俺が灯夜と出会ったのはセブンスを立ち上げる為にスカウトを行っている時だった。
武器や護衛も付けずに現れた灯夜は俺を...俺達の組織を見つめていった。
「中々"値打ち"がありそうですね。」
「あ?どういう意味だ?」
不満げに聞く俺に灯夜は答える。
「05と言う組織の価値の話です。
強く人を惹き付ける魅力がある....」
「そんなに誉めてくれるならお前が俺達の下につけば良いんじゃないのか?」
「えぇ、それも面白そうですが難しいですね。
確かに君の組織の価値は高い....だが一つの組織を纏めるだけで精一杯なんじゃないですか?
裏ファイトクラブとして有名になってはいますが力で抑え付けるだけじゃ反発が来る。
現に同業者から圧力が来てるんじゃないですかね?」
確かに今、同じ様に裏ファイトクラブを経営する同業者から俺は目の敵にされている。
"元ファイター"として戦っていた俺はガイアメモリと出会いその力に魅了された。
そして、俺はこの力を使ったファイトを昔いた組織に求めたが認められなかった。
"コストが高い"だの"只の殺し合いにそんな金を賭けられるか"ってな.....
だから、俺は昔の組織を抜けて新しい組織として05を立ち上げた。
"ガイアメモリを使ったファイトクラブ"....俺はその野望を叶えるためにこれまでやってきた。
だが、現実はそんな簡単には行かない。
ガイアメモリの単価は高くどんなバイヤーに話を通しても満足行く数のメモリを揃えることが出来なかった。
そんな中で灯夜が現れたんだ。
灯夜は目の前に持っていたアタッシュケースを放り投げる。
その衝撃で中身が開くとそこから大量のガイアメモリが姿を現した。
「私はガイアメモリを独自に仕入れられるルートを持っています。
玉城さん...貴方がもし私の元に来てくれるのならこれを全部渡したって良いですよ。」
破格の条件に俺は裏があると疑い尋ねた。
もし少しでも嘘を感じたら灯夜を殺せるようにメモリを手に忍ばせて....
「....何故だ?
何故そこまでする?
お前の組織には強いメモリ使いがいるんだろ。
そいつをけしかければこの組織を手に入れることなんて簡単だろう?」
「そうですね。
けどそれじゃ意味がないんです。
私は"貴方自身に興味"があるんですよ。
ただ貪欲に強さを求めガイアメモリを使う貴方に....」
そう言って灯夜が俺に少し羨ましいと言う感情を向ける。
「貴方はガイアメモリを使ったファイトクラブを作りたいんですよね?
なら、私が力を貸します。
そして見せてください....貴方の野望の果てを」
俺はその言葉に引き込まれた。
今まで否定されてきた俺の野望の果てを見たい....そう言われたのは始めてだった。
コイツになら賭けても良いかもしれない。
そう思った俺はその場でセブンスへの加入を決めたんだ。
第百六十二話 Sの反乱/暴力の価値
夜の風都の街の一角に立つ小さな建物。
嘗てはあらゆる人がここに来ては写真を撮っていた雀写真館は今となってはその面影もなかった。
寂れた扉の奥にあるのは古びたカメラとアンティークな机と椅子だけであった。
写真館を経営していた老夫婦が亡くなるとそこは恨み抱えた人の代わりに
ファイトクラブの観戦や参加を行うには予め連絡を受けていたバスに乗り込む必要があった。
奇しくもこの行動はマネードーパントが行っていた裏カジノである"ミリオンコロッセオ"と同じやり方だった。
故にフィリップに検索をしてもらった情報を頼りに翔太郎と照井は目的のバスへと乗り込んだのだった。
バスに乗り込むとお互いとなりの席に座る。
どうやら、まだ人が集まっていないのか中に入るのは翔太郎と照井だけだった。
翔太郎は帽子を下げて目元を隠すと腕を組み眠りについた。
だが、照井にはその裏が読み取れる。
(成る程、寝ている人間を警戒する者はいない。
見た目だけでもそうしておけば何かしらの情報が得られるかもな。)
照井も同じように腕を組み目を瞑ったふりをしていると
バスの中にどんどんと人が入ってくる。
それぞれの会話に耳を澄ませる。
「今日のファイトは楽しみだなぁ。」「今回は何人死ぬと思いますか?」「このファイトクラブだけが唯一の楽しみなんですよ。」
それぞれが下品た会話をする中、一つの会話に聴視する。
「兄貴、来ると思うか?」
「どうだろうな?
