アクセルが少女の前に盾のように立ち塞がるとエンジンメモリを抜いたエンジンブレードでサラの視界を塞いだ。
そのお陰でサラの視界にはエンジンブレードしか写らず刀身が塵になる代わりに一度目の攻撃を防ぐことが出来た。
(今しかない!)
照井はアクセルメモリを起動しドライバーに装填すると元の赤いアクセルに戻った。
そしてバイクモードへ変形すると少女を背中に乗せてその場を逃走した。
追いかけようとするサラに司会者はマスクを脱ぎ捨ててメモリを起動する。
「Sphinx」
スフィンクスドーパントになった美頭は暴れるサラを両手で抑えながら最高出力の回復の光を放った。
光を受けたサラは正気を取り戻してドライバーからメモリを抜き取る。
美頭もメモリを抜いて人間の姿に戻るが"左腕"を繋いでいた部分が塵となり落ちてしまった。
「美頭!」
「問題...ありません...サラ様が....無事なのなら...」
「そんな...ごめんなさい。
私はこんなことするつもりは.....」
「仕方ありません。
ゴーゴンメモリは強力ですがその分、暴走しやすい。
それに今回は早めに貴方を援護しなかった私のミスです。」
「でも.....」
「そんな事より早く避難を.....
警察に仕掛けたトラップにもう気づく頃合いです。
そろそろこちらに来てしまいます。」
「....分かったわ。
一緒に行きましょう....腕の事は無名に聞いてみるから」
そう言うとサラは美頭と共に隠し通路から逃走するのだった。
その直ぐ後に、照井が呼んでいた特殊部隊が会場に突撃してくるがそこにはもう誰もいなかった。
それから数日後、風都署内で照井は少女を尋問していた。
「まだ何も話す気が無いのか?」
「.........」
「オークション会場に警察が突入して中を改めた。
そこには"複数の死体"があった。
その死体を調べたら皆、何かしらの犯罪を起こしていることが分かった。
それも"子供が犠牲になった犯罪"ばかりだ。」
そう言って説明する照井の手は反射的に握っている。
「頼む教えてくれ。
もし、他にも犠牲になっている人がいるのなら君が教えてくれれば警察が.....」
「助けるって?....バカじゃないの?
神父を逮捕して欲しいって警察に言った時、私達は何て言われたと思う?
"神父様がそんな事するわけ無い" "そんな酷いことを言うもんじゃない"そう言ったのよ?
そして私が殺人事件を起こした時も理由をちゃんと話したわ。
でも結果は変わらなかった"殺すことは良くない" "証拠が無い" "嘘をつくな" そんな事しか言わない奴らの事なんて信用できるわけ無いでしょう。」
「私達にとって彼処が唯一の"希望"だった。
復讐したい理由を話したら直ぐに協力してくれたわ。
道具も方法もくれた。
あんた達と違って私達に寄り添ってくれたのよ。」
少女から言われるごとに照井の顔は曇っていく。
警察が必ずしも正義の組織で無いことなんて照井も良く理解している。
だからこそ、もしそんな存在を見つけたら問答無用で刑務所に送り込む気概があった。
現にこの事件があってから警察内部を調べ直し不正に加担した汚職警官を摘発していった。
だが、それは結果論だ。
彼女が復讐を望み生み出した結果があったからこそ調べられたに過ぎない。
録な証拠が残っていなかったオークション会場で唯一の手掛かりは彼女だけだ。
だからこそ、彼女からなんとしても情報を手に入れる必要があった。
「.....何か飲み物を持ってこよう。
一度落ち着いて君と話したいんだ。」
そう言うと照井は取調室を出ると壁を殴り付けた。
(何故こんなになるまでこの事件がほおっておかれていたんだ!
市民を助けるのが警察の仕事じゃないのか!)
その姿を見た刃野がコーヒーを持ちながら現れた。
「荒れてますね室長....まぁ無理もないですが」
そう言って照井にコーヒーを差し出した。
それを受けとると照井は一口飲む。
ブラックコーヒーの苦味が照井の思考を冷静にさせた。
「それで、本部の対応はどうなっているんだ?」
「同期から聞いた話じゃ2つに分かれているそうです。
"徹底的に調査するべき"と"このまま少女に罪を被せて有耶無耶にする"この2つで悩んでいるそうですね。」
「まだ、そんなバカげた事を考える奴がいるのか!」
「組織って奴の弊害でしょうね。
仮にも警察は正義の味方ですから、こんな失態が明るみに出たら内部の根幹が揺らいでしまうと考えている人も一定数いるみたいです。」
「.....警察内部でガイアメモリを購入使用した疑いのある人物が何人いたか知っているか?」
「....存じませんが室長の顔から察するに相当多いんでしょう?」
「全体の"8%"だ。
軽く調べた程度で8%も犯罪を行っている可能性のある組織が正義があると本当に言えるのか?」
「でも、私達はその警察と言う組織にいるんです。
何も知らない人から見れば私達も同罪ですよ。」
「....そうだな。
刃野刑事すまないが彼女の尋問を頼めるか?
