もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百七十話 沈黙のD/失った愛

 

タナハがテオスを作り地球へ送ってから暫くの時が過ぎた。

テオスは動物を象った祖先である天使と自分の直属の部下である大天使を創造した。

 

そして、テオスはタナハの命令通り、超越者の器となる存在を作り出したのだ。

そう、超越者に選ばれた自分と同じ姿を持った人間を....

 

しかし、その判断が間違いだった。

確かにその肉体は超越者のエネルギーを受けて進化した種族だがその意識や思考まで進化しているわけではない。

彼等は我欲を持っていた....それこそテオスや超越者を越える程の我欲だ。

 

そして、その欲は傲りを産み争いを起こした。

人類と天使の戦争が始まった.....そしてそれは地球の本棚にも影響を及ぼした。

 

地球の本棚から力が溢れることを防ぐために作り出した地球から逆にエネルギー(記憶)が送られてきたのだ。

 

それは超越者が創造もしなかった新たな進化、アギトとギルスの力だった。

そして、その力が地球の本棚に流れたことで新たな"可能性"が産まれてしまった。

 

増え続けるエネルギーは超越者の精神を汚染する。

本棚は増え続ける記憶から空間を守る為、新たな器を欲した。

まるで容量不足のパソコンがメモリ増設を申請するように超越者の精神をメモリ代わりに吸収し始めた。

 

私もタナハも止めようと努力した。

だが、私達の意識の記憶は地球の本棚とリンクしている。

つまり、上位の関係となっていたのだ。

上位の指示には抗えない。

超越者の中でも能力や力が弱い者からドンドンと吸収されていく.....

 

止められないこの現象にタナハはある決断をした。

「地球を破壊する?」

「そうだ。

このままでは我らの意識は完全に地球を本棚に飲み込まれる。

地球で行われている戦いを止めるだけではもう足りない。

テオスは失敗作だ.....だからこそ全てを無に返して我々のエネルギーを受け止めるだけの星を作り上げる。」

 

その意見に一番に反対したのはコスモスだった。

「そんな事はダメよ!

彼等は地球と言う星で生きているのよ私達、精神だけの存在と違って生きているのよ!」

「じゃあどうすると言うんだ!

同胞が消滅するのを黙ってみているのか?」

 

「仮に消滅させて新たな星を作っても同じ結果になる可能性があるだろう?

地球は超越者の力が融合して産まれた存在なのだから...」

「なら、間引けば良い。」

「....どう言うことだ?」

 

「言葉の通りだ。

融合するエネルギーがこの事態を引き起こしたのならそのエネルギーを純化すれば良い。

余計な力を排除して......」

「私達を消すと言うのかタナハ。

それでは本末転倒だ!

結局、消してしまっては意味がないだろう!」

 

「黙れ!黙れ黙れ!

世界は善で満ちれば良い....お前のような悪は要らないんだよゴエティア!」

タナハその表情は怒りと憎悪に飲み込まれていた。

 

「やはり、感情が暴走しているな。」

ゴエティアは前からタナハの異常な行動について疑問に思い調べていた。

そしてある結論を出した。

 

それはタナハは感情の力を受け入れ過ぎた結果、その力に飲まれて制御が効かなくなってしまったのだ。

善の心を持つタナハだからこそ与えられた力を疑わず受け入れてしまった。

 

だからこそ他の超越者よりも感情のセーブが難しくなっていたのだ。

そしてそれはタナハの群に属する存在にも感染症の様に伝播していた。

私達の陣営に敵意を向けるタナハの陣営.....

 

「仕方がないな...降りかかる火の粉は払う。

私の仲間を消させはしないぞタナハ。」

 

タナハは"光による白い炎"、ゴエティアは"闇による黒い炎"を出現させる。

まだ肉体があった頃から使っていた力、それを解放する。

 

両者の力が解放されお互いに向かって放たれる....

それが開戦の合図となる筈だった。

しかし、その炎を受けたのは間に立ったコスモスだった。

 

「「コスモス!!」」

 

二人の声が重なる。

両者の炎はコスモスの身体を焼く。

「ごめんね、元を正せば全部私のせい...私が感情を作って皆に消滅の恐怖を与えてしまった。

だから、私が解決させる...."私の全てを犠牲にしても」

 

そう言うとコスモスは二人の炎を身体に吸収した。

「何をしているんだコスモス!!

