もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百七十二話 Cの決断/悪魔とのかくれんぼ

地球の本棚の奥へと落ちていったフィリップは地面を見つけるとそこに着地した。

辺りの景色を見るとそこは何時もの本棚と違った。

 

背景は暗く本棚にある本の表紙は赤くなっている。

「ここが、地球の本棚....全くの別世界だな。」

フィリップは目の前の本を取ろうとするとその手を止められた。

「ここを無事に出たいのなら本に触れない方が良いですよ。」

 

その手を止めたのは他でもない無名だった。

「君は.....」

「まさか、ここまで辿り着くとは思いませんでしたよ。

ゴエティアは貴方ではシンクロ率が足りないと言っていましたから....」

 

「その雰囲気は、僕たちの知っている無名のようだね。」

「えぇ、今僕の身体を使っているのは別人です。

僕の精神はこの本棚に囚われています。」

 

そう言う無名にフィリップは言った。

「実は君に頼みがあるんだ。」

「ジェイルメモリに関する記憶なら此方に....これなら貴方が触れても大丈夫ですよ。

そうして差し出された本はフィリップが何時も見ている地球の本棚の表紙だった。

 

「ここに置かれている本はゴエティアがセキュリティを掛けていて不用意に触れようとすると黒炎が本に触れた人物へと牙を剥く。

僕は黒炎を操れますから問題ありません君が触れたら大変なことになります。」

そう言うと無名はフィリップに本を差し出す。

 

「..........」

「どうしました?

まさか、罠かと勘ぐっているのですか?」

 

「君はアイツの正体を知っているのか?」

主語を抜いていてもアイツが誰を指すのかは無名には分かった。

「あの怪物の名前はゴエティア。

地球の本棚を造り上げた存在の生き残りだそうです。」

「ゴエティア?....確かソロモンに関連する魔法書の一説がそんな名前だった筈だが...」

 

「陳腐な言葉で表すのならその元ネタが地球の本棚にいたと言うことです。

そして彼はずっと此方の世界へ来るチャンスを伺っていた。」

「何の目的で?」

「それは.....!?避けろ!」

 

無名が咄嗟に放った言葉に従いフィリップが回避行動を取るとそこが爆発した。

「まさか、ここにやってくるとは....少し君の事を見くびりすぎましたよフィリップ。」

「ゴエティア。」

 

そう言いながら空からゴエティアがフィリップに攻撃をした。

「どうやってここへ?

貴方のシンクロ率ではここまでの壁を抜けることは出来ない筈ですが....」

「それを素直に教えると思うか?」

 

「連れないですね。

箱庭(地球)で一緒に話した中じゃありませんか?」

「あれは無名だろ?....君じゃない。

それに翔太郎に危害を加えようとしているお前を許しては置けないよ。」

 

「そうですか....では続きは箱庭で行いましょうか!」

ゴエティアがそう言ってフィリップに攻撃を仕掛けるがそれを無名が本を一冊開き止める。

「....ほう、記憶の取り出しも上手くなって来ましたね無名。」

「君に長いこと幽閉されているからね。

本の力を引き出せるようになったよ。」

 

「だが、"一冊"....それ以上の力を引き出そうとすると負担がかかりそうですか?

引き出すと言うなら"これぐらい"やって貰わないと...」

ゴエティアは三冊の本を開くとその力を解放した。

「マズイ!HIDE(隠れる)起動。」

BOMB(爆弾)、wvGRAVITY(重力)WAVE()、並列起動。」

 

爆弾の力を重力で圧縮してから解放することで威力の強化された爆発が衝撃波となりフィリップと無名に放たれた。

凄まじい衝撃が発生するがその頃には二人の姿は消えていた。

「HIDEの力で私に姿を見えなくしたか.....だがダメージを避けられる訳じゃない。

二人が鬼ごっこが好みなら付き合いますよ。」

 

そう言うとゴエティアは二人を探し始めるのだった。

 

本棚の裏に隠れた二人はゴエティアからの視界が切れると無名は持っている本を操作して能力を解除する。

すると無名とフィリップの身体が見えるようになった。

「はぁはぁはぁ....」

息切れを起こす無名の身体はボロボロであった。

「大丈夫か無名?」

フィリップの問いに答える。

 

「HIDEの力で隠れられはしましたが、あの衝撃波を避ける事は出来ませんでした。

正直、もう気絶しそうな位にはダメージがありますね。

フィリップ君....ジェイルメモリの本は?」

「さっきの衝撃で手放してしまった...すまない。」

 

「いえ、あれは予想外なので仕方ありません。

大事なのは今です。

フィリップ君にはジェイルメモリの本を持って元の本棚へ戻って貰う必要がある。

何とか策を考えないと....」

「待ちたまえ、君はどうするんだ?

