もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百五十四話 生かされたW/静かなるプレリュード

 

ミュージアムの構成員により捕らえられた若菜と赤矢達は各々、メモリを奪われて隔離されていた。

 

そんな中、若菜だけ呼び出され大広間へと通される。

そこにはドーパント状態になっている琉兵衛と冴子、そして無名は立っていた。

 

そんな中、テラードーパント(琉兵衛)が若菜に話し掛ける。

「若菜、気分はどうかね?

随分と無理をしたと聞いたが.....」

「お父様、私は処分される覚悟が出来ています。

しかし、無名は私に従っただけです。

部下と彼には寛大な処置を....」

 

若菜の言葉に冴子が入る。

「若菜、事はそんな簡単なことじゃないのよ?

ミュージアムと言う組織に置いて有効な人材の確保に失敗した。

それも幹部である貴女が邪魔をしたのよ?

許されることではないわ。」

「....お姉さまはフィリップ君が何者なのか知っているの?」

 

若菜の問いに冴子と琉兵衛は事実を知ったことを理解した。

「どうやら、知ってしまったようだね。

彼が私達の家族である来人だと....」

「えぇ、シュラウドがお母様だと言うことも知りましたわ。

....だからこそ答えてくださいお父様。

何故、フィリップ....来人を私に会わせなかったんですか?

私には死んだと伝えて....

それに実験動物のような扱いもして....彼も私達と同じ家族の筈でしょ!」

 

「確かに来人は私達の家族だ。

そして、同時に家族を越えた特別な存在でもある。」

「どういう...意味ですの?」

「お父様、若菜ももう大人よ...真実を知っても良いんじゃないかしら?」

 

「そうだね....若菜、良く聞いておくれ。

来人は一度、"死んでいる"んだ。」

「!?....どう言うこと?

現にフィリップ君はこうして生きているじゃない!」

「若菜、貴方は不思議に思わなかったの?

来人が何故、人の身でありながら地球の知識が保管された地球の本棚に入れるのか?」

 

「それは、ガイアメモリを使って....」

「彼の持つガイアメモリで地球の本棚に関係するのはエクストリームメモリだけだ。

だが、それを手に入れる前から来人は地球の本棚に入る資格を持っていた。

......あの事件の後で」

「事件?」

 

そこで琉兵衛が一つの話を始める。

あれは12年前....まだ、文音と来人が園咲の家にいた時の話だ。

自分の研究している地球の記憶へのアクセスポイント、通称"泉"に来人が誤って落下し命を落としてしまった。

だが、運命はこの事件を劇的に変化させた。

 

落下し死んだ来人は地球の記憶へ偶然触れた事で"データ"として肉体を再構築したのだ。

来人は地球の記憶からデータ人間へと生まれ変わった。

そして、来人の知識により私はガイアインパクトを起こす決心を固めてガイアメモリを作りこの街へとばら蒔いた、

 

予想外な事があったとすれば妻である文音が私の邪魔をしたことだ。

そして、文音は私を倒すために"仮面ライダー"を生み出した。

「お母様が....仮面ライダーを?」

「そうだ。

風都に昔から噂になってた"骸骨の戦士"(仮面ライダースカル)があっただろう?

あれこそが文音....いやシュラウドが用意した。

私を倒すための存在だった。

そして、来人を奪われて彼も仮面ライダーとして私達の前に立ち塞がった。

.....これが園咲家の真実だ。」

 

驚くべき真実に聞いていた若菜は愕然とする。

フィリップが自分の弟であり死んでいる.....

そして、母は父を倒すため仮面ライダーを作り出した。

 

「それじゃあ、この風都で起こっているミュージアムと仮面ライダーの争いは...お父様とお母様の戦いなんですか?」

「まぁ、そうとも言えるな。」

 

「.....お父様は来人を愛しているんですか?

愛しているのなら何故、彼に真実を伝えようとしないんですか!

そうすれば彼も傷付くことはありませんでした!」

若菜の感情的な問いに無名が答える。

「来人様に強くなっていただくことが目的だったのです。

データ人間としてより深く強く地球の記憶とリンクする事が出来ればガイアインパクトの成功が完全なものとなる。」

 

「そのガイアインパクトも一体どういう計画なのですか?

