もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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Wとアクセルの戦いをシュラウドはラピッドソフトを使って監視していた。

見る度に実感する。
無名が使ったジェイルメモリにより左翔太郎とジョーカーメモリの適合率が上がっていく.....

その強さは当初シュラウドがWに求めていた強さに近くなっていた。
私が求めた最強のW....園咲琉兵衛を倒す存在....その完成が近づいていることが分かる。

私は無名を信用できない。
あの風都タワーの一件(AtoZ)を見てから尚更そう思った。
だが、彼は私の求めるWを私の見限った左翔太郎で行おうとしている。

そこにどんな意図があるにしても利用できるならば利用する。

私は無名に渡したアタッシュケースを思い出す。
アレをどう使うのかシュラウドに推し量る術はない。
だが、それでも恐怖の帝王を倒せるならば問題はない。

「もうすぐ....もうすぐよ来人。
これが終われば私達は本当の家族に戻れる。」

そう言って笑うシュラウドの表情には悲しみが写っていた。


第百六十三話 進化するJ/狂いだした運命

 

無名は一人、ミュージアムの所有する治療室にいるとある存在を見つめていた。

そこにミュージアムの構成員が現れる。

 

「失礼致します無名様。

セブンスの玉城と東堂兄弟が雀写真館で仮面ライダーと戦闘を行っていると報告を受けました。」

「そうですか.....思ったよりも早く衝突しましたね。」

 

無名は玉城の裏切りを知っていた。

何故ならそれを指揮したのは他でもない無名本人だったからだ。

獅子神と無名の戦闘を取った映像を見せて不信感を煽り代わりのポストを用意すると言ったら直ぐに食いついてきた。

 

だからこそ、玉城はセブンスを裏切りセブンスを指揮する灯夜は裏切り者の始末を東堂兄弟に依頼した。

 

そう....全てが予想通りに進んでいる。

この計画が成功すれば私は"最高の存在"を手に入れられる。

その為にもシュラウドに貰ったこれが役に....た....

 

 

【お前の目的は一体何なんだゴエティア。】

無名が私にそう尋ねる。

「随分とその力を使いこなせているようじゃないか....もう自由に私の意識に現れることが出来るとは」

 

【答えろ。

お前の動きは見させて貰った....ジェイルメモリをWに使い何を企んでいるんだ?】

「....まぁ、ここまで来れたんだ少しはヒントを与えようか。」

 

「ジェイルメモリは私が地球の本棚にいた頃から狙っていたメモリだ。

能力については君ならば分かっているだろう?」

ゴエティアに尋ねられた無名は答える。

 

【"メモリを挿した相手の感情と記憶の一部を奪い取る"....それがジェイルメモリの能力だと検索して分かった。

だが、何故、フィリップはこの情報を持っていないんだ?】

「それはシンクロ率の違いだよ....原作でも説明されていただろう?」

 

原作では地球の本棚とシンクロする比率が変わることで本棚に触れられたり逆に触れられなくなったりすると説明されていた。

それを利用してフィリップはジュエルドーパントの本を読んだのだ。

 

「あれには続きがあってな。

そもそもあそこで説明された比率は間違っているんだよ。

本に触れられず漂うだけなら本当はシンクロ率は"25%"で行える。

検索と本の閲覧には最低で"50%"のシンクロ率が必要なわけだ。」

【つまり.....原作よりもシンクロ率には先があるのか?】

 

「あぁ、それに関係してくるのが自分の使うメモリとの適合率だ....それが高くなれば地球の本棚とのシンクロ率も上げられる。

今の無名の体とデーモンメモリの適合率は"198%"....因みにここまで来ると本棚とのシンクロ率は"79%"だ。

もう少しで君の精神は私が本棚で存在したレベルと同等までには進化できる。」

【なら、俺もお前のように本棚の力を使えるようになるのか?】

 

「いいや、そう簡単じゃない。

本棚で力を使えば使う程、君の存在は地球の記憶へと同化していく....つまり今度は君が本棚に捕らえられる事になる。」

 

【.........】

「だから諦めて私のやることを黙ってみていろ。

もうすぐ全てが終わるんだからな。」

 

【待て!リーゼは.....リーゼはどうなったんだ?】

無名の問いにゴエティアは非情に答える。

「あぁ...."死んだよ"。

腹を貫かれたんだ...当然だろう?」

 

【.....嘘だ。】

「真実を聞いて心が乱れたな?

