もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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若菜は獅子神からの報告を受けて居ても立ってもいられなくなっていた。
(フィリップ君がケガをした。
獅子神のせいで......)

ケガを受けたフィリップに対しての申し訳無さと怒りが心をぐちゃぐちゃに掻き乱す。

「何とかしてフィリップ君を助けなくちゃ....
でもどうやって助ければ良いの?
ガイアメモリの傷は自然治癒しか方法がないと前にお父様から聞いたことがある。
なら普通のやり方では先ず不可能....どうすれば?」

一人の好意を持った青年を救いたい若菜は自分の手元にある使える手段を考える。
(獅子神は恐らく、お父様の命令を受けてるから動かせないわ。
サラはこの前のオークションでのケガが治ってない。
確か、彼女の部下である美頭が回復系の能力を使えた筈.....
でも助けたいと言ってもお父様が素直に応じてくれるのかしら?
.....無理かもしれない。
相手は仮面ライダーの片割れ...組織として考えるなら殺しておいた方が良いと言う筈だわ。
ミックは当然ダメ....残っているのは無名。
そうよ、彼はミュージアムのガイアメモリ開発の責任者じゃない!
彼ならきっと良い解決案を教えてくれる筈だわ。)

早速、若菜は無名へと連絡を行った。
2コール目で無名が電話を手にした。
「はい、無名です。」
「私よ。」

「若菜様、どうなされたのです?
僕に電話するなんて珍しい。」
「実は助けて欲しいの。」
「....何があったのですか?」

若菜は無名にこれまでの事情を話すのだった。


第百四十六話 暴虐のD/それぞれの願い

 

警察署の取調室の中で相模は泊、大門、後藤から聴取を受けていた。

しかし、当初よりも相模の顔色は悪い。

正義が謎のドーパントに襲われて病院にいることを照井から伝えられたからだ。

 

「もう、全て話しただろう?

頼む、彼に会わせてくれ。」

相模の願いを後藤は突き放す。

「いえ、ダメです。

貴方は彼に肩入れしすぎている。

彼に会わせたら逃がす手伝いをするかもしれない。」

 

「そんな事はしない。

正義君もこの状況をずっと悩んでいたんだ。

私はただ恩人でもある彼が心配なんだ。」

「何と言われても貴方をここから出すわけにはいきません。」

冷たい後藤の対応に泊が彼を取調室から連れ出す。

「後藤、ちょっと来い。

大門さん、暫く相模の聴取を変わってくれ。」

「わ....分かったわ。」

 

連れ出された後藤を泊は壁に突き飛ばした。

「いい加減にしろ!これ以上、相模さんを拘束して何の意味があるんだ!」

「意味ならある。

逃走幇助を阻止しているんだからな。」

 

「そんなもの手錠で繋いだり電話で会話させるなり方法はいくらでもあるだろう!

それをせずそれどころか相模さんをここに縛り付けているだけ、こんなんで捜査が進展するわけ無い。」

「なら、お前は相模を出して中島を逃がしたりしたらどう責任を取るんだ!

理由はどうであれ中島はメモリを使いドーパントになった。

そして、相模は協力者になり今の今までドーパントとして活動させていたんだぞ!

"正義を行う警察官"のすることじゃない!」

 

「.....漸く本音が出たな。

後藤、お前にとってこの事件を解決することよりも警察官がドーパントに肩入れしたことが気に食わない。

だから、相模さんに私刑じみた事をしているのか。」

「私刑ではない....だが彼のやったことは悪だ。」

「..........」

互いににらみ合いながらも意見を変えるつもりの無い二人だがここで泊が話し始める。

 

「俺の父親は刑事だった。

だけど、ある事件で犯人に撃たれて死んだ。

俺はその事件を解決するためにも刑事になった。

だから、相模さんの気持ちも分かる。

もし、目の前で親父が殺されそうになっていて...そこにドーパントが現れてて助けてくれたら恩人と思っていたかもしれない。」

「お前......」

「後藤、お前の意見も分かるこれは本当だ。

刑事として民間人か怪物になっていてそれを放置なんかしたくないしすることを選んだ事実にも拒否感はある。

だから、一刻も早く事件を解決するべきなんだ。」

 

「これ以上の被害を出さないためにも....

そして中島さん自身が救われるためにも」

「"救われる?"....それは一体」

二人がそんな話をしていると凛子が走ってきた。

「大変よ!事件の被害者が入院している病院にドーパントが現れたって....」

「何だって!....どうすれば」

泊が悩んでいると後藤が告げた。

 

「病院に向かうぞ。

中島と他の被害者を確保しないといけない。」

「だけど、私達にその権限は無いわ。

今の私達は三課のスリ部門なのよ?」

ドーパントの対応に関しての指揮権は超常犯罪捜査課が担っていた。

だからこそ、勝手な行動は命令違反になると凛子は言ったのだ。

 

「なら、"別のアプローチ"で病院に向かえば良い。」

「アプローチ?」

「窃盗犯を捕まえたのは中島だろう?

