もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百六十一話 Sの反乱/変わる相棒

 

フィリップと亜樹子は最近の翔太郎の変化に戸惑いを隠せないでいた。

「本当にあれって翔太郎君なの?」

亜樹子の問いにフィリップは悩む。

 

ジュエルドーパントの一件以降、翔太郎の態度が変わっていった。

優しくハーフボイルドで甘い男から冷たくハードボイルドと呼べる....鳴海荘吉の様な面影が出てきていたのだ。

 

フィリップは恐る恐る翔太郎に尋ねる。

「翔太郎....本当に身体に問題はないのかい?」

「フィリップ、何度もしつこいぞ。

何ともないと言ってるじゃないか...それにお前も俺の身体を調べて問題ないって分かったじゃないか。」

 

「それは....そうだが...」

そうやってどもるフィリップを見かねて亜樹子はスリッパで翔太郎の頭を叩こうとするが翔太郎に止められてしまう。

「"亜樹子所長".....そう言うおふざけを仕事場でやるのは感心しないな。」

「うっ!....すいません。」

 

何時もの翔太郎なら「生意気!」と言って叩ける筈なのに普通に亜樹子は恐縮してしまう。

 

気まずい空気が流れていると照井が事務所へ入ってくる。

「あっ、竜君!もう身体は平気なの?」

「問題ない所長、俺は不死身だ。」

照井と大門、そして泊と泪は怪我の治療のため病院に搬送された。

大門と泊、泪の怪我は思ったよりも軽く数日の入院を経て退院することが出来た。

 

フィリップ曰く「翔太郎が更にメモリとの適合率が上がった結果、ルナシャインキューブの回復力も増えたのだろう。」とのことだった。

因みに照井は数ヵ月は絶対安静と言われる怪我を負ったがその翌日には起きて仕事の後処理を行っていた。

 

そして、数日経つと泊と大門は風都を去りそれぞれ別の警察署へ配属されることとなった。

 

 

閑話休題

 

照井を見た翔太郎が尋ねる。

「ところでここに何の用だ照井?」

「...あぁ、"05"の事は覚えているな?」

 

「ミュージアムの幹部が経営している裏ファイトクラブだろ?

それがどうした?」

「実は最近、動きが活発になってきているんだ。

至るところで違法や試合を行っている報告を聞いている。」

「それは妙だね....ミュージアムは基本的に表立って活動することを控えてきた。

僕達がドラゴンドーパントと戦って暫くはそんな噂なんてまるで流れてこなかったのに....」

「あぁ、明らかに組織内で何かがあったんだ。

そしてそれだけ動き回れば他のホコリも出てくる。」

 

そう言うと照井は資料を三人に見せた。

「ここ最近、05と交流があった可能性のある人物や団体だ。」

「ホステスに教師...これは武術家に政治家か....随分とバリエーション豊かだな。」

「あぁ、こちらでも捜査しているがまだ確信を持てる程の証拠もない。

だから左達にも協力を頼みたいんだ。」

 

照井の言葉に翔太郎が快諾する。

「分かった...こっちでも色々当たってみよう。

何か分かったら知らせる。」

「あぁ、頼む。」

照井はそう言うと事務所を離れる。

そして、翔太郎は帽子を被ると立ち上がる。

「フィリップ...俺は街の人に聞き込みをする。

お前は地球の本棚で05について調べてみてくれ。」

「分かった....だけど」

 

「....何だ?」

翔太郎の威圧感がある声にフィリップは口を紡ぐ。

「....何でもない気を付けて行ってきてくれ。」

「分かった。」

そう言うと翔太郎は部屋を出ていった。

その姿を見た亜樹子の不安が募る。

(何だろう....まるで"翔太郎君がいなくなる"みたいな感じがする。)

 

このままではいけないと思った亜樹子は翔太郎の後を追うのだった。

 

 

一方、園咲邸では加頭が琉兵衛の元を訪ねていた。

「久し振りだね加頭君、元気にしていたかね?」

「えぇ、お陰様で....今回は琉兵衛様にお話があってきたのです。」

 

「何かね?」

加頭はノートパソコンを開くととあるファイルを表示させて琉兵衛に見せる。

「最近、ミュージアムの収益率が40%も下がっています。

この理由についてお聞きしたく....」

「君も知っているだろう?