私達に一体何をさせるつもりなの!」

「それは今の貴女が知る必要はありません。」

無名はそう言うと琉兵衛がいる机の上に置かれているアタッシュケースを広げた。

中から若菜のドライバーとメモリを取り出すと投げて渡す。

「どういうつもり?」

「これから若菜様は私と戦って頂きます。」

「何故、そんな事を?意味が分からないわ。」

「では、私と戦わないのならこれから来人様のいる場所に向かい手足の何れかを奪ってきましょうか。

.....それでも戦いませんか?」

 

無名からの挑発に若菜は地面にあるドライバーを腰に付けてメモリを起動した。

「Claydoll」

「来人に手は出させはしないわ!」

若菜はクレイドールドーパントへと変身が完了すると無名に向かって火球を放つ。

 

それを無名は生成した黒炎の盾で防ぐ。

「さぁ、実験を始めましょうか。」

無名は笑いながらそう言うと若菜との戦闘を始めるのだった。

 

 

 

ところ変わって黒岩と赤矢はミュージアムの地下施設に幽閉されていた。

そこにゴスロリ服の女がイナゴを食べながら現れる。

その姿を見た赤矢が言った。

「貴方は....成る程どうやら我々は組織に見限られた様ですね。」

その言葉で黒岩も察する。

「ミュージアムの殺し屋か?」

「えぇ、無名から聞いた話ではミュージアムには二人の処刑人がいるそうです。

一人は飼い猫のミック....もう一人があの女だそうですよ。」

 

イナゴの女は食べているイナゴをこちらに向けて尋ねる。

「食べる?」

「死刑執行前の囚人でももっとまともな飯が出る筈だが...ミュージアムにはそんな金もないのか?」

黒岩の挑発にイナゴの女は不機嫌な顔をする。

 

「要らないんだ....美味しいのに」

そう言うとイナゴの女はメモリを取り出して起動する。

「Hopper」

メモリを足に挿してホッパードーパントへと変身する。

赤矢と黒岩は組織にメモリとドライバーを奪われているため今は生身の状態だった。

しかも、反撃する武器もない。

 

「これはマズいな...どうする赤矢?」

「どうするも何も逃げるしかないでしょう。

逃げられるかは分かりませんが....」

そんな会話をしているとホッパードーパントは急に飛び上がり黒岩に向けて落下する。

 

それを紙一重でかわすが着ている服を捕まれて倒されてしまった。

「先ずは1人目....頂きまぁす。」

ホッパードーパントが顔を近づけようとすると危険を感じたのか黒岩から距離を離した。

ホッパードーパントのいたところを銃弾が通り抜ける。

「誰?」

ホッパードーパントの問いに男はメモリで答えた。

 

「ETERNAL」

 

「変身.....」

そして、その場に仮面ライダーエターナル(大道 克己)が現れるとホッパードーパントに尋ねた。

「お前はミュージアムの関係者だな?

答えろ、無名は何処にいる?」

その問いにホッパードーパントは蹴りと言う形で答える。

克己はその攻撃を冷静に防御した。

「お喋りは嫌いか?」

克己のその問いにも答えずに蹴りの攻撃を続ける。

 

「内のレイカのような戦い方だな。

練度も高い....だが」

そう言うと克己はホッパードーパントの足を掴み関節を逆方向に思いっきり曲げた。

危険を感じたホッパードーパントは直ぐ様、足を抜くと克己と距離を取った。

「ドーパントとしての戦闘経験が多すぎるせいで身体を破壊する技を受けなれてないな?」

 

傭兵と殺し屋....似たような者だと思うかもしれないが求められることは全く違う。

殺し屋は対象を確実に殺せる技と動きを行うが傭兵は生き残る事を目的として技を使い戦う。

故に傭兵は相手の身体を殺すのではなく破壊する技も学ぶ。

 

破壊された敵はほおって置いても戦場では役に立たない。

寧ろ、そいつをカバーしなければ行けないため結果的にこちらの利益になる。

故に克己の使った足を破壊する技を見てホッパードーパントは警戒したのだ。

その姿を見た克己はエターナルエッジを取り出す。

「赤矢、黒岩....俺の仲間が外で待機している。

今はそいつらと合流しろ。」

「何があったのか知っているのか?」

黒岩の問いに克己は答える。

 

「いいや、だが無名の様子がおかしかった。

まるで、"別人に乗り移られたみたいにな"....