悪いがまた来られると面倒なんでなこの身体からシャットダウンさせてもらう。」

【待て....お前は.....いっ...た....い....

 

無名との繋がりが切れるとゴエティアは立ち上がる。

そこに合わせて構成員の一人が話し掛ける。

「何処に行かれるのですか?」

「研究所です。

"部下の安否"を確かめに病院へ行ってから実験を始めます。」

「承知いたしました。

琉兵衛様にそう伝えます。」

 

無名はそう言うと部屋を後にするのだった。

 

 

 

雀写真館の地下ではWとアクセルが多数のドーパントを相手に苦戦を強いられていた。

Wは東堂兄弟を相手にし起き上がったアクセルは逃げようとする玉城の前に立ち塞がっていた。

 

「お前を逃がすわけにはいかん!」

「クソッ!おいお前ら、あの仮面ライダーもターゲットだ。

狩れば報酬を出すぞ!」

玉城の言葉に周りにいた六人のドーパントの内、三人(ゼブラ、アルマジロ、Tレックス)がアクセルを襲いその間に玉城は扉を抜けて逃げようとする。

 

その姿を見ていた東堂兄弟は苛立ちを覚える。

「ちっ!あの野郎、逃げる気かよ。

どうする兄貴、追うか?」

「そうしたいがこの仮面ライダー(W)がそれを許してくれるとは思えねぇ。

俺ら二人だから何とか戦えてるが一人になったら殺られるのがオチだな。」

 

鉄も剛も粗暴や口も悪いが"頭は悪くない"。

冷静に自分の状況と相手との戦力の差を分析して作戦を立てることが出来た。

でなければ傭兵として生き残ることは出来なかっただろう。

「まぁ、だからって逃がしていい事にはならねぇけどな。」

「んじゃ、どうするんだよ?」

「簡単だ....逃げる邪魔をしてやる。」

そう言うと(ベアドーパント)は両腕を力一杯握り込み高く振り上げる。

 

その光景を見た翔太郎は言った。

「照井"崩れるぞ"!」

「?」

その言葉に照井は一瞬、理解が追い付かなくなるが直ぐに答えが分かった。

鉄は両腕を地面に思いっきり振り下ろした。凄まじい衝撃により地下闘技場を支えていたコンクリートと鋼鉄の柱がへし折れて写真館がそのまま地下へと落下してくる。

 

その衝撃は写真館を倒壊させその全ての重さが地下にいる者達に振り掛かった。

凄まじい轟音と土煙が辺りを覆っている。

そんな地面から光の柱が上がるとそこからWと参加者数人が助け出される。

「....くっ!」

『ギリギリで"ビッカーファイナリュージョン"が発動して良かった。

でなければあの一撃で皆死んでいた。』

 

そうして近くの地面が盛り上がり破裂すると何かが飛び出しそこからアクセルトライアルも現れた。

アクセルの手にはボロボロになった人間が二人握られている。

 

「コイツらは?」

「俺を襲おうとしてきたドーパント達だ。

落下して下敷きになる前にトライアルで蹴り上げ続けた。」

『ドーパントを掘削機代わりにしたのかい?

全く無茶をする。』

「あぁ、全員生きてはいるがかなり無茶をしたからなっ!」

 

アクセルはそう言うと落下してきたアルマジロドーパントを蹴り伏せる。

ダメージが限界を迎えたアルマジロドーパントはメモリブレイクし人間の姿へと戻った。

 

「随分と無茶をしたな照井。」

「そうでもしないと逃げられなかった....左、お前の周りにいるのが助けられた者達か?」

「.....あぁ、この数人が限界だった。」

翔太郎は参加者を全員助けようとしたがマキシマムの力が足りず結局助けられたのは四人程度だった。

 

まただ....また救えなかった。

Wの力が強くなりエクストリームを使っても助けられない。

寧ろ助けられない人間が増えていった。

 

助けようと手を伸ばした先から死んでいく。

メモリを使った犯罪者の手によって.....

