風都の会員制クラブである"キティサファイア"のVIPルームで井坂深紅郎は一人の"ドーパント"を診察していた。
その横には井坂のシンパである伊豆屋の姿もある。
一通り身体を見終わると井坂は言った。
「順調そうですね。
エンゼルビゼラの服用がメモリの力を高めてくれているようだ。」
井坂のその言葉に起き上がったドーパントが言う。
「はい、能力が強くなっているのを実感できていますよ井坂先生。
これも貴方に診察して貰ったお陰ですよ。」
「いえいえ、全ては貴方の努力によるものですよ"上杉"さん。」
すると、上杉と呼ばれた男はメモリを抜き人間の姿に戻った。
この男は
その理由も完璧主義の為、不完全な部分を許せずそれを見つけると壊したくなると言う狂った性格に起因していた。
そんな彼がジュエルメモリと出会い女性を宝石に変えている時に、伊豆屋と出会い井坂を紹介された。
最初は胡散臭く思ったが一度診察を受けて処方された薬を飲むと自分の力が強くなっている事を実感できた。
それ以来、上杉は井坂を主治医として定期的に通っている。
「それにしても僕が井坂先生を知った時が逃亡中だったのが悔やまれますよ。
もっと早く出会っていたらもっと沢山の
「ふふっ、そんな風に言われるとは医者冥利に尽きますね。
私も貴方とジュエルメモリに関して興味が尽きませんよ。」
そう言うと上杉が腕時計を見る。
「あぁ、もうこんな時間ですか。」
「今日は何か予定があるのですか?」
「えぇ、そろそろ新しい宝石が欲しくなったんで手に入れて来ようと思いまして」
上杉は女性をダイヤに変えた女性をアクセサリーとして身に付けており更にそれを定期的に変えている。
つまり、今の
「そうでしたか。
では、次の診察の予約は何時も通り伊豆屋に連絡をしてください。
それではお大事に.....」
そうして上杉が部屋から出ていくと井坂は伊豆屋に目を向ける。
「では、お楽しみを始めましょうか伊豆屋君。」
「はい、今回のメモリはこちらです。」
伊豆屋はそう言うと机に数本のガイアメモリを取り出す。
「どちらのメモリも過剰適合者から奪い取ったメモリです。
出力に関しては問題ありません。
何れも強力で井坂先生と適合率の高いメモリばかりです。」
そう伊豆屋から説明を受けた井坂は一つのメモリを手に取りおもむろに身体へ突き挿した。
「
メモリは井坂の身体が入り込んでいくが暫くすると弾かれ飛び出してしまう。
そして、飛び出したメモリは砕け散ってしまった。
「やはり、無理ですか。
アダプターで強化したウェザーメモリを使用してから他のメモリを使うのに拒否反応が出るようになってしまいましたねぇ。」
「ウェザーメモリとの相性が悪いのでしょうか?」
「いえ、それよりも"嫉妬"の方が近いでしょうね。
自分の様な優秀で多様性のあるメモリなのに何故、他のメモリを欲するのか!....とね。」
「まるで、恋人のような関係ですね。
井坂先生相手に浮気を許さないとは....」
「ふぅ、これでは他のメモリも使えないでしょうね。
仕方ありません...."ケツァルコアトルス"は諦めた方が良さそうだ。」
そう残念がっている井坂の元に一本の電話がかかってくる。
「はい、井坂です。」
「無名です....今よろしいですか?」
そう言って無名が連絡をしてきた。
「ええ、構いませんが、何かご用でしょうか?」
「"第二風都タワーの建設計画"については知っていますか?」
第二風都タワー建設計画、故人である風都の議員、
事件解決後、風都市長となった雨ヶ崎 天十郎の手により"今の風都タワーをサポートする都市一体型の施設"として変更されてたお陰で議会に通り進められていた。
「えぇ、天十郎さんとは良く話しますからね。
それが何か?」
「近々、それに建設に関わる計画がミュージアムで始まります。
井坂さんにはそこに加わっていただきたい。」
「.....解せませんね。
冴子君を通さずに私に直に話してくるとは」
井坂は冴子により匿われてからミュージアムに関する情報は全て冴子を経由して伝えられていた。
だからこそ、その過程を通さずに直接話を通してきたことに違和感があったのだ。
「...ではハッキリ言いましょう。
井坂さん今貴方の立場は非常に不安定です。
貴方の"テラーのメモリを手に入れる"と言う野望は琉兵衛様に筒抜けですよ?」
「!?驚きましたね。
まさか、そこに気付いているとは.....
