もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百四十八話 動くH/ヒーロと正義

 

後藤が意識を取り戻すとそこにはドラゴンドーパントが立っていた。

「目を覚ましたか?」

「お前は....」

 

「じっとしていろよ?お前は大事な餌なんだ。

仮面ライダーを釣るためのな。」

「餌だと?」

「仮面ライダーは市民の味方だ。

だからこそ、このシチュエーションなら必ず現れる。

お前を助けるためにな...」

 

「ふざけるな俺は警察官だ。

死ぬ覚悟だって出来ている....それに市民を守るのは"仮面ライダーではなく警察の義務"だ。

その為に俺達は多数の権利を与えられている。

それを勝手に背負われる道理はない。」

 

後藤にとっての正義とは権利。

他者を助けたいのならそれ相応の力と権利を持たなければならない。

でないと余計な犠牲な必要のない血が流れる。

だからこそ、後藤は風都を守る仮面ライダーやボランティア紛いの行動をするドーパントを擁護する刑事を嫌っていた。

 

「ドーパントを倒せる存在だから、人間よりも強い力を持っているから、そんな理由のために一般市民に余計な責任や重責を背負わせていい道理にはならない。

それは警察の役目だ。

だからこそ、警察官は市民の味方と名乗れるんだ。」

 

「成る程、それがお前の哲学か。

だがなそんな"つまらない考え"なんてこの力の前では脆くも崩れ去る。

良いか?教えてやる。

この世界を作っている物は"力"だ。

権力も力、軍も力、金も力、そしてこのガイアメモリもな。

お前の考えを突き通すにも力がいる。

そして、力には上下がある。

弱い力の持つ主張なんて強い力を持つ者に簡単に潰される。

お前ら警察が仮面ライダーに頼っているのは弱いからだ。

それだけなんだよ。」

 

「貴様っ!....」

「ふん、雑魚は雑魚らしくこの後のショーを黙ってみているんだな?」

「ショーだと?」

「あぁ、どうやら来たみたいだからな。」

そんな話をしていると窓ガラスを割りロストドライバーを付けたヒーロードーパントが二人の前に現れた。

 

「お前は!」

「チッ、ハズレの方か。」

「刑事さんを解放しろ。」

 

「俺が呼んだのは仮面ライダーでお前じゃない。

さっさと失せろ。」

「そうはいかない....僕は目の前の傷付いている人を救いたくてこの力に手を伸ばしたんだ。

例え、間違っていても...僕はもう迷わない。

闘えなくても僕は人を救いたい!

僕は、仮面ライダーだ!....刑事さんは必ず助ける!」

 

そう言って飛び上がった正義にドラゴンドーパントは衝撃波を放つ。

それを壁を飛び回避すると後藤に向かって手を伸ばした。

「それを許すと思うか?」

ドラゴンドーパントは強化アダプターを身体に挿すと姿が変わり赤熱したドラゴンドーパントへと変わった。

「くっ!でも避け続ければ....」

「良いのか?お前が避けたらあの刑事は黒焦げになるぞ?」

「!?」

 

そう言うとドラゴンドーパントは強烈な熱を周囲に思いっきり放出した。

コンクリートが歪む程の熱が放出された。

辺りが白い煙で包まれる中、後藤を抱き抱えるように正義は彼に覆い被さっていた。

「ほぅ、自分の身体を盾にして全ての熱を受けきったのか。

しかもあの刑事の身体にダメージがないように彼の周囲の熱まで受けるとは....だがそれは失敗だったな。」

 

「うっ.....あ....」

正義は全身で熱を受けた影響は背中が焼け爛れている。

最早、話すことすら難しい。

そんな正義を後藤から引き剥がそうとドラゴンドーパントが手を掛けるがビクともしない。

 

「まだ、耐えられるのか?

面白い....どこまで行けるのか俺が確かめてやる。」

ドラゴンドーパントは両腕を赤熱させるとその腕で正義を殴り付けた。

殴られる度にドーパント化して強化された皮膚が焦げ水分が蒸発する音と強い打撃の音が響く。

「ぐっ!...がっ!....うっ!」

殴られて正義は呻き声を上げるがそれでも後藤を離すことはない。

 

自分が守られながら傷つけられていく光景に後藤が叫ぶ。

「もういい!逃げてくれ!このままじゃ君が死んでしまう!」

 

悲鳴に近い言葉に正義は優しく答える。

「やっと、見つけたんです。

僕のヒーローとしての意味を....だから...迷いません。

自分の正義を!」

 

戦えない自分でも人を救える力がある。

例えこの力が正しくないものでも自分が正しくあれば、あろうとすれば良い。

迷いを振り切った正義の覚悟はまさにヒーローとして相応しかった。

 

正義の覚悟に答えるようにヒーローメモリの力が上がる。

彼の背中を覆うようにバリア状のエネルギーが展開される。

それを殴るとドラゴンドーパントの腕に痛みが走った。

だが、その痛みで逆に喜んでしまう。

「面白い....只の丈夫なサンドバッグの癖にやるじゃないか。

もう、手加減は止めだ。

俺の攻撃とお前の防御....どちらが強いのか勝負だ。」

 

ドラゴンドーパントは今までセーブしていた力を全解放する。

強化アダプターにより三倍まで強化されたメモリの出力によってオーバーヒート気味だったが長時間、ドラゴンメモリを使うことでそれを克服し全ての力を解放しても肉体をとどめておける程、コントロール出来るようになっていた。

 

全身が赤熱すると中心部が高温の熱により黄色く発光する。

そして、そこから放射状に広がるように赤い身体が姿を現した。

「さぁ、俺の本気の攻撃を受けてみろぉぉぉ!」

ドラゴンドーパントの拳が正義の展開したバリアに突き刺さる。

爆弾が爆発するような音と共に正義の身体から骨が軋む音が聞こえる。

「これすら耐えるのか....面白い!面白いぞぉぉぉ!」

 

ドラゴンドーパントは歓喜に震えたまま一心不乱に殴り蹴り続けた。

その一撃一撃がバリアに当たる度に正義の身体を蝕む。

軋んでいた音は骨が砕け内蔵が潰れる音へと変わっていく。

彼の力が無くなっていくことに気付いている後藤が叫ぶ。

 

「もう止めろ!本当に死んでしまう!」

「止めさせたかったら力ずくで止めて見せろ!

