もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百五十五話 試されるJ/捕まる刃野

獅子神との戦いから暫く経ち鳴海探偵事務所は何時もの状態を取り戻していた。

若菜が捕まったことを知っているフィリップは助けに向かおうとするがそれをシュラウドが止めた。

 

「今の貴方では....あの男には勝てないわ来人。

私が若菜の無事を確かめる...良いわね?」

そのままフィリップはシュラウドを信じて任せた。

真実を知った翔太郎と亜樹子はこれからどうフィリップを呼ぼうか悩んでいたが「何時通り、フィリップで構わないよ。

探偵の相棒であるフィリップも園咲 来人と同じく僕なんだから...」

そう言われ皆、フィリップ呼びを続けている。

 

 

そんな翔太郎達は今、風都署にある留置所にいた。

理由はそこに収監されている男から連絡を受けたからだ。

「はぁ!?刃さんが"窃盗"?」

留置所にいた照井から経緯を説明される。

「昨夜、宝石強盗がいると通報を受けて付近を探していた刑事が酔っ払った刃野刑事を見つけて身体検査をすると"ダイヤモンドが入った小袋"を見つけて現行犯逮捕された。」

 

「にしたって刃さんが犯罪なんか起こす分けねぇだろ!」

翔太郎がそう言って庇う後ろで真倉が言う。

「僕は前から怪しいと思ってたんですよねぇ~それにしても窃盗とは随分と落ちぶれましたねぇ~刃野ぉ~」

 

留置所で毛布にくるまっている刃野に向かってそう告げた。

「てめぇ!マッキーの分際で調子に乗ってんじゃねぇ!」

翔太郎が亜樹子からひったくったスリッパで真倉の頭を叩く。

「痛ったぁ!何すんだコラぁ!それに俺はマッキーじゃなくて真倉だ!」

「うっせぇ、刃さんをバカにするお前にはマッキーすら勿体ねぇわっ!」

「てめぇ!ふざけんなぁ!」

二人が取っ組み合いの喧嘩を始めそうになり新任の超常犯罪捜査課の刑事が止める。

 

「ちょっと!落ち着いてください。

翔太郎さんの気持ちも分かりますけど暴力は不味いですから!」

「止めるな"進ノ介"!コイツは一回ぶん殴らなきゃわかんねぇんだ!」

 

「真倉刑事も!民間人を煽らないで下さい刑事でしょ?」

「離してくれ"麗子"さん!コイツだけはコイツだけわぁぁ!」

 

泊 進ノ介と大門 麗子は無事に超常犯罪捜査課で研修を受けることとなり今回の事件を担当していた。

 

「ちょっと照井課長!見てないで止めてくださいよ!」

泊が照井に向かって言う。

「落ち着け左....それと真倉もいい加減にしろ。」

「そうよ、落ち着きなさい翔太郎君!

これは所長命令よ!」

 

「分かってるよ...それで刃さん何があったのか詳しく話してくれねぇか?」

「あぁ昨日の夜、馴染みのバーで酒を飲んだ帰りに帽子を被ってデカいダイヤの指輪を着けた女にぶつかられたんだ。

そうして耳元で"ダイヤの価値が分かる?"って言われた後、そのまま蹴られて地面に倒れたところを刑事が現れてこうなっちまったわけだ。」

 

そこまで聞くと風都の情報通である翔太郎は一つの噂を思い出した。

「そう言えば最近、"人を宝石に変えちまう"ダイヤの指輪を着けた女が出るって噂があるよな?」

「あぁ、今回の件は恐らくドーパントが関わっている。

フィリップと左に調査協力を頼みたい。」

 

「あぁ、勿論だ。

刃さんの無実は俺達が証明して見せる。」

「良し泊、君は鳴海探偵事務所に事件の捜査資料を届けてくれ。

以後、彼らのサポートを頼みたい。」

「大門、と真倉は私と一緒に潜入調査を行う。」

 

「ん、照井は刃さんの事件とは関わらないのか?」

「あぁ、実は過去に摘発した裏オークションが今日の夜始まるんだ。

その調査をしなければならない。」

「そう言うことだ!刃野の窃盗事件はお前らと泊巡査でやっていろ!」

 

「あんだとこのマッキーがっ!」

「二人とも止めぇい!」

またスリッパを奪い取ろうとする翔太郎の手を拒み真倉と翔太郎の頭を叩いた。

 

「泊、不安だろうが左やフィリップ、それに所長は優秀だ。

君達でこの事件を捜査してほしい。」

「分かりました照井課長。

俺、頑張ります。」

 

そう言うと探偵チームと泊は留置所を後にした。

 

 

 

同時刻、園咲邸ではサラと琉兵衛が顔を会わせていた。

「サラ、怪我の具合はどうかね?」

「ご心配下さりありがとうございます。

でももう完治しましたわ。」

 

「それは良かった....次のパーティに主催者である君が来れないとなったらどうしたものかと思っていたのだよ。」

琉兵衛の示すパーティとはサラが主催するナイトタイムのオークションパーティの事であった。

 

「そう言えば獅子神と無名は何処にいるんですか?」

「獅子神は天ノ川地区に戻って貰っているよ。

無名は部下の起こした責任を取り暫く謹慎処分を命じた。」

無名の部下だった大道克己が反乱を起こし捕縛していた黒岩と赤矢を逃がした責任を取り無名はミュージアムの管理する研究所で謹慎と名の監禁をされている。

 

「信賞必罰ですか?」

「まぁ、そう言った所だ。

幾らミュージアムに貢献をしていてもたった一回のミスでその全てが水泡に帰す事もある。

君も気を付けたまえよサラ。」

 