このままじゃ君は....」

 

「殺されることはありませんよ。

(ゴエティア)の言い分では僕が死ぬと彼も死ぬらしいので気絶で済ます可能性が高い。

だが、フィリップ貴方は違う。

ゴエティアが何故、ここに来たのかは分かりませんが貴方を排除したいことは分かりました。

僕はそれを止めます。

貴方も脱出したいのなら力を貸してください。」

 

「分かった。

それよりさっきの攻撃は何なんだ?

あれもデーモンメモリの力なのか?」

「いえ、本棚の力を引き出して使ったんです。

イメージとしてはガイアメモリの力を使う感覚です。

だけど、使うと精神体にダメージが残ります。

僕も一冊引き出すのが限度です。

エクストリームの力を使えばもう少し無茶は出来ますが...」

 

「ここから悠長に探してゴエティアが見逃してくれる保証はないね。」

「えぇ、ですから現状この周りの力は一つしか使えません。

それを使ってジェイルメモリの本を手に入れてここを抜け出せれば君の勝ちですフィリップ。」

 

そう話しているとゴエティアが大きな声で話し始める。

「鬼ごっこはどうですかお二人とも!

楽しんでいますか?」

 

「「..........」」

二人は黙ってゴエティアの声を聞く。

(声の位置から考えてそんなに離れていない。

動くべきか?.....いや今動いたら見つかる可能性がある。)

 

そうしているとゴエティアは更に続ける。

「フィリップ君....貴方が何故ここに来れたのか疑問でしたが答えが分かりましたよ。

シュラウドですね?....彼女のネメシスメモリの力を使い壁を破って此方に来た。

全く、素晴らしいアイデアです....だが良いんですか?

あんまり悠長にかくれんぼをしていたらシュラウドが持ちませんよ?

 

貴方をここから出すためにもシュラウドは壁の穴を保持しています。

そしてそれをするにはネメシスメモリの力を常に放出する必要がある。

彼女の蓄えている力を放出すると言うことは"命を削っている"ことなんですよ。」

(!?何だって!)

「ネメシスメモリは復讐心や怒りを力にします。

だが、彼女は今その力を壁を破ることに使っている。

そうすれば、彼女を身体を持たせている力も失われていく....ここまで言えば後は分かるでしょうお二人とも。」

 

シュラウドは琉兵衛のテラーのメモリにより死にかけているのをネメシスメモリで無理矢理延命している。

その力を使っているのならば、このまま隠れているのは危険すぎる。

 

だが、フィリップも直ぐには戻れない。

ここに来たのはジェイルメモリの本を持っていく為なのだから.....

(早く何とかしないと...)

(考えろこの状況を変える一手を....)

 

動揺するであろうフィリップの為に無名が策を考えているとゴエティアは更に続ける。

「出てきてくれませんか?

私も貴方達を傷つけたくないんですよ...."血の繋がりがある二人"を....」

((!?))

 

衝撃な言葉に無名も驚く。

「おや、言ってませんでしたか?

無名、貴方とフィリップは繋がっているんですよ。

何せ無名の身体を作る時に、フィリップ..."園咲来人の死体"の一部を使ったんですから」

その言葉に二人はお互いの顔を見る。

 

「まぁ、フィリップとなった貴方には記憶が無いでしょうが....貴方は一度死んでいます。

此方に繋がる穴へと落ちて...そこでデータ人間へと変換される途中で私は貴方を見つけたんですよ。

そしてその肉体の一部を使い私のエネルギーと混ぜ合わせて生み出したのが無名....貴方です。

だから貴方とフィリップは園咲家の誰も知らない血縁者となっているわけです。」

 

(それが....僕の秘密....でも何で原作の記憶が?)

「それは私が貴方を作る前に何度も体験した記憶だったからですよ。

それを貴方にインプットした....それだけです。」

自分の思考にゴエティアが答えたことに無名は驚く。

 

「言ったでしょう?

貴方を作るのに私のエネルギーを混ぜていると..."集中"する必要がありますが、そうすれば貴方の思考が繋がり読むことが出来るんですよ。」

そう言うと二人は何かのエネルギーに捕まれてゴエティアの前に連れ出される。

 

「捕まえた....これで鬼ごっこは終わりです。」

そう言って笑うゴエティアの手にはジェイルメモリの本が握られていた。

「これをフィリップ君が手に入れられる未来は来ない。

貴方はここでデータとして分解してあげますよ。」

 

万事休す....そう思われた時、無名が笑い始めた。

 

「....ふふっ...ははっあはははは!