灯夜が言うには玉城は現れるらしいが.....」
「現れなかったらどうする?」
「そんなの決まっている....皆殺しにすれば良い。
そうすれば嫌が応でも出てくるさ。」
「アハッ!それもそうか!」
この場に似つかわしくない気配を携えた二人の会話を聞き翔太郎は帽子を少し上げ照井は薄目を開けて顔を確認する。
(コイツらは....確か風都署の資料室で顔を見たことがある。)
そう思っていると照井の携帯に着信が入る。
開くと翔太郎からメールが入っていた。
『コイツらについて何か知っているのか?』
翔太郎の問いに照井は答える。
『あぁ、コイツらの名前は東堂 鉄と剛、巷では"東堂兄弟"の名で有名になっている男達だ。
傷害に窃盗、殺人、重ねた罪を上げればキリが無い程の犯罪者達だ。』
『何故、東堂兄弟は警察に捕まっていないんだ?』
『捕まえる前に海外に飛ばれたんだ。
しかも、場所はその時に情勢が不安定で戦争が続いていた国だった。
噂ではそこで傭兵として働いていたらしい。』
『傭兵....となると戦闘能力は高そうだな。』
そんなやり取りしているとバスが止まり人が降りていく。
翔太郎と照井はそれに着いていくのであった。
写真館の中に通されると見張りの男達が目の前のソファを動かすと下に鉄の扉があり開けると中に入ることが出来た。
中へ入ると暗く先が見えないがコンクリートで囲われた広大な空間だと言うことは分かった。
辺りには黒いシミが多数付いておりそこが普通ではない場所だと実感させた。中に全員入ると入り口の扉が閉められる。
すると、ライトが付き眩しさに皆顔を伏せる。
目が馴れてくると自分達のいる場所の違和感に気付く。
周りを鉄製の檻によって囲われていたのだ。
その光景に内部にいる人間は動揺する。
「ど...どういうことだ!」「何で...私達がこんなところに!」「おい!出してくれ!」
そんな声が響く中、檻の外から男が現れてくる。
その男を見つけた者達は皆話しかける。
「玉城さん!これは一体どういうことだ!」
「そうよ!私はファイトが見られると思ってきたのに何でこんなことを!」
そんな話をしていると玉城と呼ばれた男が話し始める。
「皆様、今日もお集まり頂きありがとうございます。
今回のファイトは趣向をこれまでと変えまして観客であった皆様にも参加していただきます。」
「何っ!」「どういう事よ!」「意味が分からない!」
「ここに集められた人達は05の顧客の中でも比較的、利益を落とすのが少ない人達....言い換えれば切り捨てても問題のない人ばかりです。
ですので我らの利益のために今回のファイトに強制参加して頂こうと思いまして...」
「ふざけるな‼️ そんな事が許されるわけないだろ!
俺は意地でも帰らせてもらう!」
そう言って玉城の言葉に反発した一人の男が檻に触れると身体がいきなり痙攣し身体から煙を立てる。
「グギッ!グギギ!」
声とも取れない断末魔を上げると地面に倒れ伏した。
照井が駆け寄り脈を確かめる。
「.....死んでいる。」
「良い忘れていましたが....この檻には常に一万ボルトの電圧が流れています。
ドーパントの肉体ならばギリギリ耐えられるでしょうが生身では先ず生き残ることは不可能です。」
「生き残る手段はたった一つ....その檻にいる二人を殺せば解放されます。」
玉城はそう言うと東堂兄弟を指差す。
対して本人達はその事に驚きもしない。
「ふーん、俺達が部屋を開ける鍵の代わりなのかぁ。」
「粛清を防ぐために俺達を逆に消そうとするか。
それもゲームのルールとして.....
どうやら、思ったよりも」
「"楽しめそうだな"。」
鉄と剛は懐からメモリを取り出す。
そしてメモリを射そうとするが殺気を感じた二人はその場から離れる。
すると、先程まで立っていた地面に穴が空いた。
「そんな悠長にドーパントになるのを待つと思ったか?
お前らが相手をするのは檻の中だけじゃない。
外にいる彼等もだ。」
玉城の言葉を合図に檻を囲むようにドーパントが現れた。
「05が管理する成績上位のファイター達だ。
彼等もお前達の命を狙う....これで確実に殺す。」
そう言われた東堂兄弟の顔は少しだけ歪む。
「ありゃりゃぁ、完全に囲まれてるな兄貴。
メモリをつける暇もなさそうだ。」
「そうだな。
少しだけ厄介な状況だがやることは変わらない。
玉城....お前はここで殺す。」
そう言うと東堂兄弟は周りを警戒しながら臨戦態勢を取るのだった。
その光景を見ていた翔太郎はフィリップに尋ねる。
(フィリップ、周りを囲んでいるドーパントのメモリの種類が分かるか?)
