もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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あれは、まだ寒い日の夜の事だった。
私は非番の日に妻と一緒に食事に出かけていた。
そんな時に、銃を持った男が私の前に現れた。

その男は過去に私が逮捕した男であり逆恨みされてこの場で私と妻を殺すために来たのだと言った。

男は銃を撃ちその弾は私の膝に命中した。
そして倒れる私を心配するように妻が来ると男は妻に銃を向けたんだ。
このまま撃たれたら妻は死ぬ....そう思った私は男を止めた。
だが、男は笑いながら妻に向けて銃を撃った。

そして、銃弾を受けて妻は倒れる....筈だった。
そこで私達の前にあの怪人が現れたんだ。

怪人は私達の前に立ち塞がり男の撃つ弾を全て受け止めた。
弾切れした銃を捨てると男はナイフに持ちかえて刺しにかかるがそれも怪人に止められ倒されてしまった。

その怪人がドーパントと呼ばれる事は私は知っていた。
長年、風都で警察官をしていれば嫌でも目についてしまう。
そしてドーパントは皆、凶暴だと思っていた。
だが、その怪人は私達にこう言ったんだ。
「早く警察と...それに救急車を呼んでください。」と

そして、私達は夫婦は怪人に救われ襲ってきた男は警察に捕まった。




第百四十四話 現れたH/救われた過去

相模が話した言葉を聞いた翔太郎や後藤、泊、凛子はそれぞれ驚いていた。

「その助けてくれた怪人ってのが今の奴なのか?」

「そうだ。

あの怪人が私達を助けてくれたんだ。」

 

「だから、信用すると?

それが警察官として正しい選択だと貴方は思っているんですか?」

「では、君は私達が死ぬか妻が死ぬ結果こそ正しい選択だったと言うのかい?」

「それは.......」

「とは言え、私自身も悩んだ。

この選択が本当に正しかったのかとね。

だから、これは君達三人に決めて欲しい。

私が正しかったのか間違っているのかを.....」

 

「私が間違っていると思うのなら照井課長に真実をありのまま伝えてくれ。

だか、もし許されるのなら"彼"のヒーローとしての夢を尊重して上げて欲しい。」

「彼?....相模さんはあの怪人の正体を知っているのですか?」

「....あぁ、彼の名前は"中島 正義(なかじま まさよし)

私は彼の事を知っているよ。」

 

相模がそこまで言うと後藤が手錠を取り出し相模の腕に掛けた。

「おい!何してんだ!」

「分からないのか?

怪人との共謀を認めたんだ。

これから署で話を聞く。」

 

「後藤!いくらなんでもやりすぎだぞ!」

その行動に泊も後藤を止める。

「警察官でありながら怪人に手を貸していたんだ。

これは正しい....正しいことなんだ!」

 

「お前の言っている正しいは"自分の価値観"での正しいだ!

俺や大門の意見を聞かずに勝手に決めた正しいさを俺は認めない!

それに相模さんが言ってただろう"三人で"決めてくれって...お前一人の意見で決めて良いことじゃない!」

「それは怪人と共謀していた奴の言葉だぞ!」

「いい加減にしろ!自分勝手なんだよお前は!」

「ちょっと落ち着きなさい二人とも!」

凛子が二人の間に入る。

「私は後藤くんの意見に賛成する。

相模は一度、署内で話を聞くべきよ。」

「だけど!」

「でも!だからと言って犯罪者みたいに捕まえて話を聞くのは反対。

だから彼の手錠を外して後藤くん。

でないと私も認めない。」

 

「......分かった。」

後藤は相模に付けた手錠を外すと四人で車に乗り風都署へと帰っていった。

残った翔太郎はさっき相模が言っていた名前を思い出す。

「中島正義か....直ぐにでもフィリップに検索をかけて貰うか。」

そして、翔太郎も事務所へと帰っていくのだった。

 

 

事務所に付いた翔太郎はフィリップに事情を説明した。

「暴力を振るわないドーパントだなんて....興味深いね。」

「あぁ、俺も見た時は驚いたぜ。

ドーパントに警察を呼ぶように頼まれたのなんか始めてた。

しかし、何でそんな事が可能なんだ?

