「申し訳ありません....作戦は失敗しました。」
フィリップを捕獲できなかった獅子神は園咲邸で琉兵衛と冴子にそう報告した。
「そうか....現状の報告をしてくれ。」
「セブンスのメンバー、そして私の部下が若菜様と無名の部下と交戦し多大な損害を受けました。
暫く、組織運営に支障が出るかと思います。」
獅子神からの報告に冴子が毒づく。
「全く、若菜も余計なことをしてくれたわ。」
「獅子神君。若菜は今、何処にいるのかね?」
琉兵衛の問いに獅子神は困ったように答える。
「それは....分かりません。
仮面ライダーと共に姿を消しました。」
そこまで話すと部屋に無名が入ってきた。
「失礼します....おや?皆さんお揃いのようですね。」
「貴様っ!今さらどんな面を下げてここに来たんだ!
このミュージアムの裏切り者めっ!」
「裏切り者?"私"は若菜様のご要望を叶えただけです。
若菜さまもミュージアムの正式な幹部でしょう?
ならば、彼女の願いを叶えるのもミュージアムに貢献することだと考えたまでです。」
「白々しい嘘を吐くな!....ここでお前を始末してやる!」
獅子神はドライバーを腰につけるとメモリを構える。
その姿を見た無名は溜め息をつく。
「はぁ、琉兵衛様申し訳ありませんが少しお時間を頂いても?
貴方に話したいことがあるのですがこの木っ端の相手をしなければいけませんので....」
「.....良いだろう。
二人とも戦うことを許可する。」
「ありがとうございます。
そんなに時間はかけませんのでご安心を....」
無名はドライバーを着けるとメモリを起動した。
「Leo」
「Demon」
両者がドーパントへ姿を変えると無名が言った。
「ここを汚すのは好みじゃありませんね。
場所を変えましょうか。」
そう言うと獅子神と共に黒炎で作り出したゲートに二人は消えるのだった。
風都近郊にある工場跡地に飛ばされた無名と獅子神は地面に着地する。
先制したのは獅子神からだった。
「死ねぇぇぇ!」
手に生成された光球を無名に向かって投げ付ける。
それを無名はゲートを利用し海へと逃がした。
「おやおや?まるで小型の太陽のようだ.....
レオメモリを完全に使いこなせているようですね獅子神。」
「黙れっ!俺の邪魔をする者は誰であっても生かしておかない。」
獅子神はそう言うと自分を深めた周囲に強力な重力波を発生させる。
仮面ライダーと対峙した時に放った重力波と違い相手を殺すつもりで放った力は周囲の建物や廃材をプレスする。
その攻撃を受けた無名は強力な重力により片膝を付く。
だが、口から出る言葉は穏やかなものだった。
「ほぅ....この姿で指一本動かせないとは大変興味深い。」
その余裕な声が更に獅子神の怒りを煽る。
「貴様っ!貴様貴様貴様貴様ぁぁぁぁ!」
獅子神は両手を上空にあげるとそこの空間がネジ曲がりその空間で急速に核分裂が起こり始める。
そして、自分の身体よりも大きな光の球を生み出した。
「素晴らしい....この熱量、本物の太陽と大差がありませんね。
だが、これを落とさせたらこの箱庭が壊れてしまう。
それは不味いですね。」
そう言うと無名は静かに"立ち上がると"呟いた。
「エクストリーム」
すると、デーモンドーパントの姿が変わり胸に瞳のように輝くクリスタルサーバーが現れる。
そして、獅子神の構える攻撃に手を向ける。
「DIMENSION,ERASE起動....いやただ能力を発動するだけでは面白くないな。
ここは左 翔太郎に習うとするか」
【
無名がそう呟くと獅子神の頭上に黒い空間が現れ、獅子神の力を全て飲み込んだ。
「なっ!貴様何をした!」
「空間ごと存在を消したんですよ。
ついでに煩わしい重力波も一緒にね...では次はこちらの番です。」
【
無名の周囲の地面から無名がこれまで生み出した武器が現れる。
そして、そこを中心として黒炎が発生すると人の姿を型どりその人形が武器を抜き取った。
「行け.....」
その言葉と共に数十体の人形が獅子神に向かう。
その人形の攻撃を防ごうと獅子神は重力波を発生させるが効果無く獅子神の腕に切り傷がつけられる。
「ぐっ!」
「それは黒炎の能力を持った人形です。
貴方の能力でも縛れません。」
「なら、破壊するまでだ!」
獅子神は強靭なパンチで人形を吹き飛ばした。
吹き飛ばされ黒炎となり散らばった場所にまた武器が現れるとそこから黒炎の人形が生成され増える。
「言ったでしょう?黒炎の能力を持っていると....