では何故私はまだ消されていないのでしょうか?」
「一つは冴子さんの存在です。
娘が慕っている男を簡単には処分できない。
もう一つは強化アダプターの実験でしょうね。
あのアダプターの毒素に耐えられる貴方が何処まで強くなり限界を迎えるのかを見たがっているんでしょう。
琉兵衛様も私と同じく研究者の一面がありますから」
「それにガイアインパクトの計画も止まっていた。
この段階で貴方を消すのはメリットよりもデメリットが多いと判断していた...."これまでは"」
「それは一体?」
「文字通りです。
ガイアインパクトの計画が進み始めました。
このまま行けばそう時間もかからずにガイアインパクトを始められるでしょう。」
「まさか.....いや、成る程。
若菜君を使うのですね?」
「流石は井坂さんだ。
そこまで読み切れますか。」
「最近、こちらに姿を現さない....と言うより意図的に隠されていることを鑑みれば自然と分かりますよ。」
「風都第二タワーの計画に貴方が参加すれば少なくとも今すぐに消される心配はないでしょう。
アダプターを完全に使いこなせていない今の貴方が生き残る術はそれしかない。」
無名はまるで井坂をずっと見てきたかのようにまだアダプターに対応出来てない事を看破した。
(確かにアダプターによる大量の毒素にまだ身体が慣れきっていない。
この状況でテラーを奪うのは難しそうだ。
だが、それを話して一体無名に何の得があるのだ?
私の研究に価値を見出だした?....違うな。
コイツは私の研究を無駄な事と言い切っていた。
無名やミュージアムから離れた場所にいられたお陰で研究や実験もはかどっていたがまだ私の求める完璧な理論には至っていない。
......ここで敵対するのは不利すぎますかね。)
井坂は少し考えると無名に話し始めた。
「分かりました。
貴方のお話をお受けしますよ。」
「それは良かった。
では、冴子さんに話を通しておきます。
詳しいことは彼女からお聞きください......では」
無名はそう言うと電話を切った。
切られた井坂は携帯を懐に戻し代わりに"小さな紙袋"を取り出した。
「どうせ、使えなくなってしまうのなら.....
井坂はそう思うと準備を整えて部屋を後にするのだった。
刃野を救うために調査を続けていた翔太郎、亜樹子、泊は襲われたモデルが良く来ていたクラブ"ブルートパーズ"へと向かった。
「ここがブルートパーズか。」
「あぁ、噂じゃあモデルや有名人が通う会員制のクラブらしい。」
泊がそう説明した。
「えっ?じゃあ私達入れないじゃん!」
「問題ないだろう....これを使えば」
そう言うと泊はセキュリティに警察手帳を見せる。
「超常犯罪課の者です。
このクラブに重要参考人が潜んでいると言う情報が入りましたので中に入らせて貰っても?」
「申し訳ありませんが当店は会員様以外を入れるわけには...」
「この事件を捜査しているのは照井警視です。
あの人の事は貴方も知っていますよね?」
「!?.....分かりましたどうぞ中に」
セキュリティが少し怯えた表情をすると三人を中に通した。
「おい、何であの警備員は怯えてたんだ?」
翔太郎の問いに泊は小声で答える。
「実はあの男、過去にガイアメモリを購入しようとして警察に捕まったことがあるんです。
超常犯罪課の資料に乗ってました。
どうやら、そこで照井課長にコッテリと絞られたようなのでその名を出せば入れてくれると思ったんです。」
「うへぇ、確かに照井から詰められたらトラウマになりそうだな。」
「はい、僕も何度か拝見しましたが...アレをされるぐらいなら、ドーパントを対峙した方がマシと思うぐらいにはキツかったですね。」
「まぁ、あいつもガイアメモリを憎んでいるからなぁ。
そう言えばお前と大門さんってそろそろ異動するんだよな?」
「はい、多分この事件を終えた後に異動になると思います。」
「そっかぁ、寂しくなるなぁ。
何だかんだお前達とは気があってたから」
「そうですね。
あの後、何度か事件解決に協力して貰いましたし.....
