「もう貴方では翔太郎の相棒にはなれない。」
「違う!そんな事はない!」
「だが、お前は....俺を見捨てたんだろうフィリップ?」
「それは.....」
「だから俺もお前を捨てるよ.....より強い悪魔と契約して」
「そんな事言わないでくれ!僕には君が必要なんだ!」
「さようならフィリップ....これでお前との相乗りは終わりだ....」
「待ってくれ!翔太郎!翔太郎!」
「翔太郎ーー!」
目を覚ましたフィリップはラボの床で眠っていた。
悪夢を見たせいか身体から大量の汗をかいている。
「はぁ....はぁ....はぁ」
フィリップは恐怖から来る震えを両手で抑えるが止まる気配はない。
「僕は....翔太郎を....」
あの時の記憶がフラッシュバックする。
(こんなに....怖いのか...翔太郎を失うことが....こんなにも怖いのか!)
時刻を見るともう夜になっている。
あれからずっと考えていた筈なのに翔太郎を取り戻す手段が全く浮かばない。
それどころか翔太郎が変身したら今いる戦力で止めることは不可能だと言う事実を理解できただけだった。
(僕もロストドライバーは持っているがあのレベルまで強くなることは出来ない。
アクセルとエターナルで協力しても勝ち目なんて無かった。
何度、検索しても勝ち目が見えない....どうすれば良い?
僕はどうすれば.....)
焦りを隠せないフィリップはひたすらにホワイトボードに作戦とも呼べないアイデアを書き続ける。
もう書きすぎてインクが切れて書けなくなっていることも分からない程、ただ書き続けた。
その姿を見た亜樹子が涙ぐみながらフィリップの手を止める。
「亜樹....ちゃん?」
「もう休もうフィリップ君、これ以上やったって....」
「でも、早く方法を見つけないと....翔太郎が...」
「こんな状態じゃフィリップ君が倒れちゃうよ!
ご飯どころかあの後から水すら飲んでないじゃない!」
「そんな暇はない!何としても翔太郎を救うんだ!
でないと....僕は...僕でなくなってしまう。」
フィリップは恐怖心に支配されていた。
翔太郎を失ってしまうと言う感情が彼から冷静さを完全に奪っていた。
そこにシュラウドとマリアが現れる。
「.....来人。」
「何の用だシュラウド....
また僕を兵器にする算段でも立てに来たのか?」
現れたシュラウドにフィリップは怒りと憎しみの籠った目を向ける。
「私は...そんな....」
「じゃあ、翔太郎を返してくれよ!
僕の相棒を....翔太郎を奪っておいて今更何をしに来たんだよ!」
「坊や!落ち着いて!私達は貴方を助けたいのよ!」
「マリアさんこそ何で母さんと一緒にいるんですか!
僕の味方だってのは嘘だったんですか!」
冷静じゃないフィリップは感情に任せて言葉を吐く。
その瞬間、克己が飛び上がりフィリップの前に立つとフィリップの腹を思いっきり殴った。
「うぐっ!」
痛みからフィリップは意識を失ってしまう。
「ちょっと!大丈夫フィリップ君!」
「こんな状態で話してもろくな事にならない。
一度寝かせた方が良い.....それにこの顔何も飲んでないし食ってないな。
これじゃあ直ぐにぶっ倒れたさ。」
「お袋、俺はフィリップの看病をする。
悪いが暫くの間.....」
「えぇ、私と文音さんで何か考えてみるわ。」
「助かる.....おい
こいつの看病をするからベッドを借りるぞ。」
「ふぇ?あっはい!」
亜樹子は克己に流されるまま事務所のベッドへと連れていった。
残ったのはマリアと文音だけだった。
「大丈夫?文音。」
「始めて来人に怒りをぶつけられた。
そんなにも大事な相棒だったのね左 翔太郎は......」
「会わなければ分からなかったでしょう?」
「あんなに衰弱して、ホワイトボードも真っ黒で読めない程......」
「文音...落ち込んでいる暇はないわ。
来人君の為にも今は翔太郎を救う方法を考えるの。」
「そうね....ありがとう。」
そう言うと二人はラボの中へと入っていった。
「先ずは翔太郎があの状態になったメモリに関して....文音は何か知っている?」
「ジェイルメモリ....ゴールドクラスのメモリよ。
その能力は"感情の分離と保存"....しかも奪える感情を細かく設定出来る。」
「設定?」
「例えば恐怖心だけ奪い取ったり正義感を奪い取れば最高の兵士が出来上がる。」
「だとしたら翔太郎から奪った感情は....」
「正義感と倫理観.....それに"人を殺す事への抵抗感"も取られてると思うわ。」
「つまり、今の彼は目的の為なら殺人すら厭わない存在になっているってことかしら?」