散らされた炎が別の場所に燃え移り数を増やすだけです。
貴方に勝ち目は無いんですよ。」
無名の言葉に獅子神は怒る。
「俺とレオメモリは最強だ!
お前のチンケなメモリに負けることなんて無いんだよ!」
獅子神の言葉にレオメモリも答えて更に力が増大する。
「持ち主の感情....プライドによって強化されるメモリ。
レオメモリはやはり強力ですね。
特に貴方のようにプライドが普通の人間を優に越えるタイプなら尚更、その効果は高い。
小型の太陽を生成できるだけ強化出来るとは素晴らしい自己暗示能力です.....しかし、それ故に弱点となる。」
【
無名が背後に出現させたゲートに入ると獅子神の背後から出現した。
「何っ!」
「人形よ....捕えろ。」
無名の言葉に従い黒炎の人形が獅子神を拘束する。
能力を使われ吹き飛ばされても直ぐに集まり両手足と胴体に組み付き数百体に増えた人形により獅子神の動きを完全に停止させた。
「はっ、離せ!」
【
獅子神の頭に触れると獅子神の身体が急に拒否反応を及ぼす。
「俺に触れるなぁぁぁぁ!」
獅子神から衝撃波が発生すると黒炎の人形を全て吹き飛ばした。
そして、触れられた頭を抑えながら獅子神が吠える。
「無名っ!俺に何をしたぁ!」
「知りたいのなら殴ってくれば良い....それとも恐ろしくて殴ることすら出来ないか?」
「ふざけるなぁ!」
獅子神は何時ものように重力波を無名に浴びせようとするが発動しない。
それならばと小型の太陽を作り出そうとするが何も反応がなかった。
「何故だ?何故答えてくれない!」
「その答えは君が一番分かっているんじゃないのかい獅子神?」
無名は悠然と獅子神に近付いていく。
まるで、散歩するようにゆっくりと...それは戦場では場違いなほど落ち着いた歩みだった。
「来るな....」
「自分の自尊心が高ければ高い程、強くなるレオメモリ。
つまりそれだけ使用者の精神状態に作用されるメモリと言うことだ。」
「来るな!来るな来るなぁ!」
「逆に言えば精神に作用するメモリの攻撃にはめっぽう弱いとも言える。
ライアーメモリの一件からもその弱点は露呈していた。
まぁ、ある程度の対策は取っていたみたいだが....私のこの攻撃を防げる程では無かったらしいな?」
「来るなぁぁ!」
「"テラー"をベースに多数の精神に作用するメモリを使った攻撃を君に当てた。
今、私の姿は君にどう見えているのだろう?
恐れに嫌悪感、悲しみに不安...そしてトラウマ、様々な感情が君から見て取れるよ。」
「は....はっ!...うっ!....」
獅子神は胸を抑え過呼吸になった自分を落ち着けようとする。
「無駄だ...そんな事をしても意味はない。」
そして、無名が獅子神の目の前まで来るとレオメモリがドライバーから強制的に排出され元の姿に戻る。
「うっ!うげぇぇぇ!オボォっ!」
獅子神は地面に向かって吐きながら身体の震えを抑えようと必死に両手で支える。
「どうやら、メモリにも拒否されたようだな。
今の君にレオとしての威厳は無い。
只の恐怖に屈した人間だ....私が近付くだけでその反応だ。
もし、触れたら...どうなるのかな?」
無名は獅子神の顔に優しく手を触れた。
その瞬間、これまで耐えていた獅子神の心が限界を向かえる。
糞尿を撒き散らしながら奇声を上げると両手を振るいながら逃げるように走り出すと意識を失った。
その姿を哀れに見ながら無名は変身解除を行う。
「やはり、脆いな人間はこの程度の負の感情で壊れてしまうなんて………」
そう言うと無名は倒れている獅子神を無視して園咲邸へ戻るのであった。
園咲邸に戻った無名は琉兵衛の元に訪れた。
「おや?冴子様がいらっしゃいませんが....」
「冴子には用を申し付けて井坂の所へ向かわせたよ。
不服だが今は私の所よりも安全だからね。
それよりも折角の昼下がりだ一緒に紅茶でもどうかね?」
「"ゴエティア"」
そう言って紅茶を差し出してくる琉兵衛に無名は笑顔でそれを受けとる。
「えぇ、是非。
久し振りに貴方と会話しますね園咲琉兵衛。」
「まさか、本当にこの世界に来るとはね.....