私とゴエティアの力は相反する物そんなものを吸収したりしたら....」

「私の精神は持たない....分かってるわ。

でもこの力があれば地球から流れてくるエネルギーを安定させられる。

"善と悪"....そして"感情"の三つの力を持った私なら...」

 

「まさか....地球と同化するつもりか?

止めてくれコスモス!!そんな事をすれば君の精神は地球に吸収されて消えてしまう!」

「でも....それで皆は....救われる。

私は皆に争って欲しくは無い...."愛している...二人"には....」

 

「コスモス....」

「さようなら...ゴエティア...タナハ。」

コスモスはその精神を地球の中心へと移すと力を解放した。

それによりバランスが保たれた地球と本棚は崩壊を防ぐことが出来たのだ。

 

「違う....コスモス...私は...そんなつもりは...」

タナハは自分の手で顔を覆い地面に伏せる。

「コス...モス...嘘だ....」

私は現実を受け入れられず、その場で呆然としてしまった。

 

私もタナハもコスモスの為に動いていた。

彼女の悲しむ顔を見たくないから協力した筈だった....

だがその結末は、彼女()を失う結果となった。

 

私は...どうすれば良かったんだ?

答えてくれ....コスモス。

その願いは誰にも聞き届けられず消えていった。

 

 

コスモスがいなくなり争いが止まったタナハと私だが心には穴が空いたように虚無感に覆われていた。

そしてそれは互いの陣営にも影響し群はタナハとゴエティアの群は崩壊した。

 

群から去った者達がどうなったのかは分からない。

だが地球の本棚の記憶の一部となった者も多かった。

自分の精神を捧げた自殺...記憶だけが存在する空間で生きることを彼等は拒んだのだ。

 

それを止めることは私もタナハも出来なかった。

巻き込んだ張本人が死んで楽になることを許しはしないと思ったからだ。

 

一人になった私は、残った地球の本棚を使いコスモスを助ける手段を探した。

何度も何度も地球の本棚に収められた記憶を検索して存在しない希望にすがるように何度も何度も......

 

だが、そんな方法は無かった。

無力感が心を覆う。

(超越者の長になっても何も出来ないとは....我ながら滑稽だな。)

 

そう考えてながらも検索を続けていると本棚に変化があることに気付いた。

それは記憶が増えてきているのだ。

しかも、私の知らない記憶がドンドンと....

地球に変化が、あったのかと見てみたがそんな事はない。

 

だが、その記憶に私は興味を牽かれた。

その一冊に私は手を掛けた。

本には"仮面ライダー"とだけ書かれている。

その中身を読むとそれは驚くべき内容だった。

多数の並行世界に存在しその力を使い平和を守っている。

 

何故、こんなことが起きたのか?

その原因を考えている内に私の目に"仮面ライダーアギト"の記憶が目に入る。

(......これはテオスの起こした事件か。

そうか!あの時に産み出した(アギト)が地球の本棚に影響して新たな記憶を産み出したのか。

その記憶が仮面ライダー....だが何なのだこの存在は読み進めているのに新しい記憶(ページ)がドンドンと増えていく。

こんなことは始めてだ。)

 

そうして読み進めていく中でゴエティアは一つのライダーの名前で止まった。

「仮面ライダー....W?」

その記憶には私達のいる地球の本棚が関わっていた。

今まで無かった事にゴエティアは驚いた。

 

そして一つの仮説が浮かぶ。

(これが、並行世界でなくこの世界でも起こったら地球に直接干渉することが出来るかもしれない。)

 

仮面ライダーWは地球の本棚と地球に関わる物語。

つまり、融合したコスモスを分離させる計画を建てられるかもしれない。

そう考えた私はタナハにこの計画を持ちかけた。

 

「仮面ライダー....か。」

「あぁ、我々の力がこんな存在を産み出したようだ。」

「この力.....確かに地球に関わるチャンスがありそうだ。

今の我々は地球に干渉は出来ても関わることは出来ない。

だが、この世界の住人になれれば.....」

 

「あぁ、同化したコスモスを救う手段が見つかるかもしれない.....だが」

「あぁ、それをするにはこの世界で活動する肉体...それも人間の肉体がいる。

そして、この記憶通りに世界が進むまで待つ必要があるな。」

 