今の無名は信用できん。

暫くはこの街を離れた方が良い。」

「何だと?無名が....」

「....分かりました。

黒岩と私はこの街を離れます....何か分かったら連絡してください。」

 

そう言うと赤矢と黒岩は施設を脱出した。

追おうとするポッパードーパントは克己が相手をする。

「退いて!」

「断る....さぁ、死神とのデュエットだ楽しめよ?」

克己はそう言うとホッパードーパントと決着を付けるのだった。

 

 

 

場所は変わり園咲邸の外では無名と若菜の戦いが続いていた。

無名と若菜の戦闘は一方的な蹂躙劇だった。

黒炎を使わず直接的な戦闘能力でクレイドールを何度も土塊に変え再生を続けさせる。

飛行しながら行われる無名の攻撃は若菜の精神力を確実に削っていった。

「ハァハァハァ.....」

「そろそろ限界ですか?若菜様。」

「ふざけ....ないで!」

 

無名の挑発的な言葉に若菜は怒りを露にする。

「ふざけてはいませんよ。

貴女はクレイドールの再生能力により不死身になったと思っているのでしょうがそれは間違いです。

クレイドールの再生能力は強力ですが発動する度に貴女の精神力を消費させます。

まぁ、数回程度なら実感することはないでしょうが"百回"も再生を繰り返せば自分自身、気付いたんじゃありませんか?」

 

無名の言う通り、若菜は再生を繰り返す度に疲弊していた。

体力面では問題ないのに身体が重く感じる。

(でも、だからと言って無名をこのまま逃がすわけには行かないのよ!)

若菜は起き上がると空を飛んでいる無名を落とそうと火球を連射する。

それを盾で全て防ぎながら無名は若菜に高速で接近すると翼で身体を吹き飛ばした。

 

クレイドールの能力により土塊に変わり再生していく。

すると再生された瞬間、若菜は膝を付いてしまう。

「くっ、身体がっ!」

「本当に限界のようですね...まぁ、良いでしょう。

貴女が来ないのなら私は来人様の所へ向かい事を為すだけです。」

「何で?獅子神の時は私を助けてくれたのにどうして今は敵になるのよ!」

 

「"役者が変わった"と言うことです。

私を貴女が知っている無名だと思わないことだ。」

「では、これで終わりにしましょう。」

そう言うと無名は黒炎を若菜に向かって放った。

放たれた黒炎が若菜を焼き....そのダメージを回復していく。

 

どんどんと精神力が削られ限界が近づいた時、若菜の身体を覆っていた炎が吹き飛び無名を吹き飛ばした。

「これは....一体?」

若菜が自分の身体を見て言うと一瞬で戻ってきた無名に首を捕まれ持ち上げられる。

「漸くメモリが覚醒しましたか。」

「覚....醒..?」

 

「適合率の高いメモリを使い続けることで起こる現象です。

未来ではハイドープ...とも呼ばれますがね。

原作よりもメモリを使わなかったせいでこのままではエクストリームに適合できないと分かりましてね。

苦肉の策として私と戦って貰ったわけです。

今なら、このガイアプログレッサーと適合することが出来そうです。」

そう言うと無名は琉兵衛から預かっていたガイアプログレッサーを取り出す。

 

「さぁ、いよいよ本番です。

貴女がエクストリームに適合すれば地球の本棚に入れるようになり絶大な力を手に入れられます。

失敗すれば肉体と精神をデータ化され地球に吸収されますが....私がいればその心配はありません。」

 

そう言うと無名のドーパント体が変化した。

「適合率が上がれば簡単にエクストリームの力を扱えるようになる。

では、始めましょうか。

GEEN(ジーン)COCOON(コクーン)ZERO(ゼロ)....起動。」

複数のメモリの力を起動した無名は若菜の胸にガイアプログレッサーを当てた。

するも若菜は意識を失いガイアプログレッサーを中心に若菜の身体を糸の様な何かが包んでいった。

 

「ZEROメモリで細胞の運動を止めてGEENメモリで細胞とプログレッサーを完全に融合させる。

その間の拒否反応を抑えるため、COCOONメモリで作られた細胞を保護する糸で全身をコーティングします。

まるで、羽化を待つ蝶のように....今の貴女はサナギです。

だが、そこから出た暁には貴女は琉兵衛の求める最高の地球の巫女へと変わっている筈です。

では、その日までお休みなさい。」

 

全身を繭で完全に覆われた若菜の姿が人間の形へと戻るがドライバーとメモリはそのままだった。

そんな彼女を連れて無名は園咲邸へと戻るのだった。

 

 

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