暫くの沈黙の後、フィリップは答えを出した。
「僕は....母さんを許せません。
翔太郎だけでなく照井 竜の人生すら貴方は変えてしまった。
その罪はちゃんと償うべきです。」
「......」
「けど、そのお陰で僕はミュージアムから逃れて翔太郎と亜樹ちゃんの三人で探偵をすることが出来た。
それは紛れもなく貴女のお陰です母さん。
だから、僕も"母の罪を背負います"。
貴女と協力して翔太郎を助ける条件として、
この戦いが終わったら警察に自首してくだい。
それを叶えてくれるのなら協力します。」
フィリップの提案ににシュラウドは答える。
「分かったわ。
それが来人....いえ愛する息子の望みならば従うわ。」
「それじゃあ、翔太郎を助ける為の作戦を立てましょう。
実はジェイルメモリについて検索したのですがメモリに関する情報が何故か出て来ませんでした。」
フィリップの言葉にシュラウドが答える。
「恐らく無名の仕業でしょう....彼は貴方達と同じくエクストリームの力を得ている。
無名も地球の本棚に入れる筈よ。」
「つまり、無名がジェイルメモリについてか書かれた本を隠しているのですか?」
「えぇ、だから私達は先ずジェイルメモリの本を読み知識を得る必要がある。」
「だけど、検索しても出てこない物をどうやって....」
「私のメモリを使うのよ。
ネメシスメモリには復讐や怒り、恐怖をエネルギーに変える力を持っている。
来人と私が地球の本棚に入り私のエネルギーを使って無名のいる場所までの道を抉じ開けるわ。」
「そんな事が出来るんですか?
そもそも母さんも地球の本棚に入れるのですか?」
「貴方がいれば入れるわ。
ネメシスメモリにより私の身体が精神体が強化されている.....短時間なら地球の本棚にいても支障はないわ。」
「"短時間なら"と言うことは長くいたらどうなるんですか?」
「地球の本棚に異物と判断されてデータとして消されるでしょうね。」
「そんな....」
「地球の本棚に入るには資格がいる。
肉体をデータ化しても精神が残っていなければ行けない。
来人はそれが出来たからこそその力を使いこなせているのよ。」
「....分かりました。
何時始めますか?」
「左 翔太郎が動くのは少し時間がかかると言ったけど自信はない。
来人が問題ないなら今すぐにでも地球の本棚に入りたいのだけど....」
「僕なら大丈夫です。」
「それじゃ直ぐに始めましょう。
方法は変わらないわ。
貴方が地球の本棚に入る瞬間に私も割り込む.....それだけよ。」
「では行きます。」
そう言うとフィリップは目を瞑り意識を集中させて地球の本棚へと入っていった。
目を開けるとそこは何時もと同じく白い背景の本棚だった。
違いがあるとすれば隣にシュラウドが立っているだけだ。
「ネメシスメモリの力を解放するから少し離れて来人。」
そう言うとシュラウドの身体から赤い炎が噴き出すと本棚の地面に放たれた。
暫くすると本棚の下に穴が空く。
直後、シュラウドが身体を痙攣させた。
「ぐっ!あぁぁぁ!」
「母さん!」
駆け寄ろうとするフィリップをシュラウドは止める。
「私の事は....気にせず....行きなさい!」
「でも....」
「早...く。」
痛みに耐えているシュラウドを見て覚悟を決めたフィリップは穴の中でも落ちていくのだった。
本棚に開けられた穴を通る際、色合いが変わっていく。
白から黒へと変わり流れるデータの色も緑から赤へと変わっていった。
(地球の本棚にこんな秘密があっただなんて....)
そう感じながらもフィリップは出口を目指して落下していくのであった。
シュラウドとフィリップが地球の本棚に行っている時、残った克己とマリアは話をしていた。
「お袋、ここは良いから孤島に戻ったらどうだ?」
「あら?私の身体を心配してくれているの克己?」
「当然だろ?死にかけたんだ。
それに身体だって万全じゃないだろう。
だから.....」
「心配してくれているのは嬉しいけど私は大丈夫よ。
....それよりも私を連れてきてくれた霧彦さんの手伝いをしてくれないかしら?」
「手伝い?」
「彼が風都に来たのは私を送るだけが目的じゃないの。
だからそのサポートをして欲しいのよ。」
「今残っているのは堂本と芦原だけだ。
レイカはまともに動けないでいる。
照井も同じだ....俺が行っても良いが」
「貴方を行かせるのは難しいでしょうね。
他に誰かいないの?」
「せめて"増援"がいれば.....」
そう話していると克己の携帯に着信が入った。
宛名は赤矢となっている。
電話に出ると赤矢が話し始める。
「久し振りだな大道 克己。」
「そうだな....だが何の用だ?
