もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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若菜がフィリップの居場所に気付けたのは無名から報告を受けていたからだ。

「そこに、フィリップ君はいるのね?」
「えぇ、彼も仮面ライダーです。
人を助けるためならまた無茶をするでしょう。」

「そう....ありがとう無名。」
「どうするつもりですか?若菜様。
まさか、そこに行くつもりじゃないですよね?」

「もう、フィリップ君を傷付けさせたくないのよ。」
「それはミュージアムの意向に反する結果となるかもしれません。
獅子神の事です貴方に説得されても諦める可能性は低いですよ。」

「彼も僕もサラもワードメモリの誓約から解放されています。
現にそれで記憶を失っていたクリム・シュタインベルトも蛮野の記憶を取り戻しました。
彼は力と出世に貪欲です。
貴女のメモリの特性を知っている以上、手加減もされないでしょう。」

「分かってるわ。
獅子神の作戦を採用したのは他でもないお姉さま(冴子)だもの.....私が言ったところで返り討ちに遭うかもしれない。」
「なら、僕達に任せれば良い。
貴女が傷付く必要はない。」

「無名、私はフィリップ君に会う資格のある人間でいたいのよ。
これは、その為の第一歩....
私はもうガイアメモリに関わりたくない。
フィリップ君の敵になるくらいだったら...」

「それが....貴女の選択ですか?」
「えぇ無名、私はミュージアムを.....」

その後の言葉を聞いた無名の声は悲しさに溢れていた。


第百五十話 過去のL/欲しかった力

 

フィリップを捕まえようとしたドーパントにエネルギー弾が直撃し吹き飛ばされる。

その方向を見るとクレイドールドーパント(若菜)が腕の砲台を向けていた。

 

「フィリップ君に触れないで....」

「誰よ?アンタ。」

その問いに白爪が答える。

 

「若菜様....どうして我々の邪魔をなさるのですか?」

「!?」

若菜の名を聞いてセブンスの幹部は全員驚いた。

自分達を指揮する獅子神を使うミュージアムの幹部、園咲若菜の名前と顔は聞き及んでいたからだ。

 

だが、ドーパントとしての姿を知らなかったからこそ無礼な言い方をしたことに少し狼狽える。

「彼への手出しは止めてちょうだい...これはミュージアムの幹部としての命令よ。」

「それは出来ませんね。

この命令を了承したのは他でもない同じ幹部の園咲冴子様です。

私達も幹部からの了承を受けてこの作戦を実行していますので.....」

 

「どうしても引く気はないのね?」

「えぇ、我々は獅子神様の為に任務を全うします。」

「なら、貴方達には少し"休んで貰うわ"。」

「それはどういう....」

白爪がそう尋ねようとするとセブンスの幹部が次々と倒れ始める。

「どうした?」

「わか....りま...せん...か....らだ...が..きゅう...に....」

 

その姿を見て白爪は仲間の一人の能力を思い出す。

"黒岩の毒"(コブラメモリ)ですね?

まさか、無名一派が若菜様についている訳ですか。

全員物陰に隠れろ!狙撃されている!」

その言葉と共に生き残ったセブンスのメンバーが壁に隠れた。

しかし、紫米島は身体を煙に変えると一気に近付いた。

「煙なら弾丸は効かない!

申し訳ないが若菜様、少し眠っていて貰いますよ。」

 

そう言って近付く紫米島にの目の前で爆発が起こると紫米島はメモリ解除され意識を失った。

「黒岩がいるなら私がいることも想定するべきだったな。」

そう言いながら隠れていた赤矢(アサガオドーパント)が現れる。

「チッ!全員集合と言うわけですか。

面倒ですが水島さんに二人をお任せするしかありませんかね。」

 

水島は獅子神によってもしもの時の為に背後に控えさせていた。

白爪は早速、耳につけた通信機を起動して水島を動かそうとする。

「水島さんトラブル発生です。

直ぐこちらに来て下さい。」

しかし、白爪の通信に水島が出る事はなかった。

 

その答えを赤矢が言った。

「水島ならここには来ないぞ.....