「あぁ、恐らくは何世紀かかるか分からない計画だ。

しかも失敗は出来ないだろう。」

そう言う私にタナハは言う。

「なら、失敗してもやり直せば良い。」

「どういうことだ?」

 

「地球の本棚の記憶を書き換えるんだ。

そうすればその記憶が戻り過去をやり直せる。」

「だが、それには私の力だけでは足りない。」

「あぁ、エネルギーが必要だ。

それも大量の.....」

 

そう言うとタナハの周りに生きていた超越者の精神体が集まる。

そこには私の群に属していた者もいた。

「私達の魂を使ってくれ....この量だ。

きっと何千何万回もやり直せるだろう。」

「だが、そんな事をすれば君達は....」

「そう....消える。

だが、コスモスを救える可能性があるのなら賭けてみたい。」

 

「だが、何故だ?

そんな自己犠牲に意味があるのか?」

「私達はもう疲れたんだ。

この空間で悠久の時を生きるのに.....

死にたくても彼女に命を救われた身だ。

無駄な死に方は出来ない.....だが彼女を救う為なら我々も納得して逝ける。」

 

「だが、ゴエティア。

覚悟は出来ているのか?

我々のエネルギーを得ると言うことはこの世界にたった一人で生き続けないと行けない。

まだ何の可能性すら見つかってない状態でずっとこの空間にいる必要があるんだ。

それはきっと.....地獄すら生ぬるいだろう。」

 

「覚悟は出来ている。

あの時、彼女を止められなかった。

今度こそ彼女を離さない。」

「良かった...なら安心して託せる。」

 

こうして、残った超越者は私一人になった。

同胞の力を得た私は自らを笑う。

「あはは.....他者の魂を喰らって生きながらえるとはまさに悪魔に相応しい所業だな。」

 

確か、Wの世界で主人公の一人(フィリップ)は自分の事を悪魔と名乗っていたな.....

 

なら、私も"悪魔"になろう。

大切な人(コスモス)を助け出すその日まで"もう一人の悪魔"として生き続けてやる。

 

例え何度やり直したとしても.......

 

 

 

「これが..."ゴエティアの真実"?」

 

ゴエティアの本を読み終えた無名はその真実に驚いた。

神をも作り出した超越者の存在、そしてその結末。

その全てが驚愕の事実であった。

 

「コスモス....この本の通りなら彼女は地球と同化している。

地球の本棚にいたゴエティアが接触できないのも頷ける。

地球の本棚と地球は記憶と言う膨大なデータで繋がっているだけでそこを行き来することは基本的には出来ない。

それこそ、フィリップの様なデータ人間でなければ....

だから、僕の身体が必要だったのか。

彼女の同化している地球と接触するために.....

でもならば、何故ゴエティアはコスモスと会うことが出来なかったんだ?」

 

無名がコスモスと会った時、確かにゴエティアの声が聞こえた。

何らかの方法を使って彼女のいる地球にアクセスしたのだろう。

だが、ゴエティアは彼女に会えなかった。

 

まだ何かゴエティアの気付けていない秘密があるのか?

きっとこの秘密はゴエティアから身体を奪い返すのに必要になる。

 

そう思った無名はその手がかりを得るためにもまた検索を再開するのだった、




本作での解釈

超越者.....テオスを作り出しだヤバイ種族。
感情を手にいれたことで消滅する危険から逃れる為、
地球の本棚を創造し精神体として生きていた。

地球....地球の本棚から溢れたエネルギーが融合して産まれた星。
人間と天使の戦争でアギトとギルスが生み出された影響でエネルギーが飽和状態となるがコスモスの犠牲により事なきを得た。
それ以降は原点通りに進む。

仮面ライダー....ゴエティアが見つけた地球の本棚の新たな記憶。
仮面ライダーが産まれた理由はアギトとギルスが誕生したことで未来の地球の記憶にも変化が起きた。
並行世界にもこの現象は適応されている。


ガイアメモリ....地球の記憶を封じ込めたUSBメモリだが、本作では超越者の残した力の断片と言う側面も持っている。
その中でも超越者の力と直接関係のあるメモリは強力な物となっている。

(例)
デーモンメモリ=ゴエティア
フェニックスメモリ=タナハ
ジョーカーメモリ=コスモス

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