何時から私はコスモスを見ていたのだろう?
個としての意識が確立された時から?
具体的な時間は分からない。
何故ならここには何もないのだから....
ひたすらに暗く何も無い空間....そこに同類と呼べる存在がいるだけだった。
いつしか我々は個を現す種族の名を付けた。
別に意味など無いが暇潰しになると考えたからだ。
我々は一人一人が世界を創造し破壊しうる力を持っていた。
だがその世界を作る意味を見つけられなかった。
喜怒哀楽が存在しなかったのだ.....そんな我々が唯一持っていたのは"知的好奇心".....自らの存在や力を調べることだけだった。
我々は自分達のことを超越者と名付けた。
そして、そこから個人を現す名を付けた。
私がゴエティアと呼ばれたのは超越者の中でも特定の存在に認められていたからだ。
他にもそんな存在が現れると個は集となり群となった。
ある時、とある超越者が面白い力を開花させた。
それは"感情"と言う力だった。
それを手に入れた者は笑い泣き怒り喜ぶことが出来た。
その力は持っていない者にとってとても羨ましく感じた。
だからこそ、私を含めた全員の超越者が感情手に入れる事にした。
感情を手に入れたことで"時間"の概念が産まれた。
超越者の喜怒哀楽に世界が適合したのだ。
それにより超越者の知的好奇心は更に加速していった。
ある者は何にも無かった空間に星や宇宙を作り、またある者は並行世界を作り上げた。
「またここにいたんですねゴエティア。」
そう言ってコスモスは私の身体に触れた.....
「コスモスか君は何を作っていたんだ?」
「"感情"を作り出したのは私ですから...今回は喜びと楽しみの力を混ぜて...."愛"を作ってみました。」
「とても興味深いな。」
「この愛を受けとりますかゴエティア。」
「そうしたいが、私の今新たな力を作っているんだ。
他者と協力する手段を....」
「それは何なのです?」
「"契約"と言う力だこれで両者にルールを取り付けることで協力関係を作り出せる。」
「これも面白そうですね。」
彼女はコスモス...."感情"と言う力を作り出した張本人で私と話が合う数少ない超越者の一人だ。
彼女の作り出す力は興味深くまた私の作り出す力にも彼女は興味を示してくれた。
二人でそんな話をしていると一人の存在が割って入ってきた。
「こんなところにいたのかコスモス。」
「"タナハ"、どうしたの?」
「君の作り出した力が気になってね。
それよりもまたゴエティアと話していたのか?」
「それは私の勝手でしょ?
ゴエティアの作る力には興味があるのよ。」
コイツは"タナハ"....私と同じように超越者を纏める群の長を勤めていた。
彼とは感情を手に入れてから話が合わず対立することが多かったが私自身は特に気にしてもいなかった。
「ゴエティアの作る力は危険な物や冒涜的な物が多い。
そんな力は君には必要ないだろうコスモス?
私の力は皆が必要とする"慈愛"や"善の力"だ。
君の感情とも相性が良いと思うんだが....」
「そうかもね....でもそれじゃあ面白くないわ。
"色"を作った"ムーサ"も言っていたでしょう?
多彩な色が混ざり重なると感情が刺激されるって....だからこそいろんな力が必要だと私は思うのよ。」
「だが、それでは正義が....」
「タナハ、コスモスをあまり困らせるのは良くないんじゃないか?