毒素による影響を受けるなら大なり小なり暴力的になる筈だろ?」

「仮説だが、ロストドライバーを付けていることでメモリの毒素が抑えられているのかもしれない。

だが、本人の気質によるものも大きいだろう。」

「まさか、あの時のドライバーがそんな使われ方をされるなんて思っても見なかったぜ。

所でフィリップ、検索した感じはどうだ?」

 

「人名だからかなり絞りこめはするけどまだ多いね。

もう少しキーワードが欲しいよ。」

「キーワードねぇ.....そう言えばあの刑事が言ってたなヒーローの夢って....フィリップ、キーワード追加"ヒーロー"だ。」

地球の本棚が動き一冊の本がフィリップの前に現れた。

「相変わらず君の洞察力には畏れ入るよ。

中島正義の居場所が分かった。

それにメモリについてもだ。」

 

「マジか、何のメモリだったんだ?」

「文字通りのメモリだよ。

"ヒーローメモリ"、使用者の想像するヒーローの力を具現化させる能力があるメモリだ。」

「じゃあ、奴がWみたいな姿をして現れたのは...」

「彼にとってWが自分の考えるヒーローの姿に最も近かったからだろうね。」

 

自分達がヒーローだと思われていることに翔太郎は照れくさそうに笑う。

「そうなのか。」

「ヒーローメモリの特性は君のジョーカーメモリと似ている。

使用者の感情によって能力が増減する。

もし、彼が"完全無欠のヒーローだと本気で思えた"のならメモリはそれに答えて本当にその通りの力を手に入れられる。」

「そんなヤバいメモリなのか?」

「あぁ、だからこそ一刻も早くメモリをブレイクする必要がある。

彼が人を襲う前に......」

 

「それは....いや、そうだな。

その為にも中島と接触しねぇといけないな。」

そう言うと翔太郎はバイクに乗りフィリップの検索した場所へと向かったのであった。

 

 

 

風都の南街商店街の一角にある公園....そこでスーツ姿の男は一人黄昏ていた。

そんな所にバイクから降りた翔太郎が現れる。

「やっぱりアンタだったのか。」

「貴方は確か商店街でぶつかった。」

 

「あぁ、俺の名前は左翔太郎。

探偵だ....アンタの事は知ってるぜ。

中島正義、そしてヒーローメモリを使うドーパント。」

「........」

「どうした?何も言わないのか?」

「遅かれ早かれバレると思っていました。

これはとても危険な代物だって言うことも....」

そう言うと正義はメモリとドライバーをバックから取り出した。

 

「なぁ、何でメモリを使ってドーパントになったんだ?

それもボランティアみたいなことをする為に」

「僕は、正義の味方になりたかったんです。

傷つけられている人を守り助けられるような存在に.....だからこのメモリとドライバーを使ったんです。」

 

正義の言葉を聞いた翔太郎は静かにWドライバーを取り出して腰に付けるとメモリを起動した。

 

「JOKER」

 

『「変身」』

 

「CYCLONE,JOKER」

 

翔太郎はドライバーを展開しWへと変身を完了させる。

「貴方が....仮面ライダー....」

「変身して見ろよ...正義。」

翔太郎の言葉を受けて正義は立ち上がるとロストドライバーを腰に付ける。

 

そしてメモリを起動した。

Hero(ヒーロー)

メモリを腕に挿すとヒーロードーパントへ変身が完了した。

 

そんな正義に翔太郎はいきなり殴りかかった。

正義は驚きながらもガードを行う。

『いきなりどうしたんだ翔太郎!』

フィリップからの問いに答えること無く翔太郎は正義へ徒手空拳による攻撃を続ける。

だが、その攻撃は何時もの翔太郎が放つ攻撃と比べると覇気がなく速度も遅い。

そのお陰もあり威力は皆無だった。

 

だが、そんな攻撃でも正義は回避せずに受けてしまう。

「うっ!....くっ!」

正義は足に力を入れるとこの場から逃げるために思いっきり飛び上がった。

「逃げんな!」

翔太郎はドライバーのメモリを変える。

 

「CYCLONE,TRIGGER」

 

翔太郎はトリガーマグナムを手に取ると正義が着地する地面に向かい発砲した。

すると、着地した地面に弾が当たり火花が起きると正義は転んでしまう。

『翔太郎、いくらなんでもやりすぎだ!

彼に戦闘の意思は無い!』

「どうした?戦わねぇと俺にやられるぞ!」

翔太郎が発破をかけると正義は拳を握り締めWに向かって殴りかかってきた。

 

それを翔太郎はガードすること無く受けようとする。

正義の拳がWに突き刺さろうとした瞬間、正義の身体が震え腕が止まってしまった。

『....一体どう言うことだ?』

その姿を見た翔太郎は確信を持って告げた。

「お前、"暴力を振るえない"んだな。」

「!?」

「ずっと、おかしいと思ってたんだ。

泥棒を捕まえた時のお前は泥棒を捕らえるだけでそれ以上攻撃を加える素振りは全く無かった。

確信に変わったのはあの刑事から銃を向けられて撃たれそうになった時だ。

反撃しても良かった筈なのにしなかった。

寧ろ、逃げるようにその場から逃走していた。

それが妙だと思ったんだ。」

 

そう言うと翔太郎と正義は変身を解除した。

「教えてくれ。

暴力を振るえないお前が何でヒーローを目指したのかを...」

すると正義は静かに語り始めた。

 

 