仮面ライダーの仕業だよ...彼等に幹部が手痛いダメージを受けてしまってね。

組織運営が上手く進まなくなってしまってね。」

 

 

「えぇ、それは知っています。

獅子神さんのところで20%、サラさんの所で10%の損益を出していますから....」

ミュージアムの幹部である獅子神とサラ、そして園咲冴子の行うガイアメモリ販売の収益がミュージアムの資金源の大元を占めている。

だからこそ、幹部の失策は直接的な損益となってしまうのだ。

 

「獅子神さんは抱えている部下の組織のダメージにより収益が落ちサラさんは取引に使っていた船が警察に奪われた結果の損益だと言うことは理解しています。」

「だが、財団への損はない筈だ。

この事で財団側から何か言うことでもあるのかね?」

「いえ....我々は利益追従主義ですので自分達に損がなければ基本はノータッチです。」

「では何故そんな事を聞いてくるのかね加頭君。」

 

「私の疑問は残った10%の損益についてです。

ミュージアムの組織は巨大です。

その組織が出す10%の損益は凄まじい。

一体何に使ったのか疑問に思いまして...」

「それを話さねばならない理由はあるかね?」

「ありませんが....今後とも良いパートナーとしているためには聞いておきたいと思っただけです。」

 

「我々に隠れてT2メモリを開発した財団Xが言う言葉としては少し傲慢だと思うが?」

「それに関しては否定しません。

しかし、だからこそ今後は更に密接な関係を気付いていきたいのです。

財団がスポンサーをしている組織の中でもミュージアムは大口の御客様です。」

 

「そう言うのなら....何かしらの誠意を見せて貰えないかね?」

「クリスタルサーバーでしたらもう財団にはありませんよ。」

「それはもう必要ない巫女を産み出す儀式はもう始まった。

今欲している物は全く別の物だ。」

 

「それは一体?」

「その前に確認させてくれ....財団Xはこの"世界"についてどこまで知っている?」

「世界...ですか?」

「この世界は如何にして産まれたのかだよ。」

「それは"多元宇宙に関わる地球"も含まれるのですか?」

 

「その言葉が出たと言うことは知っているのだね?」

「ある程度は....ですが...」

「それだけ聞ければ十分だ。

私が欲しいのはとある"イコン画"だ。」

「....あの絵の事ですね?

しかし、それは難しいと思います。

あれはこの世界の成り立ちに直接関わる物です。

だからこそ、財団は厳重に保管しています。

その場所は私も分かりません。

知っているのは財団の運営関わる上層部の人間だけです。」

 

「では、その上層部の人間と話をつけることは出来ないかね?」

「.....私の知っているのは一人だけです。

もし、その方と連絡をつけられるのなら理由を教えていただけますか?」

「良いだろう。

それだけの事をしてくれるのなら理由を話そう。」

 

「10%の利益は"風都第二タワー"に必要な物を手に入れる為に使ったんだよ。」

「風都第二タワーですか....確か今丁度建設が続いている建物ですよね?」

「あぁ、そのタワーに使う為だよ。

納得したかね?」

「いえ、寧ろ余計疑問が湧きました。

ミュージアムの10%の利益を使えば風都タワー程度の建物なら複数建設できます。

しかし、その金額を一つのタワーに使われる何かに使用した。

一体そのタワーは何なのですか?」

 

「それについては私が説明しますよ。」

そう言うと部屋に無名が入ってきた。

「タワーに必要な物は...."装置"です。

分かりやすく言えば掘削機の様な物ですね。」

「地面に大穴でも空けるつもりなのですか?」

 

「いえ、開けるのは地面ではなく.....」

 