仮にも私や君は超越者を纏める長だ。
皆の手本となるべく動くべきと進言したのは君だった筈だが?」
「そんな事は君に言われなくても分かっている。
....まぁ、誰と仲良くするのもコスモスの自由だからね。
好きにすると良いよ。」
そう言うとタナハはその場から消えた。
「ゴエティア、やっぱりタナハとは仲良く出来ない?」
「難しいだろうね。
彼とは根本的に合わないんだと思う。
彼の作る力と僕の作る力の性質は反対だ....そして作る力と感情は比例する....まぁ仕方がないよ。」
「....私は皆と仲良くして欲しくてこの感情の力を作ったのにな。」
そう言って悲しそうな顔をするコスモスにゴエティアは告げた。
「皆、感謝しているよ。
今まで何も無かったこの空間に宇宙や星を作れたのは君が感情と言う力を私たちに与えてくれたからだ。
感謝こそすれ批判するものなんていないさ。
もしいたら私やタナハが許さないと思うよ。」
「そうだと嬉しいな。」
コスモスや他の超越者と新たな発見や力を共有しながら過ごす時間はとても楽しく有意義な物だった。
ゴエティアはこの世界にとても満足していた。
ずっとこの時が続けば良いのにとさえ思っていたのだ。
だが、そんな時間も長くは続かなかった。
感情を手にいれたことで我々は多くの力を手に入れた。
五感や喜怒哀楽、他にもこの宇宙を彩るありとあらゆる物を時間をかけて作っていった。
だからこそ我々は気付けなかった。
時間の概念が産まれると言うことはそこには終わりが産まれる。
始まりと終わり、そのルールに超越者も縛られることになった。
我々は....."寿命"を手に入れてしまったのだ。
一人また一人と超越者が消滅していった。
我々には死の概念が無い....だからこそ寿命を向かえると言うのは消滅を意味した。
そして、この消滅は我々に恐怖を刻み込んだ。
この事態を解決するために色んな策が建てられ実行された。
ある者は寿命を得る原因となった感情を切り捨てようとしたがそれこそ宇宙年を何度も繰り返す程、長い時間感情を持ち続けた結果、既に自分の存在の深い所まで完全に融合を果たしていた為出来なかった。
このまま消滅することを避けようとした超越者は各々、行動を始めた。
別次元に逃げる者や消滅しても力を残したいと考えた物は遺物としてその身を変化させた。
他にも概念や力そのものに変わった者もいた。
一人....また一人、消滅を回避するためにこの世界から消えていった。
それを何よりも悲しみ罪の意識を感じていたのは感情を与えたコスモスであった。
そんな彼女を助けたいと思ったのは私とタナハだった。
そして二人で話し合いある計画を建てた。
「"記憶を残す?"」
「あぁ、感情を手にしてしまった以上この身体の消滅は止められない。
だが、肉体を記憶と精神を残す媒体として使って一つの空間に保管するんだ。
そうすれば、我々は消滅しても意識と言う存在は残る。」
「加えてそこには超越者の膨大な力が使われるからそこの受け皿が必要だ。
私達の力に耐えられる....受け皿が」
「どうするつもりなの?」
「先ずは超越者の力を一ヶ所に集め、そこと繋がるもう一つの空間を作り出すんだ。
そこでは超越者の力を分散して放出することで空間の消滅を防ぐ。」
「私とゴエティアで何度も計算したから問題はない。
これをすれば我々は消滅から回避出来る。」
私とタナハの提案にコスモスは悩むが二人で強引に押しきった。
彼女を安心させたかったものあるが私もタナハもコスモスを失いたくなかったのだ。
そして、私とタナハに付き従う者とコスモスの力は一つの空間に集約された。
その空間は強大な力に耐える為、力を一つ一つ細分化して記憶と言う本に変えて保存していった。
全員の肉体が消滅し本棚が完成すると超越者は精神体となりその空間に現れた。
「成功だ....我々は成功したんだ!
寿命の恐怖に打ち勝ったぞ!」
タナハの勝どきは周りに伝播した。
各々が喜び存続した命に感謝する。
この幸運に喜んでいると驚く事が起きた。
元々、溢れ出す力を放出する目的で作った空間から大きなエネルギーを関知する。
「これは....一体?」
タナハの疑問にコスモスが答える。
「もしかして私達の力が融合して何かが産まれようとしてるの?」
「まさか!....いや確かに今、放出している力はあくまで余剰エネルギー。
しかもここにいる超越者の特徴が全て混ざっている...我々がこれまで作り上げた力も含めて....
だが、融合するなんて事が....」
ゴエティアはムーサが言っていた言葉を思い出した。
多彩な
つまり、我々の力が混ざった何かが誕生すると言うことだ。
暫く、その空間を超越者達は眺めているとエネルギーは球体の星....いや星と言うには大きくもまた美しい姿へと変わった。
美しい青色をした星を見て超越者達は驚く。
「何て....美しいんだ。」
「これが...星?私が作り出した物と全く違う。」
「まさか、我々の力が混ざった中の余剰エネルギーがここまで美しい物を造り出すだなんて...」
その姿を見ていたタナハが言う。
「なぁ、コスモス君はこの星を何て呼ぶ?」
「.....この星は私達のいる空間の力から産まれたのよね?」
「そうだと思う。」
「ならEARTH....私はここをEARTHと呼ぶわ。」
「EARTH....地面、成る程この踏みしめている空間を地と捕らえたのか。
なら、その地を持った球体のだから....地球と読むのはどうだ?」
ゴエティアの提案にコスモスは喜ぶ。
「良いと思う!
