もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百六十話 虚ろなA/奇跡の確率

 

アクセルとナイトドーパント、そして大門とローズドーパントの戦いは両者とも苦戦を強いられていた。

 

アクセルはトライアルの速度を生かしナイトドーパントの攻撃を回避していくがリーチの差からこちらも攻撃を当てることが出来ないでいた。

接近すると四足の足のどちらかで牽制されその後、長剣が襲ってくる。

それを回避すると突撃が行われこれを回避する行為を繰り返していた。

 

大門は拳銃をローズドーパントへ撃ちつつ一人逃げ回っていた。

鞭の射程距離に入れば死ぬしかないので距離を保つため逃げながら対応していく。

しかし、大門は普通の人間だドーパントではない為、体力も人並みであり重いドレスの姿のまま逃げ続けたことで肩で息をする程、疲弊していた。

 

「はぁはぁはぁ...」

「あら?もう鬼ごっこはおしまい?

これじゃあ、つまらないわ。

ほら、もっと逃げなさい。」

まるで羊を追い立てる狩人の様にローズドーパントは言う。

(完全に遊ばれている...でも本気で来られたら今の私じゃあ持たない。

どうすれば良いの?)

 

助けを求めてきた参加者は部屋の一室にバリケードを作りそこに隠れて貰っているので暫くは大丈夫だろう。

故に大門がしなければならないのはこの状況を打開することだった。

(....仕方ないわね。

貰った"アレ"を使ってみようかな?)

 

 

話しは大門が風都に来る前にまで遡る.....

本庁に勤務していた時、大門は科警研にお邪魔する機会があった。

その時である大門の耳に息が吹き掛けられる。

「ひゃあ!」

「へぇ、新入りと聞いて来てみれば可愛い子じゃないか」

 

そう言って咥えタバコをした女性が大門に話し掛けてくる。

「えっ...と貴女は?」

「あん?私は榎田 ひかり(えのきだ ひかり)

肩書きは一応、ここの所長ね。」

 

榎田ひかり、名前だけなら大門も聞いたことがあった。

今から十年以上も前に現れた"未確認"と呼ばれる怪人を相手にする装備を作っていた人だ。

「それで?アンタは?」

榎田の問いに大門は背筋を正して答える。

「け...警視庁一課に配属された大門凛子です!

これからお世話になるのでご挨拶に伺いました。」

「へぇ...一課ってことはエリート様じゃないか。

良いねぇ、もしかしてその手に持ってるのは手土産?」

 

「はっ...はい!"シャルモン"のスイーツセットです。」

「シャルモンって言えばフランスでも超有名なお店じゃない?

良く手に入ったはね。」

「えっと...偶然、日本でプレオープンがあって買えたんです。」

「運も良いわけね。

良いじゃない貴女、気に入ったよ。」

そして、榎田に気に入られた大門は事あるごとに彼女と交流を行った。

 

そして風都に赴任した時も榎田と話したのだ。

「ドーパント?」

「はい、風都で流通しているガイアメモリを使って人間が変異する事で生まれる怪物です。」

「へぇ、まさかそんなのがいるなんて……時代は進んだんだねぇ。」

「えぇ、もう普通の人間じゃ勝ち目なんて無い程、強力で仮面ライダーの力を借りて何とか逮捕できてる状況です。」

 

「そんなヤバイやつならアタシの作った"スーツ"を使わせてやりたいけど生憎、アレは上層部に奪われてるんだよねぇ。

危険だとか何とかいってバカじゃない?

科学なんてその危険を行い続けた結果、得られた産物でしょうに……」

そうしていると榎田は閃いた様に言った。

「あっ、でも奪われたのはスーツだけだから他のは使えるかもね。

ちょうど暇してたし、凛子ちゃんの為に人肌脱いで上げるわ。」

「えっ!でも悪いですよ。」

「遠慮しないで良いから...それとも本当に脱いだ姿がお望み?」

 

「いっ、いえ!装備の方をお願いします!」

「あはは!相変わらず初な反応で可愛いわね凛子ちゃんは」

そうして月日が経ち、潜入調査をする前日に榎田から贈り物が届いたのだ。

アタッシュケースには彼女の赤い口紅で付けられたキスマークが付いている。

 

大門が中を開けるとそこにはリボルバーで使われる銃弾が6発納められたいた。

そして、中にはその弾について説明する資料も入っている。

そこには"神経断裂弾"の使用法について書かれていた。

 

 

大門はローズドーパントの攻撃を回避しながら船内のカジノフロアに隠れた。

ここなら色んな障害物があり隠れるのに打ってつけだった。

 

ローズドーパントの視界を切って上手く隠れられた大門はリボルバーを開けて中の弾を取り出す。

そして、榎田がくれた弾を込めていく。

「隠れたって無駄よ....何処かしらねぇ?」

そう言いながらローズドーパントは辺りの物を破壊していく。

 

その音に大門は恐怖を覚えるが深呼吸して心を落ち着ける。

(大丈夫、私なら出来る!)