 

 

 

 

 

「"地球の記憶"です。」

 

 

 

 

 

 

翔太郎は情報屋のウォッチャマンから話を聞いていた。

「裏ファイトクラブ?」

「そうだ。

この風都で違法な賭け試合が行われているらしくてな何か知らないか?」

「それならぁ、気になる噂があるよぉ。

雀写真館の噂について翔ちゃんは知ってる?」

 

「確か....金と写真を持っていけば殺しの依頼を受けてくれるとかか?」

「そうそう、でも最近では別の噂が立っていてね。

雀写真館には夜な夜な幽霊が現れてるんだってぇ!」

 

そう言ってウォッチャマンは翔太郎を脅かすように動くが本人は冷静に対応した。

「そうか...ありがとう。

これは報酬だ。」

「あっ...ども...翔ちゃん何か変わった?」

「さぁな....だが人間なんだから何かしらは変わるだろう?」

「そう言うのじゃなくてもっと根本的な....」

ウォッチャマンの言葉を無視し翔太郎はその場を後にするのだった。

 

その光景を人混みに隠れながら無名が見つめていた。

「順調にメモリと適合しているみたいですねぇ.....

完全に変わりきるのは時間の問題だな。」

【変わる?....それはどういうことだ?】

鏡に写る無名が自分自身に尋ねる。

その光景を見て無名(ゴエティア)は感心した声を上げた。

「ほう....もうそこまで出来るようになりましたか。

地球の本棚の力に適合できるとは流石です。」

【答えろゴエティア....僕の身体を使って一体何をするつもりなんだ?】

「さぁね....それを教える義理はない。

ですがそれじゃあ面白くありませんからヒントを上げますよ。」

【ヒント?】

「"ジェイルメモリ"....それについて調べてみると良い。

能力を見れば聡い貴方ならば私の思惑に気付けるだろう。」

 

【.....お前は一体何なんだ?

地球の本棚でお前の記憶の一部を見た.....見れば見る程分からなくなった。

ゴエティア、貴方は一体どんな"存在"だったんですか?】

「......我々の存在を定義する言葉は無いな。

何故ならそんな事をする意味がなかったからだ。」

【意味?】

「例えばこの世界に犬しか存在しなかったら犬は自分の事を犬と言う種族名で呼称するだろうか?

名を気にするのは個として確立されていたからだ。」

【名で言うなら貴方にはゴエティアと言う名があるでしょう?】

 

「そうだな....そんな名を持とうとしなければ...我々はまだ存在していられたのかもしれないな。」

ゴエティアは一瞬寂しい表情を浮かべると元の顔へと戻った。

「さぁ、つまらない話はこれで終わりだ。

もう次のゲームは始まっている....参加したいのなら早く検索を始めた方が良い。

では....またいずれ...」

【待て!ゴエティア!....】

そう言うと鏡に写った無名は元の姿へと戻る。

 

「さぁ、先ずはシュラウドに会いに行きましょうか。」

そう言って無名はその場を後にするのだった。

 

 

レオグループの構える支社にいる灯夜は玉城を呼び出していた。

「何か用か?灯夜さん。

今、次の試合を組むので忙しいんだが....」

「貴様ふざけているのか?

何故、獅子神に黙って賭け試合を再開させたんだ?

今は警察にセブンスの存在を理解させるような行動は控えろと言われていたじゃないか!」

 

怒る灯夜に玉城は溜め息をつきながら言う。

「なぁ、灯夜さん...一体何時まであの男に付き従うつもりなんだ?

幹部の無名とやりあってからあの男は変わった。

常に焦り余裕のない表情と行動....あんな奴についていって俺達に未来はあるのか?」

「獅子神は今、勢力を拡大させようと動いている。

そのせいで余裕がないだけだ。」

 

「そんな嘘を信じてる訳じゃないだろ?