警察官としての権力って奴なんだろ?

ほら、早くやってみろよぉ!」

ドラゴンドーパントは笑いながら殴り続ける。

 

後藤は正義の腕を引き剥がそうとするが動く気配はない。

そんな中でもドラゴンドーパントの猛攻により正義の肉体にダメージが蓄積されていく。

身体が、裂けて血が吹き出すが...それでも後藤を離そうとしない。

「もう止めてくれ....俺はお前を捕まえようとしたんだぞ?

お前の恩人である刑事に手錠を掛けたんだぞ!

何でこんな俺を守ろうとするんだ!」

 

その問いに正義は絶え絶えの声で答える。

「そ...れが....ヒー...ロー..だ....か....ら」

「!!」

 

「終わりだぁぁぁ!」

ドラゴンドーパントの右腕が正義のバリアを砕いた。

そして、そのまま腕が彼の心臓に向かい進む。

「やめろぉぉぉぉぉ!」

後藤は叫ぶがそれにドラゴンドーパントを止める力はない。

 

 

彼を止めたのは.....

 

『「JOKER EXTREAM」』

 

彼等を助けに来た仮面ライダーの一撃だった。

 

ドラゴンドーパントを吹き飛ばしたWが二人に駆け寄る。

「おい!無事か.....!?」

『こっ....これは』

 

Wが来たことにより気が抜けたのか正義が力無く倒れるとメモリが砕けて身体から排出される。

すると、元の人の姿に戻るが背中は焼け爛れて所々、出血している。

明らかに重症であった。

 

「これはマズイ!....どうするフィリップ。」

『エクストリームになるよ翔太郎!』

そう言うとフィリップエクストリームメモリを呼び出してドライバーに装填すると展開しエクストリームへと変身が完了した。

 

そして素早くプリズムビッカーにメモリを装填していく。

 

「LUNA,CYCLONE,JOKER,METAL」

「「「MAXIMUM DRIVE」」」

 

『「BICKER SHINECUBE(ビッカーシャインキューブ)」』

 

プリズムビッカーから金色の光が正義を包み込むと出血していた血が止まり顔色が少し良くなった。

『あくまで応急処置だ早く彼を病院に』

「近くに照井刑事もいる筈だからよ。」

「分かった....後は頼む。」

後藤がそう言って正義を抱えると部屋から出ていった。

 

そして、Wは吹き飛ばしたドラゴンドーパントへ向き直った。

ドラゴンドーパントは立ち上がると蹴り上げられた首を回す。

「ヒーローは遅れてやってくるか?

それにしては随分と待たせてくれたな。」

「この野郎.....」

『落ち着け翔太郎、相手のペースに乗るな。」

 

「お前が遅かったせいで偽物の仮面ライダーは彼処までボロボロになったんだ。

全て、お前が遅く弱いせいなんだよ。」

悪びれもなく言うドラゴンドーパントに翔太郎の神経は逆撫でされる。

怒りからプリズムビッカーを握る力が強くなる。

『翔太郎....』

「分かってるよフィリップ。

あんなのは単なる挑発だ....

それに一番キレてるのは俺じゃなく"アイツ"だからな。」

 

翔太郎がそう言うとコンクリートの壁が砕けて外からアクセルトライアルが姿を現した。

「お前も仮面ライダーか?」

「俺に質問をするな....お前の問い何ぞに答える義理はない。」

 

怒りを言葉に乗せた照井がドラゴンドーパントに告げるとWの隣に立つ。

「照井....中島さんは」

「心配要らない。

後藤と一緒に俺が病院に連れていった。」

『成る程、だから最初からトライアルなのか。』

「そう言うことだ。」

 

「ふん、数が増えようと所詮は雑魚だろう?

真の力を使いこなしている俺の敵ではない。」

「フィリップ....悪いが」

『分かっている今回は僕が"抑え"に回る。

君は全力で暴れてくれ。』

「助かる....行くぜ照井。」

「......あぁ。」

 

 

翔太郎は怒っていた。

正義とフィリップを助けられなかった自分に...

そして彼をこんなにあわせたドラゴンドーパントに.....

その怒りがドライバーを通してフィリップに伝わる。

 

照井も怒っていた。

一時的とは言え預かっている部下を危険な目に合わせ

あろうことか彼を助けるために民間人が死にかけている。

こんな現状を作り出した自分とドラゴンドーパントに怒りを抱えていた。

 

両者の怒りの矛先が噛み合い、ただ目の前の敵を見つめている。

今の二人は云わば"決壊寸前のダム"だ。

いつ壊れてもおかしくない怒りを理性でギリギリ押し止めていた。

 

そんな二人がドラゴンドーパントに向かって言い放つ。

「さぁ、お前の罪を数えろ。」

「....振り切るぜ。」

 

何時もと違い静かな宣誓はまるでその後の結末を暗示しているようだった。

二人の怒りは限界に達して一気に解放された。

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