鳴海探偵事務所の方にはお世話になりましたから」
そんな話をしているとステージの中央が騒がしくなる。
そこに目を向けると亜樹子が帽子を被った女に投げ飛ばされて踏まれていた。
「なっ、亜樹子!テメェ何してやがる!」
そう言うと帽子を被った女は指に着けたダイヤの指輪を向ける。
「ダイヤの価値って分かる?」
「あん?」
「美しく傷つかない....この私の様にね。
私は美しい物が好き....皆、宝石になってこの私を飾ると良い。」
突如、クラブの電気が消え再度点灯すると目の前にドーパントが現れた。
「ドーパント?」
「動くな!」
ドーパントに向けて泊は銃を向ける。
それを無視するようにドーパントは手からガスを発生させると放出した。
危険を感じた翔太郎と泊が避けるとそのガスに当たった女性が透明な宝石へと変わる。
「亜樹子!進ノ介!ここにいる奴等を避難させろ!」
「だけど!」
「良いから早くしろ!」
泊は苦い顔をしながらも翔太郎の意見に従い残った女性を亜樹子と共に避難させる。
「フィリップ!」
誰もいなくなったことを確認した翔太郎はドライバーを着ける。
『「変身」』
「CYCLONE,JOKER」
Wサイクロンジョーカーへと変身するとドーパントを殴り付けた。
ガチン!という硬質な音と共に殴ったWはその手を抑える。
「痛っつ!硬ってぇなコイツ。」
「私は"ダイヤ"....最も固く美しい。」
『ダイヤ?....それがあのドーパントのメモリか?
ダイヤモンドは地球上で最も硬い鉱物だ。
戦法を変えよう。』
「HEAT,METAL」
メタルシャフトを展開しジュエルドーパントを打つが全くダメージがなく弾かれてしまう。
『高熱のシャフトでも傷つかないとは』
「言ったでしょう?私は傷つかないって」
「調子に乗りやがって、これならどうだ!」
「LUNA,TRIGGER」
Wのトリガーマグナムの光弾がジュエルドーパントを襲うがその弾は突如展開した透明な盾により防がれ増幅したエネルギーが逆にWに直撃した。
ダメージによりWは吹き飛ばされる。
「ぐはっ!光弾が...跳ね返された。」
『ダイヤの微粒子を瞬時に結合させてミラー状のシールドを出したのか....このドーパントは強いよ翔太郎。』
「ならっ!エクストリームだ!」
Wはエクストリームメモリを呼び出し装填する。
「XTREAM」
『「プリズムビッカー」』
「PRISM」
プリズムソードにプリズムメモリを装填し引き抜くとエクストリームWはジュエルドーパントの身体を切りつける。
今度はダメージが入ったのかジュエルドーパントは仰け反った。
「何っ!」
『君のメモリの全てを閲覧した。
ジュエルメモリ、凄まじい硬度を誇るメモリだが石に目があるように一点でダメージを与えると耐えられない箇所がある。
そこを狙えばダメージを与えることは可能だ。』
「良しならさっさとメモリブレ....」
トドメを刺そうとするWの地面から黒炎が現れるとWを包み姿を消失させた。
そして、離れた河川敷へとWは飛ばされる。
「....ここは?」
『どうやら、何者かによって転移させられたみたいだ。』
「それは私の仕業ですよ。」
そう声が聞こえた方に顔を向けるとデーモンドーパントが立っていた。
「お前は....成る程、今回の事件もミュージアムが関係してるのか?」
「いいえ、私の目的はあのドーパントではなく貴方ですよ"左 翔太郎"。」
「どういう意味だ?」
そう言って尋ねようとするとフィリップが慌てたように言った。
『翔太郎、気を付けるんだ!