中島正義は平凡な人間だった。

勉強な運動、性格に至るまで何処にでもいそうな普通の人間だった。

ただ、一つ個性があったとすればそれは生来持っていた正義感だろう。

 

誰かが傷つくことを嫌いそんな人達を守りたいと本気で思っていた。

そんな彼の人生を変えたのは高校生の頃、虐められている友達を助けた時だ。

良くあることだ....虐めを止めたら今度は自分が標的になる。

だが、ここで違うのは守った側も優しい人間だったと言うことだ。

友達が自分の代わりに虐められている現状に耐えかねて彼は自殺した...助けようと手を伸ばした正義の手を払って

 

それ以降、正義はその一件がトラウマとなり暴力を見ることと自分で使うことが本当に嫌だと思うようになったんだ。

それから大人になった正義は風都のとある証券会社に就職した。

そこでまた同じように暴力を見る機会が増えてしまった。

今度はドーパントと言う怪物が起こす暴力を.....

そして、そんな怪物と戦うヒーロー、仮面ライダーを間近で見た正義はこうなりたいと本気で思った。

 

正義は強くなりたくて道場にも通ったが結局、トラウマによって攻撃出来ず体の良いサンドバッグにしかならなかった。

自分には皆を守る力や資格もない。

そう思って自分を偽って生きていたある日、正義はヒーローメモリと出会った。

 

心が惹かれる感情を覚えた正義はメモリを手に取った。

だが、直ぐ使う気が起きなかった。

自分が風都で暴れているあの怪物と同じになる恐怖を感じていたからだ。

そんな正義の前であの事件が起きた。

 

目の前で夫婦が銃で襲われている現場に遭遇した正義は直ぐにメモリを手に取った。

だが、どうしても使うことはできなかった。

怖さとトラウマにより吐きそうになる自分が嫌で仕方が無かった。

助けを求めるように手を伸ばした先で正義はこのドライバーを手に入れた。

 

それからは早かった。

ドライバーを付けてメモリを使う。

あの時に憧れたヒーローを思い変身すると僕はヒーローになれた。

自分の精神が安定している事が分かり正義は銃を構えている男の前に立ち塞がった。

 

そしてその男を取り抑えることが出来た時は本当に嬉しかった。

自分もヒーローになれると本気で思えた。

そして、その時に始めて助けた人が相模広志と言う刑事だと知った。

どうやったのか分からないが正義がドーパントであると調べ上げるとカフェに呼び出された。

 

僕は観念してメモリとドライバーを彼に渡したが彼が言ったのは助けて貰った事への感謝の言葉だった。

 

「君が僕と妻を助けてくれなかったら....仮に僕が生きていたとしても犯罪者を憎み"復讐の為に生きる処刑人"に変わっていただろう。

君には人として刑事としても助けられた。

本当に感謝している。」

始めて人から感謝された正義は自分の境遇と思いを彼に話した。

 

「暴力が怖い....ですか。」

「はい、でも誰かの力になれるヒーローに僕はなりたいんです。

きっと、その為にこのメモリとドライバーが僕の手元に来たと思うんです。」

「....こんなことを言っては警察官として失格かもしれません。

けど、私は恩人である貴方の願いを叶えたい。

ですのでこう言った方法はどうでしょうか?」

 

相模が提案したのは仮面ライダーが普段助けない小さな問題の解決を自分がすると言うことだった。

「ガイアメモリの危険性は私も理解しています。

ですので定期的に連絡を入れてください。

その間は貴方を信じてガイアメモリを使っていることは黙認します。」

それから僕の小さなヒーロー活動が始まった。

お年寄りを助けたり事故を未然に防いだり....時にはドーパントの被害を受けた人の救助も行っていた。

 

窃盗犯を捕まえるために何度も相模さんとも協力した。

僕はこの時間がとても嬉しかった。

仮面ライダーみたいに戦えなくても人の役に立てている事に嬉しさを感じていた。

だけど、風都でガイアメモリの犯罪が起こる度にこのままで良いのか悩む機会も増えた。

そんな時に本物の仮面ライダーである貴方が現れた。

 

「教えて下さい....ヒーローって何なんですか?

力が無ければ戦えなければなれない存在なんですか?」

 

「......」

その質問に翔太郎は答えられないでいた。

何故なら翔太郎は自分の事をヒーローだとは思っていない。

何時も一生懸命に事件や依頼と向き合い仮面ライダーとして戦っているだけだからだ。

 

答えに悩んでいると何処かから殺気を感じた。

「あぶねぇ!」

翔太郎が正義のいた場所から突き放すとそこの地面が爆発し抉れた。

 

「何だ一体?」

攻撃された方向を見てみるとそこには一体のドーパントが立っていた。

ドーパントは正義と翔太郎を見つめると言う。

「お前達が仮面ライダーか?

俺は"ドラゴン"....俺の力の為に死んで貰う。」

そう言ったドラゴンドーパントが二人に襲いかかった。

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