翔太郎が玉城が東堂達と話している隙を使いダブルドライバーを腰につけた。
ダブルドライバーを付けると翔太郎はフィリップと繋がり無言で会話が行えるのだ。
(あぁ、東堂兄弟を囲うように布陣している四人のドーパントのメモリは同じだろうね。
見た目から見ると生物と言うより無機物か概念のメモリだね。
何かを撃ち出す能力があることは推察できる。
変わって僕達を囲うように固まっている六人の姿は全員違うから別々のメモリなんだろう。
あの四人のドーパントが殺られた時の保険か分からないけどね。)
フィリップの分析を受けて翔太郎は次の一手を思案する。
先ず照井も自分もやらないといけないのはメモリをドライバーをに装填し仮面ライダーへ変身することだ。
玉城の話を聞いた限りここに二人の仮面ライダーがいるとは思っていないだろう。
何とか変身することさえ出来ればチャンスはある。
だが、そのチャンスを作るのが難しかった。
(変身出来ればエクストリームの力を使ってコイツらを、全員倒せるがそんな事をすればここにいる一般人のにも俺が仮面ライダーだとバレる事になる。)
現に翔太郎達の変身はジュエルドーパントとの戦いの時に盗撮されていたらしく俺が変身する場面がバッチリ映っていたと照井から言われた。
今は照井の力で映像を差し替えてどうにかなっているが助けられた船内にいた人達が意識を取り戻せば翔太郎の事を話す危険性がある事は分かっていた。
照井が何とかすると言ってくれたから信頼はしているがそれでもこれ以上、余計に腹を探られる情報を翔太郎は与えたくなかった。
だが、だからと言ってここで指を加えてみているわけにも行かない。
照井も同じ考えなのかバレないように翔太郎へと近寄ってきた。
「どうする左?」
「難しいな。
メモリを起動したら確実に気付かれる...周りを囲われている以上、下手に動けない。」
「せめて、別の方向に"注意を向けられれば"良いんだが...」
「注意を向けるか....」
翔太郎はドライバーを通してフィリップと会話する。
(フィリップ、リボルギャリーに乗ってここに来るのにどれだけかかる?)
(今から準備すれば10分もかからずに到着するけどどうするんだい?)
(奴等の気を引いて変身するためにアクションが欲しい。
本当ならあまりやりたくないんだが.....)
そう言って翔太郎が計画を話すとフィリップは少し考える。
(.....うん、利に叶った作戦だと思う。
現状は時間が惜しいそれで行こう。)
(よし、じゃあ頼んだぜ。)
そうして意識内の会話を終えると翔太郎は照井に言った。
「照井、合図を出したら今、持っているメモリガジェットを全部起動してくれ。」
「分かった。
準備をしておく....」
会話が終わると照井は少し離れてメモリガジェットを起動前の状態にするのだった。
中身の状態で逃げ回っている東堂兄弟の顔に疲労が見えてきていた。
遠距離攻撃を行うドーパントが放つ弾を回避し続けていたからだ。
「はぁはぁ兄貴、ちょっとキツくね?」
剛の問いに鉄は答える。
「なら、止まるか?