俺よりも君の方が適任だと思う。」
「分かりました。
室長も早く休んでください。
ここの所、署内でずっと仕事してるじゃないですか。
少しは休まないと倒れますよ。」
「すまない....」
そう言うと照井はその場を後にし代わりに刃野刑事が取調室に入るのだった。
ZENONリゾートでの戦いは佳境に差し掛かっていた。
ロストドライバーを手に入れたフィリップが仮面ライダーサイクロンへ変わるとリゾートの社員が変身したドーパントを次々と倒していった。
サイクロンのマキシマムを発動し風を纏った手刀でドーパントのメモリにダメージを与えてメモリブレイクしていく。
侍が続けざまに人を切る様に敵を倒していくと目の前に黒い姿に丸の紋様が描かれたドーパントが現れた。
そしてそこに禅空寺家の面々も現れる。
「まさか、まだ生きていたとはな。
香澄も厄介な奴を招き入れたものだな。」
禅空寺俊英がそう毒づく。
「やっぱり君が犯人だったわけだね禅空寺俊英。
目的はこのリゾートの利権かな?」
「利権?」
フィリップの言葉に香澄は疑問を持つが俊英は分かっているように言った。
「そこの
まぁどうせ皆、殺してしまうんだ。
少し位、話してやろうじゃないか。」
俊英はそう言うとこの事件を起こした目的を話し始めた。
リゾートの土地の地下を使ってガイアメモリの生産工場を作ろうとしそこで土地の利権を持つ香澄が邪魔だったから殺そうとしたこと
そして、その過程でズーメモリが何者かに奪われてしまったことを......
「奪われた?」
「あぁ、ズーメモリは元々そこの女を殺すために手に入れたメモリだったが...奪われてしまったんだよ。
今回姿を現して私の命を奪おうとした。
そして、ここにも来ている....そうだろう?」
俊英の言葉にズードーパントが現れた。
「そんなに俺の命が欲しいのか?」
その問いにズードーパントは変声した声で言う。
「私は"大自然の使者"....自然を破壊しようとするお前達、禅空寺家を許さない。」
「別に貴様風情に許しを乞う気など無い。
それに....そんな口はいずれ叩けなくなる。」
そう言うとゼロドーパントが香澄に向かって勢い良く近付く。
「させるか!」
フィリップがサイクロンメモリお得意の速度で追い付くとゼロドーパントを止めようとする。
「無駄だよ。」
ゼロドーパントがそう言うとフィリップの身体に触れてそのまま地面に投げ落とした。
「ウグッ!」
フィリップはなす術無く倒され背中から地面に落ちてしまった。
普通なら耐えられた筈の攻撃なのにフィリップは耐えられなかった。
そして、ゼロドーパントは香澄の首を絞め上げる。
「あ....か...」
「止めろ!」
ズードーパントが慌てて香澄の元へ向かおうとするがゼロドーパントは首を絞めている腕をズードーパントに向けて動きを止めた。
「少しでも余計なことをすれば彼女の首を折ります。
分かったら下がりなさい。」
ゼロドーパントの言葉に従いズードーパントは後ろへと下がる。
「良し、ならば命令だ。
メモリを抜いて素顔を現せ。」
「それは.....」
「早くしろ、それともこの場であの女の首が折れる姿を見たいのか?」
俊英の脅迫に従いメモリを抜くとその姿は香澄に仕える使用人である"弓岡あずさ"だった。
「そん.....な....う....そ」
「香澄お嬢様を離しなさい。」
「良いだろう目的は達した。」
そう言うと俊英はゼロドーパントに指示を出して香澄を下ろすとそこに弓岡が来る。
「お嬢様!大丈夫でしたか?」
そんな話をしていると俊英は特殊な形をした装置を起動しズーメモリに投げつけた。
ズーメモリはファングメモリの様に自立駆動するメモリだがその装置を避けることが出来ずズーメモリに首輪が着くように装着されるとメモリが機能を停止した。
「一体何をしているんだ?」
立ち上がったフィリップがそう尋ねるとゼロドーパントが答える。
「使用者のデータを書き直しているんですよ。
元々このメモリは俊英様が使う予定でしたから」
「そうだ。
だが途中で邪魔が入りメモリは姿を消していた。
まさか、お前が持っていたとはな弓岡。」
自分の名を呼ばれた弓岡は俊英を睨みながら告げる。
「当然です。
兄弟である"香澄様を殺す目的"で手に入れたメモリだと聞けば誰でもこうします!」
「お前はあくまで禅空寺家の使用人であり香澄の母ではない。
そんな事すら分からない程、耄碌していたとは....