と言うより来れないと言う方が正しいが」

「どういう事ですか?」

「NEVERの技術を元に酵素を改良し作り上げた兵士らしいが、如何せん痛覚を無くしたのは失敗だったな。

今頃、鉄骨が突き刺さり磔の状態になっているだろう。」

 

「......成る程、リーゼさんを使ったのですね?」

「あぁ、無名が獅子神なら後詰めと言って水島を何処かに潜ませている筈だと言っていたからな。

それが分かれば後は獅子神をプロファイリングして行動パターンを予測し確率の高い場所にリーゼを向かわせただけだ。」

「"犯罪心理のスペシャリスト"である貴方ならばそれぐらいの予測など簡単なのでしょうね。」

 

「まぁ、それを仕事にしているからな。

因みに黒岩を狙おうとしても無駄だぞ?

奴には狙撃して貰った後、別の場所に移動して貰っているからな。」

その言葉を聞いた白爪は周りを見て今の状況を分析した。

(人数だけならまだ我々の方が多いでしょうが現状が不利すぎますね。

先程の狙撃で精神攻撃が出来るメンバーを"優先的"に狙われ残っているのは直接戦闘力の高い者ばかり....黒岩さんの狙撃に赤矢さんの幻覚剤入りの爆弾....そして限定的ではあるが不死身の力を持つ若菜様.....戦いを続けても負けるのは明白.....しかし)

 

「だからと言っておめおめと帰るわけにも行かないんですよ。」

白爪は変化させたチェーンソーを構えた。

(獅子神様が戻るまでこの場を維持できれば...まだ勝機はある。)

獅子神とレオメモリが揃えばこの程度の苦境は打破できると考えた白爪とセブンスの残りメンバーは無名の部下と若菜に挑むのであった。

 

 

「ハァハァハァ.....」

若菜は肩で息をしながら目の前の光景を見つめていた。

獅子神の部下は皆、地面に倒れ付している。

無名の部下と共にこの苦境を乗り切ったことを感じるとメモリを抜いてフィリップの元へ向かった。

「フィリップ君!無事なの?」

「若...菜さん...どうして?」

 

「言ってくれたでしょ?

私がミュージアムの幹部でも関係ないって...私も同じよ。

貴方が仮面ライダーでも私が好きなフィリップ君には変わりが無いもの....」

「若菜さん....」

「フィリップ君、立てる?

早くここから逃げないと....」

 

そうしてフィリップに手を貸そうと若菜がしているとそこに獅子神が驚いた顔をして現れる。

「これは....一体どういう事だ?

それに何故、若菜様がここにいらっしゃるのです?」

「私はフィリップ君を....仮面ライダーを助けるって決めたの。

だから邪魔をしないで」

 

自分が想像してなかった答えを聞いた獅子神は素に戻り若菜に尋ねる。

「正気か?それはミュージアムの目的に反する行為だぞ!」

「そんなの関係ないわ!私は私よ!」

「バカな事を!コイツらを助けたところで何になる?

ミュージアムを裏切るつもりなのか?」

 

「.....それでも私はフィリップ君を救いたいのよ!」

Claydoll(クレイドール)

若菜はクレイドールドーパントへ変身すると右手の砲台を獅子神に向ける。

「お父様からの罰は受けるわ...だからここは退きなさい獅子神。」

 

しかし、脅されている筈の獅子神は静かに若菜を睨み付ける。

「何時もそうだ....元から力を持って産まれた奴等はその力が当たり前だと勘違いする。

どんな我が儘も力があれば叶うと勘違いを起こす。」

獅子神は自分の過去を思い出す。

 

獅子神家で養子として入った俺にとって失敗は死と同義だった。

完璧でも足りない常に完璧以上の成果を出さなければ罰を受ける人生を続けていた。

獅子神の本家の奴等はそんな俺を嘲笑い、オモチャにした。

偶然、本家に産まれただけの存在がそれを自分の力だと考え子供の頃から俺を殴り蹴る行為を続けていた。

 