お前は確か風都を離れていた筈だろ?」
「あぁ、だが黒岩から連絡があったんだ。
どうやら、リーゼはまだ生きているらしい。」
「その情報は確かなのか?」
「あぁ、最近、医療関係のバイヤーからミュージアム関連の組織が小型動物用の治療装置を購入したらしい。
不振に思った黒岩が何度か調査をしたらその装置をディガルコーポレーションに運んでいる事が分かった。」
「....根拠としては薄いな。
だが......」
「調べる価値はあるだろう?
潜入するのにNEVERのメンバーを借りれないか連絡したんだ。」
「それは"丁度良いな"。」
「丁度良いとはどういう意味だ?」
「詳しいことは会って話そう....風都での俺らのアジトは分かるな?
一時間後落ち合おう。」
「分かった。」
そう言って赤矢は電話を切る。
そして、克己は霧彦にこの事を教えるため動くのだった。
時同じくしてディガルコーポレーションでは、冴子と井坂、そして無名が一室に集まっていた。
「私は兎も角、井坂先生まで呼び出すなんて何の用?」
冴子の問いに無名は答える。
「風都第二タワー計画についての詳細を説明する様に琉兵衛様から命を受けました。
お二人は計画でも重要なポジションに置かれますので改めて説明して確認していただく必要があるのですよ。」
「随分と慎重なのね.....若菜へのクリスタルサーバーの融合は進んでいるのでしょう?
なら計画はほぼ完遂してると言って良いんじゃないの?」
「えぇ、当初の琉兵衛様の計画でしたら問題はありませんでした。」
「それはどういう意味ですか無名君。
琉兵衛さんの計画が変わったと言う風に聞こえたが...」
井坂の問いに無名は答える。
「えぇ、その通りです。
ミュージアムは当初の琉兵衛様の想像を越える規模まで成長致しました。
故にガイアインパクトの計画も大幅に加筆修正が行われたのです。
先ずは当初の計画を確認しましょう。」
「若菜を地球の巫女として地球の記憶を流し込む器となり来人を融合させることで地球の記憶を自由に引き出せる装置とする....それがお父様の計画よね?」
「えぇ、その通りです。
来人様をプログラム、若菜様をハードとして使い人類を進化させる計画でしたがこれには欠点があります。
それは"進化する人間を選別してしまう"点です。」
地球の記憶を肉体に流し込むことで強制的な進化を遂げる....つまりはガイアメモリを使うのと変わらない。
だが、適合できない人間は死ぬしかない。
この計画では何れだけの人が耐えられるのか分からなかった。
「今回建てられる風都第二タワーには他にもサブタワーとして周りを囲うように"六つのサブタワー"も建設されます。
表向きは第二タワーとの通信速度を上げる名目ですがその正体は地球の記憶を開いた際に安定させる楔です。」
「楔?それは一体どういう...」
「まさか!....いやだが可能なのか?」
井坂は無名の言葉を聞いて思考をする。
「井坂先生、何か分かったの?」
「えぇ、もし私の想像通りだとすればとても凄い事ですよ。
何せ、失敗したら"地球が滅ぶ"かもしれないのですから...」
「どういう事!?何故地球が?」
動揺する冴子を置いて井坂は無名聞く。
「琉兵衛は地球の記憶と直接繋がる道を作ろうとしているのですね?」
「見事な慧眼です井坂さん。
琉兵衛様は地球の記憶....いえ地球の本棚へと直接繋がる道を通そうとしています。」
「そんな事は不可能よ!
地球の記憶は地球の存在そのものを証明する場所よ。
それこそ膨大なデータとエネルギーが流れていて入ることが出来るのは来人と同じデータ人間だけ....」
「だから、変えるんですよ風都にいる人を"データ人間"に....そうすればガイアインパクトで選別される心配は無くなります。」
その計画を知った冴子に戦慄が走る。
(何て恐ろしい計画を....それはもう"種の進化"じゃなく"種の変化"よ。
確かに来人と同じデータ人間になればガイアインパクトに適合できない人間は存在しなくなる。
何故ならガイアインパクトに適合できないと肉体がデータとなり消失するがデータ人間ならばその心配はない。
容量さえ越えなければ死ぬことも無いだろうがそれは人としての尊厳を失うことになる。
地球の本棚に入り全てを知れる人間の集団がこれまで通りの人の営みを送れるか?