そこでタナハが言う。
「あの星が地球ならここはその大元の力があるから....
「何故、地球を星と読むんだ?」
「あれはコスモスが付けた名前だ...だから字は貰うが読み方はこれで良い。」
こうして超越者と呼ばれた者達は肉体を捨てて地球の本棚で生きる道を選び、そして産まれた地球を観察し成長させていくことにした。
土地や生物を作り地球の周りには宇宙と言う概念を作りそこに無数の星を作り上げた。
そして、地球を観察し我々の力がどうなっていくのかただ見ていた。
その光景は美しかった。
生命の誕生から始まりその生命が群を作り生き始めた。
そして、死を受け入れて進んでいく。
我々が出来なかったことをする姿に羨ましさすら覚えた。
何時しかこの地球を守ること地球の本棚にいる超越者の目的となっていた。
全てが上手く行くと思っていた時、忘れもしない存在が産まれた。
地球の本棚から流れる余剰エネルギーを受けて進化した存在....そう人間が産まれたのだ。
人間は超越者と同じく思考し道具を作り上げる力に長けていた。
その存在は地球にいる生物とは違うと考えた超越者はその産まれた人間を"タナハ"は地球の本棚へと呼び寄せた。
その光景を見ていたゴエティアが尋ねる。
「タナハ...君は一体何をしているんだ?
地球で産まれた存在をこの空間に呼び寄せるだなんて」
「ゴエティア....君は不安にならないのか?
我々が作り上げた力が無くなるかもしれない恐怖に...」
「それは我々が肉体を捨てたことで解決した筈だ。
だからこそ、これから我々は地球を観察していこうと...」
「そうして力を作って行ってまた我々が消滅する危険が起きるかもしれないだろう!
.....感情を手にしていない時の我々はそんな失敗は侵さなかった。
何故ならば何にも左右されず常に最適な行動を行えたからだ。
....私は怖い。
自分の正義が...善が...間違って機能することが....そしてそれよりも、私が消滅してこの力の意味が消えてしまうことが...」
"力の意味"....コスモスが感情を作り出したのは超越者同士で仲良くするためだった。
その意味を無くしてしまったら感情に何の意味が残るのか?
ゴエティアはタナハに何も言うことが出来なかった。
「その生物を君はどうするつもりなんだ?」
「彼に私達、"超越者の力"を与える....そしてこの地球を正しく治めて貰うんだ。
そして、私達の存在を残して貰う....この地球に」
「そんな事が可能なのか?
確かに地球の本棚と地球は繋がっているが我々は地球に顕現することは出来ないぞ?
そんな事をすれば超越者の力に地球が耐えられなくなる。」
「だからこそ、その器を作って貰うんだ。
この生物....いや人間を通してね。
この人間は他の生物と全く違った進化を辿っている。
我々の力をゆっくりと馴染ませていけば何れ我々の力にも耐えられる器が出来る筈だ。
そうすればこの隔絶された地球の本棚から抜け出せるかもしれない。」
「君は後悔しているのか?
地球の本棚に精神体として存在することに?」
「.....分からない。
だが、私は自由が欲しい。
ここにいる超越者にも自由を得て欲しい。
あの地球にいる生物のように...そう願うだけだ。」
タナハはそう言うと呼び出した人間に力を与えた。
超越者の力が人間の器を壊さないように丁寧に....
そうしていくと人間の身体に変化が起きた。
その力に適応し始めたのだ。
そして、主として必要な力をその身に宿した存在にタナハは名を付けた。
「お前の名は"テオス"....この地球を治める王であり神だ。
君の使命はその力を使い地球の生命をより良い者へと変える事だ。」
タナハにそう言われたテオスはかしずくと答える。
「承知致しました。
必ずや貴方の求める生命を作り出して見せます。」
そしてテオスを地球に返すと地球の生命や文化はこれまでとは比にならない程の発展を遂げた。
私はその光景に思うことはあったがコスモスが喜んでいる表情を見て言うのを止めてしまった。
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