だが、俺は反撃できなかった。

俺の唯一の肉親である母親がいたからだ。

養子と言う体ではあるが俺の身体には本家の血が流れている。

女好きの当主がメイドだった母親を襲って出来た子供が俺だった。

だが、そんなスキャンダルが表に出たら会社にも被害が出る。

 

だからこそ、俺を養子として本家に入れることでその問題を解決したんだ。

親を交通事故で失くしたと言うバックボーンを勝手に付けられて。

俺は獅子神家にとってただの汚点でしかない。

だが、それでも俺がここにいたのはお袋を一人にしておくことが出来なかったからだ。

 

お袋もそれが分かっていて虐められる俺を見つけると隠れて治療をして俺に何度も謝ってくれた。

「ごめんね....貴方は悪くないのに...ごめんね。」

俺は母親に恨みはなかった。

この味方のいない獅子神家にとって唯一の理解者であり一人の肉親だったからだ。

(いつか....見返してやる。)

優秀な自分が当主に認められれば虐めもなくなりお袋も助けられる。

 

子供ながら本当にそんな事が出来ると俺は本気で信じていた。

だが、現実は残酷だった。

お袋は、首を吊って死んだ。

遺書が置いてありそこには「獅子神家の金を使い込んだ事を詫びて死ぬ」と書かれていた。

だが、お袋がそんな事をすると思えなかった俺が調べると直ぐに答えが分かった。

 

何てことはない....本家のバカ息子持っている会社の経営が傾いて...そいつが本家から金を盗んだのだ。

お袋はそれを隠すために犠牲にされた。

ご丁寧にお袋には生命保険がかけられており、その金を使いバカ息子の会社は救われた。

酔っ払ったバカ息子が言った言葉を俺は忘れない。

 

「邪魔な女も殺せて俺の会社も復活した。

やっぱり俺って頭良いよなぁwww」

 

あのメイドが俺のお袋だと知らないバカ息子はそれを自慢話のように俺に語って聞かせた。

 

それで気付いたんだ。

優秀でいるだけじゃ駄目だ。

最後に必要なのは力だ....力があればお袋も救えてこんな地獄もぶち壊せた....だが力を持たずただ優秀でいようとした俺は結局全てを失ったんだ。

それから直ぐに俺はミュージアムの被験者としてメモリに触れる機会が訪れた。

 

当主からすれば俺を殺して全てを無かった事にするために、

生け贄として出されたのは分かった。

だが、俺はそう思わなかった。

ガイアメモリ....地球の記憶を宿した力の塊。

俺に足りない圧倒的な力...それを手に入れられるのなら自分の命などどうなっても構わないと思った。

 

コンクリートで囲まれた部屋に俺は連れてこられて目の前に置かれたメモリを見つめる。

(力が欲しい...もう誰も俺から奪えない様な圧倒的な力が!)

その思いにメモリも答えてくれた。

 

一本のメモリに俺は引き寄せられる。

そして、そのメモリを手に取り俺はレオドーパントになった。

ミュージアムの幹部として正式に認められ獅子神家に戻った俺はメモリの力を使い獅子神家に居る者を全て消し去った。

 

俺とお袋を見捨てた当主の首を千切り、お袋の生命保険を使って立て直した会社にふんぞり返るバカ息子は両手足を千切り取ってから重力波で潰して殺した。

俺のお袋を助けなかったメイドと執事は一ヶ所に集めて俺の作った太陽で消し炭にした。

 

お袋を傷付けた存在、俺を侮った奴等、虐めた奴等はその家族ごと殺してやった。

(この力があれば....もっと早く手に入れていれば)

そんな心の感情を振り払うように全てを無に返すと俺は決めた。

「もう、俺の手にあるものは何も奪わせない。」

 

俺はそれを果たすためにこれまで生きてきた。

だからこそ若菜の行動が全く理解できない。

(俺が....必死になって求めた物をこの(若菜)は全て持ってるのに何でこんな簡単に捨てられるんだ?)

理解できない感情は怒りに変わっていく。

(俺がこの(若菜)の様に力があったらお袋を失わずに済んだ筈なのに...そんな力を何故捨てようとするんだ!)