 

親っさんは言っていた"罪は憎んでも人は憎まない"。

どんな人間にも更正するチャンスがある...と

 

それは本当に正しいのか?

井坂やミュージアムに関係する者をそれで許せるのか?

そいつらは更正するのか?

更正させるために後何人犠牲者を出せばいい?

 

怒りの感情が募りコントロールが効かなくなってくる。

強く握りしめた拳と荒々しい感情にフィリップは心配する。

『翔太郎.....大丈夫かい?』

「"身体のダメージ"はない。

何時、敵が来ても対応できる。」

 

『そっちのことじゃ.....』

フィリップがそう続けようとすると地面が爆発しドーパント体の東堂兄弟が現れる。

「やっぱり生きてたかぁ仮面ライダー。」

「テメェら、どうして無傷で出られたんだ?

あの崩落だお前達にもダメージがある筈だろう。」

 

翔太郎の問いに東堂兄弟は手に持っていた残骸を投げ捨てる。

それは人間の肉の一部だった。

それを見て翔太郎は理解した。

「お前ら...あの三人のドーパントを盾に使ったのか。」

「あぁ、俺の力でドーム状の形に成形して崩落を防いだ後、渾身の力がぶん殴って吹っ飛ばしたんだ。

まぁこれだけ崩落してれば玉城も簡単には逃げられないだろう。」

 

鉄の言葉に翔太郎が尋ねる。

「おい、どういう事だ?」

「俺らの任務は玉城の始末だ。

お前らが邪魔したせいで玉城が逃げそうだったんでな。

ちょっと"足止め"をさせて貰ったって訳だ。」

 

あれが....足止め?

コイツらは玉城を止めておくためにこんな被害を出したのか?

 

翔太郎の心が黒い何かに染まっていく。

精神が研ぎ澄まされ周りの音は全く聞こえなくなるが東堂兄弟の声だけがクリアに聞こえる。

だからこそ気付いてしまう。

 

無理だ....コイツら(東堂兄弟)にとって殺しは特別なことじゃない。

当たり前の事なんだ....こんな奴らが更正することはない。

"生かして帰せば"もっと沢山の被害が出る。

 

そんな未来は許せない....何よりそんな事を許したくない。

そんな事を考えていると無名が俺に言ってくれた言葉を思い出す。

 

 

 

「左 翔太郎さん.....

 

貴方にとって大切なのは"仮面ライダーWの片割れである自分"ですか....それとも」

 

「鳴海荘吉に教えられた"探偵としての自分"ですか?」

 

 

あの時、俺は探偵としての自分を選んだ"俺の心"がそう求めたからだ。

そして今も求めている。

"救う為の最善の選択をしろ"と......

 

もう心は決まっている。

おやっさん.....ごめん.....俺は.......

 

 

 

『翔太郎!返事をしてくれ翔太郎!』

沈黙している翔太郎にフィリップは声をかける。

しかし、この声に答えることはない。

そしてその隙をチータードーパントは見逃さない。

 

「油断し過ぎだぜ仮面ライダー!」

超スピードにより一瞬でWの背後に回った延髄を蹴り上げるがそれを翔太郎はノールックで掴み止めた。

「何っ!」

 

「照井....ここは俺達で何とかする。

お前は玉城を追ってくれ。」

「だが、それでは.....」

「俺達のことなら大丈夫だ。

それより玉城に逃げられたら後が大変だ。

.....頼む照井。」

 

「.....分かった。」

照井はトライアルメモリを使うと玉城を追った。

 

 

