もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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風都から離れた場所にある町"夢見町"(ゆめみちょう).....
ここで一番高く聳え立っているビルに青年が二人呼び出された。

呼び出したのはこのビルのオーナーであり鴻上ファウンデーションの会長である鴻上 光生(こうがみ こうせい)であった。


クリスマス特別編
クリスマス特別編 風都と休暇と移動


「良く来てくれたね。

火野くんに...アンクくん。」

 

「まぁ、鴻上さんの呼び出しですから来ますよ。」

「.....フン、さっさと用件を言え。」

 

火野と呼ばれた青年は丁寧に返答したのに対してアンクと呼ばれた金髪の青年は苛立たしげに言った。

 

「ふふっ、まぁ、そんなに焦らないでくれ。

今日は君達に渡したい物があって呼んだんだ。

そろそろクリスマスが近い君達へのプレゼントだ...HAPPY BIRTHDAY!!

 

部屋に響く大きな声と共に渡されたのは一つの白い封筒だった。

それを火野が受けとると中身を空ける。

「"風都グランドホテルスイートの招待状"...ですか?」

「その通り!前に君達に行って貰った風都と言う町は覚えているかね?

そこにあるホテルの招待券だよ。

一泊二日のチケットだこれを使ってゆっくり休んでいきたまえ。」

 

鴻上の提案にアンクが吠える。

ふざけんな!グリードはこの町にいるんだぞ?

何で態々、メダルを回収できない所に行かなきゃならねぇ!」

「コラ、アンク!落ち着いて....鴻上さん。

僕も今、この町を出るのは反対です。

前の時はグリードもそんなに活動してなかったけれど今は違います。

もし、俺達がいない間に"ヤミーやグリード"が出たら....」

 

「その点に関しては問題ない。

既に策はうってある。

それにそんな事態になったらいち早く君達を呼び戻すさ。」

「話にならねぇな....おい映司帰るぞ。」

 

そう言って帰ろうとするアンクを鴻上が呼び止める。

「君にもプレゼントはあるぞアンク君。

この招待に応じてくれるのなら君にセルメダルを"300枚"プレゼントしよう...どうかね?」

「!?」

 

セルメダルはグリードの肉体と力を形成する上で重要な物でありその量によって強さが変わる。

現在、アンクは鴻上とメダルシステムの使用する契約としてオーズが戦闘で倒したヤミーのセルメダルの60%を渡している。

更に前払いとして100枚渡したこともあり、身体を維持するだけで精一杯だった。

 

だからこそ、その提案はアンクにとって喉から手が出る程、魅力的に感じている。

そこに鴻上からのダメ押しが入る。

「仕方無いなぁ...ではアンク君に耳寄りな情報を渡そう。

映司君は少し離れてくれ。」

「あ.....はい。」

 

そうして鴻上はアンクに耳打ちをすると表情が変わる。

「良いだろう...お前の望み通り風都に行ってやる。

おい、行くぞ映司!」

「ちょ!待ってよアンク!

何でそんなやる気になったの?」

「うるせぇ!早く行くぞ!」

 

アンクはそう言って映司を引きずっていくのだった。

その光景を見ていた鴻上の秘書である里中(さとなか)が尋ねる。

「宜しかったのですか?」

「問題ないさ。

ヤミーに関してはドクター真木の開発した"新たなシステム"のテスト運用で使って貰うさ。

確か新しく"ライドベンダー隊の隊長"になった彼ならば....」

そう言って鴻上はパソコンを開くとライドベンダー隊の名簿を開く。

 

隊長の欄には"後藤 慎太郎"と書かれていた。

 

 

 

アンクに無理矢理連れていかれそうになる映司だったがちゃんと皆に説明しといた方が良いと言ってクスクシエへと向かった。

しかし、何時もなら昼からやっているクスクシエの看板が"CLOSE"となっていた。

 

不思議に思った映司が中を開けると店長の白石 知世子(しらいし ちよこ)と店員でありアンクの借りている肉体である泉 信吾(いずみ しんご)の妹である泉 比奈(いずみ ひな)が店の荷物を段ボールに積めていた。

「知世子さん...比奈ちゃんこれどうしたの?

お店も閉まってるし何かあったの?」

そう尋ねる映司に知世子は笑顔で一枚のチラシを見せた。

 

「"クリスマスグランプリ"?」

「そう!全国で行われている日本一のお店を決める大会があってね。

今回はクリスマスに行われるのよ!

そして何とそこにクスクシエが選ばれたのよ!

だから急いで荷物を纏めて会場がある"風都"に向かおうと思っているわけ」

「えっ!皆も風都に行くの?」

 

「えっ!と言うことは映司君も?」

比奈の問いに火野が答える。

「うん、僕達もさっき鴻上会長から風都のホテルで休んで来いって言われて」

 

「なら丁度良いわね。

映司君!アンクちゃん!実は荷物が多くて運ぶのが大変なのよ。

手伝ってくれない?」

「あ?何だって俺達が....」

 

「良いですよ。」

「おい!映司!」

即答した映司にアンクが怒る。

「どうせ同じ場所に行くんだ。

それに俺達はクスクシエに居候させて貰っているんだぞ?