なら、その時の状況聞くためにも彼に会う必要がある。

そう、相模さんが指示してくれれば俺達は病院に行ける。

大門、この事を相模さんに伝えてくれ。

泊.....車と何でも良いから自衛のための武器を集めてくれ。

ドーパントと接触した時の対抗策が欲しい。

 

「分かったわ。」「こっちも了解だ。」

そう言うと二人は行動を始めた。

 

後藤も自分のやるべき事をするために行動を開始した。

 

 

 

ドラゴンドーパントが病院を襲う前.....

獅子神の管理するビルの一室にセブンスの幹部と灯夜が集められていた。

自分達が何故ここに呼ばれているのか分からない者達はいない。

呼び出した獅子神を待っている間に会話が行われる。

 

「まさか、アンタらの所が失態を犯すなんて....分かってるの?

ミュージアムから睨まれたら私達は終わりなのよ。」

「お前に言われなくても分かっている!

今、ドラゴンの行方を探しているところだ。

見つけたら"セブンスの始末屋"に処理を頼むつもりだ。」

 

「ほぉ...俺達を頼るなんて相当切羽詰まってるんだな。

だが、高いぞ俺達は?」

「構わない、これ以上の被害が出るよりはマシだ。」

「まぁ、それは良いけど警察の方はどうなの?

超常犯罪課が動き出してるって噂があるんだけど」

「えぇ、ですが問題ありません。

何時も通り揉み消せる範囲内の事です。」

 

「あら?随分と自信があるのね。

まぁ、同じ"警察官"ならば簡単でしょう。」

「問題は今回、ケガをした相手のことでしょう?

灯夜君....その相手について知っていますか?」

 

「詳しくは知らないがミュージアムの最終目的に必要な人物だと聞いた。」

「それは、随分と大変な御仁をケガさせてしまいましたね。

私達はその責任を負って処分されるのでしょうか?」

 

「私は嫌よ。

そんな心中したくないわ。」

「それはみんな同じですよ。」

そう話していると獅子神と水島、白爪に紫米島も現れる。

皆を見渡すと獅子神が言った。

「状況は説明しなくても分かるな?

俺達はヘマをした。

ミュージアムにとってとても大切な御仁に重大な怪我を負わせてしまった。

この失敗だけは早急に取り返さないと不味い。」

 

「なら、失敗を起こした幹部を処理すれば良いでしょう?

ねぇ、玉城(たましろ)。」

「俺に責任を取って死ねと言うのか花盛(はなもり)?」

 

「当然でしょう?

私達は灯夜君に従っているだけで貴方達と仲良くしてる訳じゃないわ。

同じ幹部だけどそれ以上の意味はない。

私達に迷惑がかかるなら切り捨てるだけよ。」

「だとしてもそれを決めるのはお前じゃない"売女"。

灯夜君だ。」

 

「.......ねぇ、アンタ今ここで死にたいの?

私をそんな風に呼ぶなんて」

「事実だろう?

男に尻降って稼いでいるんだからな。」

「殴り合いを見せ物にしなきゃ稼げないアンタよりはマシよ。」

 

「おい、下らない喧嘩はよせ。

話を戻すぞ。

この失態を取り戻すには今ある手持ちの物でも功績でも足りない。

だからこそ、お前達全員を使うことにした。」

「どう言うことでしょうか獅子神様?」

 

「言葉の通りだ。

セブンスと俺で"園咲 来人"様を確保してミュージアムに献上する。

もうそれしか手段はない。

だからこそ、俺が動かせる最大戦力で行く。

だが、それをするには敵の戦力を全員、引き込む必要がある。

つまり、仮面ライダーを全員集めるってことだ。」

「成る程、その為に"ドラゴン"を利用すると?」

 

「あぁ、奴に暴れてもらい仮面ライダーが集まったところで叩き潰す。

そして、守る者がいなくなったら来人様を回収する。」

「ドラゴンの処分はどうするの?

まさか、野放しにする気?」

「いや、仮面ライダーに倒させる。

話を聞いた限りじゃ相当に強くなっているらしいからな。

この際、使い倒す。」

 

そんな計画を話していると部屋に井坂が入ってきた。

「おや?どうやら全員お揃いの様ですね。」

「井坂....何故ここに?」

「冴子君から聞いていませんか?

私もこの狩りに参加させて欲しいのですよ。」

「部外者を入れるわけには行かない。

いくら冴子様の命令でも飲めないな。」

 

「では、私は後に出てくる仮面ライダーの相手をしましょう。

それなら宜しいでしょう?」

「.....良いだろう。

だが、こちらの命令には従ってもらうぞ。」

「えぇ、勿論。

私もこのアダプターを使える相手を探していたので丁度良いです。」

そうして、井坂は黒いアダプターを取り出した。

 

「獅子神....あれは?」

「無名が作ったら井坂専用の強化アダプターだ。

間違っても使おうとは思うなよ。

毒素に殺されるぞ。」

「毒素?」

「このアダプターは私専用でして毒素のカット機能をオフにしてあるんですよ。

そう言えばドラゴンのメモリを使う相手も強化アダプターを使っているとか?」

 

「"通常のアダプター"だ。

お前のアダプター程、強化はされないが毒素の危険性は排除してある。」

「はぁ、まだ毒素の排除なんてしているんですか?