「恐らくは……
それにジョーカーメモリの適合率も上がっていたからあの強さを得たのかもね。
それを読み切って策を弄した無名には恐れ入るわ。」
「それじゃそのジェイルメモリを破壊すれば翔太郎は元に戻るのかしら?」
「それは分からない。
あのメモリはまだ解析が済んでいないの。
もし、破壊した瞬間にメモリに保存された感情が消えるんだとしたらとても危険だわ。」
「なら、ジェイルメモリを奪う必要があるわね。
そのメモリは翔太郎の中にあるの?」
「いいえ、ジェイルメモリは特殊なメモリで体内にメモリが入らずに起動するの
だからこそドーパントの姿にもならない。
理由も研究する時間が無かったから何も分からないに等しいわ。
でも来人が地球の本棚の知識を使えば分かる筈よ。」
「.....どうかしら?私はそうは思わないわ。」
「どういう意味?」
「坊やはあれ程、翔太郎に執着していたのだから当然、地球の本棚で調べている筈………
それなのに分からなかったと言うことは.....」
「来人の力でも分からなかったってこと?」
「その可能性が高いわね。
そうなる理由に心当たりはある?」
「先ずは本人の知識が検索する情報と釣り合わない時ね。
来人ならばスポーツや身体能力に関する記憶は制限がかかる物があると思うわ。
もう一つは本人と関わり深い記憶の時.....家族の事を検索すると来人の精神にかかる負荷が上がるわ。
ミュージアムからの記憶消去を受けているから尚更ね。」
「聞いた限りだとジェイルメモリに関してはどれも該当してないと思うのだけど.....」
「もう一つ可能性があるとすれば、来人と同じように地球の本棚に入れる存在がその記憶を隠している。
でもそんな存在がいればミュージアムが直ぐに見つけている筈、それに私が気付かないなんて有り得ないわ。」
「じゃあ一体、何故?」
そんな話をしているとシュラウドの持つスタッグフォンから連絡が来る。
その相手は無名だった。
「一体どうして...」
そう思いながらも通話を始める。
無名の声は聞こえるがその声は辛そうだった。
「シュ....ラウド。」
「どういうつもり?私に連絡をかけてくるなんて……」
「ジェ...イル...メ...モリ....は...地球の....本棚の....奥に....封じられて...ます。」
「封じられている?
ジェイルメモリの記憶が?」
「は....い....
入...るに..は、本棚との....シンクロ...率...を...」
「何?どういう意味なの?」
「は....やく....ゴ....ティ....が....戻....る前....に」
そう言うと無名との連絡が切られてしまった。
「もしもし!………
何故!無名が私に連絡を?」
「そう言えば克己が言っていたわ。
今の無名は身体を誰かに操られているって....」
「操る?
それはどういう意味?」
「分からない。
でも克己はそう感じた....だから信じている。
それだけよ。」
「そう.....地球の本棚の奥に封じられている...ね。
調べてみる価値はありそうね。」
「そうね。
その観点から調べてみましょうか。」
二人はそう言うと地球の本棚について調べ始めるのであった。
地球の本棚の最奥に封じられた無名は本棚の検索を使いこれまで起こった事件とジェイルメモリについて調べていた。
そして、それを止めようと無名は試行錯誤を繰り返していた。
「ジェイルメモリ、これは危険だ。
一刻も早く何とかしないと....」
感情の分離と保存の能力を持っているメモリであり普通の手段でメモリブレイクをすると保存された記憶も破壊されてしまう。
その問題を解決してメモリブレイクするにはジェイルメモリに入り保存された記憶を解放する必要がある。
それを出来るのはフィリップか無名の様に地球の本棚に入れる存在だけだ。
だがらこそこの手段を伝える必要がある....いやそれよりもこの本を読ませないと行けない。
今無名のいる本棚はシンクロ率を"80%"まで上げないと入ることが出来ない。
フィリップの今のシンクロ率は多く見積もって"50%"...ここに呼び寄せるのは負担が多い。
ならば
今、僕の身体を動かしているのはゴエティアだ。
ゴエティアが好き勝手に動いていることを考えると味方と見られるか怪しいだろう....それにゴエティアの目的も分かっていない。
ゴエティアについて検索したがその本には黒炎が纏われていた。
恐らく読めば僕の身体は黒炎に包まれるだろう。
読める機会を作っておきながら本にセキュリティをかけている辺り流石は悪魔だ抜け目がない....
(ここはリスクを負っても読むべきか?)