命と引き換えに休めるぞ。」
「ははっ!それはちょっと嫌だなっ!」
剛は笑いながらも放たれる攻撃を回避する。
傭兵時代の経験とセブンスに入ってからのドーパントとの戦いにより、場数を踏んできている彼等にとってこの程度の攻撃を避けるのは難しくなかった。
だが、スタミナだけはどうしようもない。
四方向から放たれる攻撃を常に回避していたら止まって休むこともましてやメモリを挿すことも出来なかった。
(何か、きっかけでもあればこんな奴等直ぐにでも殺れるんだがな。)
何時もなら人質を使って変身すれば良いんだろうが玉城が俺達をターゲットだと言ってから俺らに近付く素振りも見せない。
多少無茶をして近付こうとすれば足下に弾が放たれて動きを止められてしまう。
これを繰り返すだけだった。
そしてそれは確実に二人のスタミナを削っていた。
そこで待ち望んだ変化が起きる上から突如轟音と揺れが起こった。
「何だ!何があった!」
玉城が焦りながら声を出すと檻の中に小型のガジェットが姿を現す。
そのガジェットの一体が強烈な光を放出した。
眩しさで周りにいたドーパントは目を背ける。
光が止むとそこには仮面ライダーWとアクセルは立っていた。
「バカなっ!仮面ライダーだと?」
玉城はその光景を見て驚く。
それは東堂兄弟も同じだった。
「マジかよ!仮面ライダー来てんじゃんwww」
「厄介事が一つ増えたな。」
そんな事を思っているとアクセルがスロットルを回し檻に向かう。
「下がっていろ。」
他の参加者がその言葉に従い下がると握り込んだ拳を檻に叩きつけた。
スロットルを回しアクセルメモリの力が蓄積されたパンチは檻を簡単に破壊し穴を開けた。
「ここから逃げろ。」
アクセルの言葉に周りを囲っていたドーパントが正気に戻る。
「させるかっ!」
そう言うとドーパントは檻に近付こうとするがその動きをWによって止められる。
「それはこっちの台詞だ。」
Wがドーパントを殴り飛ばすと天井に穴が空きエクストリームメモリが現れた。
エクストリームメモリを手に取りドライバーに装填する。
「XTREAM」
エクストリームになったWが周りのドーパントを全員を視界に入れると一瞬の内に検索が完了する。
『十体のドーパントの全てを閲覧した。
東堂兄弟を囲っている四体のドーパントのメモリは"カタパルトメモリ"だ。
能力は触れた物質の弾を生成し発射できる。
残り六体のドーパントは"アント"、ゼブラ"、"サイカス"、"アルマジロ"、"Tレックス"、バッファロー"だ。
どれも直接的戦闘力を強化するタイプだね。』
「よし種が分かればこっちのものだ。
一気に片を付けるぞ。」
そう言ってエクスビッカーにメモリを装填しようとした瞬間、アクセルが何者かに吹き飛ばされこちらに転がってきた。
『大丈夫か照井竜!』
「俺に....質...問を....する...な。」
アクセルはエンジンブレードを杖代わりにして立ち上がる。
強がってはいるが相当のダメージが入っていたのだろう。
そして、ダメージを与えた相手達が話しながら近付いてくる。
「何だ何だ...ずいぶんと呆気ねぇなぁ。」
「油断するな剛、コイツらは仮面ライダーだ。
確実に潰しておく必要がある。」
そう言いながら二体のドーパントが現れた。
それを見たフィリップが言う。
『コイツらは...気を付けるんだ!
奴等はドラゴンドーパントの時に現れた獅子神の手下だ。
メモリは"ベア"と"チーター"だった筈......
だが、君達はカタパルトドーパントに襲われていた筈だ。』
フィリップの疑問に鉄が答える。
「それはこのゴミの事か?」
そう言って後ろを指差す。
そこには無惨な死体と成り果てた四体のドーパントが倒れ伏していた。
『バカな....目を離していたのは精々"数十秒"だぞ。
その間に四体のドーパントを片付けたって言うのか?』
「理解できないならお前達も試しに受けてみるか?」
鉄がそう言うといきなりWの背中に衝撃が起こりベアドーパントの方へ吹き飛ばされる。
そしてベアドーパントは拳を握り込むと思いっきり振り抜いた。
咄嗟にプリズムビッカーでガードするが強力な一撃を受けたビッカーシールドにヒビが入った。
『ビッカーシールドにヒビを入れるなんて....一体どんなパワーをしているんだ。』
「集中しろフィリップ!"次が来る"ぞ!」
翔太郎の言葉通り、何者かが超高速でWへと近付いてくる。
盾で受けるとは危険と判断してプリズムソードで攻撃する。
しかし、振り抜いたソードの上にチータードーパントが立っていた。
「遅い遅い....欠伸が出そうな攻撃だなぁ!」
そう言ってチータードーパントはソードを蹴り上げてWの胸にドロップキックを行うとその反動でベアドーパントの元まで戻る。
『この速度....間違いなくトライアルと同等かそれ以上だ。
チーターメモリがこれ程、強力な力を持っていたんだなんて....』
「"力のベア"に"速さのチーター"か....厄介だな。」
「俺達、兄弟は何をするにしても一緒なんだ。
人を殺す時もな....傭兵時代から磨き抜いたコンビネーションはドーパントになったことで必殺の技へと昇華された。
はっきり言おう....この二人が揃った以上、仮面ライダーでも負けることはあり得ない。」
鉄が自信満々に言った言葉をWは否定できなかった。
それ程に強かったのだ。
「さて、無駄話はこれぐらいにして.....」
「そろそろ仕留めようか。」
そう言って鉄と剛はWを見据えるのだった。
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