私の姿を見ても毒素は要らないと本気で言っているとは....」

「お前の高説が正しいと言うなら仮面ライダーを倒して証明して見せろ。

そうしたら俺からもミュージアムに一声言っておいてやる。

"ガイアメモリの毒素は有用だった"とな。」

 

「その言葉、忘れないでくださいよ。

では私はこれで....狩りを始める際はご連絡下さい。」

そう言うと井坂はその場を後にした。

 

 

 

現状を聞いた無名は動けないながらどう行動するか思案していた。

(フィリップがケガをした...それも獅子神の管理する組織が起こした失態。

恐らく、ただ事態を終息するだけでは足りないと獅子神は考える筈.....

だとすれば何をする?

フィリップの治療?

サラに話を聞いたら獅子神から美頭を貸して欲しいと連絡があったからそれは問題ないだろう。

だとしたら、次の獅子神の行動は?

どうすればこの失態を取り返せると考える?

....ダメだ情報が足りない。

若菜の願いはフィリップの安全を確保すること話を聞く限りだと翔太郎も傷を負っている。

照井一人では難しいだろう。

ならば、彼らのサポートをすることが若菜の願いを叶える最適解か。

相手は少なくともWを単身で撃破できるドーパントだ。

用心しておいた方がいいな。)

 

無名は隣にいたリーゼに話しかける。

「リーゼ、厄介なことになりました。

フィリップの身に危険が迫っています。

貴方には彼の護衛をして貰いたい。

ドーパントになり空を飛べば貴方単体ならそんなに時間がかからず風都に到着できるでしょう。

風都にいる黒岩と赤矢さんを貴方のサポートに回します。

僕が動けるようになるまでの間、この仕事を頼んでも良いですか?」

 

リーゼは考える素振りを見せると急いで部屋を出ていった。

風都に行く準備をするためだろう。

(.....一応、シュラウドさんにも報告しておきますか。)

無名はシュラウドに電話をかける。

すると直ぐに繋がった。

「シュラウドさん、緊急事態です。

来人君に危険が迫っています。

僕の部下が彼の警護に向かいますが用心の為にも貴女に協力していただいたいのですが....」

「..........」

「シュラウドさん?」

 

「無名....悪いけど今の貴方には"協力"できない。」

「それはどう言うことですか?」

「貴方自身が一番分かっているんじゃないかしら?

"もう1つの力"についてね。」

「....エクストリームの事ですか?」

「そうよ。

貴方がエクストリームに到達するにはエクストリームメモリを使う以外にはクリスタルサーバーを直接吸収するしかない。

問題は何時、吸収したのか?

映像で見る限り相当な大きさだったから偶然手に入れられたとは考えにくい。

となると、1つしかない。

Wがエクストリームに覚醒した日よ。」

 

「............」

「その日に貴方もクリスタルサーバーを利用してエクストリームに覚醒した。

....問題は私にその記憶が無いことよ。

Wがエクストリームに覚醒した時、私もその場にいた。

でも無名....貴方がいた記憶は無い。

他の記憶はしっかりしているのに貴方に関する記憶だけ無いのよ。

それは不自然だと思わない?」

「それは.....」

 

「私がその理由に納得出来るまで、貴方に手を貸すことは出来ない。

来人の事はこっちで勝手にさせて貰う....それだけよ。」

「待ってくださいシュラウドさん!」

無名の制止の声を無視して電話が切られた。

 

(間違いない。

シュラウドがゴエティアの存在に気づき始めている。

このままだと彼女との協力関係が破綻してしまう。

ミュージアムに隠れて行動を起こす以上、彼女の協力は必須.....全て打ち明けるべきか?)

 

【随分と悩んでいるな無名?】

窓に写るゴエティアが無名に話し掛ける。

 

「何のようですか?

僕には今、時間が無いんですが...」

【シュラウドに私の事を話すだけ無駄だ。

何故ならその瞬間に本棚に封印した過去の記憶が彼女に流れ込むことになるからな。】

 

「彼女の記憶?」

【何百と繰り返した世界で何度もシュラウドも会ってきた。

時には敵として時には味方として.....その時に感じた感情や記憶は私の書き換えにより封印された状態が続いている。

だが、キーワードがあればその記憶を戻すことが出来るんだよ。

だから、私の事を彼女に話したら彼女の精神がどうなるか私にも分からない。

何せ数百通りの記憶が一斉に流れてくるのだからね。

良くて発狂.....悪くて廃人かな?】

 

「貴方は......クソッ!」

【制約がある方がゲームは楽しいだろう?

さぁ、どうする無名?手札は少ないぞ?どう立ち回る?どう動かす?私に驚きと楽しみを与えてくれ。

あっはっはっは......】

窓に写ったゴエティアの顔は消えて無名の顔へと戻った。

 

「貴方の思い通りにさせてたまるか。」

無名はそう言うとベッドから無理やり起き上がり行動を始めるのだった。

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