そう言われたサラは身震いすると静かに頭を下げてその場を後にするのだった。

ここで琉兵衛は一つ嘘をついた。

無名、いやゴエティアは今、ミュージアムの手を離れて単独行動をしている。

 

それは繭で包まれた若菜を私の元に届けに来た時の事だった。

「では、私はこれで....」

そう言って立ち去ろうとする無名を琉兵衛は呼び止める。

「待ちたまえ.....何処に行こうと言うのかね?」

「少し面白い道具を手に入れましてね。

それで少し遊ぼうかと思っているんです。」

「"遊ぶ"だと?そんな我が儘を許すとでも?」

「どちらにしても貴方に私を止める術はない。

それに、若菜様とガイアプログレッサーの融合が完了しました。

後は時間をかけて定着させるだけです。

もう私の力は必要ありません。」

 

「では何をするのかね?」

「何れ分かりますよ......いずれね。」

そう言うと無名も部屋を出ていってしまった。

 

 

 

風都でシュラウドが、個人的に持っている研究所の一室無名の作った資料を眺めていると来客が現れる。

「見当たらないと思ったらこんなところにいたんですね?」

現れた無名にシュラウドマグナムを向けるが無名はそれに対しておどけて見せる。

「おや?随分と嫌われてしまいましたね。」

「無名.....一体何の用?」

そこで無名は驚くべき事を言う。

 

「若菜さんの肉体とガイアプログレッサーが融合し今彼女はミュージアムの研究所に隔離されています。」

「!?若菜が何故!」

「琉兵衛がガイアインパクトに本腰を入れて来たと言った所でしょう。」

 

その言葉にシュラウドの銃口が震える。

"ガイアプログレッサー"…クリスタルサーバーのエネルギーを生体ユニットに移した物の名前で琉兵衛がガイアインパクトを起こす為にまだ何も知らないシュラウドが開発した物だった。

それを使ったと言うことは若菜を地球の巫女として作り替える準備を始めたことに他ならない。

 

「どうすれば…」

「ですから私はある提案を貴女に持ってきたのです。

現状のWに貴女は不満がある。

そうですね?」

「あんな凡人と共に変身していては来人は恐怖の帝王に勝つことなんて出来ない。」

 

「えぇ、だから照井 竜にドライバーを渡して強くしていたんですよね?

来人様と変身させるために……」

照井がWドライバーを使い来人と変身する形態、"サイクロンアクセルエクストリーム"

それこそシュラウドが提唱する琉兵衛を倒す為に作り出したWの形だった。

 

「当初は鳴海荘吉と来人様の二人で変身するW"サイクロンスカル"か"サイクロントリガー"で計画していたのが荘吉が亡くなり後釜としてアクセルメモリと適合した照井竜を貴方は選んだ。

二人の特徴は精神攻撃に強いことと....メモリの特異性ですね?」

 

「スカルメモリとアクセルメモリ、そのどちらも肉体のスペックを強化する事をメインとしています。

スカルは"擬似的不死"、アクセルは"加速的に進化を続ける回復力"、貴方がWに求めたのは死ぬことなく戦える事....だからこそジョーカーメモリを選んだ翔太郎が邪魔になった。

ジョーカーには不死性や回復能力はありませんから...ただ使用者の感情によりメモリの力を強める。

だが、あの男は荘吉に似ずハーフボイルド、貴女の目から見れば不完全だった。」

 

「えぇ、そうよ。

メモリ自体の相性は悪くない。

でもあの性格じゃジョーカーメモリを真に引き出せるとは言えない筈よ。

貴方もそう思うでしょ?」

「えぇ、ですので彼を"完璧"にしようと思います。

貴女の求める"最高のジョーカー"の使い手としてね。」

 

「そんな事が本当に出来るの?」

「えぇ、このメモリを使えば可能です。」

そう言うと無名が一つのメモリをシュラウドに見せる。

メモリには"J"のイニシャルが刻印されていた。

「私はこのメモリを使って左 翔太郎を貴女の認める完璧な存在へと昇華させます。

私がここに来たのはそれを伝えるためです。

私は貴女の敵ではなく味方だと知って貰うためにね。」

 

「分かったわ貴方の口車に乗ってあげる。

でも忘れないことね今の私は貴方を最も疑っているも言うことを……」

「勿論、じっくりと見定めてください。

私はWを貴女が求める最高の存在に変えて見せますよ。」

 

そう言うと無名はメモリをしまい研究所を後にするのだった。

 

 

これでピースは全て揃った.....

この高揚感を表すのならこうだろう。

公園の砂場で子供が砂の城を作っている。

あと少しで完成と言うところで上から踏み潰して全てを台無しにする。

 

完成(終わり)に近付く(物語)....それを丁寧に守ろうとする子供達(主人公)達の目の前で踏みつけて全てを無に返す。

 

その光景を想像するだけでゴエティアの顔は歪んだ笑顔へと変わっていく。

まだだ……まだ笑っちゃいけない。

最後の最後、もう手遅れだと気付いた子供達の表情を見るためにもあえて愚者を演じて油断させる。

 

 

(無名)がこの事を知ったらどうするだろうか?

私の計画を阻止するために動く?

それとも自分にとって都合が言いように変える?

大道克己や霧彦を生かしたように……

 

だがそれは叶わない。

この箱庭(地球)に今存在しているのは(ゴエティア)だ。

 

動き出したドミノを止めるには崩壊する先を潰さなければならない。

君にその決断が出来るかな?

 

さぁ、最高の悲劇の……

 

 

 

 

"序章"を始めよう。

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