 

心に蓄積された怒りと後悔は獅子神の心を蝕んでいく。

「....なよ。」

小さい言葉を若菜に投げ掛ける。

「何?」

「....けるなよ。」

 

 

そして、蓄積された怒りは限界に達し....

 

「ふざけるなよこの小娘がぁぁぁ!」

 

「Leo」

乱暴に起動したメモリをドライバーに捩じ込むと獅子神はレオドーパントへと変身する。

怒りの感情がレオメモリの力を増大させる。

 

「そんな子供みたいな言葉で救えると思ってんのか!

その世の全ては力だ!お前みたいな奴が...始めから力を持っている程度の女が....」

「俺から大事なものを奪おうとしてんじゃねぇよ!」

 

獅子神は怒りのまま腕を振るうと発生した衝撃波がクレイドールを粉々に砕き近くにいた赤矢も吹き飛ばされる。

獅子神が地面に手を突っ込むと地面が隆起し赤矢と若菜は地面に吸い込まれていく。

液状化現象と呼ばれる大地震によって起こる現象を獅子神が意図的に起こし若菜は下半身が完全に沈み赤矢は爆弾を生成する右腕が地面に沈んでしまった。

 

地面から腕を抜いた獅子神は怒りのまま赤矢の肩を握り潰す。

「ぐぁぁぁぁ!」

痛みから暴れる赤矢の顔面に拳を打ち付ける。

それを止めるように黒岩が毒の弾を獅子神に向けて撃ち込むが獅子神の近くに来ると弾丸が停止し地面に落ちた。

「....そこか。」

獅子神は腕に込めた力を弾が発射された方向へ飛ばす。

 

違和感を覚えた黒岩は狙撃に使っていた建設途中のビルから飛び降りるとビルの中心がネジ曲がり90°になるとそのまま折れてビルが倒れてしまった。

目先の障害が無くなり意識を失った赤矢から獅子神が手を離すと若菜を無視してフィリップに近付く。

 

「やっ...止めなさい獅....」

獅子神は足を振り上げて若菜を踏みつけて砕く。

「黙っていろ....お前の相手をしてる暇はない。」

そう言ってフィリップに触れようとする手を雷を纏ったデビルドーパントが止めた。

 

「...どいつもコイツも俺の邪魔をしやがる!」

獅子神は怒りのままデビルドーパントを殴り付けようとするがそれを回避し後ろに回り込むとデビルドーパントは角に貯めた電気を獅子神に向けて放った。

それを獅子神は手に生み出した太陽を放つと電気がそこに向かって飛んでいく。

「お前の力は知っている....電気を操り雷の速度で動けるんだったか?

だが、その電気も俺に当たることはない。

お前に俺を止める程の力は無い!」

 

獅子神はそう言ってフィリップに触れようとすると隣にいた翔太郎が獅子神の手を掴んだ。

「翔....太郎?」

「お前...まだ邪魔をするのか?」

しかし、その問いに翔太郎は答えない。

疑問に思った獅子神が翔太郎を良く観察する。

「!?...お前、意識を失ったままなのか?」

 

翔太郎は意識を失ってもフィリップを守るために行動しようとしていたのだ。

その姿に獅子神は自分を守ってくれた母親の影が重なる。

「違う!お前はお袋とは違う!俺の邪魔をするのなら全てが敵だ!」

翔太郎の手を振り払うと首を掴み右腕を握る。

獅子神の握った右腕にエネルギーが貯まる。

 

「お前の存在は目障りだ....ここで殺してやるよ。」

「やっ止めろ!翔太郎!逃げてくれぇぇ!」

フィリップの叫びが空しく響くが意識の無い翔太郎には届かない。

獅子神は右腕に込めた力ごと翔太郎の心臓に向かって振るった。

並みのドーパントでも軽々と殺せる獅子神の拳が身体に当たる音が響く。

 

そして目の前に広がったのは........

 

 

翔太郎の身代わりに獅子神の拳を受けたデビルドーパントの姿であった。

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