電話を切った。

フィリップがそんな短絡的な行動を取ったことに照井は驚いていた。

いつも、冷静沈着....冷血とも思える思考を持つフィリップじゃ考え付かない杜撰な方法。

 

だが、同時に人間らしくも感じた。

(人質の中に園咲若菜がいたな....フィリップは彼女のファンだった。

....存外、フィリップが一番甘い人間なのかもな。)

そう考えると照井は風都タワーに向かう為、風都署で指示を行うのだった。

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