地球の本棚はそんなに窮屈だったかい?」
「貴方達のいる箱庭と比べれば
そう言えばお尋ねしたかったのですが....何故私の記憶を貴方は持っていたのですか?
貴方の記憶に関しては念入りに書き換えたつもりだったのですが.....」
「偶然の産物だよ。
このテラーメモリには恐怖をストックする力があったみたいでね。
私がエクストリームへの覚醒を選択した世界で手に入れていた力だよ。」
「.....あれは確か"666回目"の世界線でしたか?
恐怖を司るメモリらしくドラマティックな展開ですね。
と言うことはそれから後の記憶を貴方は持っているわけですか?」
「その通りだよ。
だから、君がまだこの世界に来ることを諦めて無かった事には驚いたよ。
あれからずっとやり直していたんだろう?
今は何度目だ?」
「さぁ、千を越えた辺りから数えるのを止めましたから....」
「それで....獅子神はどうしたのかね?」
「少し自分の立場を理解させて上げただけですよ。
無名が気に入っているリーゼに手を出しましたからね。
まぁ、ちょっとした嫌がらせ程度の仕返しですよ。」
「そうか...それでは君の目的を聞こう。
私の邪魔をするのなら敵対しなければならないからね。」
「私の目的はこの箱庭で自由に生きること...それだけです。」
「本当にそれだけなのかね?」
「それはどういう意味ですか?」
「ならば、何故何度も世界の記憶を書き換えて繰り返す行為を行っているんだ?
自由に生きることが目的なら千を越える程、やり直す理由もない筈だ。」
「言葉が足りませんでしたね。
私にとっての不自由とは退屈を意味するんです。
だからこそ、退屈になるくらいなら世界を書き換える事を選ぶ...それだけですよ。」
「それが君達、種族の考え方なのかね?」
「そうですかね?
もう私以外存在しない記憶ですから分かりませんが...」
「では、聞き方を変えよう。
私は若菜を"地球の巫女"にしてガイアインパクトをこの風都で起こす....君にとってそれは退屈な事柄かね?」
「いえいえ、寧ろとても興味がありますよ。
人間が地球の記憶を吸収することでどんな進化を及ぼすのか....ね。」
「では、私の計画に協力してくれると言うことで間違いは無いかね?」
「えぇ、勿論。
何か証明が必要ですかね?」
「...若菜を私の元に連れ戻してきて欲しい。
出来るかね?」
「良いでしょうではこういう取引は如何ですか?
私はまだ"この世界で遊び足りない"。
私の我儘を聞いてくれるのでしたら若菜様を巫女の器として完璧な者に私が作り替えて差し上げます。」
「....良いだろうその取引内容で構わない。」
「でしたら、1つ目の我儘ですがこの入れ物の部下の安全を保証して下さい。
今回の一件で罰を負わせないとここで宣誓してください。」
「良いだろう君達の行ったミュージアムへの裏切りは不問とする。」
「ありがとうございます。
では、準備がありますので失礼致します。」
そう言って立とうとする無名を止める。
「待ちたまえ....無名はまだその中にいるのかね?」
「えぇ、ですが奥深くで眠っています。
地球の本棚と繋がれるくらい深い深層心理の中にね。」
「そうか....彼も大事な部下だ。
安全は保証してくれると助かるが?」
「勿論、
私達二人はそう言う共生関係ですから殺すなんてもっての他です。」
ゴエティアは笑いながら琉兵衛にそう告げると部屋を後にするのだった。
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