やはり、お前も処分するべきだな。」
そう言って手を出すと先程まで動かなかったズーメモリが彼の掌に収まった。
「漸くこの日が来たんだな。」
俊英はズーメモリを変形させてメモリモードに変えると起動した。
「
起動したメモリを腕に挿すと俊英はズードーパントへと変身した。
弓岡の変身したズードーパントと違い身長は低かったが身体から溢れる気配から彼の強さをフィリップはひしひしと感じた。
フィリップは立ち上がるとズードーパントへ向かっていく。
風の力により速度の上がっていた徒手空拳だが、それをズードーパントはいとも容易くかわした。
「何?」
「元々、私が使うために用意されたメモリだぞ?
使用人よりも使いこなせる事など分かっていただろう。」
ズードーパントは長い尻尾を生成すると鞭のように使いフィリップに攻撃を仕掛けた。
フィリップもそれを紙一重でかわしていくが顔に一瞬触れた瞬間、フィリップの動きが鈍り出す。
「尾にフグとコブラの毒を混合した物質を噴出する機関を作った。
いくらお前が仮面ライダーでもこの毒は直ぐには解毒出来まい。
それに"ゼロ"からお前達の弱点は聞いている。」
ズードーパントは右腕を巨大化させるとフィリップの着けていたドライバーを思いっきり殴り付けた。
「ゴリラの筋力にアルマジロの皮膚にサメとワニの牙を合成した特製の腕だ。
フルパワーで殴ればいくらその機械が丈夫でもただでは済まないだろう。」
吹き飛ばされたフィリップはドライバーを見るとひび割れが起き火花が散ると変身が解除された。
メモリに異常は無かったから恐らくズードーパントのダメージは全てドライバーが肩代わりしてくれたのだろう。
だが、助かったのも束の間フィリップはドライバーを失い2体のドーパントをどうにかしないといけない状況に追い込まれていた。
(亜樹ちゃんや香澄さんを守ろうにもドライバーが壊れてしまってはどうにもならない。
翔太郎に連絡が着けばWになって戦えるのに......)
勝利を確信したのか俊英は近くにいた妻である
「お前達もコイツらの片付けに協力しろ。」
彼の言葉に従い二人はメモリを取り出すと起動した。
「
二人がメモリを挿すと朝美は"クイーンビードーパント"に麗子は"フラワードーパント"に変身し四人を取り囲んだ。
「くっ!」
「うわわっ、これって大ピンチだよねフィリップ君!」
亜樹子がいつの間にか出したスリッパでドーパントを牽制するがフラワードーパントが腕から取り出した鞭によりスリッパは真っ二つにされてしまう。
「大人しく死んでよね。
めんどくさいんだから.....」
フラワードーパントがそう言い放ち更に絶望感が高くなる。
しかし、このタイミングで2つの予定外が起きた。
1つはリゾートの窓を突き破りリボルギャリーが現れた事、もう1つは天井から"巨大なドーパント"が落下してきてリゾートの地面が陥没しそこにいたフィリップ達とリボルギャリーが落下したことだった。
「なっ!一体どう言うことだ!」
激昂する俊英の前にもう一人招かれざる客が現れる。
「失礼....今ここで彼らを殺されるとこちらが困ってしまいますので邪魔させてもらいましたよ。」
「貴様ら!何処から入ってきた!」
「"入ってくる?"それは少し表現が違うな....私の場合は」
「"降ってくるんだよ"。」
そう言ってオーロラドーパントとなった万灯がリゾートに現れるのだった。
外伝 続編の投稿に関して
-
このまま続きで見たい
-
新規投稿で見やすくしたい