彼は前と同じデーモンドーパントじゃない!』
「どういうことだ?」
『見た瞬間、検索して分かったが彼は僕達と同じくエクストリームに到達している。
あの中心部にある瞳のような物はクリスタルサーバーだ。』
「流石は地球の記憶と直結しているだけはある....だが」
「気付くのが遅かったですね。」
すると周りから大量の植物の蔓が現れてプリズムビッカーを叩き落としWを拘束した。
「ぐっ!こんな蔓.....」
「無駄ですよ。
捕縛に特化した複数のメモリの力を使っています。
それを抜け出すにはエクストリームに到達していても暫く時間がかかるでしょう。
その少しの時間があれば十分だ。」
無名はWの目の前まで来ると一つの金色のメモリを取り出し起動する。
「
そして、Wの胸へと押し当てた。
メモリは起動しWの体内へ吸収される...筈だがメモリは無名の手に残ったままだった。
そして、Wを拘束していた蔓が弱まると無理矢理引きちぎり無名を殴りにかかるが無名はメモリを持っていない手でいなすと距離を取った。
「何だったんだ一体?」
『分からない。
メモリの不調か...兎に角、失敗したことは確かだろう。』
そうフィリップは分析したがメモリを挿した無名の表情は暗くない。
すると、無名は背後にゲートを作る。
「おい!逃げんのか!」
翔太郎の問いに無名は答える。
「えぇ、目的も達しました。
後は見守らせてもらいます....では」
そう言うと無名は黒炎のゲートへ入り姿を消した。
『何だったんだ一体?』
「さぁな、亜樹子んとこに戻ろうぜ。
どうなっているか心配だ。」
そう言うとWはリボルギャリーを呼び出してクラブへと戻っていくのだった。
Another side
無名とWの戦いを二人の人物が見ていた。
一人はシュラウド、彼女は無名の計画を聞きその結果を見るために翔太郎とフィリップを眺めていた。
「これで、Wは変わる。」
無名が言っていた通りならあのメモリの効果によりWは私の求める最高の存在となる。
若菜が地球の巫女として捕まりガイアインパクトの計画は加速していった。
もう時間がない....早く琉兵衛を倒さなければ....
シュラウドのその焦りはWと言う存在を変えていく。
その先に何があるのかすら今の彼女には考える余裕がなかった。
もう一人の人物は大道 克己。
イナゴの女を倒し無名の仲間を助け出した克己は無名の居場所を調べるために動き回っていた。
本当ならNEVERのメンバーを使いたいが彼等には今別の用事を頼んでおり自由に動けるのは克己だけだった。
しかし、今の彼の状況は無名とコンタクトが取れる程、暇じゃなかった。
変身した克己は一人のドーパントにその動きを完全に足止めされていた。
ゲートに消えた無名を追おうとした瞬間、現れた
「くっ!邪魔をするなぁ猫無勢がぁ!」
怒りを込めてエターナルエッジを振るうがスミロドンドーパントは持ち前の速度と柔軟性、そして獣の感覚で攻撃を完璧に避けていく。
代わりにミックの光弾が克己を襲うがエターナルのマントを使い回避する。
そうして暫く睨みあうと仕事を終えた様にミックはその場を逃走するのだった。
敵が消えた克己はドライバーからメモリを抜き取る。
「くっ!またか!」
克己は無名を追うために園咲邸や思い付く場所を手当たり次第に調べていた。
しかし、その度にミックからの妨害を受けていたのだ。
現段階で仮面ライダーに変身できるのは自分しかいない。
だからこそ、他の者にも頼れないでいた。
日増しに焦りが募っていく。
無名やWに対して何かが起こっている。
無名の中にいる存在の手により......
まるで伸ばしても手の届かない雲を相手にしている気分を味わいながらも克己は調査を続けるのだった。
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