無名が本に手を掛けようとすると何者かにその手を止められる。
【良かった....今度は貴方に"触れられた"のね】
そうして無名が顔を上げると白髪の髪に虹の色のエネルギーが流れている女性が話しかけていた。
「貴女は誰なんですか?」
【私は....コスモス。
ゴエティアと同じ....この世界に存在しては行けない者...】
「ゴエティアと....同じ?」
そんな話をしていると遠くからゴエティアの声が聞こえる。
【何故だ!何故答えないコスモス!
私だ!ゴエティアだ!私は....君を探して.....】
【そう....貴方はまだ私を探しているのね?
ごめんなさい...ゴエティア。】
そう言って涙を流すコスモスは無名の触れようとしていた本に手を触れた。
「危ない!」
無名の制止を聞かず本に触れたコスモスの身体を黒炎が焼き始める。
だが、彼女の白髪に黒炎が全て飲み込まれてしまった。
すると触れていた本を無名に渡す。
【彼を救えるのはもう貴方しかいません。
お願いします....私を愛してくれた彼を救ってください。】
そう言うとコスモスは本に一滴の涙を落とし姿を消してしまった。
残ったのはコスモスに渡された一冊の本だけであった。
「彼女が....コスモス。」
ゴエティアの残した記憶に微かに残っていた名前。
その記憶には彼女への執着と思いが綴られていた。
そして、偶然にもこれまで閉じられていた肉体への道が繋がった。
(何があったのかは分からないが今しかない!)
そう思った無名は意識を自分の肉体へと送った。
目を開けるとそこは園咲邸の一室だった。
何かあったのだろう目の前の家具は荒らされ散乱しており机には翔太郎が着けていた帽子が見つかった。
(何故、ここに左 翔太郎が?)
そう考えていると頭に痛みが走る。
「うぐっ!....もう時間切れですか。」
無名は頭を抑えながらも何とか携帯を操作してシュラウドへと連絡を取った。
(状況は最悪だ....ジェイルメモリの
どうにかしてこの状況を伝えないと.....
そして電話を繋げて何とかジェイルメモリが本棚の奥にあると告げられると電話を切って意識を失ってしまった。
そうして意識を取り戻したゴエティアは壁を殴り付けた。
「ふざけるなっ!この私が....失敗したと言うのか!....これだけ繰り返したのに失敗したと!」
怒りで身体から黒炎が漏れそうになるのを必死に抑える。
すると身体の力が抜けて倒れそうになった。
「....やはり痛覚を切ったのは失敗でしたかね?」
ゴエティアが無名の肉体を手に入れた結果、エクストリームを使用した際に地球の本棚の力を使う負荷がかかる様になってしまった。
地球の本棚に存在していた時は肉体が存在しない為、そこまでのダメージは無かったが今は違い確実に肉体にダメージが残っていた。
「今回は....力を使い過ぎましたから少し休みましょう。
左 翔太郎には調整のために眠ってもらえば良い。
大丈夫....問題はない。」
ゴエティアはそう言って笑う。
その笑顔は何時もと違い悲壮感に溢れていることにも気付かずに笑う。
そこに琉兵衛から連絡が来た。
「はい、無名です。」
「この電話は専用回線だ誰にも聞かれる心配はないよゴエティア。」
「何か用ですか?」
「今日、財団に行ってね。
君達の事が分かる物を見てきたんだよ。」
「.....あの"不愉快なイコン画"だな?」
「やはり上半分を持ち去ったのは君だったか?」
「えぇ、誰にも見つからないよう時空間の狭間に置いてきた筈なのですが....誰が見つけてきたのか」
「あれを見れて良かったよ君達、超越者の存在や地球と本棚の成り立ちがよく分かった。」
「........」
「おや?どうしたのかねゴエティア。
何時ものように話したまえよ。」
「私は今、機嫌が悪い。
あまりお喋りをしたい気分じゃないのだが....」
「では、単刀直入で聞こう。
君の本当の目的は何だ?」
「この世界を遊び楽しむこと....そう言った筈だが?」
「あのイコン画を見た後では私は別の目的があると思ったのだが.....」
「何が言いたい?」
「超越者は何故、自らの肉体と力を捨ててまで地球の本棚を作ったのだ?
そして、何故、君だけが本棚の中に存在出来ていたのか?
その理由を教えてくれないかね?」
「言う必要はない。
申し訳ないがこれから用があるので....失礼。」
そう言うとゴエティアは琉兵衛との電話を切る。
「何時の時も厄介な存在ですよ園咲家は....」
ゴエティアはそう呟くと部屋を出ていくのだった。
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