 

「ついに気でも狂いましたか?」

ゴエティアの問いに答える。

「まさか!勝ち誇っている貴方を見て笑ったんですよゴエティア。」

「.....何?」

 

「"全てが上手く行っている"。

そんな顔をしていますが貴方自身、何も上手く行っていない。

"彼女"すら見つけられず.....」

「どういう意味だ?....何を知っている無名?」

 

「おや?知らないんですか?

そこまで追い求めていたのに.....知らないんですか?」

黙れ!...黙って私の質問に...」

 

「そんなに動揺するなよ...."タナハ"に笑われるぞ?」

そう挑発的に無名が告げるとゴエティアの表情が初めて崩れた。

「私の記憶を読んだのか?.....だが読めるわけがない。

あの本にはプロテクトが掛かっていた。

プロテクトを解除するなんて....」

 

「気になるのなら読んでみれば良いじゃないですか。

ここを......」

そう言って無名は自分の頭を指差した。

 

 

これは"賭け"だ。

失敗すれば全てが終わる....だが成功すればまだ逆転の目が残せる。

だからこそ動揺を()に出すな()にも出すな。

ゴエティアは格上の存在だ。

そして自分達は圧倒的な格下....そんな僕にある手札は少ない。

 

上手く使え....そして悪魔を操れ。

 

 

悩んでいたゴエティアは何かを決めると無名を見つめる。

その瞬間、無名とフィリップの身体を掴んでいた力が消えた。

 

それを狙いゴエティアの手から本を奪うとフィリップに投げ渡す。

走れ!ここから逃げろフィリップ!

その言葉にフィリップは従い、二人から離れて行く。

 

「しまった!」

ゴエティアはここで自分の失策に気付く。

無名の考えを読むために意識を集中させ過ぎた結果、自分の使っていた本の力すら解除してしまったのだ。

 

追いかけようとするゴエティアを無名が止める。

「良いんですか?

彼を追いかけても?」

無名の手には一冊の本が握られていた。

 

「貴様、何のつもりだ?」

「貴方がフィリップを追いかけると言うのなら私はこの本の力を使います。

さぁ、止めますか?」

 

「そんな本一冊の力で私を止められるとでも?」

「止めないと....欲しいものが無くなるかもしれないですよ?」

 

無名の言葉にゴエティアは何の本を持っているのか表紙を見ようとするが表紙を無名は身体の裏に隠してしまった。

 

(ならば、高速移動して...)

 

「少しでもおかしな動きをしたら起動します。

この力は前に"貴方に見せて貰いました"から使い方も分かりますしね。」

(私が見せた力?)

 

ゴエティアは思考する....何の力なのか。

(この場で最も効果的に作用する力....直接攻撃に関わる力じゃない。

並ば精神系?.....私の精神に作用する力?

いやだとしたら交渉材料にはならない。

自分に?.....まさか!)

 

答えに辿り着いたゴエティアは無名を睨む。

「流石はここに長くいただけはありますね。

もう辿り着きましたか。」

「その力を発動した瞬間に意識を刈り取るぞ。」

 

「ではお互いにじっと睨みあっていましょう。

そうすれば万事解決です。」

無名はそう言って笑う。

 

ゴエティアは理解した無名の所持する本の力を....

("ERASE"...私が他者の記憶を消す時に使った力。

それを使って自分の記憶を消すつもりか。

そんな事をしたら何故、無名がタナハやコスモスを知っていたのか分からなくなる....くっ!悔しいですが完敗ですよ。)

 

そう思いながら見つめられている無名は身体の裏に隠した本が相手に見えないようにしている。

 

(これの中身がバレたら終わりですね。)

無名の隠していた本の表紙には"LIAR"と書かれていた。




Another side

無名から渡された本を持ってフィリップは走っていると上空に穴を見つけた。
(あれは...僕がここに来た時の穴だ!)

フィリップはその穴に向かって飛び上がると穴へと引きずり込まれ地面に吹き飛ばされた。
フィリップは乱暴に地面に転がる。

「来人!」
その姿を案じたシュラウドが彼に駆け寄る。
すると、開いていた穴が閉じる。

辺りを見るとそこは何時もと同じ地球の本棚の景色だった。
「帰って....来れた?」
フィリップは手に持っていた本を見つめる。
そこには"JAIL"の文字が確かに書かれていた。

「見つけたのね。」
「はい、途中でゴエティアに邪魔されましたが...」

「ゴエティア?
それは一体.....うっ!?」
ゴエティアの名前を聞いたシュラウドは頭を抑える。
「大丈夫、母さん。」
「えぇ、その名を聞いたら頭に痛みが.....」

「今は止めて置きましょう。
それよりも今はジェイルメモリについて検索しないと...それに母さんも戻るべきだ。」
「えぇ、そうさせて貰うわ。」

そう言うとシュラウドは地球の本棚からログアウトした。

そして、一人残ったフィリップは本を開き中を読むのであった。

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