噂じゃ最近は外にも出れなくなっていると聞くぞ?」

獅子神が外に出れていないのは事実だった。

ジェイルメモリの紛失が彼の不安感を増大させ代わりのメモリを見つけるまで動けないでいたのだ。

その理由を灯夜は良く知っていた。

 

(レオメモリは獅子神のプライドと自信を力に変える....故に敗北を重ねるとメモリの力が弱くなっていく。

それを解決するためにジェイルメモリを使っていたがそれが無くなってしまった。

しかし、一度使ったお陰で次の変身時には能力の減衰は無いだろうが...これから一度でも負けたらレオメモリの力は"一般のプロダクトメモリクラス"まで下がるだろう....だからこそ水島や他の幹部は代わりのメモリを探すことに奔走しているんだ。

今、獅子神の組織を運営しているのは僕だ....だからこそここで反乱の意思を挫いて置かなければ...)

 

「玉城、仮にミュージアムを裏切ってその先に何がある?

彼処には裏切り者を粛清する処刑人もいると聞いている。

いくら組織がデカくなっても崩壊するのは時間の問題だぞ。」

「....はぁ、灯夜さんいや"灯夜"、お前は変わったな。

獅子神と出会って付き従うことに慣れすぎちまったみたいだ。

悪いが俺はそんな奴に従うつもりはない。

この組織は力が全てだ....力を示せないのなら"05"はセブンスを抜ける。」

「そんな勝手を許すと思っているのか?」

 

「なら、止めてみろよ。

最もメモリすら持ってないお前じゃ無理だろうがな。

まぁ、仮にメモリを手に入れても"父親にコンプレックス"を持つお前じゃ俺には勝てないだろうがな。」

的確についた玉城の言葉に灯夜は怒りの表情をする。

「もういい....そこまで言うのなら好きにしろ。

だが、もうセブンスには頼れないぞ?勿論ミュージアムにもな。」

 

「ふん!あの一件(ドラゴンドーパント)以降、メモリを使うファイターを増やした。

仮面ライダーが来ようが問題ない。

じゃあな灯夜、精々沈んでいく船を支えてやることだ。」

玉城がそう言って部屋を出ていくと灯夜はとある人物に連絡を取った。

ワンコールでその人物は電話に出る。

 

「ん?灯夜どうした?何かあったか?」

"鉄"(てつ)....玉城がセブンスを裏切った弟の"剛"(ごう)を連れて奴の首を取ってこい。」

 

「マジかよwwwアイツそんな事したのか。

おい剛!玉城が裏切ったってよ!」

兄の話を聞いていた剛も話に加わる。

「へぇ、最近は裏切者の粛清なんて仕事来なかったけど遂に来ちゃったかぁ....楽しみだなぁ兄貴!アイツのメモリって確かアリゲーターだよな?

なら、楽しい殺し合いが出来そうだなwww」

 

セブンスの幹部である。

東堂(とうどう) 鉄と東堂 剛の兄弟は他の幹部と違いメモリ販売やギャンブルの仕事はしていない。

彼等の仕事は敵対する組織や裏切者の粛清でありそれ故にセブンスのメンバーからも恐れられていた。

 

灯夜が彼等を動かすと言うことは玉城を裏切者として扱うことを決めたことでもある。

「分かったぜ灯夜、玉城はキッチリ消してやるよ。

奴の居場所については俺らが調べた方が良いのか?」

「いいや、玉城は今日、05の試合をやる。

会場の位置も分かっているからそこを強襲すれば良い。」

「そっか....んで場所は?」

 

 

「風都の"雀写真館の地下"だ。

必要なら周りにいる奴等も殺して構わない。

確実に玉城を殺せ。」

「あぁ、そこに関しては心配すんな。

終わったら連絡する。」

 

そう言い終わると灯夜は電話を切り机に置かれていたケースに目を向ける。

これは無名が持ってきた自分専用のメモリであった。

(これを使えれば....)

そう言ってケースを開けると中から金色のメモリが一本姿を現す。

 

 

"C"のイニシャルが書かれたメモリに灯夜はそっと触れるのだった。

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