少しは恩返ししないと....」

「ざけんな!俺はやらな....」

 

「いい加減にしなさいよアンク。

言うこと聞かないなら....ふんにゅ~!」

比奈が食べ物を冷やす業務用の大型冷蔵庫を持ち上げたのを見て映司は顔色を変える。

「あーっ...アンクも手伝うよな?...手伝うって言え!

チッ!仕方ねぇな...分かったよ手伝えば良いんだろ。」

 

何とか比奈からの制裁(大型冷蔵庫の投げ渡し)を防いだ二人は荷造りを手伝うと一緒に風都に向かうことにした。

 

そこで比奈が思い出したように知世子に言った。

「そう言えばグランプリの受付を名乗っていた人。

珍しい名前をしていましたよね?」

「そうねぇ、確かにあんまり聞かないわよねぇ....」

 

 

 

 

「"無名"って名前は.....」

 

 

 

 

所変わって風都グランドホテルのスイートルームにいる無名は一枚の資料を見て眉間を抑えていた。

周りにはリーゼと黒岩、それに赤矢が座っている。

 

因みにこのホテルはミュージアムが経営しているので無名のいる部屋には監視カメラは存在していない。

 

無名から事情を聞いた赤矢が話す。

「そんなに悩む程、ややこしい案件なのか?」

「どうしてそう思うのですか?」

 

「この資料を見てからのお前の動きには焦りが見えた。

鴻上会長にコンタクトを取ったりこのホテルやここで行われるイベントにまで口を出したり...

"まるで予定外の事に戸惑っている"そんな感じだったぞ?」

(流石良く見ていますね。)

 

黙ってても意味がないと思った無名は三人に話し始める。

「この資料に写っている男は窃盗犯です。

それもガイアメモリを使って窃盗を繰り返している。」

「そんな事、この風都では珍しいことじゃないだろう?」

黒岩の問いにリーゼがタブレットに文字を入力して皆に見せる。

 

『盗んだ物に問題があったのか?』

「その通りです。

この男はガイアメモリの力で見境無く窃盗をして鴻上グループが管理する金庫室に忍び込み"一つのメダル"を盗んだんです。」

「メダル?....お前がそう言うって事は普通のメダルじゃないんだろ?」

「えぇ、800年以上前に存在した国の錬金術師が作り出した"オーメダル".....正式には"コアメダル"と呼ばれる物をその男は盗み出しました。

これはある意味、ガイアメモリよりも危険な存在です。」

 

『何がそんなに危険なんだ?』

「コアメダルには強大な力が封じられていますが敢えて制御する機能を外しているんです。

謂わば、薄いガラス瓶に入った爆弾ですね。

ちょっと使い方を間違えて落としたら爆発してしまう。

そんな物です。」

 

オーズの世界についての記憶はWと絡んでいる事もありある程度は無名も知っていた。

古代の錬金術師が王の為に作り出したコアメダル....確か古代の王はこれを使って世界を手に入れようとするがその力に肉体の器が耐えきれず石化してしまった。

コアメダルはオーズの持つドライバーかそのメダルに対応したグリードが使うことで制御出来る。

 

逆に言えばそうでないものが持ったらどんな影響を及ぼすのか全く分からない。

もし、コアメダルを持ったままガイアメモリを使用したらどんな被害が起こるのか無名にも把握できなかった。

 

だからこそ、オーズを呼び出したのだ。

だが、これでも不安が残るのは確かだ。

 

「もう一つ、布石を射っておきますか。」

 

無名はホテルから部下に指示を出すと自分も行動を開始するのだった。

 

 

 

 

予定よりも早く風都に到着したオーズのメンバー(火野、アンク、白石、比奈)は目の前にある改装中の風都タワーを眺めていた。

「おっきいわねぇ、流石は風都の名物ねぇ。

でも改装中なのが残念ねぇ...」

「凄い事件があったらしいですからね。

テロリストに占拠されたとか....」

 

そんな話をしていると近くで露店が開かれている所を見つける。

その売り文句にアンクが食い付いた。

「風都限定の"風都くんアイス"いかがですか?」

「アイス....おいお前、これはアイスなのか?」

「はひっ?...えっと...そう...です...」

 

「味は?」

「とっ...トロピカル味です。」

 

「トロピカル?...うめぇのか?」

「おい.....しい...と...」

 

「声がちいせぇな...ハッキリ喋れ!」

「はい!美味しいです!」

 

明らかにヤンキーに追い詰められている可哀想な店員の構図に映司が助け船を出す。

「おいアンク、店員さんを脅しちゃダメだろ。

すいません、コイツこんな為りしてますけど優しい奴なんで...」

「はっ...はぁ。」

 

「おい、映司今日の分のアイスを寄越せ。」

アンクは映司と比奈を助ける時にアイスを一年分奢ると契約していた。

「はぁ?アイスなら鴻上さんと会う前に渡したじゃないか。」

「あれは夢見町でのアイス分だ...ここは風都、ならその分のアイスも寄越して貰う。」

 