覚悟を決めて飛び出した大門はローズドーパントに向けて発砲する。

しかし、あまりの反動の強さに腕が跳ね上がってしまった。

弾頭はローズドーパントの左肩へと向かった。

 

神経断裂弾は仮面ライダークウガの世界で未確認生物(グロンギ)を倒すために開発された弾であり、グロンギの驚異的な回復力の元となる戦闘神経を破壊する事を目的としていた。

2種類の爆発を0.28秒の間に起こすこの弾の威力は高くこれにより初めて警察のみでグロンギを討伐することが出来たのだ。

 

そして、その弾が今度はドーパントへ当たると肩の肉が弾けとんだ。

「いぎやぁぁぁ!」

余りの痛みからローズドーパントは地面に倒れこむ。

そして、同じタイミングで大門も反動により倒れこんだ。

発砲した反動により腕が痺れている。

(なんて反動なの。

こんなの狙いを付けて当てるなんて無理よ。)

そんな事を考えているとローズドーパントが立ち上がった。

 

「やってくれたわね小娘が!

もう、遊びは止めよ死になさい!」

本気のローズドーパントが振るった鞭はカジノフロアにあった机や機材を巻き込みながら大門の元へ向かう。

それをギリギリで回避するがその質量により壁に穴が空いてしまった。

「まだよ!」

そう言ってローズドーパントは鞭を引き寄せると鞭に貫かれた機材も戻り始める。

 

その機材に大門は激突すると開けられた穴へ落下した。

建物で言うと五階の高さから落下した大門は地面を見る。

厚く切り出された大理石だ激突すれば命はないだろう。

(私、死ぬの?)

大門はそう思い目を瞑ると声が聞こえた。

 

「大門!」

目を開けるとアクセルが大門の元に飛び出していた。

トライアルの速度により彼女が地面にぶつかる前にキャッチすることが出来た。

しかしその直後、アクセルの声が苦痛に歪んだ。

「ぐあっ!」

「真剣勝負の最中に余所見とは....余程死にたいと見える。」

それはナイトドーパントが飛び上がるアクセルに向けて槍を投擲しそれが背中を貫通した痛みだった。

 

何とか大門を落とすこと無く地面へと着地したアクセルだが背中に槍が痛々しそうに刺さっていた。

「照井課長!」

「騒ぐな....こんなの掠り傷だ。」

 

そして、その場にナイトドーパントが降りてくる。

「漸く決着だな仮面ライダー...」

そう言って長剣を生成し振りかぶるとその攻撃をローズドーパントが阻止する。

「何のつもりだ?」

「この女は私が殺すのよ?

勝手に殺そうとしないでくれるかしら?」

「知ったことではないな....邪魔をするなら君から殺そうかミセス?」

「ミスよ....それと殺せるかしらねこの私を?」

 

そう言うとナイトドーパントとローズドーパントは二人の間で戦い始める。

その隙を付いてアクセルは大門を連れて一度退却した。

 

何とか二人から離れることに成功したアクセルは大門を下ろすと膝を付く。

「ぐっ!....うっ」

そして、背中に刺さった槍を無理やり引き抜いた。

「ぐあっ!...くっ!....はぁはぁ」

声を出せば敵に気付かれると思い気合いで耐える。

「照井課長....背中が...」

「問題ない...はぁはぁ...それよりも...敵の事を知りたい。」

 

一息付いた二人はお互いに情報交換をした。

「俺の予想を超える程の地獄とは……ミュージアムを少し舐めていたな。」

「でもこの現状をどうします?

このまま戦っても勝ち目なんて....」

「刑事がそう簡単に諦めるな……と言いたいが確かに手がないのは事実だ....そう言えば大門が戦っていたドーパントは怪我をしていたみたいだがあれはどうしたんだ?」

「えっと....これです。」

そう言って大門はリボルバーの弾を抜いて見せる。

 

「これは...一般支給されている弾ではないな。」

「はい、神経断裂弾って言うらしいです。」

「神経断裂弾だと!何故そんなものを持っているんだ!」

怪我をしながらも照井は大門に詰め寄る。

「えぇ!....やっぱり相当危険な物何ですか?」

「当然だ!警官の一般使用はおろか本庁からの持ち出しすら禁止されているものだぞ!」

 

神経断裂弾の存在は照井も知っていた。

過去に現れた怪人を殺すために使われた装備の一つだ。

その非人道的な威力から危険視され今は全ての装備が本庁によって厳重に保管されているらしい。

勿論、警察としてルーキーである大門が普通に手に入れることは不可能な物だ。

 

「えっと、科警研の榎田さんって人に貰ったんです。

ドーパントとの戦いで使えるかもと言われて....」

「榎田....科警研所長の榎田ひかりか!

成る程、産みの親なら持ってこなくても作れると言うわけか。」

「え?榎田さんってそんなに凄い人なんですか?」

 

「あくまで上層部の噂だが十年以上前に出現した未確認生命体に対抗する装備の開発を行い。

その時に現れた謎の仮面ライダーと同性能のスーツを開発したと聞いたことある。」

「仮面ライダーと同性能ですか...」

 

「まぁ、今は良い。

それで神経断裂弾はドーパントに効果があったのか?」

「はい、ただ凄い反動で狙いが定まらなくて肩に当たっちゃいましたけど威力は凄かったです。」

 

照井は今ある手札を頭の中で上げていく。

(ドライバーにアクセルメモリとトライアルメモリ....それとビートルフォンにイールチャンネル。

そして神経断裂弾が5発....これであの二体のドーパントを倒す。)

 

そうして照井の頭に一つの策が浮かんだ。

策と言うには無謀で奇跡を必要とする物だが....