答えは否だろう。
井坂もその話を聞いて顔を手で覆う。
しかし、その後に出た言葉は冴子の予想を超えるものだった。
「素晴らしい.....私の身体がデータに...そうすればきっと....もっとガイアメモリと一つになれる!!」
「井坂先生....良いんですか?私達が人でなくなっても?」
「そんなもの最初のガイアインパクトの計画の段階で分かりきったことでしょう。
進化と言いますがそれは実質、今の人類の姿の放棄です。
データ人間に変わることと大差はありませんよ。」
そう言う井坂の目にはデータ人間となってメモリの力が強くなる姿しか入っていなかった。
すると無名の表情に違和感が起きる。
「どうしましたか?」
「.....いえ少し予定外な事が起きました。
申し訳ありませんが少し退席させて貰います。
お二人への指示はこちらに」
そう言うと無名はタブレットを置いて部屋を出ていった。
無名の置いていったタブレットを井坂は開くと中を見る。
「本当にこの計画に参加するんですか井坂先生?」
「当たり前でしょう。
データ人間になればよりガイアメモリとの繋がりが強くなる。
断る理由がない....それにテラーのメモリを奪うチャンスでもありますしね。
これだけ盛大な計画だ....恐らく幹部もサブタワーの護衛に回されるでしょう。
王の守りが手薄になれば、倒す可能性も必ず生まれます。
冴子君.....君がミュージアムのトップになれる可能性もね。」
「.....なら」
「えぇ、我々も準備をしましょう。
お父上、いや園咲 琉兵衛を倒す準備を....」
ディガルコーポレーションを遠くから眺める霧彦の顔は憂鬱だった。
「随分と悲しそうだな。」
その表情を見た克己が言う。
「少し前まで私は彼処にいて、ガイアメモリの普及に勤てんでいた。
それが人類の進化に繋がると信じて....
その結果、私は愛していた妻に命を奪われ妹の人生すら壊しかけてしまった。
責任を感じるなと言う方が無茶だよ。」
目を覚ました時、雪絵から全ての事情を聴いた。
無名が助けてくれたこと...それをミュージアムに報告せずに匿い続けてくれたこと
そして、雪絵が冴子に復讐を望んでいることを....
「兄が目覚めても変わらなかったか?」
「あぁ、俺の前では上手く隠しているつもりだろうがね。」
霧彦はガイアメモリのセールスマンとしてこれまで色んな人間を見て来た。
己の欲望のまま力を振るいたい者、ガイアメモリで商売をしたい者、そして復讐を果たしたい者。
どんなに取り繕ってもその瞳に写る復讐の炎は消えない。
だからこそ雪絵の顔を見て霧彦は気付いてしまったのだ。
雪絵が冴子やミュージアムへの復讐を望んでいることを....
「それでどうするつもりなんだ?」
「私は復讐を望んではいない。
だが、兄である俺がいくら説得しても無駄だろう。
だから止める力が欲しい....」
「それを手に入れる為に行くのか?」
「あぁ....君は何故ここに?」
「お袋に頼まれてな。
お前の手伝いをして欲しいと言われたんだが、生憎俺は向かうことは出来ない。
だから代わりを用意した。」
そう言うと堂本が霧彦の前に現れる。
「コイツは俺の仲間だ。
腕は立つから一緒に行ってくれ....それと無名の部下もディガルコーポレーションに行くらしいからな。
共闘すればお前の目的も果たしやすくなるだろう。」
克己が霧彦に説明を終えると堂本にNEVERドライバーとメタルメモリを渡す。
「万が一、ヤバイ敵が出てきたらこれを使え。
このメタルメモリはシュラウドが作った試作メモリらしい。
出力に関しては問題ないが変身には一回しか耐えられないそうだ....良く見極めて使えよ。」
「あぁ、任せてくれ克己。」
「それで霧彦、何時潜入するんだ?」
「ディガルコーポレーションは表向きは一般企業だ。
朝はミュージアムに関連のない一般人が働いている。
そこを狙って潜入する。
予定が前と同じなら二日後、社長と役員が支部の視察に向かう筈だ。」
「成る程、潜入は二日後だな?
無名の部下にもそう連絡をしておく。」
克己はそう言うと二人を置いてその場を離れるのだった。
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