照井がいなくなると翔太郎はチータードーパントを目の前に引っ張り上げて回し蹴りを首に打ち込んだ。

「グハッ!コボッゴホッ!」

蹴られた本人はその威力から息が吸えなくなり地面に倒れる。

 

倒れているチータードーパントを睨み付けながらプリズムソードを引き抜くとマキシマムを発動した。

 

「PRISM MAXIMUMDRIVE」

 

「PRISM BREAK」

 

翔太郎はプリズムソードをチータードーパントの太腿へと突き当てて地面に縫い付けるように刺した。

 

「あがぁぁぁぁぁぁ!」

チータードーパントは刺された足を抑えながら絶叫する。

 

「足の神経と骨を繋ぐ部分を破壊した.....

その左足はもう使い物にならないだろう。」

「テメェ弟に何をしやがる!」

 

キレたベアドーパントは勢いのままWへと殴りかかる。

その攻撃を翔太郎は左手のみでいなし続ける。

「そんな感情的な攻撃が俺に当たるかよ。」

そう言うと翔太郎はベアドーパントに反撃を加える。

いなしてから肘を使いベアドーパントの顎を刈り取る。

 

何時ものベアドーパントなら効かない攻撃だがこの一撃によりベアドーパントの視界が歪み地面へと倒れそうになる。

そして落ちていく頭に向けて翔太郎の拳がヒットする。

グシャ!と言う生々しい音を響かせてベアドーパントは吹き飛ぶ。

「鼻が潰れたか....だがまだ"足りないな"。」

『.....翔太郎。』

 

翔太郎はフィリップの手にあるビッカーシールドを持つとその盾を使いベアドーパントの顔面を何度もそのまま殴り付けていく。

 

「ウガッ!アガッ!ギィ!」

殴る度に威力が上がっているのだろうぶつかる音が強くなり地面が揺れる。

『翔太郎!もう十分だ!

これ以上続けたら彼が死んでしまう!』

 

しかし、フィリップの忠告を聞かず黙って殴り続ける。

「兄貴から離れろぉ!」

そう言ってチータードーパントがWの背後を襲うように現れた.....左足を失ったまま

 

(まさか、左足を千切ったのか!

まずいこのままじゃ翔太郎が!)

『翔..!』

翔太郎に声をかけようとするがその前にチータードーパントへ向き直り首を掴み持ち上げる。

「そんな見え見えの奇襲が通じるわけがないだろう?」

翔太郎はそう言うとマキシマムスロットにメモリを入れる。

 

「JOKER MAXIMUMDRIVE」

 

翔太郎が何をするのか理解したフィリップは止めようとする。

『止めろぉ!翔太郎ぉ!』

 

「JOKER....EXTREAM」

 

翔太郎の放ったキックがチータードーパントへ直撃すると大きく吹き飛びメモリブレイクした。

人の姿に戻ると大量の血を口から吐き出し意識を失った。

「剛?.....剛!」

慌てるベアドーパントに翔太郎は告げる。

「心臓に向けて攻撃を打った。

あのマキシマムなら心臓はズタズタになってるだろう.....苦しみながら死ぬだろうな。」

「テメェよくも剛を....殺してやる、殺してやる!」

 

そうわめくベアドーパントに翔太郎は告げる。

「これまで散々人を殺してきてその道理は通らねぇだろう?」

 

「CYCLONE MAXIMUMDRIVE」

 

「テメェら兄弟は人殺しを生業として来た傭兵として生きて来たんだろ?」

 

「HEAT MAXIMUMDRIVE」

 

「なら勿論、自分達が死ぬ覚悟も出来ていた筈だ。」

 

「LUNA MAXIMUMDRIVE」

 

「お前達が踏みつけてきた存在(死者)に今度はお前達がなる....それだけのことだろ?」

 

「JOKER MAXIMUMDRIVE」

 

 

ビッカーシールドにメモリを装填し終わるとエネルギーを解放する。

 

「BICKER FINALUSION」

 

膨大なエネルギーを持ったシールドでベアドーパントを顔面を吹き飛ばす勢いで殴り付けた。

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