「お前、何処の詐欺師だよ。

そんな横暴な理由で買うわけ無いだろう。」

「あ?テメェ契約を破る気か?」

「契約なら守ってるしちゃんとアイスは渡してる...欲しいなら明日言いなよ。」

 

折れることの無い映司の顔を睨み付けるアンク...その空気感の悪さに周りもザワザワし始める。

そうしていると一人の男が仲裁に入った。

「おい、待てよあんちゃん達....ここでのケンカは止めて貰おうか?」

「あ?誰だお前?」

 

アンクの問いに帽子に手を掛けて男は答える。

「俺は左 翔太郎。

この町で探偵を営んでいる者だ。

んな事よりここでケン....カ....あぁ」

そう言うと翔太郎は地面にうずくまった。

その姿に映司が尋ねる。

「えっ、大丈夫ですか?」

その問いに翔太郎ではなく別の人物が答えた。

 

「あぁ、心配しないで良いよ。

只のアイスの食べ過ぎだから....」

「だから言ったのに...そんなに食べたらお腹壊すって」

そう言いながら本を持った青年とポニーテールの女性が現れる。

「貴方達はこの人の知り合い?」

「あぁ、僕の名前はフィリップ。

そこでうずくまっている翔太郎の相棒で二人で探偵をしているんだ。」

「私はその事務所の所長をしてる鳴海 亜樹子ね。」

 

そう言うと二人は翔太郎を介抱する。

「全く、一体何本の風都くんアイスを食べたんだい?」

「20...から先は....数えてねぇ....」

「明らかに食べ過ぎだし無駄遣いじゃない!」

 

「だってよ...."限定風都くんフィギュア"が欲しくて...な。」

「フィギュア?」

「ここのアイスの特典だよ。

アイスを食べ終わった後に付いている棒に当たりのマークがあると貰える限定のフィギュアだ。

数量も少なくて当てるにはかなりのアイスを食べないと行けない。」

 

「そうなんですか....そんなに欲しいんですか?

そのフィギュアが」

映司の問いに翔太郎が腹を抑えながら答える。

「当然だぜ....俺は風都くんファン...だから...な。」

 

少し考えた映司はアンクに言った。

「アンク、アイス一本食べようか。」

「どういう風の吹き回しだ?」

「別に....ただあんなに真剣に欲しがっている姿を見て...少し羨ましく思ってね。」

そう言うと映司はポッケからパンツを取り出すと開いて小銭を集める。

「えっと...いくらですか?」

「はい...300円...です。」

 

映司は300円を店員に渡してアイスを受けとるとアンクに渡した。

「はい、風都でのアイス。」

「....ふん。」

アンクはアイスを映司から受け取ると食べ始めた。

見た目は風都くんの形をしているアイスだが味は美味しいらしくアンクは無言で食べ進めていた。

 

「これで当たったら探偵さんに当たり棒渡しますよ。」

そう言う映司にフィリップが言う。

「気持ちは有り難いがこのアイスの当たりの確率は2%程度だ。

そんな簡単には....」

 

「おい、映司....何かマーク付いてるぞ。」

「「何だって!」」

フィリップと店員は驚きながらアンクの食べ終わったアイスの棒を見つめる。

「間違いありません!これ当たりです!」

「信じられない。

まさか、一発で当てるなんて.....」

 

その光景に驚き周りは拍手を始める。

「おい、映司。

何でコイツらは拍手してんだ?」

「まぁ....奇跡が起こったってことだよ。」

 

 

そんな話をしていると映司とアンクの直感が働きその場から逃げるように避けた。

すると空中からその間を何かが通り過ぎた。

「何だ一体?」

「映司、上だ!」

アンクの言葉に従って上を見るとそこには空を飛ぶ昆虫のような怪物がいた。

「あれはヤミーか?」

「いや、奴にセルメダルの気配はねぇ....

寧ろコアメダルの気配がする。」

 

「えっ、じゃあグリード?」

「それもちげぇ、あの時の怪物(ファングドーパント)に近いな。」

そんな話をしていると探偵の人達が皆を逃がしていた。

ついでに比奈ちゃんや白石さんも逃げている今ならバレる心配も無さそうだ。

 

「アンク、メダル!

オーズになって戦う。」

「ふん、しっかり稼いでこいよ.....!?」

そう言ってアンクがコアメダルを渡そうとするが動きが止まる。

「どうしたんだよアンク?」

「.......ねぇ」

 

「え?」

「コアメダルが......ねぇ。」

 

 

 

「.......えぇぇぇぇぇ!!!

 

 

コアメダル紛失と言う異常事態に映司は本気で焦るのだった。




オーズ原作との相違点。

後藤 慎太郎が原作よりも自分の無力さと限界を理解しておりそれを知った上で守る強さを求めている。

その欲望を鴻上は評価しておりバース装着者の候補として入れている。

原作と違い、オーズとWは接触していないので二人とも仮面ライダーだと知らない。





クリスマスイブとクリスマスに掛けての投稿となりますのでお楽しみください。

作者より

外伝 続編の投稿に関して

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