だが、これを実行するには大門の強力が不可欠だった。

「大門、奴らを倒して生き残る策がある。

だが、これにはお前の協力がいる。

そして失敗すれば死ぬそんな策だ。

それでも...」

「やります...やらせてください。」

大門は間髪入れず答えた。

「良いのか?本当に死ぬかもしれないんだぞ?」

 

「私、正義さんの事件の時、何の役にも立てませんでした。

もう、何もしないなんて嫌なんです!」

「....分かった。

俺の作戦はこうだ...そしてチャンスは一回。」

「覚悟の上です。

行きましょう照井課長。」

そうして照井から作戦を聞くとそれを実行するために動くのであった。

 

 

獲物を横取りされそうになり憤慨して争う二人のドーパントの前にアクセルトライアルが現れる。

「貴様っ漸く顔を見せたか!」

そして遠くの部屋から銃弾が放たれて今度かローズドーパントの頬を掠める。

見るとそこにはドレスのスカートを破り動きやすくした大門が銃を向けていた。

「見つけたわよぉ!小娘がぁ!」

お互いの獲物を見つけた二人はバラバラに対峙する。

 

アクセルはそのまま高速移動しナイトドーパントを移動させる。

大門は思いっきり走りながら部屋を後にする。

それを追うようにローズドーパントも向かった。

 

二人の追いかけっこは簡単に決着した何故ならばお互いに壁を背にした行き止まりに当たってしまったからだ。

「「もう逃げられないぞ」」

二人のドーパントは同じ台詞を言う。

それに対してアクセルは「そう思うならかかってこい!」と挑発し大門は「もう逃げないわ!貴女と戦う!」と返す。

 

そして、ナイトドーパントは長剣をアクセルの心臓に向けて構えて全速力で突っ込んでくる。

それに対してアクセルはトライアルメモリを抜く。

マキシマムを発動しその瞬間を待った。

 

 

大門は銃を構えたままローズドーパントが近付いてくるのを待つ。

そして鞭の射程に入った瞬間、ローズドーパントが鞭を振るってきた。

しかし、その鞭が彼女に当たることはなかった。

 

何故ならローズドーパントの背中に痛みが走り壁の方へ吹き飛ばされたからだ。

 

「ACCEL MAXIMUMDRIVE」

 

その正体は赤いエネルギーを纏ったビートルフォンだった。

そして、ローズドーパントの近付く壁にも変化があった。

ヒビが入り爆発するように穴が空くとそこからナイトドーパントが飛び出してきた。

「「何っ!」」

 

そしてナイトドーパントの長剣がローズドーパントに突き刺さり彼女の鞭がナイトドーパントの四足の足に絡まってしまう。

そして、大門はアクセルが救出すると何とそのまま通路から投げ出したのである下は前と同じように五階分の高さがありこのまま落ちたら死んでしまうが大門は背中から天井に吊るされている照明に固定され落下を防いでいた。

 

背中を見るとそこにはイールチャンネルが磁力を使い大門を支えていた。

そして、支えられている大門に照井は叫ぶ。

「撃てぇ!大門!」

その声に従い大門は残った四発の弾を一斉に放った。

照準などしていないデタラメな弾道で放たれる。

 

だが、これで良い。

弾を撃つのが彼女(大門)の仕事で狙うのは(照井)の仕事なのだから....

 

弾が放たれるとアクセルはタイミング良くトライアルメモリのスイッチを三回押した。

すると、トライアルメモリの力が劇的に強化されあらゆる速度を振り切る。

身体が軋む痛みに耐えながら手に入れた速度は弾丸の速さを超えた。

 

そして、その速度を生かし放たれた弾丸へ向かうと敵に向けて照準を合わせて弾を殴り付ける。

それにより変化した軌道は四発ともドーパントの方へ向かった。

トライアルのエネルギーを蓄積した神経断裂弾がドーパントに直撃すると同時にトライアルのマキシマムを発動する。

 

「TRIAL MAXIMUMDRIVE」

 

ドーパントの身体に四つのTの文字が浮かびメモリが限界を迎え爆発すると二人は元の姿に戻った。

その姿を見てアクセルは変身解除すると気を失い倒れてしまった。

「てっ照井課長!」

大門が助けようとするが今の大門は天井に吊るされた状態で何も出来なかった。

 

大門はイールチャンネルが慎重に地面まで下ろすと照井の元に駆け寄る。

「照井課長!照井課長!」

名前を呼びながら照井の脈を確かめる。

「脈は...安定してる良かったぁ。」

そう言って大門は地面にへたり込む。

そして大門が風都署へ連絡することで船は警察の手に落ちるのだった。

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